そんな大人修正してやる!
シャア・アズナブルは、クワトロ・バジーナと名を改めた。そして、部下と共にティターンズのガンダムを奪取するためにグリーン・ノアへと向かっている。
「シュネー。私に続け」
「はい。大尉」
シュネーは、クワトロと同様にノーマルスーツとジェットパックを装備している。
桃色の髪をポニーテールにし、重い前髪と眼鏡を掛けているのが特徴的だ。
「大尉。感じませんか? ニュータイプの存在を……」
「そうだな。アムロの再来かもしれん」
ハマーンはアクシズを捨てた。幼いミネバも、体調を崩したマハラジャも全てを妹のセラーナに押し付けてきた。何も知らなかったセラーナは愕然としただろう。
何せ姉がシャアと家を捨ててどこかに行ってしまったのだから。
「はじまったな……」
アポリーとロベルトのリック・ディアスが、コロニー警備のジムⅡと戦闘を開始したようだ。落下の衝撃と共に爆発が起こる。
「あのガンダム、勝手に動いてます!?」
「仲間割れか?? まあ良い。ガンダムを奪取する」
クワトロとシュネーは、それぞれガンダムMK2に無理矢理乗り込んだ。そしてそのままコロニーに開いた穴を目指す。
「あんたらエゥーゴだろ!」
「誰? 生憎、ガンダムは間に合ってるわ」
「カミーユ。カミーユ・ビダンだ。ティターンズの奴ら、ユイリィに乱暴を!」
「ふーん。カミーユって名前なのに男なのね。子供は大人しく家に帰りなさい。エゥーゴは軍隊よ。子供の来る場所じゃないわ」
「あんただって子供だろ! そうやって他人を見下して自分勝手で! 年齢だけ重ねた子供だ!」
「こ、このガキィ……」
シュネーとカミーユの間に不穏な空気が漂う。それを収めたのはクワトロだった。
「シュネー、やめろ。済まなかったなカミーユくん。私たちの旗艦へ案内しよう」
「ええ。分かりました。貴方は?」
「クワトロ・バジーナだ。大尉をしている」
「よろしくお願いします。クワトロ大尉」
シュネーはこれ見よがしに中指を立てていた。カミーユはそれに対して口汚く捲し立てる。
「クワトロ大尉。ブライト・ノア大尉だ。カミーユくんに助けられてね。私と民間人のファ・ユイリィくんもそちらで保護を頼みたい」
カミーユの乗るガンダムMK-Ⅱのコクピットには3人が詰め込まれているらしい。
リック・ディアスと合流したクワトロらは無事にアーガマまで戻った。
「3機のガンダムを奪取したのか。アーガマの格納庫が満杯になりそうだな。で、あそこはなんでいがみ合っているんだ?」
「さぁ。性格的な問題でしょう」
シュネーとカミーユは睨み合っていた。
「アンタみたいな子供は家に帰った方が良いわ。ほら、さっさと帰りなさい。パパとママが待ってるでしょ」
「親父とお袋は、僕の心配なんかしていないよ! 余計なお世話だね!」
「だったら尚更よ。子供なのよあなたは」
「黙れ、眼鏡女。あんたみたいな上から目線で、勝手に思い込む奴が嫌いなんだよ」
「そう。私も生意気なガキは嫌いよ。ニュータイプの力に溺れるだけの弱者だもの」
シュネーは、クワトロに首根っこを押さえられて、カミーユから離された。
「クワトロ大尉。なんでこんな奴をエゥーゴに置いてるんですか!? 自分勝手で、視野が狭い偏屈な女を」
「大尉。この小生意気なガキをグリーン・ノアへ送り返しましょう。エゥーゴには不要です」
「なんだと!」
「何よ!」
クワトロにすれば、カミーユの方がマシだった。
「2人ともやめろ。君たちは同じフネの仲間になる。喧嘩をするようならシュネーはアクシズに、カミーユはグリーン・ノアへ送り返すぞ」
「分かりましたよ。喧嘩をしなければ良いんでしょう」
「アクシズ……今更戻れないわ。分かったわよ」
シュネーは、クワトロに擦り寄った。クワトロの腕に、自分の腕を通す。躱されたシュネーは、無理矢理クワトロの手を握った。
「ねぇ大尉。私たちの結婚式はどうするの?」
「なんのことだか分からない。私は君に恋愛感情を持っていない」
「…………ちょっと、そこまで言わなくても良いんじゃない」
「君がしつこいからだ。私はお父上から君のことを託されたが、それは君と結婚するということを意味しない。ただ、アルテイシアのようには思っている」
シュネーは、何回もすげなく扱われているため、別段深いショックは受けなかった。しかし、腹は立つものである。
「敵が来るわ」
「敵だと? ティターンズの追っ手か?」
「私はキュベレイで出る。大尉は?」
「そうしよう」
アーガマの格納庫には純白と深紅のキュベレイが並んでいた。キュベレイはアクシズからハマーンとシャアが持ち出してきたものである。
ファンネルを搭載しており、リック・ディアスよりも図抜けた性能を示すワンオフ機だ。
「シュネー少尉。キュベレイ。出ます」
純白のキュベレイが、アーガマのカタパルトから射出される。即座に展開されたファンネルが、シュネーの意のままに、宙を飛び交う。
「30バンチの悪夢だ……」
「クソ、敵うわけねぇ」
サイド1、30バンチ。ティターンズによる虐殺を未然に食い止めたキュベレイは、彼らから蛇蝎の如く嫌われていた。
「よっつめ!」
ティターンズのハイザックはみるみるうちに数を減らしていった。キュベレイに触れることも出来ない。まさにワンサイドゲームだった。
「なんだ……あの化け物は……」
バスク・オムは、その脅威をまざまざと目にした。白いキュベレイがハイザックをあっという間に蹴散らし、赤いキュベレイが、艦艇を沈めていく。
「赤い彗星のシャア! そして白い魔女ハマーン! 奴らを落とせ! 落とした奴には褒賞をやる!」
「バスク大佐! 敵MS、こちらに向かってきます!」
「ええい! 味方は何をしている! 無能めが! サラミスを盾にしろ!」
30バンチの暴動鎮圧に失敗したティターンズは落ち目だった。G3ガスを充填した注入艇が拿捕され、それは白日の元に晒された。
起死回生のため開発していたガンダムMK-Ⅱは、試作機の3機を全て奪われてしまった。全て、白い魔女の引き起こした災厄である。
「敵MS、引き返します!! 助かりました……」
「馬鹿者! この損害だぞ! 何が助かっただ!!」
バスクは弱音を吐いたオペレーターを殴り飛ばした。ここまでの損害を出した以上、バスクが更迭されるのは明白である。
念の為確保していた駒を使うべき時が来たようだ。
「ジェリド・メサ中尉。カプセルを用意しろ」
「はっ」
バスクが用意させたカプセルの中には、2人の民間人が入っている。ガンダムMK-Ⅱを強奪した民間人カミーユ・ビダンの両親だ。
技術大尉であるフランクリン・ビダンは命乞いをしたが、バスクは聞かなかった。バスクは、監督責任を主張し、大尉であるフランクリンも人質にすることにしたのである。
カミーユの母であるヒルダも連邦の技術者だったが、バスクには最早、敵味方の区別はなかった。
「それは停戦交渉の材料だ。ジェリド中尉、有効に使ってくれよ」
ジェリドはカプセルの中身を知らなかった。しかし、停戦交渉の材料というのならば、貴重な資源か何かなのだろうと考えていた。
悲劇の引金を自分が引くことになると、ジェリドは全く思っていなかった。