ハグリッドの小屋から帰ってきた銀時たちは、とりあえず沖田、桂と別れてグリフィンドールの寮へと向かった。
グリフィンドールの談話室に入ると何故か1年生たちが、掲示板へと群がっていた。
「なんだ?」
「どうやら、掲示板にお知らせがあるみたいですね」
銀時が首を傾げると新八が周りの様子を見て言った。
銀時たちは1年生の集団をかき分けて掲示板のお知らせを読んだ。
――――飛行訓練は木曜日に始まります。グリフィンドールとスリザリンとの合同授業です――――
1年生のみんなは、スリザリンと一緒だと分かってもがっくりとしなかった。
例の魔法薬学の授業を行うまで自慢話と人を馬鹿にしてばかりのスリザリンと一緒なんて嫌だと思っていたグリフィンドール生。
しかし、スネイプがズタボロにされた時からスリザリン生がとても大人しくなったので、グリフィンドールにとってはスリザリンと一緒だろうがどうでもいいのだ。
木曜日の朝食の時、グリフィンドールのテーブルにメンフクロウがやってきた。どうやらネビルに何かを届けにきたようだ。
ネビルはめんふくろうから小さな包みを受け取るとワクワク、ウキウキしながら開けた。
中に入っていたのは、ビー玉ぐらいの大きさのガラス玉である。何故か中に白い煙が詰まっているように見える。
「あっ、これ『思い出し玉』だ!!」
「何アルか?」
ネビルの言葉に神楽は首を傾げて聞いた。銀時たちは、ネビルの持つガラス玉をじっと見つめた。
「これはね、何か忘れてることがあると教えてくれるんだ。見てて、こうやってギュッと握るんだよ。もしも赤くなったら……あれれ?」
「赤くなりましたね」
「おお、真っ赤でピカピカネ」
ネビルは玉を見て首を傾げ、新八は淡々と言い、神楽は興味津々にキラキラ瞳を輝かせた。
「で?赤くなるとどうなるんだ?」
朝食のドリンクとして出てきたイチゴ牛乳を飲みながら銀時は首を傾げてるネビルに聞いた。
ネビルは真っ赤に光った思い出し玉を見ながら口を開く。
「うん……赤くなったら何かを忘れてるってことなんだけど……」
「何を忘れてるのか分かんねぇってとこか」
土方がコーヒーにマヨネーズをふんだんに入れながら言った。
そんな土方の言葉にネビルはコクンと頷いた。
その日の午後、銀時たちはグリフィンドール生と一緒に校庭へと出ていた。
校庭にはすでにスリザリン生が到着しており、何十本の箒が地面に並べられていた。
「おお、箒で飛ぶなんて魔○宅になれるアルな」
神楽はキラキラと瞳を輝かせた。
しばらくすると飛行訓練担当の先生が来た。マダム・フーチである。マダム・フーチは白髪を短く切り、鋭くつり上がった鷹のような黄色い目をしていた。
「さぁさぁ、みんな箒のそばに立って」
マダム・フーチに言われて生徒たちは箒の隣に立った。場所は決まってないので、沖田は銀時の隣に立っている。ちなみにその反対側は神楽だ。
「では、箒の上に手を突き出して」
マダム・フーチが言うといそいそと生徒は自分の利き手の突き出した。
「そして、『上がれ!!』と言う」
生徒たちは先生の言ったように叫んだ。
ハリーの箒はすぐに飛び上がってハリーの手に収まった。銀時の箒もきちんと上がって銀時の手に収まったのだが、向かいにいた桂の箒が何故か真っ直ぐ銀時の股関に飛んできてぶつかった。
「む?箒の瞬間移動か?」
「瞬間移動じゃねぇよォォオ!!桂さん何やってるんですか!!」
あまりの出来事に新八が叫んだ。
銀時は股関を押さえたまま悶絶中だ。
それを見ていた男子生徒は青ざめている。
「ギ、ギントキ……その大丈夫?」
ハリーが近付いてきて恐る恐る銀時に尋ねた。
銀時は痛そうに涙目で首を振った。
「無理。なんか上あがってる。ちょっと悪いけど優しく腰叩いてくれない?トントンって」
「分かりやした」
「分かったアル」
銀時の言葉に応えたのは、沖田と神楽だ。沖田と神楽はふぅっと息をはき、呼吸を整えると自分の箒をゆっくりと上げた。
「オイオイ、なんでそんなあげるわけ?優しくだよ、優しく」
銀時は逃げ腰になるもまだ痛いため逃げられない。
「ホワチャァァア!!」
「うりゃァァァア!!」
神楽と沖田は勢い良く銀時の腰、目掛けて箒を振り下ろした。
ドゴォオオンッ!!とけたたましい音が辺りに響く。
周りに舞った土煙が晴れると、沖田と神楽は同時に舌打ちをした。
銀時が痛みを我慢してギリギリ避けたのだ。銀時の避ける前の場所には二つの箒が突き刺さっており、そこを中心に地面にヒビが入っていた。
「オィィイ!!お前ら銀さんを殺す気ィィイ!!」
銀時は地面に尻を付き青ざめて叫んだ。
さて、色々あったが、とうとう空を飛ぶ所まで授業が進んだ。っというか、マダム・フーチは騒ぎを気にせず授業を進めていたのだ。
あまり気にしないタイプなのだろう。地面にヒビが入った時も
「まったく今年の新入生はやんちゃで困ったものです」
っと呟いていたくらいだ。
ちなみにそれを聞いた生徒は目を見開いて驚いていた。
「さぁ、みんな箒にまたがりましたね。では、私が笛を吹いたら地面を蹴って下さい。二メートルぐらい浮上したら、前屈みになって降りてくること……では、一、二の――」
笛を吹く前にネビルの箒が宙に浮かんだ。
どうやら、ネビルは1人だけ地上に置いてきぼりを食らいたくなく、笛を吹く前に思い切り地面を蹴ってしまったようだ。
「こら、戻ってきなさい!!」
先生が叫ぶ。するとネビルはビクッとしたのだろうもうスピードで何故か銀時たちのほうへと向かってきた。
「ギャァァア!!なんでこっちに!!」
新八が叫ぶ。その間に銀時と沖田は即座に向かってくる箒から逃げる。ドSであればあるほど色んな意味で打たれ弱いのである。
「うわぁぁあん。止まらないよ、ギントキ助けてェェエ」
ネビルは泣きながら同じグリフィンドール生の銀時に助けを求める。しかし、銀時はそれどころではない。だってさらに加速して銀時と沖田に突っ込んでくるんだもの。
「ネビルゥゥウ!!止まれェェエ!!」
「ちょ、なんで旦那だけじゃなく俺まで、早く止まりやがれ!!」
銀時と沖田は叫ぶも、ネビルの箒は加速する一方だ。
そして……
ドグシャッ!!と何かが潰れる音がした。
どうやら三人は見事ぶつかったようである。
先生と生徒たちは慌てて三人の元へと向かった。
三人は、目を回して倒れていた。どうやら銀時、沖田はともかくネビルは意外と丈夫だったらしく大きな怪我はないようだ。
「とりあえず、この子たちを医務室に連れて行きます。誰か手伝ってくれませんか?」
「銀ちゃんは私が連れて行くネ」
「総悟は俺に任せとけ」
「では、俺がネビルくんを連れて行こう」
神楽、土方、桂はそれぞれ持ち上げた。
何故か三人とも姫だっこで持ち上げるので後で恥ずかしい思いをするだろう。特に神楽といえど女の子に持ち上げられた銀時が
「では、私たちが医務室に行っている間誰も動いてはいけません。もし、動いたら、クィディッチの『ク』を言う前にホグワーツから出てもらいますからね」
マダム・フーチはそう生徒たちに言うと神楽たちを連れて医務室へと向かった。
銀時はふわふわとした布団に包まれて目を覚ました。近くには心配そうにこちらを見つめる神楽がいる。
「あ?神楽?」
「銀ちゃん!!目覚ましたアルか!!良かったネ」
銀時が神楽の名前を呼ぶと神楽は嬉しそうに言った。
「あらまぁ、目を覚ましたの?痛いところは?気持ち悪くない?」
白衣を羽織った先生が聞いてきた。銀時は首を振る。すると、白衣を羽織った先生は他に寝ている生徒の方へと向かった。
「神楽、ここは?」
「医務室アル」
神楽の言葉に銀時は少し眉を寄せた。
そして、思い出すように頭に手を当てた。
(あー、そうか。ネビルの野郎がぶつかってきたんだっけ)
銀時は、自分が何故ここに居るのか思い出すとため息をつき、周りを見た。
医務室は思った以上に広く、ベッドが並んでおり、部屋の隅には沢山の薬の入った棚やツボなんかが置かれていた。
並んだベッドの内、銀時の寝ていたベッドを除いて2つまだ使われているようだ。
「あいつら、まだ起きてねぇのか?」
「サドは軟弱だからナ。ネビルは見ての通りヨ」
神楽は沖田を馬鹿にするよう鼻で笑った。そんな神楽に銀時は微かに笑う。
「おおー、銀時。起きたようだな」
神楽と銀時の会話に気付いたのか、医務室の先生に聞いたのか、とりあえず馬鹿が現れた。
「馬鹿じゃない、ヅラだ!!いや、間違えた桂だ!!」
突然叫ぶ桂。そんな桂を見て、神楽と銀時は不審者を見るような目で桂を見つめた。
「銀ちゃん、あれ何アルか?」
「神楽!!駄目だ、見たら馬鹿が移るぞ」
銀時はおもむろに桂と神楽の距離を離させた。
その時である。外から生徒たちの歓声が聞こえたような気がした。
(あれ?さっきなんか……)
銀時は不思議そうにするも、どうやら、銀時以外の医務室の中にいる人たちには聞こえてないようである。
(気のせいか?)
銀時はそう思いベッドへと再度横になった。
一方その頃新八は……
「ど、ど、どうしよう。ハリー君がマクゴナガル先生に連れて行かれちゃった」
なにやら、不安を抱いてたようだ。