【完結】陰キャのハマーン様   作:むにゃ枕

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ティターンズの権力がデカすぎる!!

 バスク・オムの人生において、これほどのカタルシスを感じたことはない。ズムシティをコロニーレーザーで吹き飛ばしたのだ。これ以上ない快感であった。

 

「ジェリド中尉。死体を片付けろ」

「はっ」

 

 ジェリド・メサはジャマイカンの死体をいそいそと片付けた。バスクは意見してきたジャマイカンを粛清していた。

 

「各地の連邦軍に檄を飛ばせ。今こそジオンを滅ぼすのだ。これでジオン残党に悩む必要はない!」

「了解しました!」

 

 バスク・オムの呼び掛けにより、地球連邦軍の一部部隊がバスクのティターンズに合流した。しかし、それは想定を下回る数だった。

 

「コロニーを落としたジオン星人。奴らの根拠地であるズムシティを吹き飛ばしたのだぞ!! なぜ、連邦軍は我々を支持しないのだ!」

「シロッコの甘言や、エゥーゴの寝言に転がる馬鹿が多すぎるのです。ですが、我々にはグリプスⅡが有ります。コロニーレーザーが手中にある限り我々に敗北は有りません!」

 

 アレキサンドリアのブリッジクルーの言葉にバスクは力強く頷いた。

 

「シロッコだろうが、エゥーゴだろうがコロニーレーザーの前には無力だ! 艦隊を集結させればその艦隊ごと葬ってやれば良いからな! ははははは」

 

 バスク・オムの哄笑を、エマ・シーンは軽蔑しきった瞳で眺めていた。

 

「醜悪ね。本当にこのやり方が正しいのかしら?」

「エマ。バスク大佐を批判するのか?」

「ねぇ、ジェリド。あなたは、バスク大佐のやり方を心の底から正しいと思うのかしら?」

 

 ジェリドは、周囲を伺いつつ口を開いた。

 

「正直、そうは思えない。だが、ジオンの奴らもコロニーを毒ガスで虐殺して地球に落としたんだぞ。良い気味だ」

「……そうね」

 

 ジェリドは、バスク・オムのティターンズが、ジオンと同じであるということを暗に認めていた。

 エマ・シーンは、ティターンズを見捨てることにした。そして彼女は、パプテマス・シロッコの張った蜘蛛の巣に触れた。

 

 

 

「ねぇちょっと。真面目にやりなさいよ! シャアは頑張っているのよ!」

 

 パプテマス・シロッコは、エマ・シーンを利用し、コロニー公社の職員に偽装しグリプスⅡに潜入していた。ハマーンとシャアも同様に潜入していた。

 

 「貴様ら凡人には、この兵器の美しさが分からんか……完成された機能美がグリプスⅡにはある」

 

 技術者として思うところがあったようで、シロッコはグリプスⅡを手も動かさず眺めていた。

 

「あんた、この兵器のヤバさが分からないの? こんなの存在してはいけないわ」

 

 シロッコと共に潜入したハマーンが異を唱える。ちなみにシャアは真面目に爆弾を設置していた。

 

「美しいものには理由がある。大量破壊兵器であってもだ。これには人の意思を形にした美しさがある。世界を破壊できるような強い意志の力だ」

「うわ……私、あなたのことを理解したくないわ。気持ち悪いもの」

 

 パプテマス・シロッコの怜悧な美貌も、シャアに恋する乙女であるハマーンには通用しなかった。

 そして、気持ち悪いと言われたシロッコは何気にショックを受けていた。

 

「ふふ。凡俗らしい考え方だ」

「口は良いから手を動かしてよね」

 

 ハマーンはシロッコとの会話をバッサリ終わらせた。自己陶酔しているシロッコが、ハマーンは嫌いだった。ちなみにハマーンの中には、セラーナを口説こうとしたナンパ男という印象が強く残っている。

 

「シャアの方の設置が終わったらしいわ。こっちもそろそろね」

「ああ。これで終わりだ」

 

 最後の爆弾を設置し、作業を終える。後は、偽装コロニー公社艇で安全圏まで逃げ、爆破するだけだった。

 

「あんた。コロニーレーザーを爆破しないで利用しようとか考えてないわよね??」

「おや、鋭いな。よく分かったじゃないか」

「そんなことだろうとは思っていたのよ」

 

 ハマーンはシロッコをジト目で睨んだ。

 

「冗談だとも。私はバスクを排除しなければならないと思っている。遊び場を壊されてはたまらんからな」

「人を自分のコマのように考えて、黒幕ぶってるの本当に気持ち悪いわね。あなたって、顔は良いけど中身が気持ち悪い。シャアとは大違いよ」

 

 シロッコは、ちょっと泣いた。ハマーンの言葉の刃は鋭すぎた。

 

「ハマーン。言い過ぎだ。シロッコも今は味方なんだぞ」

「今は、でしょう? どうせ裏切るわ。ああいう人間は信じちゃいけないの」

「君の言い方は直接的過ぎる。周囲を嫌な気分にするぞ」

「ふーん。分かったわ。旦那の言葉だったら仕方ないわね」

「……私は、君の夫ではない」

「20になったら結婚するって約束。覚えているわよね?」

「覚えていない……」

「じゃあ、思い出して。私はシャアが好きなの。ずっと好きなのよ。この戦いが終わったら結婚式を挙げましょ?」

 

 熱烈なハマーンの想いから、シャアは目を逸らした。周囲は既に外堀を埋められてきている。目を逸らし続けるのにも限界があるのだ。

 

「そんな逃げ続けている男のどこが良い? キャスバル・レム・ダイクン。エドワウ・マス。シャア・アズナブル。そしてクワトロ・バジーナ。立場から逃げ続けて、お前の想いからも逃げようとしている。

 私と来ないかハマーン・カーン。私の劇場の主演女優として扱ってやる。セラーナと姉妹共々、宇宙という舞台を彩ろう」

「うわ……女の後ろに隠れて監督気取り。そういうところが嫌いなのよ。シャアはそういうことをしないわ。私と一緒に歩いてくれる人なの。そうでしょ? シャア?」

 

 シャアは、違うと言いたかったが、空気を読んで頷いた。

 

「ねぇシロッコ。あなたは天才かもしれないけど、人との付き合い方が捻くれているわ。人は分かり合えないけど、あなたのことを理解しよう(分かろう)とする人は居るはずなのよ。独りよがりに天才ぶって、壁を作っているのよ。もっと素直に生きれば良いじゃない!」

「素直にか…! 面白いことを言う。貴様に私の何が分かる!? 私のことを理解したつもりになるな!!」

「人って、誰かのことを想えるのよ。生の感情を嘲る貴方には分からないかもしれないけれど。冷笑主義(シニシズム)なんて捨てなさい」

 

 ハマーンはレスバに強かった。そもそも、人の心にずけずけと入り込むのが得意だった。元陰キャ故の距離感とデリカシーの無さが、シロッコを追い詰めたのだ。

 

「それはお前の個人的な感傷だ! 成り上がるしか無かったこの私を理解しようとするな!! 私の過去は私のものだ!」 

「そうかもしれないわ。その人の過去は、その人の過去よ。でもね、誰かのことを思い遣るってとても美しいことなのよ。それが出来る人の心を信じなさい」

「ふっ。言葉では何とも言える。だが、現実は結局チカラが蹂躙するものだ。その時に、お前は何を言えるかな?」

 

 爆破地点に辿り着いたため、シロッコは起爆装置を起動した。グリプスⅡが崩壊する。

 準備していたアクシズやティターンズ、エゥーゴ、連邦正規軍、ジオン共和国軍などの艦艇が殺到する。

 

 コロニーレーザーを失ったバスク・オムには、打つ手が無かった。バスクは拳銃自殺し、ジェリド・メサは戦死した。

 

 バスク・オムとグリプスⅡを制圧したアライアンスは、その目的を達成した。アライアンスは、順当に行けば解散するはずだった。

 

「ゼダンの門が陥落しただと…!? どういうことだ!?」

「アクシズの体当たりによりゼダンの門が崩壊しました」

 

 パプテマス・シロッコは椅子から転げ落ちた。

 

「グレミー・トトがギレン・ザビの後継者を名乗り、ネオ・ジオンを結成。地球連邦に宣戦布告しました!」

「グレミー・トトだと? セラーナ・カーンがアクシズの指導者では無かったのか?」

「ズムシティの崩壊に伴い、ジオン共和国軍の過激派が暴走したようです。アクシズの過激派がグレミーを首魁に立ち上がったのかと!」

「放っておけ。所詮は烏合の衆だ。セラーナ派とエゥーゴが何とかするだろう」

「は? 我々はティターンズです。スペースノイドから地球を守る組織です。地球へと向かったアクシズを阻止しなければ! このためのティターンズなのですよ!」

 

 パプテマス・シロッコは、ティターンズのリーダーとなったが、組織を自由に動かすことは出来そうに無かった。

 バスク・オム討伐アライアンスは、アクシズの落下阻止へと動き出すこととなる。

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