さて、杖を買った次の日……銀時たちはロンドンにあるキングズ・クロス駅に来ていた。
「なんかすげぇ広い駅だな」
「ターミナルみたいでさァ」
銀時が駅を見上げて言うと沖田も頷くように呟いた。
「これからどこ行くアルか?」
「神楽ちゃん。これから僕たちは列車って乗り物に乗って学校に行くんだよ」
神楽の問いに新八が答えた。すると今度はエリザベス(杖)に頬擦りしながら桂が聞いてきた。
「ふむ。しかし……この九と四分の三番線とは一体どこに」
「さぁ?けどハリー君と土方さんが駅員さんに聞きに行ってくれてるんですぐに分かりますよ」
「何!?いつの間に!!」
「あんたがエリザベスエリザベスうるさい時にだよッ!!」
桂の言葉に若干突っ込み混じりで新八が答えていると駅員に聞きに行っていたハリーと土方が戻ってきた。
「あっ、ハリー君に土方さん!!どうですか?分かりましたか?」
新八は二人にかけって行くと聞いた。二人は顔を見合わせると罰悪そうに首を振った。
「そうですか」
新八は残念そうに肩を落とした。すると新八の両脇から二人の人物が現れた。ドSコンビ銀時と沖田だ。
「オイオイ、ハリーはいいとして土方君それでも税金泥棒?」
「本当でさァ。マジ使えねぇな。土方コノヤロー」
二人は腕を組んだまま使えない使えないと土方を責めていく。流石に土方も二人に言われるのは我慢がならないのだろうキッとキツく睨み付けた。
「うるせぇよ。このドSコンビが!!文句あるなら自分たちで聞きにいきやがれ」
土方の言葉に沖田は馬鹿にしたような顔で再度罵ろうとすると銀時が手でせいした。
「仕方ねぇなァ……もうあまり時間もねぇことだし、俺らが聞いてきてやるよ。ほら、行くぞ沖田くん」
「へい、旦那に付いて行きまさァ」
沖田はきっぱり言うと銀時に懐いているせいか素直についてきた。
さて、こちらはごく平凡なたくさんの駅員の中の1人の男である。
男はこのキングズ・クロス駅に勤めてもう何十年になるベテラン駅員だ。
「今日も平和だな」
男はプラットホームに突っ立っていた。男の仕事は列車の運転と客への案内。
とても平凡なお仕事である。しかし、今日はいつもと違った。ことの始まりは眼鏡を掛けた黒髪の少年と瞳孔の開いた少年が聞いてきた言葉である。
その二人の少年は不思議なことを言っていた。
ホグワーツやら九と四分の三番線などと、もちろん男は二人はいい加減なことを言っているのだと思った。だってそのような場所聞いたことがないし、この駅には九と四分の三番線なんてみょうちくりんなものは存在しないのだ。
男は二人を追い返した。
自分は今仕事中で子供の冗談に構っている時間なんてないのだ。
男が二人を追い返して暫くするとまた二人の子供がやってきた。
一人は銀髪に赤い瞳をした子、もう一人は栗色の髪にぱっちりとした目の子だ。銀髪の子の死んだ魚のような目を除けば二人とも可愛らしい顔立ちをしていた。
「あのよォ、ちょっといいか?聞きたいことがあるんだけど」
銀髪の子が此方を見上げて聞いてきた。男は少し体を屈ませ二人の子供に目線を合わせた。
「坊やたち、なんだい?」
「いや、九と四分の三番線ってのはどこにあるのか知りてぇんだけど」
男は目をぱちくりとさせた。先ほど来た子供と同じことを聞いてきたのだ。もしかしたら子供たちの間でそういう冗談が流行ってるのかもしれない。
「あのねぇ、坊やたち!!」
男は少し声を上げてた、どうやら二人に注意をしようとしているようだ。しかし栗色の髪の少年の言葉に男は口を閉じた。
「知らなかったり、嘘ついたら仕事が出来てないってことで四分の三殺しですぜィ」
「沖田くん……それほとんど死んでねぇ?」
栗色の髪の少年の言葉に呆れたように銀髪の少年が言ったが止める気は無さそうだ。
男は無意識にゴクリと唾を飲み込む。そして、口を開いた。
「そんなものは知らッ!!」
男がはっきり言おうとすると突然ゾクリッといいようのない寒気が走ったのを感じた。人間というものは生存本能が強い。そのため、危険が迫ると時々何かを感じることがあるようだ。こういうのを虫の知らせというのだが、それを今男は感じているようだ。
(こ、子供なのになんて威圧感……知らないなんて言ったらヤバい)
男の額に冷や汗が一滴流れた。
暫く沈黙が走る。その沈黙を破ったのは黒髪で眼鏡を掛けて地味なオーラを漂わせた少年だった。
「銀さん、沖田さん!!見つけました。神楽ちゃんが見つけたようです」
「おっ、そうなのか?」
眼鏡の少年に言われて銀髪の少年がやってきた道へと戻ろうとする。すると栗色の髪の少年も銀髪の少年について行こうとした。
男はホッとした威圧感が無くなったのだ。しかし、少年が立ち去る前に何やら囁きが聞こえた。
栗色の髪の少年が男に何かを囁いたのだ。
男はその囁きを聞いた瞬間青ざめた。そして即座に事務所に戻ると上司に退職願いを出す。
男の上司は聞いた。突然退職願いを出すなんて有り得ないからだ。しかし、肝心の男は悪魔だ。悪魔がァァア!!っと叫ぶばかり。
上司はそんな男に首を傾げる。
この事件の後、キングズ・クロス駅では九番線と十番線の間に悪魔が現れ身の毛のよだつ恐ろしいことを囁き去っていくと駅員たちの中で暫くの間恐れられていた。
新八に連れられて戻ってみるとそこには神楽たちは居らず、代わりにいたのはふっくらしたおばさんと赤毛の女の子。
「あら、坊や。お友達は見つかったのね」
おばさんが新八に話しかけた。すると新八はコクンっと頷き口を開いた。
「えぇ。あの……神楽ちゃんたちは?」
「あぁ、お嬢ちゃんたちなら先に九と四分の三番線に言ったわよ」
おばさんはそう言いながら改札口の柵を指差した。
銀時と沖田はその柵を見て首を傾げるが、新八は納得したようにコクコクと頷く。
「そうですか。じゃあ、銀さん、沖田さん行きましょうか」
新八はそう言うと何の説明も無しに改札口の柵に走っていった。そして急に消えた。
「エェェ!!消えた、ってか説明していけやァァァアア!!」
「旦那。どうするんですかィ」
何の説明もなく消えた新八。そして、残された銀時に沖田は途方にくれた。するとおばさんが話しかけてきた。
「坊やたち、心配しなくていいのよ。九番と十番の間の柵に向かってまっすぐ歩けばいいの。立ち止まったら駄目よ、怖かったら少し走るといいわ」
おばさんの言葉に銀時と沖田は顔を見合わせた。すると沖田は前に出て銀時を見て言った。
「じゃあ、旦那お先に失礼しやす」
沖田はそう言うと柵に向かって行き、消えた。
残された銀時は柵をじっと見つめた、意外と頑丈そうである。
銀時は九番線と十番線の間にある柵へと向かって走った。柵は当然グングンと近付いてくる。
今にもぶつかりそうではある。しかし……スーッ……どうやら柵にぶつからなくて済んだらしい。
銀時は柵を越えてあるホームへときていた。近くに「9と3/4」と書かれた鉄のアーチが見えた。
プラットホームには紅色の蒸気機関車が停車していた。
「銀ちゃん!!」
銀時が辺りを見ていると近くで自分を呼ぶ声がした。銀時は声のした方を見るとそこには神楽たちがいた。
銀時はスタスタと歩いていく。
「じゃあこれで全員揃ったし行きましょうか」
新八が言うと銀時たちは機関車へと歩いていった。
先頭のニ、三両はもう生徒でいっぱいだった。窓から身を乗り出して家族と話したり、席の取り合いでけんかをしたりしていた。銀時たちは空いた席を探して、歩いていく。一つだけ空いてるところを見つけた。しかし、4人しか座れないようだ。
「仕方ねぇなァ。4人と3人で別れるか」
「私、銀ちゃんと一緒が良いネ」
「チャイナ、旦那は俺と一緒でさァ」
銀時が言うと神楽が銀時の腕に飛び付いた。すると沖田も銀時の腕を持ち引っ張った。
「銀時ィ、もちろん俺と一緒だよな」
「あ、あの……僕もギントキと一緒がいいな」
桂が言うとハリーもおずおずと手をあげた。すると、土方が口を開く。
「じゃあ、公平にジャンケンで別れればいいんじゃねぇか」
土方が言うと7人は恨みっ子無しのジャンケンをした。
「銀時ィ!!まさか、こんな所で別れるとは……」
「旦那。まさかのさようならですかィ」
「銀ちゃん……別れるなんて悲しいアル」
「いや、あんたら……大袈裟だから」
3人はしょんぼりとしながら最後の別れのように言った。それを呆れたように突っ込む新八。
「じゃあ、新八。あとは頼んだぞ」
「はい!!銀さん、土方さん、ハリーくん。また後で」
銀時たちは新八に別れを告げるとまた歩いて席を探し出した。
そして、やっと最後尾の車両近くに空いているコンパートメントの席を見つけた。銀時たちはコンパートメントの戸を開けると中に入った。ハリーはヘドウィグを先に入れた、そして重いトランクを入れようと見たが見当たらない。ハリーはキョロキョロと辺りを見渡すと銀時と土方が言い合いをしながら客室の隅にトランクを収めていた。
「あっ、ギントキ、ヒジカタ。ありがとう」
ハリーは嬉しそうににっこりと微笑んだ。そして、ギントキの隣へと座る。
「「別に……」」
銀時と土方は同時に照れくさそうに言った。
さて、読者の皆さんは不思議に思っているだろう。
二人は確かに優しいが、ここまで分かりやすい親切はしないと……そう、それは正解である。
実は銀時と土方はあることが原因で力比べをし始めた。そして結果的にハリーのトランクを持ち上げ客室の隅に入れたのだ。
さて、そうこうしているうちに汽車が動き出したようだ。窓の外の景色が流れるように見える。
汽車が動き出してすぐ、あまり時間をおかずにコンパートメントの戸が開いて赤毛の男の子が入ってきた。
「ここ、まだ空いてる?」
ハリーの向かい側、土方の隣を指差して尋ねた。
3人はチラッと赤毛の子を見ると頷いた。男の子は嬉しそうに席に腰をかける。
「おい、ロン」
コンパートメントの戸を開けて、赤毛の双子男が現れた。
「なぁ、俺たち真ん中の車両あたりまで行くぜ……リー・ジョーダンがでっかいタランチュラを持ってるんだ」
「分かった」
ロンと言われた男の子がモゴモゴと言った。
すると双子の一人が何かに気づいたようにハリーをじっと見つめる。
「驚いたな。君はハリー・ポッターかい?」
双子の一人が言うともう一人の双子とロンはハリーを見つめた。
「え?あっ……うん。僕はハリー・ポッターだ」
ハリーがコクンっと頷くと双子とロンはじっとハリーを見つめる。
「何?ハリーの知り合いか?」
銀時がその様子を見ながら聞くとハリーは首を振った。
すると双子の一人が罰悪そうに頭を書いた。
「いや、ごめんごめん。僕たち、フレッドとジョージ・ウィーズリーだ。こいつは弟のロン。君たちは?」
「あっ……ご丁寧にこっちがギントキで、そっちヒジカタ。そして僕がハリーだよ」
「どーも、ギントキです。よろしく頼むわ」
双子の一人がいうとハリーが紹介した。銀時は挨拶をし、土方は軽く会釈をした。
「そっか、よろしく。っと僕たちはそろそろ行くな」
双子の一人が言うとコンパートメントの戸を閉めて去っていった。
そのあと、ロンを交えて4人は色々と話した。
話しているうちに汽車はロンドンを後にして、スピードを上げ牛や羊のいるそばを走り抜けていった。