稗田阿求の幻想縁起   作:味八木

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※9月23日間違えて別作品の次回の話を公開しました。皆さんにご迷惑をかけた事をお詫び申し上げます。


潮の怪!海座頭

 

 

―海座頭―

 

出没地域…日本海周辺

危険度…中

人間友好度…中

 

琵琶法師に似た姿をしており、琵琶を背負い杖を持っている。座頭とは盲目の人々を指す言葉で目を閉じた姿で描かれる。

 

漁師に危害を加える存在とされる事もあるが、海坊主の仲間と考えられることもある。だが、実質的な存在や意味合いについては不明な点が多い。

 

海坊主の仲間あるいは海坊主が衰退した後に現れる妖怪であるとする説がある。

 

海座頭は海に現れる妖怪であり「ひしゃくくれ〜」と声がする。言葉通りにひしゃくを渡すと沢山のひしゃくが海水を船の中に注ぎ沈没させてしまう。対策として穴の開いたひしゃくを使えば問題はない為、恐れる必要はあまり無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

皆が寝静まった夜、境港の沖合には漁船とは見えない1つの木造船があった。その木造船は所謂釣り船であった。

 

その釣り船の船上には宇宙服にも似た潜水服を着た人物がいた。彼はねずみ男。ここ境港に江戸時代の北前船が多数沈没しており財宝が眠っていると言う噂を聞きつけ一人で財宝を手に入れようとしていた。

 

ねずみ男は冷たい海の中に入る。ねずみ男は僅かな光を頼りに財宝を探す。そして、宝探しを初めてしばらくして、海底に眠る壺らしき物を発見した。それを見たねずみ男は北前船の財宝か?!と何の躊躇いもなく蓋を開けた。しかし、中には何もなかった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―鳥取県境港市―

 

境港の近くの街に存在する空港から2人の少女がやって来た。犬山まなと真名と一緒に来た稗田阿求であった。

 

何故阿求がここ境港に来たのかは、レインを交換した2人は真名に誘われて気分転換にとやって来たのだ。ちなみに猫娘を通じて鬼太郎も誘ったのだが、「興味ない」と言われて断念した。

 

「お〜い!真名!」

 

元気な男性の声が空港前に響いた。

 

「庄司おじさん!」

 

真名の父方の叔父である庄司が軽トラの前で待っていた。

 

「お待たせ!庄司おじさん!」

「おっきくなったな〜真名ちゃん!所でそちらの方が…」

「あっ!そうそう!この子は私が東京で知り合って友達になった稗田阿求ちゃん!」

「稗田阿求と申します。今回はお世話になります」

「いや〜真名ちゃんを宜しく頼むよ」

 

 

そんな当たり障りのない会話をして軽トラに乗り込む事になったのだが…問題が1つあった。軽トラは基本的に2人乗りだ。結果として誰か1人が荷台に乗る必要がある。しょうがないので真名が荷台に乗ることになった。何故なら阿求は体が弱く飛行機のフライトで気分が悪くなった。今時珍しい大正の女学生スタイルの和服を着ている為に視線に晒されてストレスが増えたのもその1つだ。しかし、原則として荷台に人が乗るのは法律違反だ。なので、荷台にや割れ物をわざと置いた庄司はこのや割れ物を見張ると言う名目で真名を荷台に乗せることにした。

 

 

 

 

 

 

 

軽トラで庄司の家まで向かっている最中に真名が庄司に話しかけた。

 

「庄司おじさん!前から思ってたんだけど車に飾ってたボールって何?」

「あぁ、それはおじさんが高校野球をしてた時の物だよ」

「おじさん高校野球してたの!?」

 

まさかの過去に真名はびっくりした。おじさんは続ける。

 

「おじさんはそれはもう凄くてな。過去には甲子園に行ったこともあるんだぞ!」

「おじさん凄い!」

「おじさんはピッチャーをやっててな!仲間からは『スナイパー庄司』の異名で呼ばれてたんだ。そのボールはその時に使ってたボールだ」

「凄いですね…私はあまり野球は見ませんが凄いことは良くわかります」

 

「ハッハッハ!そうだろ!」そんな声が軽トラの中で響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

2人は軽トラで庄司おじさんの住む家に着いた。真名達はそこで近くを観光したり、おばさんと料理を作ったりして遊んでいた。そして、夕食を食卓で食べることとなった。

 

『今年の港大漁祭りについてのニュースです』

 

食卓にあるテレビに地元テレビのニュースが流れた。

 

「あっ!今年もやるの?私すっごい楽しみ!」

「祭りですか…最近は余りやっていないので楽しみですね…」

 

真名と阿求の言葉に庄司おじさんとおばさんは何とも言えない表情をした。

 

「2人ともどうしたの?」

 

真名は首を傾げたが阿求には分かる。2人が言い出しにくい事であり会話の流れ的に祭りに関する事だろうと考えた。事実、それは正しかった。

 

ニュースを見ると、祭りの実行委員の話が出ていた。

 

『今年の港大漁祭りは伝統派と改革派で意見が分かれており、開催が危ぶまれています…』

 

「えっー!嘘でしょ!」

「運営方法で揉めるのは何処の国、時代も一緒ですか…」

 

そんな暗い雰囲気を吹き飛ばす様に庄司おじさんが大きな声で話す。

 

「よし!今日の夜に魚を取りに行ってくる!真名と阿求さんに美味しい新鮮な魚を食わせてやる!」

「貴方…大丈夫なの?1人で行ったりして?」

「俺は海の男だ!大丈夫に決まってんだろ!」

 

その言葉に阿求は小声で「経験は何にも勝る宝ですから…」と呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

真名と阿求は庄司おじさんの家の庭で線香花火をしていた。

 

「久しぶりですね…友達と花火をするなんて何年ぶりでひょうか…」

「何年ぶりって…阿求ちゃんは私と同じくらいの年齢でしょ?」

 

その言葉に阿求は小さく「そうですね…今の年齢は…」と呟いた。

 

阿求は気分を変えるために真名に質問する。

 

「テレビで放送していた『港大漁祭り』とはどんな祭りなのですか?」

「えっとね…マグロが奉納されてその場で解体されて皆に振る舞われるんだ!他にも屋台が沢山出るし、夏祭りらしく花火も上がるんだよね!」

「なるほど。それは面白そうですね」

「でも今年は無いって言うし…」

「大丈夫ですよ。祭りの代わりに庄司叔父様がマグロを釣ってくれるそうですから明日を楽しみに待ちましょう」

「うん!そうだね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

―境港沖合海上にて―

 

境港の沖合で庄司おじさんは真名と真名が連れてきた友達―阿求―に祭りで振る舞われる予定だったマグロを釣って食べさせてやろうと考えて漁に出ていた。

 

しかし、今日の海は一味違った。よりにもよって孫娘とその友達が来ている時に海の波が激しく漁どころでは無いのだ。

 

そんな誰も居ないはずの海の上で不気味な声が聞こえた。

 

ひしゃくくれ〜 ひしゃくくれ〜

 

庄司おじさんが何事かと辺りを見渡した時、船の上には何故か乗せた記憶のない男が少しばかり浮いた状態で三味線を弾いていたのだ。そんなおかしな様子を見て庄司おじさんの意識はそこで途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、阿求はいつもより遅く起きた。真名と一緒に所謂ガールズトークをしていたからだ。そのせいか、おばさん―庄司おじさんの奥様―が何やら慌てた様子だった。

 

「どうかなさいましたか?」

「あぁ阿求ちゃん。ごめんなさいね、騒がしくしちゃって…」

「いえ、いつもはもっと速い時間に起きますので…しかし、何やら慌てたご様子…」

「えっとね…」

 

そこで言い淀むおばさんだったがそんな所に真名がやって来た。

 

「おはよう…あれ?おばさん、庄司おじさんは?」

「実はね…お父さん、昨日の漁からまだ帰って来てないのよ…」

 

その言葉に真名と阿求は驚き慌てた。真名は事故が起きたのではと…阿求は妖怪の仕業も視野にいれていた。海は山と双璧をなす妖怪の宝庫なのだ。

 

「……私、庄司おじさんを探してくる!」

「待って下さい!」

 

そう言って真名と阿求は家を飛び出して港に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

真名と阿求は庄司おじさんを捜索する漁船に無理言って同行させてもらって沖合に出発した。

 

海が荒れているためにライフジャケットを着用した2人は海の周りを呼びかけしながら探し回っていた。

 

するとどんどん霧が立ち込めてきた。そんな行く遭難してもおかしくない頃、船員の1人が声を上げた。

 

「おい!ありゃなんだ!?」

 

船員が指を指した先には人影があった。それはどんどん近づいてくる。しかし、その人影は船に乗っていない。船員は不気味に思っていた。そんな時、不気味な声が響いた。

 

「ひしゃくくれ〜 ひしゃくくれ〜」

 

「皆さん!ひしゃくを渡してはいけません!」

 

阿求が大声で注意する。それを聞いた人達がひしゃくを投げ入れようとしたが手を止めた。

 

「阿求ちゃん?どうして?」

「これは妖怪です!今すぐ陸地に引き返してください!」

 

そう言って船を引き返させようとする。しかし、そうは問屋が卸さなかった。船幽霊が襲ってきたのだ。そして、船首に三味線をもったお坊さんの姿があった。それを見た阿求の判断は早かった。

 

「真名さん!逃げますよ!」

「で、でも…」

「早くしますよ!」

「阿求ちゃん体大丈夫なの!?」

「……」

 

阿求はなまじ妖怪の知識を持っているために早く逃げようとしたが荒波の中飛び降りても無事に陸地に上がれる保証もなく体が無事な保証も無いのだ。

 

「私は無理です…ですが、真名さんだけでも逃げてください!」

「で…でも!」

「早く!鬼太郎さんを呼んでください!彼奴は海座頭です!」

 

そう言って阿求は真名を荒波が吹き荒れる海に突き落とし、真名はできる限り西も東も分からないままできる限り泳いで行くことになる…

 

 

 

 

 

 

 

「う〜ん」

 

真名が目を覚ますと海岸に打ち上げられていた。

 

「阿求ちゃん!どこ?!」

 

真名があちこち駆け回って阿求を探していると聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

「真名ちゃ〜ん!大丈夫かい〜?」

 

そう言って真名の名前を呼びながらやって来たのは庄司おばさんだった。ご近所様と一緒に探し回ったのだろう。後にご近所さんがいる。

 

「無事で良かったよ…そう言えばついて行った阿求ちゃんは?」

 

その言葉に真名は無言を貫いた。その言葉が真実を如実に物語っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

―ゲゲゲの森―

 

「鬼太郎〜真名から連絡があったの」

 

そう言いながら猫娘が簾をのけて室内に入ってきた。それを聞いた鬼太郎は目玉の親父に茶碗風呂のお湯を注いでいた。

 

「どうしたんだい?確か真名は境港に行くとか言ってなかったか?」

「えぇ。そうなんだけど…阿求と一緒に行ったみたいでね…阿求が言うには海座頭?ってやつが出たらしくて真名のおじさんや阿求が捕まっちゃったみたい」

 

それを聞いた目玉の親父はひっくり返って驚いた

 

「よく妖怪騒ぎに巻き込まれる子じゃのう…」

「ところで父さん。海座頭とは?」

「うむ。江戸時代に北前船を中心に沈め回った奴じゃ。あ奴は船幽霊と呼ばれる人間の霊を使役する。恐らく真名ちゃんのおじさんや阿求殿も餌食になってしまったことじゃろう…」

「それじゃあ今すぐ向かいましょう!」

 

即断即決で東京ゲゲゲの森が鳥取境港までの旅が決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

連絡を受けてその日の昼過ぎには鬼太郎達は境港に着いた。そして、鬼太郎は早速船を出して調査に向かおうとする。しかし、波が荒く船を出すことが出来ないと言われてしまった。

 

目玉の親父が交渉するも境港の人達は驚くことも無く会話をして何とか出してもらえる事になった。

 

早速船を沖合に出すとすぐさま船幽霊の声がした。鬼太郎は声のする海中に底に穴が空いたひしゃくを投げた。ひしゃくは海から出る手に幾つも装備されており手はひしゃくで海水を汲んで船に入れようとする。しかし、穴が空いているために船を沈める事が出来なかった。

 

痺れを切らした海座頭が船首に現れた。鬼太郎は問い詰める。

 

「境港の人達をどうする気だ!」

「その昔沈めた船のお宝を引き上げる為に船幽霊を集めこき使うのだ」

 

何とも煩悩に溢れた妖怪には思えない考えだった。交渉決裂で戦いが始まった。鬼太郎は海座頭が優勢だった。船という限られたフィールドでは海座頭の十八番の為に鬼太郎は苦戦を強いられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

境港の海岸では鬼太郎の帰りを今か今かと待っていた。

 

「ふぅ…とんでもない目にあったぜ…」

 

しかし、海岸に響いたのは鬼太郎では無い聞き慣れた声だった。真名が声のする方を見ると海の中から潜水服を着たねずみ男がいた。

 

「ねずみ男さん!何してるの!」

「おっ、真名ちゃんじゃねぇーか。お前こそ何してるんだ?」

「私は鬼太郎が帰ってくるのを待ってるの。ねずみ男さんは?」

「えっ!えっ〜とだな〜」

 

わかりやすく視線を逸らすねずみ男は猫娘からの脅しに屈して白状した。

 

「北前船のお宝を探してたんだよ。そしたら変な妖怪が出て来て人間達の魂を祠に閉じ込めてるし…今日は厄日だぜ」

 

真名はピーンときた。魂がその祠に閉じ込められてるならその祠を開けることができれば船幽霊を解放できると考えたからだ。

 

「ねぇ!皆!皆で協力して船幽霊の魂を解放しようよ!」

「だけどね…」

「相手は妖怪だしな…」

 

嫌だと渋る者もいた。しかし、皆が真名に賛成する姿勢を見せた事で結局真名の案に乗ることになった。

 

そして真名は長い長い縄を持ってねずみ男と一緒に船に乗り込んだ。

 

目的地に向かうと近くで鬼太郎と海座頭が戦っていた。

 

「鬼太郎〜!境港の皆で庄司おじさん達の魂を取り返すから!」

 

そう言うと真名はねずみ男を突き落とした。ねずみ男は海中を進み祠の扉に縄をかけた。そして、海上まで戻り縄をかけた事を真名に伝えた。

 

『皆!お願いします!』

 

スマホで庄司おばさんに伝えると境港の皆が縄を引っ張っていく…しかし、負けじと海中では船幽霊達が祠側に縄を引っ張っていく。

 

幽霊に力で勝てるわけもなく境港の人達は押され気味だった。だが、そこに援軍がやって来た。鬼太郎ファミリーの皆が駆けつけたのだ。猫娘を始め子泣きじじいや砂かけ婆、ぬりかべがやって来た。特にぬりかべの力は凄まじく、引っ張っていると海中の船幽霊ごと祠を開ける時に引っ張り出してしまった。

 

「貴様ら…!許さん!」

 

海座頭は激怒した。宝を引き出す奴隷が逃げ出してしまったのだ。これではやり直しだ。怒った海座頭は怒りを目の前の鬼太郎で発散していく。海水を今まで以上に操り攻撃を仕掛けていく…しかし、船幽霊はちがった。

 

祠から解放された魂は船幽霊の体に戻った。それは庄司おじさんも例外では無い。庄司おじさんも元に戻った。そして、その時にお守りとして持ってきていた高校時代の野球ボールを真名は手渡して言った。

 

「センター!バックホーム!」

 

庄司おじさんは近くで鬼太郎と戦っている海座頭にボールを投げつけた。それは正確無比に海座頭の左頬に直撃した。【スナイパー庄司】の面目躍如だろう。

 

海座頭がボールの直撃に気を取られた隙に鬼太郎は指鉄砲を準備した。そして、指鉄砲を発射。指鉄砲は海座頭を貫き一連の騒動は終結した。

 

「ふぅ…船幽霊なんてなるもんじゃないですね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

―その日の夜―

 

境港で開催されている港大量祭りが開催された。

 

真名は着物に着替え、鬼太郎達は折角境港に来たので真名の頼みもあって祭りに参加する事にした。

 

「へぇ、中々面白いじゃない」

「でしょでしょ!」

 

真名は祭りを褒めてくれた猫娘に自分の事でもないのに自慢をする。阿求も祭りが珍しいのかキョロキョロしている。

 

「こんな楽しい事に誘ってもらってありがとう御座います」

「もちろん!阿求ちゃんは私の友達だからね!でもびっくりしたよ!船幽霊になっちゃってどうしようかと悩んだんだから!」

「ふふっ…心配してくれてありがとう御座います」

「けど良かった!阿求ちゃんが無事で…」

 

皆は打ち上がる花火を見ながら祭りを楽しんだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






阿求さんの出番を多くしました。どうだったでしょうか?

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