【完結】陰キャのハマーン様   作:むにゃ枕

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生の感情

 グレミー・トトは最高のタイミングでセラーナ・カーンを裏切った。セラーナが麾下の艦隊とアクシズを離れ、シロッコ派のティターンズ、エゥーゴもバスク・オムとの戦闘に注力していた。

 

 この間、グレミーを注視する者は誰もいなかったのである。ジオン共和国軍と渡りをつけたグレミーは、ネオ・ジオンを結成し、アクシズをゼダンの門にぶつけた。

 その結果、ゼダンの門に駐屯していた僅かなシロッコ派は壊滅した。

 

 そしてアクシズは、かつてのコロニー落としの再来のように地球へと向かった。

 

「セラーナ、わけが分からないんだけど? 説明してくれる?」

 

 呉越同舟のバスク・オム討伐アライアンスであったが、誰もが現在の事情を理解できていないのは共通していた。

 そのため、ジュピトリスにて、主要なメンバーを集めた会議が行われていた。

 

「グレミー・トトは、ギレン・ザビの息子を名乗る人物です。旧デラーズ・フリートや、ギレン親衛隊といった旧ギレン派が、彼の支持母体です。アクシズの過激派も、私よりも彼を支持していました。

 お姉様が居なくなったアクシズは、大変な状態だったのです。私がティターンズやエゥーゴと協調したことで、過激派は私を見限りグレミーを擁立したのでしょう」

「ギレン・ザビの後継者を名乗っているのね。じゃあ、シャアがジオン・ズム・ダイクンの後継者を名乗れば対抗できるわ!」

 

 参加者の間にざわめきが広がった。シャアは、サングラスを取り真摯に訴えた。

 

「私は、確かにシャア・アズナブルであり、ジオン・ズム・ダイクンの息子だ。しかし、表舞台に現れるべきではない」

「え? シャアって目立つのが好きじゃない。だったら、ここでアピールするべきよ!」

「何、君と静かに暮らすのも良いかと思っただけだよ」

 

 シャアの言葉に、ハマーンの頰が朱に染まる。ハマーンは、シャアに抱きついた。シャアもそれを拒みはしなかった。

 

「シャア、そういうのは、TPOを弁えるべきだぞ」

「アムロ・レイの言う通りだ。我々は地球の危機に直面しているのだからな」

 

 アムロとシロッコの意見が合致していた。2人は嫌そうにお互いを見て、視線を外した。

 

「ティターンズ総帥パプテマス・シロッコ大佐だ。我がティターンズとしては、断固としてアクシズを迎撃する」

 

 シロッコは、場を引き締めるべくそう発言した。シロッコの発言にブライトも続く。

 

「エゥーゴ代表ブライト・ノアだ。エゥーゴもアクシズを迎撃する。ティターンズと組んででもアクシズを落とさせはしない。私たちで地球に住む市民を守ろうじゃないか」

 

 残されたのは、セラーナ・カーンとセラーナに同調したジオン共和国軍だ。セラーナには、まだグレミー・トトに従いアクシズを落とすという選択肢が有った。

 

「マシュマー。私はね。アクシズが地球に落ちたら、たくさんの人が悲しい思いをすると思うの。憎しみの連鎖がまた産まれてしまうわ。なら、ここで断ち切るべきだと思うの。甘い考えだと思うわ。アクシズのジオンの女として間違っていると思う。でも、これが悔いの残らない選択だと思うの」

「セラーナ様。どんな選択であれ、私は貴女を支持します。ジーク・ジオン……」

 

 マシュマーの後押しもあり、セラーナの心は決まったようだった。

 

「アクシズ摂政セラーナ・カーン及びその麾下は、アクシズ落としに賛同しません。私たちの全力をもってこの蛮行を阻止します! グレミーに忠誠を誓うものは、離れなさい。セラーナの名において背後から撃つことはしません! さぁ!」

 

 ゼラーナが、部下に向かって呼び掛ける。しかし、彼らのうちセラーナに反旗を翻そうとする者はいなかった。

 

「セラーナ様は、亡きマハラジャ提督の御意志を継がれた。ジオンという光を残すために、我々はアクシズ落としを阻止する! ジーク・ジオン!!」

 

 マシュマーの呼び掛けにセラーナの部下たちが立ち上がり一斉に声を上げる。

 

「グレミーに比べ、我々は寡勢です。しかし、憎しみだけでは何も生み出せないと、マハラジャ提督は仰っておりました。とうか、我等の指揮をお取りください」

「ええ。ありがとうマシュマー」

 

 

 グレミー艦隊と、アライアンスの戦力は同等だった。動きの鈍い連邦正規軍も、グレミー艦隊と確実に敵対するため、長期的にはグレミー艦隊に勝ち目はない。

 

 とはいえ、アクシズの落下を阻止出来なければ、グレミー・トトの名は歴史に残るだろう。そうすれば、反連邦政府の灯火が残り続けることとなる。

 

「グレミーは、強化人間を積極的に製造していました。おそらく、グレミー艦隊はかなり強力かと」

「大丈夫よ。私とシャアは無敵なんだから」

「……その、お姉様。お姉様のクローンとシャアのクローンがグレミー艦隊には居ます。ですから、どうかお気を付けて」

 

 ハマーンは、絵に描いたような驚愕の表情を浮かべた。

 

「ちょっと!? 私のプライバシーとか肖像権の侵害よ! グレミー! ギャフンと言わせてやるわ!」

 

 ハマーンは、セラーナが用意していたディマーテルに乗り込んだ。キュベレイの次世代機でありハマーンとの相性はとても良い。

 

「アムロ…? ΖZガンダムに乗るのか…? その2人と?」

「お兄ちゃんのサポートが私たちの役目」

「薬は抜けたから大丈夫…!」

 

 フォウとロザミアがアムロにしがみついている。アムロの脳内では、ベルトーチカ・イルマが自分と距離を取るだろうことがありありと想像できた。

 

「シャア・アズナブル。Zガンダム出る」

「アムロ・レイ、ΖZガンダム出るぞ」

 

 2機のガンダムが、アーガマから出撃した。パプテマス・シロッコのガンダムであるオーヴェロンもジュピトリスから上がる。 

 

「グレミーは48人のプルシリーズを運用しています。量産型クイン・マンサはかなり強力なMSです。特機が対処してください。ジム・クゥエル、ネモといった機体は、ドライセンやバウといった敵一般機の対処をしてください」

 

 48人のプルシリーズ。シャアやハマーンのクローン。その他、雑多な強化人間を含めたグレミー艦隊は、量産型クイン・マンサをはじめとする多種多様なMSを運用していた。

 

「堕ちろ! 俗物!」

「うるさいわよ! 同じ声で!」

「お前を落とし、私が本物になる!」

「劣化コピーは黙ってなさい! 行け! ファンネル!」

「お姉様がいっぱい。1人くらい貰ってもバレないわよね……」

「セラーナは、何を言っているの!?」

 

 量産型キュベレイに乗ったハマーンクローンが、ディマーテルに乗ったハマーンに襲い掛かる。機体のスペックと操縦者のスペックで劣っているため、ハマーンクローンが勝てるはずがなかった。

 

 

「はぁ、しつこいわね。何人いるのよ!」

「10はいないはずです」

「多いわよ!」

 

 ハマーンとセラーナは順当にスコアを稼いでいた。しかし、ハマーンクローンやプルシリーズの数が多く、敵艦艇にも、アクシズのノズルにも取り付くことがてきない。

 

「アムロ……お前のことが好きだったんだよ!」

「これでは道化だよ」

「ならば、今すぐ愚民共に叡智を授けてみせろ!」

 

 量産型キュベレイに乗ったシャア・アズナブルのクローンが、本物のシャアとアムロに向かって襲い掛かる。

 彼らは、ハマーンクローンとは違い連携が出来るようで、毒電波を撒き散らしながら、ファンネルを飛ばしている。

 

「アムロ……うっ」

「ララァは私の母になってくれる女性だった!!」

「シャア・アズナブルなんだ。誰が何と言おうとも俺はシャア・アズナブルなんだ」

 

 Zガンダムは搭乗者のシャアの羞恥心と怒りのせいか、バイオセンサーが稼働している。

 アムロのΖZガンダムのバイオセンサーも、それに釣られたのか、光を放っていた。

 

 全てのシャアクローンが消えた後、本物のシャアは口を開いた。

 

「アムロ。ここでのことは全て忘れてくれ。私は、あんなことを思っていない」

「そうだな……」

「嘘よ。アムロお兄さんに対してシャアはそれくらい思っているわ」

「アムロ。お尻に気をつけてね」

「黙れ! これだから強化人間は……アムロ。頼む信じてくれ」

「ああ。そうだな……」

 

 シャアはもうハマーンと結婚して、大人しく余生を送ろうと思った。記憶の断片から作られた強化人間の垂れ流す毒電波は、シャアのメンタルに多大なダメージを与えていた。

 

 パプテマス・シロッコとサラ・ザビアロフ。2人のオーヴェロンとタイタニアは、量産型クイン・マンサ相手に大立ち回りを繰り返していた。

 

「パプテマス大佐。なんて能力だ」

「あまりにも強すぎる」

 

 ネオ・ジオン相手に無双していたシロッコは、自分に向けられる敬意を受け、改めて自分が天才だということを実感していた。

 

「プル。アイツを落とすぞ」

「はい。グレミー様」

 

 量産型でないクイン・マンサが向かってきたため、シロッコはサラを呼び戻す。

 

「サラ。敵の親玉だ。落とすぞ」

「はい。パプテマス様」

 

 サイコマシーンであるオーヴェロンとクイン・マンサが、ニュータイプの感応を発生させる。

 シロッコは、グレミーとプルシリーズの関わりを感じ取り、その醜悪さを目にした。

 

「少女を戦争の道具にするなど醜悪だな」

「女の影に隠れるお前に、俺を非難する資格は無い!」

「貴様と私は違う」

「違うものか。同じだろう」

 

 シロッコは感応で生じたグレミーの影を、斬り破った。

 

「サラ。奴と私は同じか?」

「…いえ、違います」

 

 サラの僅かな言い淀みが、シロッコには引っ掛かった。  

 

「ふふふふふ。はっ、ははははは。舐めやがって! 私とて1人の男だ! 応えろオーヴェロン!! アクシズ如き、私が食い止めてやる!」

 

 立ち塞がる量産型クイン・マンサを斬り捨てながら、オーヴェロンは、グレミー・トトへと向かっていく。

 パプテマス・シロッコの口元からは、シニシズム(冷笑)が失われていた。

 その瞳には、彼が厭っていた生の感情が剥き出しになっていた。

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