外道がギルド職員なのは間違っているだろうか?   作:社畜

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覇者

「終わった?」

 

 倒れ伏す【猛者(おうじゃ)】。

 健在な覇者。

 

 誰が見ても明らかな決着でありながら態々尋ねるのは、自ら戦うと宣言したオッタルが死ぬまでやるのか、心折れて他者に頼るか選ばせる為。

 

「次は貴様か、ギルドの死神」

 

 死の神をして、闇派閥(イヴィルス)の眷属にそう言い含める冥府の顕現。魂を弄ぶ悪神の如き死の神に嫌われた男の呼び名を呼ぶザルド。

 

「それは俺が決めることじゃない。オッタル氏、いかがなさいますか?」

 

 丁寧な問いかけに、この様な状況でも何時もと同じ悪意なんて感じさせぬ微笑。戦うと言えばオッタルが死ぬまで観戦するのだろう。

 

 代わってくれと言えば、強者と戦うのだろう。

 そうして彼は強くなるのだ。そうして全てを弱者に変えて笑うのだ。

 

 最強となった彼は都市を守るだろう。そうしてゆっくり、民衆と冒険者の心を腐らせる。

 

「まだ、だ………!!」

 

 立ち上がるオッタルにニコリと微笑み瓦礫に腰を掛ける。お気になさらずどうぞ続けて、と手を差し出し告げる。

 

 ザルドが勝てば弱ったザルドを狩り、オッタルが勝てば自分が至るべき領域の見学となる。どちらにせよ地上の趨勢は決まっている。

 

「では、私は時間稼ぎに戻りますね」

 

 と、クロノは視線を外に向ける。

 

 覇者の戦いに興味をまるで示していない。むしろ、オッタルは今だけそれに感謝した。

 

 彼は怒っている。

 気付いたから。再び()()()()()()()()()()()()覇者の真意に。

 

 弱いまま()()()()()()()己の弱さを理解し、屈辱に震える。

 

 再びぶつかり合う轟撃。都市を揺るがす、竜の砲撃の如き覇者の旋律が続く限り、都市は折れない。今正しく、英雄の都は英雄の歌を奏でる。

 

「市民がまた冒険者に期待するな」

 

 そして如何なる災害も大丈夫だと、弱者で居ることに甘える。

 

「少年が冒険者に憧れるな」

 

 そして現実との差異に苦しみ、その牙を弱者に向けだす。

 

 そんな素敵な未来を夢見て、故にこそその未来のために都市を守らなくてはならない。

 

「【第九の地獄、すなわち氷獄。罪深き者達を永劫に捕らえよ。終わり無き厳冬よ、罪人の四肢を腐らせよ。嘆きは吹雪に呑まれ、涙よ凍てつき皮膚を裂け。罪人共よ、悔いるなかれ。罪も罰も他者の戯言。己を信じ己のみを貫け。さすれば、永遠の命を約束しよう】」

 

 地面に炎の右手を置く。炎が走り都市に蜘蛛の巣のように張り巡らされる。

 

「【感謝は要らぬ。永劫の苦痛に歪む顔こそが不死の対価なり】」

「【コキュートス・ピグマリオン】」

 

 炎は氷に、熱気は冷気に。

 炎に耐えながら突き進んでいたモンスター達が凍りつく。

 

 それでも数は多い。凍りついた氷像を踏みつぶし迫るモンスターの群に、一閃。蹂躙。目の前のモンスターの群れが消し飛ぶ。

 

 他方向から迫るモンスターも闇派閥(イヴィルス)も恐怖から足を止める。

 

 怪物の牙も悪の剣も等しく無に帰す。強者の殺戮しかそこでは起きない。英雄の都の各所で英雄が立ち上がる中、その場に英雄は現れない。

 

「た、助け………!」

 

 悲鳴は凍りつく。死を前に恐怖に歪んだ顔のまま時を止めた氷像に殺戮者はニコリと笑う。

 

 

 

 

 怒りに震える。

 その己より小さな背中が、今正に嘗て追いかけていた背中に重なる。

 彼が何時からオラリオに居たか知る者は少ない。何故なら元々ギルド職員だから。

 

 オッタルだけは数少ない知る者の一人。女神が目をつけていたから。

 

 頭角を現したのはここ数年。オッタルが知る今を走る冒険者の誰よりも才能に恵まれ、あっという間に自分の元へ追いついた子供。

 

 弱者を好む故に誰を弱者と見るかすぐ分かり、アレン達に殺意を向けられる彼は何時だって此方を見ない。

 

 自分と同じぐらい強いから。何十年もオラリオにいて、十年も経たずに追いつかれた屈辱に彼は興味も持たない。その彼が今、確かに自分より前に立っている。

 

 女神の為、ではない。目の前の男への屈辱…………だけでもない。追い抜かれた己への怒り。その全てを乗せ、男は立ち上がる。

 

 

 

 

 そんな怒りを向けられている彼は。

 

「モンスターを操る魔道具(マジックアイテム)か。資金の為に外部にも売った、と。後で調査しないとな」

「あびゃびゃびゃ」

 

 脳に電気を流されてビクビク震える男。ピン、と頭を指で弾くと興奮状態になり足が凍り動けないモンスターに腕をブンブン振り回しながら近付き食われた。

 

 Lv.6。オラリオに2人と居るサイキョウ。

 普通に考えればそれぞれ此方の最強に当たるだろう。時間制限付きの最強だ。超えれる可能性は十分ある。

 

 故に………備えはあった。

 

「ギィィィィィィィッ!!」

 

 路面が吹き飛ぶ。地下から現れたるは一匹の竜。

 竜の谷より、学区より先に見つけ魔道具(マジックアイテム)を以て眠らせ続けた制御不要の切り札の一つ。

 

 ムカデの様な節足を持つ竜はボタボタと口から血を流す。それは不遜にも己を捕らえ続けていた調教師(テイマー)達のものだ。

 

 ギョロリと怒りに満ちた瞳がザルドに向けられる。

 

「邪魔すんじゃねえええ!!」

 

 蚊の口吻のように突き出た角にエネルギーが溜まるも放たれる前に銀の光が竜の片目に突き刺さる。

 

「ギィアアアアア!?」

 

 階層主すら超える巨体がのたうち建物を破壊する。ただ身を暴れさせただけでとんでもない破壊だ。じっくりゆっくりと凍らせていた氷像が砕けてクロノは少し落ち込んだ。

 

「…………………………手を貸せ」

「ん?」

「あの猪の戦いを、誰にも邪魔させねぇ。だから、てめぇの力を貸せ」

「解りましたフローメル氏。遅れないでくださいね」




この後無茶苦茶ボッコボコにしてアレンはランクアップしたよ。アレンはね。
それってクロノと自分の強さは全く別物だってことでアレンはランクアップしたのに不機嫌になったとさ
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