稗田阿求の幻想縁起   作:味八木

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ずんべら霊系手術

 

 

―ずんべらぼう―

 

出没地域…日本全国、特に青森に多い

危険度…高

人間友好度…中

 

のっぺらぼうの別名。のっぺらぼうと同じく目も鼻も口も無い卵の様な顔をしているが口だけ存在しているタイプもいるかどうかは不明である。

 

古くから落語や講談などの怪談や妖怪絵巻に登場してきた比較的有名な妖怪である。また、しばしば本所七不思議の一つ『置行堀』と組み合わされ、魚を置いて逃げた後にのっぺらぼうと出くわすという展開がある。妖怪としての害は人を驚かすことだけで、それ以上の危害を与えるような話は稀だ。

 

物語ではタヌキやキツネ、ムジナといった人を化かすという伝承がある動物がのっぺらぼうの正体とされることもある。また、肉塊の妖怪『ぬっぺふほふ』と同一視され、それが伝承の中で変化したという説もある。

 

出没した話として明和4年*1の怪談集『新説百物語』によると京都の二条河原に顔に目鼻や口のない化け物『ぬっぺりほう』が現れ、これに襲われた者の服には太い毛が何本も付着していたという。何らかの獣が化けていたことを髣髴させる描写がある。しかし正体が不明の場合もあり、寛文3年*2の奇談集『曽呂利物語』では、京の御池町に身長7尺*3ののっぺらぼうが現れたとあるが正体については何も記述がない。民間伝承においては大阪府、香川県の仲多度郡琴南町などに現れたと伝えられている。

 

のっぺらぼうの有名な怪談の一つに蕎麦屋の主人に主人公が話しかけるがこちらを向かず作業を続ける主人に恐ろしい事が起こったと話すと蕎麦屋の主人が振り向いた顔には目も鼻も口もなかった。再び驚いた主人公は今度は自宅に飛んで帰ると何か作業をしている女房の後ろ姿があった。何をそんなに急いでいるかと聞いてくる女房に、息も絶え絶えにのっぺらぼうにあったと話すと、女房はこちらに振り向き「こんな顔だったか」と目も鼻も口もない顔を見せる。驚いた主人公は気絶したという話が有名だろう。

 

ずんべら坊はのっぺらぼうの別呼称とされており文献で登場するのも巌谷小波の『大語園』などで、のっぺらぼうはずんべら坊(ずんべらぼう)の名で記述されている。津軽弘前の怪談として同様にずんべら坊に遭った者が知人宅へ駆け込むとその知人の顔もまたずんべら坊だったという話がある。このような『再度の怪』の怪談は中国古典の『捜神記』にある『夜道の怪』の影響によるものとされる。ずんべらぼうはのど自慢の男を散々脅かして最終的にショック死に追いやっている。

 

のっぺらぼうの近縁としてずんべらぼうの他にぬっぽり坊主、目も鼻もない女鬼、お歯黒べったり果にはケナシコルウナルペというアイヌの妖怪もいる。

 

ずんべらぼうはのっぺらぼうの別呼称なので違いはないが、ずんべらぼうはショック死に追いやる為、夜は出歩かないのが遭遇しない一番の方法だろう。

 

 

 

 

 

 

 

真名の通う中学にある意味有名な女の子がいた。名前を房野きらら、という。彼女は中学1年生なのだが、彼女は一部の同級生に『ブスノ』と呼ぶ通り所謂ブサイクだ。

 

学校で冷遇されている彼女の唯一の楽しみ…それは推し活である。人気俳優であるユウスケ君のファンであり彼にファンレターを送るほどに惚れ込んでいる彼女は彼だけが自分の顔を忘れて過ごせる唯一の時間だった。しかし、ライブなどに行って直に会っても同じファンの子に顔を理由に近づくのを邪魔され苛立ちが募っていた。

 

ある日彼女の家に宅配が届いた。母は夕食の準備をしている為きららが出ることになった。

 

宅配に出ると宅配業者であるお兄さんは家から出てきたきららの容姿をみて絶句、驚いてしまった。初対面の人にまで容姿で冷遇された事にストレスの限界に陥ったしきららは最後の理性で宅配を貰い家に宅配を置くと、母に何も言わずに家を飛び出してしまった。

 

家を飛び出したは良いもののどうするか途方に暮れていると見知らぬ怪しさ満点の老婆が話しかけてきた。

 

「お前さん…今の容姿が気に入らんのじゃろう?良ければ儂がお前さんを生まれ変わらせようぞ…」

 

怪しさ満点だが容姿をコンプレックスとして生きてきたきららは詐欺を承知で老婆の後をついていった。自分が少しでも変われるのか…その一心で彼女は見知らぬ老婆について行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

老婆と共に着いたのは山の中の小屋だった。老婆は座敷に着くなりきららに語り始めた。

 

「さて…今回君を呼んだわけじゃが…君は自分の顔に良い印象を持っていない…違うかえ?」

「はい…その通りです」

 

そう言うと老婆はそうじゃろうと呟き懐からあるものを取り出し説明した。

 

「これは人間の魂の天ぷらじゃよ」

「………は?」

 

不審がると老婆はその魂の天ぷらを食べ始めた。すると老婆の姿がグラマスな着物美女の姿に変わり妖艶さを醸し出している。この劇的ビフォーアフターを見て驚くきららに老婆改め美女は話した。

 

「改めて自己紹介、私はずんべらと言うの。私が持っているこの人間の魂の天ぷらを食べ私の霊系手術を受ければお主の理想の顔が手に入るわ…」

 

きららは人間の魂の天ぷら等という不可思議な物を持っている人物を怪しむどころかこのまま生き恥を晒すのは嫌だ!と考えて思い切って魂の天ぷらを食べてしまった。すると数分の内に眠くなり深い眠りについてしまった。

 

美女はきららを仰向けに動かし自分が持っている何かのコレクションをきららにつけていった。

 

その様子をねずみ男が覗いているのをずんべらは気付いていたが無視した。

 

 

 

 

 

 

―きららが霊系手術を受けた次の日―

 

きららは起きると山小屋の中にいたはずなのに何故か自室にいた。彼女は何時ものように部屋の中にある鏡で顔を見た。するとそこには何時もブスノと呼ばれ蔑まれ嫌気がさしていた自分の顔がとんでもない美少女になっていた。

 

母親にも自身の顔について驚かれたが何とか追撃をはぐらかして学校に行った。すると通学路でも近所の人からのいい意味での視線を浴びて、学校に来ても同学年どころか他学年からも視線を浴びきららはモジモジしていた。教室に入ると自分に視線を浴びているのを自覚しながらも席に着いた。すると何時もは自分を影で馬鹿にしてると思われる人達が可愛いと褒めてくれる。この言葉を今日の内に何回も聞いたきららは嬉しくなった。

 

その日の放課後、きららは大ファンだったユウスケ君の所に来ていた。きららはこの容姿ならユウスケ君に認識してもらえると考えたからだ。

 

「あれ?もしかしてきららちゃん?」

 

ユウスケ君の言葉にきららは「えっ?」と固まった。そんな様子に気付かずユウスケ君は続ける。

 

「何時もファンレターありがとね!それに何時もライブにも来てくれて嬉しいよ!」

 

きららは涙を流しそうになった。何故ならあんなブサイクな顔の自分に文句一つ言わずに屈託のない笑みを浮かべてくれる。そんなユウスケ君にきららは更に推しへの愛を深くした。

 

「それにしてもこの顔でよく分かりましたね…」

「ああ、何ていうのかな…雰囲気が似てたんだよね…それに僕にとって顔はどうでもいいんだ」

 

それを聞いたきららは一気に推しと会えた事の熱が去っていくのを感じ、たまらず立ち去ってしまった。そんな様子を見ていたユウスケ君のファンが見ていたのを2人は知らない…

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ!絶対おかしいでしょ!」

「そうよ!あんなブスノがあんな可愛くなれるなんて!」

「ユウスケ様と二人っきりで話してたし!」

 

きららに嫌がらせを行っていた三人は文句を言いながら夜の道を歩いていた。すると男に声をかけられた。

 

「おや?顔のことでお困りですか?」

 

その男はみすぼらしい服装であった。彼女らは相手にせず立ち去ろうとすると男に呼び止められた。

 

「ユウスケ君…でしたっけ?彼と話してた女の子が可愛くなった理由を教えて上げようと思ったけど…」

「詳しく教えなさいよ」

「えぇ良いですよ。彼女はとある方に整形を頼んだのですよ。もちろん貴方方も謝礼金があればしてくれると思いますよ」

 

その言葉に怪しむも男―ねずみ男―が整形後の顔に満足しなければ返金するとまで言い出した事が決め手となり了承した。そして、彼女らもその日の内に霊系手術を受けることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

―きららの部屋―

 

霊系手術を受けて2日目の夕方、きららは生まれ変わった自分の姿や周りからの反応に優越感を感じていた。しかし、推しであるユウスケ君の言葉に自分は正しい事をしたのか…間違ってたのか不安になっていた。だから彼女は生まれ変わった自分の容姿を見ることで気分を落ち着かせようとした。そんなわけで鏡の前に立つときららの血の気が引き驚きのあまり家を飛び出した。

 

夜の道を走っていると人とぶつかったのかきららは倒れてしまった。倒した相手は同じ中学の真名であった。真名は「大丈夫ですか?」とゴスロリ服の人物をきららと知らずに助けようとした。しかし、彼女の容姿をみると真名は悲鳴をあげた。何故なら倒してしまった女性の顔がついていなかったからである。そう、彼女は鏡で自分の顔がのっぺらぼうになっているのに驚いたからだ。

 

真名は猫娘に連絡を取り人間がのっぺらぼうになる事件を知るのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

―ゲゲゲの森―

 

鬼太郎は目玉の親父とゲゲゲの森を歩いていた。すると鬼太郎は猫娘が手鏡を持って何かをしているのに気づいた。鬼太郎は猫娘に声を掛ける。

 

「猫娘?何をしてるんだ?」

「ニャっ!」

 

猫娘はあまりの驚きの余り猫のような声をあげてしまった。

 

「き…ききき鬼太郎!大丈夫。顔についてたゴミをとっての!」

「そうか…ゴミは取れたのか?」

「えっ…えっ〜とまだかな…」

「じゃあ僕がとってあげるよ」

 

猫娘は恋の相手である鬼太郎の顔が至近距離に近づいてきて心臓がとてつもなくバクバクと動いていた。彼女にとっての至福の時間は猫娘の獲物に掻き消されることになる…

 

「よっ〜す鬼太郎ちゃん!いい雰囲気になっちゃって!お熱いですね〜」

 

ねずみ男がやけに上機嫌な様子でやって来た。

 

「何だ?ねずみ男」

 

鬼太郎はねずみ男の機嫌がいい時は良いことが無いと警戒心を露わにする。対して猫娘は愛しの鬼太郎の顔を至近距離で見ている時間を奪われ対照的に不機嫌だった。

 

「いや〜鬼太郎ちゃんと一緒にラーメンでも食べに行こうかな〜って」

「何をしたんだねずみ男…」

 

鬼太郎の経験上、ねずみ男の羽振りがいい時は絶対に何かをやらかしている自信があった。猫娘も爪を出して臨戦態勢だ。

 

「ねずみ男…何をしたんだ」

「シャー!」

 

鬼太郎と天敵たる猫娘の質問への圧力に負けて情報をゲロった。

 

「ふ〜む。顔を別人に変えるとは…」

「いや〜驚いたぜ。先生の手にかかれば整形なんてお茶の子さいさいだ」

 

ピロンと猫娘のスマホが鳴る。猫娘はスマホを取り出すと真名からのメールであった。

 

『同級生の顔がのっぺらぼうみたいになっちゃった!』

 

そんなメールと共にきららの顔無し写真が送られてきた。鬼太郎と真名はきららの写真を見てねずみ男を睨む。2人からの無言の圧力にねずみ男は屈した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

きららとユウスケ君のファンは真名と一緒にねずみ男が案内したずんべらぼうの元に来ていた。

 

「おい、ずんべらぼう!きららさん達の顔を返せ!」

 

その言葉を聞いてずんべらぼうは家の戸を開けて一行を中に入れた。

 

「おや?そちらの子達は私が手術をした子じゃないか?何かようかい?」

「私の顔がなくなっちゃったんだけど!」

「何だそのことか、私が施す霊形手術とは顔を剥いで死人の顔を貼り付けるものだ。理想の顔を手に入れられるが定期的に顔を張り直さなければお主らの様にのっぺらぼうになる。だが、手術をすれば妖怪になるリスクが伴う」

 

その言葉に一同は驚愕する。特にユウスケファンは激しく抗議する。

 

「巫山戯ないで!何で誰のかも分からない死人の顔をつけなきゃいけないのよ!私の顔を返して!」

 

ずんべらぼうはキセルを吹いて言った。

 

「別に返してほしければ返すぞ」

「え?」

「別に返してほしいなら返すと言っておる。何を呆けているのだ?」

「いや、返してくれないと思ってたから…」

「私は人が求めたからその求めに応じただけ。私はただ美に狂う女たちがたまらなく愛しい。その底なしの欲望が…故に手術で得た顔に未練など無い。そこのお主らに渡しておくぞ」

 

そう言ってずんべらぼうは棚から箱を取り出すとその中から沢山の人間の顔が収められていた。ずんべらぼうは慣れた手つきできららとユウスケファンの顔を取り出して渡した。

 

鬼太郎はきららを説得する。真名や猫娘も同調した。

 

猫娘は「死人の顔で澄ましてるより自分の顔で笑ったほうがよっぽど幸せ」と言う。その言葉にユウスケファンは死人の顔で偽るのを止めて自分の顔を貼り付けた。

 

真名も自分なりにきららをフォローしようとするのだが…「大丈夫!私なんかこの前新しい靴で犬のうんち踏んじゃって!それに比べれば死人の顔なんて…」とフォローとも煽りとも取れる何とも言えない励まし方をしていた。

 

結局、きららは今すぐ決めることが出来ず自分の顔を持ちずんべらぼうの家を飛び出した。鬼太郎はのっぺらぼうのままのきららを追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

きららは必死に逃げていた。折角自分が手に入れた可愛い顔を失い、元の醜い顔に戻りたくなかった。

 

必死に逃げていると推しであるユウスケ君を見つけた。きららは見つからないようにいたが、結局見つかってしまった。勿論、顔のことについて驚かれ事の顛末を話た。するとユウスケ君が話を切り出した。

 

「実は前から君のファンレターを見ていてね、勇気づけられたんだ。そして、毎回ライブで僕に会いに来てくれてて…君が顔を変える前から好きだったんだ」

 

それを聞いたきららは揺れた。誰も自分を見てくれない。蔑んでくるだけ…そう思っていた。しかし、ユウスケ君の様な人もいることを知った。だけど…

 

「キレイになって世界が動き出した!それまで私は死んでた!生きながら死ぬのは嫌!」

 

そう。今まで馬鹿にされて生きて来た。だけど、顔を変えたら皆が意見をころっと変えて可愛いと言ってくれた。それが何よりもきららにとって嬉しかった。

 

「…わかった。これからは僕も支えるから…元に戻ってくれ」

「私は…幸せだったんだね…」

 

ユウスケ君が前から自分を見てくれていたこと。自分の心の支えになる事を約束してくれた。

 

そう言ってきららは元の顔をつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、ユウスケ君はファンの子達とまるで医院長行進かの様に町中を歩いていくとふと、街中の大型ビジョンが目に見えてきた。

 

そこには『レッドカーペットを歩く!日本人快挙ヘッドリバー賞受賞!』と書かれカメラに笑顔を向けている女性がいた。そこまでだったらユウスケ君もそこまで驚かない。しかし、横に書かれた名前がついこの前に相談した房野きららの名前があった。

 

ユウスケ君が驚いているとユウスケ君のいる道の先に見覚えのある後ろ姿があった。

 

ユウスケ君は「きららさん」と声をかけた。振り向いたきららはユウスケ君にあっかんべーをするのだった。

 

 

*1
1767年

*2
1663年

*3
約2.1メートル






今回の話は結構人間の心理を突いてますよね。周りからの反応で自己承認の欲求を満たして自分の容姿についてとやかく言われないのか、容姿が悪くても数少ない友達とかと楽しい時を過ごすか…

結果としてきららは自己承認を満たして周囲から馬鹿にされない人生を選んだわけです。大変考えさせられますね…

東方キャラの追加について

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