このホグワーツ魔法学校の一大イベントであるハロウィーンが終わった休日。
新八はどこから持ってきたのかはたきを手に持ち与えられた寮部屋を掃除していた。
「え?掃除していたってちょっと待って下さい。ハロウィーンいつ終わったんですか!?」
与えられたはたきを持とうともせずに新八、いや、眼鏡はあろうことかナレーションに噛みついた。
「オィィイ!!なんで言い直した!!あってたじゃん。ってかハロウィーン!!」
新八は目をこれでもかと見開いて叫ぶ。ハロウィーン、ハロウィーンっとまるで眼鏡のようだ。
「いや、意味分かんないから!!って銀さーん。銀さんもなんか言ってやって下さいよ」
新八はそう言うと自分のベッドに横になりこれまたどこで手に入れてきたのか、銀時愛用の雑誌。少年ジャンプを読んでいる銀時に助けを求めた。
銀時はチラッとジャンプから視線をあげ怠そうに新八の姿を綺麗な紅色の瞳に映した。
「……」
そして、無言で新八からまたジャンプへと視線を落とす。
「ちょ、銀さん!!ジャンプ読んでないでなんか言って下さいよ!!」
「なんか」
新八の言葉に銀時は一言口にした。銀時の言葉に新八の口端が微かに引きつる。
「あ、あの……銀さんそうじゃなくてですねぇ」
「……あー、ったく。うるせぇな」
新八が懲りずに口を開くと銀時は仕方なさそうにパタンっとジャンプを閉じた。
口ではブツブツと言うがきちんと話を聞こうとでも思ったのだろう。
流石、銀時。とても心優しい。それに比べて新八は……
「で?どうしたんだよ」
銀時が首を傾げて新八を見ると、新八は今まで話を聞いてなかったのかとばかりにがっくりと肩を落とした。しかし、すぐに気を取り直し言葉を放つ。
「聞いて下さいよ、銀さん!!ナレーションさんってばもうハロウィーンは終わったって言うんですよ」
新八の言葉に銀時は手近にあったクッキーを手に取り一つ口に放りこむ。
そして、咀嚼すると新八を見据えた。
「確かに終わったみたいだな」
「お、終わったみたいって……ちょ、銀さんなんでそんなに冷静なんですか!!」
銀時の言葉を聞き、新八は少し声を荒あげた。しかし、銀時は新八の荒あげた声を気にせずクッキーのカスがついた指をペロッと一舐め。
「冷静ねぇ、新ちゃんはよォ。何が言いたいわけ?」
「え?それは……ほ、ほらハロウィーンの夜に結構一大イベントあったじゃないですか。なのに、その話せずに進めるのはどうかと……」
モゴモゴと話す新八に銀時はああっと頷きガシガシと頭を掻くとため息混じりに口を開いた。
「いいんじゃねぇ?あのハロウィーンのイベントには俺たち関わってねぇし」
「え?」
銀時の言葉に新八は目をぱちくりとさせた。
「えっと……誰一人関わってないんですか?」
「なんかよォ。あのイベントは三人に友情が芽生える大事なイベントだから部外者が気安く入るべきじゃないってトロールなんか気にせず避難しないでハロウィーンのご馳走食べてたろ」
「逃げろォォオ!!せめて避難しろよ!!」
銀時の言葉に新八はとりあえず突っ込んだ。しかし、銀時はやはり気にせず言った。
「まぁ、そんなわけでハロウィーンは飛ばして今回の話行くぞ」
「はぁ。納得は出来ませんが、分かりました」
っというわけで気を取り直して、
このホグワーツ魔法学校の一大イベントであるハロウィーンが終わった休日。
新八はどこから持ってきたのかはたきを手に持ち与えられた寮部屋を掃除していた。
「あっ、本当に最初からやり直すんだ」
新八は呆れたようにはたきを持つと掃除を始めた。
新八が掃除を始めてしばらくすると銀時の持ち物から見慣れない箱を見つけた。
「あ、あれ?」
「あ?どうした?」
新八の抜けたような声に反応し、銀時はジャンプから目を離し……あっ、今はジャンプじゃなくクッキーを食べているんですね。失礼しました。クッキーを食べる手を休め新八のほうへと顔を向けた。
「いや、見慣れない箱が……ってなんで僕には強制的に掃除させるのに銀さんは行動自由なんですか!!」
新八は見つけた箱を指差すと不満を口にした。ってかそんなもん、新八だからに決まってる。
わざわざ答えるまでもないだろ、この駄眼鏡がッ!!
「ちょっとォォオ!!ナレーションさんがすっごく酷いんですけど、僕何かしましたか?」
「あー、この箱な。そういやすっかり忘れてたわ」
新八が悲痛を叫ぶのを横目で見ながら銀時は箱を持ち上げた。
さて、皆様は覚えているだろうか?神楽と銀時が出会ったあの占い師を……そして去り際に渡された箱のことを。
「ナレーションさんも銀さんも無視ですか……で?それ何が入ってるんですか?」
綺麗に無視されため息をつく新八。しかし、へこたれずに新八は銀時の持つ箱へと指を差した。
「……知らねー」
「え?知らないんですか?」
銀時の言った言葉を聞くと新八は目をぱちくりさせた。
そんな新八を見ると銀時はコクンっと頷く。
「神楽がもらった箱はあの後すぐに開けたけどな。俺のは……作者自体忘れてたんじゃねぇ?」
「いや、銀さん。流石に忘れてたとかはないと思いますよ」
…………。
「あ、あれ?ちょっとナレーションさん何黙って」
…………。
「ま、まさか本当に忘れてたんかいィィイ!!」
「あー、やっぱりそうか。可笑しいと思ったんだよな。今更こんな話やるなんてよォ。普通学校始まってすぐにしなきゃダメな話だぜ」
銀時は呆れながらため息をついた。なんというか本当に申し訳ない。
ナレーションが凹んでいると新八が空気を変えるかのように大きな声をあげた。
「と、とりあえず銀さん。それ開けてみませんか?」
新八の言葉に銀時はおもむろに箱を見つめた。
そして、箱の蓋へと手を伸ばしパカッとそれはもう躊躇もなくごくごく普通に開けた。
存在が忘れさられるほど放置プレイを受けていた箱の中身は……本だった。
「タイトルはlost……あとは読めねぇな」
箱から取り出した本は古くタイトルの書かれた文字が薄れておりよく見えなかった。
銀時はペラッとページをめくってみる。
表紙と同じくところどころ文字が薄れていた。
「……magic今度は最初が見えねぇな」
銀時が呟くと、新八が本を覗き込みながら口を開いた。
「続けるとロスト マジック……どういう意味だろう」
「……失われた魔法」
「え?銀さん分かるんですか!?」
銀時の訳した言葉に新八は驚き目を見開く。
そんな新八の様子に銀時は眉を寄せた。
「いや、新八。そんなに驚くことか?」
「だ、だってこれ外来語じゃないですか!!まさか銀さんにそんな学があるなんて毛ほども思いませんでした!!」
「よーし、分かった新八。表出ろや……あ、あり?」
新八のあまりにも酷い言葉に銀時は眉を寄せたままきっぱりと言う。そして何かに気付いたように不思議そうに声をあげた。
「銀さん、どうかしたんですか?」
「いや、なんでお前読めないのかと思ってよォ」
銀時の言葉に新八は少し眉を寄せた。バカにされたとでも思ったのか不服そうに口を開く。
「別に読めなくていいじゃないですか!!僕は日本人なんだから日本語さえ分かればいいんです!!」
口を尖らせて言う新八に銀時はポリポリと頬を掻き違う違うと手を振った。
「いや、そうじゃなくてよ。新八、普通に教科書とか読めるしハリーたちとも話せるじゃん」
銀時の言葉に新八はハッとする。確かにそうである。ハリーたちや教科書は外来語で書かれてあるのに読めたり、しゃべったりできるのだ。
「た、確かにそうですけど……言葉通じないのは色々困りますし、小説のお約束的な感じで大丈夫なんじゃ……あ、あれ?」
そこまで言うと新八は目をパチクリとさせた。
小説のお約束というチート技で外来語が分かるようになっているのなら銀時の持つ本だって読めるはずだ。
しかし、実際には読めなかった。
「銀さん……どういうことですか?」
「さぁな。この本はチート技を受け付けないか……それとも」
銀時はチラッと本を見るとパラパラとページを捲り、全体を見ると閉じてため息をついた。
「それともなんですか?」
銀時の言葉に首を傾げて聞く新八。
銀時はそんな新八を見ると答えることなく立ち上がった。
「え?ぎ、銀さん!?」
「ちょっと確かめてくるわ」
そう一言告げると驚いてる新八を気にせず本片手に寮部屋から出て行った。
「ただいまー」
銀時の言葉に新八は本棚にはたきをかけながらにっこり微笑んだ。
「お帰りなさい、銀さん早いお帰りでしたね…………ってはえぇよ!!まだ出ていって5分もたってないんですけど!!」
新八が叫ぶように言うも銀時は気にした素振りを見せずベッドへとダイブした。そして、ゴロンっと寝返りをうち仰向けになるとチラッと新八を瞳に写し深く溜め息ひとつ。
「オイオイ、新八なにいってんだ?俺は三ヶ月以上かけて調べに行ってたんだぜ。見ろよ、前回は真冬に入る前だったのに今は春間近じゃねぇか。で?ハゲは仕留めたか?」
「いや、銀さん三ヶ月もたってないですから!!確かに更新は三ヶ月以上空きましたけど……ここと外では時間感覚違いますから!!ってか三ヶ月じゃハゲは仕留めれません」
新八のはっきりとした言葉に銀時は眉を寄せ起き上がりガシガシと頭を掻いた。そして、心底面倒くさそうに口を開く。
「マジでか?オイオイふざけんなよ。俺の中じゃ7巻の下巻までいってんだぜ?それがまさかまだ上巻とは……」
「いってねぇよ!!上巻も何もまだ1年生だから!!ってかたった三ヶ月で何言ってるんですか!!」
銀時の言葉を突っ込みながら新八ははたきを振るった。銀時はベッドから身体を起こし座ると人差し指を立てる。
「新ちゃんよォ。よく考えてみろよ。更新までかなり間空いたんだぜ?もう誰もこんな文字の羅列なんて見てないって、これ小説終わらすチャンスだからね?なあなあで完結文書いて間の話はバカには見えない特殊文字で書きましたって言えば騙せるだろ」
「騙せるかァァア!!あんたなんてこと言うんですか!!すいませーん!!読者の皆さんマジすいませーん!!」
新八ははたきを捨てると床に座り画面の向こうにいるであろう読者にペコペコ土下座を開始する。そんな新八をみながら元凶である銀時は反省の色ひとつなく鼻をほじっていた。
しばらくの間、新八が無様に土下座をしているのを見ていた銀時は仕切り直しとばかりにパンパン二回手を打った。
「そろそろ冗談もこれくらいにして本題に移るか」
「え?じ、冗談?」
銀時の言葉が聞こえると新八は土下座をしたまま銀時をじっと見つめた。銀時は新八の目線に応えるよう数回コクコクと頷く。
そして、意地悪げにニタリと口端をあげるときっぱり言った。
「三ヶ月も立ってるからな。クッションないと書けないんだわ。ってことでハリ銀始まるぜ」
銀時は寮から出ると通路をトコトコと歩きだした。
「さて、まずはどこに向かうか」
そう呟くとチラッと手に持った本を見つめる。そして、歩きながらパラパラと本のページをめくる。
「あら、ギントキじゃない。何してるの?」
適当に歩いていると後ろの方から女の声が聞こえた。銀時は声から誰が話しかけてきたのか察して振り返り気味に相手の名前を呼んだ。
「あー、ハーマイオ…………何それ!?」
銀時は少女の名前を呼ぼうとするも相手の状態を見た瞬間目をパチクリさせた。声はハーマイオニーなのだが、見えるのは本、本、ブック、本なのだ。
「えっと、何してるかは俺が聞きたいんだけどってか……え?ハーマイオニーだよね?どこぞのゴリラ女や大暴食娘じゃないよね?」
額に汗を滲ませ思わず確認してしまう銀時。それも仕方ないこと顔を隠すどころか天井に向かって高く高く積み上げられた本をなんなく持ち上げている少女が目の前にいるのだから。
正直、大人の銀時なら持ち上げられるが少年となってしまった銀時では持ち上げるのは不可能だろう。
「何してるって、図書館で本を借りてきたのよ。ちょっと借りすぎちゃったかしら」
本を下ろすことも、重そうに声色を変えることなく平然と話すハーマイオニー。
(いやいや、明らかにちょっとじゃねぇよ!!)
「へ、へぇーそうなんだ。……けどそれ重くないのか?」
銀時は心の中で突っ込みながら口を開いた。するとハーマイオニーからクスクスと笑い声が聞こえた。
「ギントキってばハロウィーンのとき私とハリーとロンでトロールを倒したのは覚えてるでしょ?」
ハーマイオニーの言葉に銀時はある呪文を思い出す。
確か【ウィンガーディアム レビオーサ】という呪文。魔法の効果はその魔法をかけた対象を浮かび上がらせるもの。
(なるほどな。魔法で本を浮かび上がらせてるわけか)
銀時は納得したように心の中でうんうん頷く。しかし、次のハーマイオニーの言葉を聞き一瞬思考を停止させた。
「あの時のトロールの棍棒振り回してたらいつの間にか力ついてたのよね」
にっこり笑顔で言うハーマイオニー。銀時はハーマイオニーの言葉が理解出来ずに目をパチクリ。
(あれ?今、なんか目の前のお嬢さん可笑しなこと言わなかった?トロールの棍棒振り回してたとか……いやいや、聞き間違いだよね?うん。ないない。ハーマイオニーは一応ヒロインの位置にいるんだしないない。うん、ないない)
銀時はブンブン首を振り続けた。そんな銀時をハーマイオニーはしばらく不思議そうに首を傾げて見つめていた。
これにて移転完了です。
明日からはワンピースと銀魂のクロス小説を移転させます。
気になった方はチラ見してくれると嬉しいです。