十二時半ごろ、通路でガチャガチャと大きな音がし始めた。そしてそのあとすぐに、えくぼのおばさんがニコニコ顔で戸を開けた。
「車内販売よ。何かいりませんか?」
お腹の空いていた3人は勢い良く立ち上がったが、ロンはサンドイッチを持ってきたからと口ごもった。
ハリーはえくぼのおばさんを見るときっぱりと言った。
「ぜーんぶちょうだい」
「あっ、じゃあ俺も」
ハリーが言うと銀時も便乗したように言った。すると土方が銀時を止めるように口を開いた。
「おい、万事屋。そんなに買っていいのか?」
「あ?どうせジジイの金だし、いいんじゃねぇ?」
土方の言葉に銀時はきっぱりと言った。
そして、土方は手を上げてきっぱりとおばさんに向かって言う。
「それもそうだな。すいませーん、マヨネーズかマヨネーズ味の菓子あったらくださーい」
ロンは銀時たちが両腕いっぱいの食べ物を持っている様子を目をまん丸くして眺めていた。
「そ、そんなにお腹空いてるの」
「ペコペコだよ」
ハリーがきっぱり言うと銀時も大鍋ケーキを頬張りながら言った。
「ロン。お前も食え食え」
銀時が言うとロンはハリーと土方を見た、2人とも食べながらも銀時の言葉に頷いている。
ロンは土方の食べている黄色い物に驚きながら嬉しそうにかぼちゃパイに手をかけた。
しばらく黙々と食べるのに夢中になっているとハリーが声をあげた。
「これなんだい?」
「ん?それは蛙チョコレートだよ」
ロンの言葉を聞きハリーの横から包みを見ると銀時の目はキラキラと光った。
「マジでか?チョコレートじゃねぇか。銀さんも食う」
銀時は蛙チョコレートをお菓子の山から取ると喜々として包みを開け始めた。
「あっ、逃げられないように気をつけて」
そんな銀時を見ながらロンは言うも遅かった。開けた瞬間蛙はピョンピョンと飛んでいく。
「ちょ……なんでチョコが動いてんだよ!!」
銀時は慌ててチョコ蛙を追いかける。なんとか窓のガラスでチョコ蛙を銀時は捕まえた。
チョコ蛙はジタバタと動いて銀時から逃れようとする。
「これ……本当にチョコか?」
銀時は怪しげに蛙チョコを見ながら呟いた。確かに匂いはチョコレートなのだが、普通の茶色い蛙に見える。
「大丈夫。とっても美味しいチョコだよ」
ロンに言われると銀時はじっとチョコ蛙を見つめ食べようと口を開けた。
するとその時コンパートメントの戸が開いてある人物が入ってきた。
「銀ちゃん……ヒキガエル見なかっ……ぎ、ぎ、銀ちゃんが蛙食べてるゥゥゥウ!!」
入ってきたのは神楽だった。どうやら神楽はネビルとかいう少年が逃がしたヒキガエルを探している途中だったらしい。
神楽はコンパートメントの戸をあけたまま大きな声で叫んだ。汽車内にはその声が響きわたり、これで生徒全員に銀ちゃんという人物が蛙を食べていたことが伝えられた。
「え?ちょ……神楽お前なんつー誤解して」
銀時は慌てて誤解を解こうとするもドタバタと近付いてくる足跡に気がついた。
そして暫くすると神楽の隣から丸顔で半泣きの男の子が顔出した。
「ト、トレバー……き、君……僕のトレバーを食べちゃったの?」
男の子は今にも泣きそうな声を出し、銀時を見つめた。すると土方に神楽、そしてハリーまでもが銀時を疑いの眼差しで見つめ始める。
「いや、トレバーが何か分からないけど食べてねぇよ」
「トレバーはヒキガエルアル」
銀時が言うと神楽がボソッと呟いた。その言葉を聞いて銀時は目を見開かせた。
「ヒキガエルなんて食うかァァア!!ってか何お前らその目!!どんだけ疑ってんのォォオ」
銀時が叫ぶと神楽とハリーは声を揃えて言った。
「「いや、ギントキ(銀ちゃん)なら食べてそう(ネ)」」
「お前ら俺にどんなイメージ持ってんだァァア!!」
「ヒキガエル食べる貧乏人のイメージだろ」
2人の言葉に銀時が何度目か叫ぶと土方が嫌みたらしく言った。銀時はもちろん反応して振り向いた。
「あ?土方くんってば何言ってんの?あー、そうか……友達いない土方くんは銀さんに構って欲しいんだ」
銀時はニタニタ笑いながら土方を馬鹿にしたように言う。土方の眉がピクピクと動き出す。すると銀時は両手を上げて芝居かかったように話し出す。
「あー、けど……無理だわ。構ってやってもいいけど……銀さん今から誤解解くためヒキガエル捕獲しなきゃならねぇもん。あっ、もちろん手伝わなくていいんだぜ。土方くんトロいからヒキガエルなんて捕まえられないだろうし」
銀時はプププッと片手を口に当て笑いながら歩き出した。
「おい、待ちやがれ!!万事屋」
土方はキッと銀時を睨みつけて止めた。
銀時は鬱陶しげに土方を見た。
「テメェはここで待ってやがれ。注意力のないテメェなんかにヒキガエルは捕まえられねぇだろ」
「は?オイオイ、俺の注意力半端ないから!!土方くんとは格がちげぇよ」
「あ?格が違うだ?あー、そうだよな。テメェの方が下だもんな」
土方の言葉に銀時が返し、銀時の言葉に土方が返す。だんだんと言い合いが激しくなっていく。
「よし、分かった。そこまで言うならどっちが先にヒキガエルを捕まえるか勝負しようじゃねぇか」
「上等だゴラ」
「「ヒキガエル狩りじゃァァァァアア!!」」
銀時が言うと土方は頷いた。そして2人して、叫び声を上げながら走っていた。
コンパートメントに残された者は過ぎ去った嵐に呆然としていた。
銀時と土方が去って暫くすると神楽は大量の食べ物に気がつき食べ始めた。どうやらハリーたちと共に居る気らしい。
とりあえず自己紹介をして食べながら話していると、神楽はロンの膝の上で眠り続けている生き物を見つけた。
「それ……何アルか?」
「え?これは僕の使い魔スキャバーズだよ」
ロンは神楽の問いに答えて自分の膝で寝ているねずみを持ち上げた。ねずみは持ち上げられてもグーグーと寝ている。
「コイツあまり起きないんだよ、死んでたってきっと見分けがつかないよ」
ロンはため息混じりに言い出した。
「きのう、少しはおもしろくしてやろうと思って、黄色に変えようとしたんだ」
「黄色って……ペンキで染めるアルか?」
「いや、この場合魔法じゃないかな?」
神楽の言葉にハリーが反応して言った。眼鏡のせいか突っ込みになりそうである。そんな二人の様子にロンはゴホンっと咳払いをした。
「まぁ、呪文効かなかったんだけどね。やって見せようかーー見てて……」
ロンはトランクをガサゴソ引っ掻き回して、くたびれたような杖を取り出した。あちこちボロボロと欠けていて、端からなにやら白いキラキラするものがのぞいている。
「ユニコーンのたてがみがはみ出してるけど。まぁ、いいか……」
杖を振り上げたとたん、コンパートメントの戸が開いた。一瞬銀時と土方が帰ってきたのかと思ったが、違うようだ。
その場に居たのは新調のホグワーツ・ローブに着替えた女の子だった。
「誰かヒキガエルを……ってあら、カグラこんなところに居たの?」
栗色の髪がフサフサして、前歯がちょっと大きい女の子は神楽を見つけると言った。
どうやらヒキガエル捜索の時知り合いになったようだ。
「あっ、ハーマイオニーネ。ヒキガエル見つかったアルか?」
ハーマイオニーと呼ばれた女の子は首を振る。そしてロンが杖を持っていることに気付くと興味深そうに言った。
「あら、魔法をかけるの?それじゃ、見せてもらうわ」
ハーマイオニーはそう言うと神楽の隣に座った。
ロンはそれを見ると少したじろぎ咳払いをする。
「お陽さま、雛菊、とろけたバター。デブで間抜けなねずみを黄色に変えよ」
ロンは杖を振った。しかし、何も起こらない。スキャバーズは相変わらずねずみ色で眠っている。
「その呪文、間違ってないの?」
ハーマイオニーが言った。
「まぁ、あんまりうまくいかなかったわね。私も練習のつもりで簡単な呪文を試してみたことがあるけど、みんなうまくいったわ。私の家族に魔法族は誰もいないの。だから、手紙をもらった時驚いたわ。でももちろんうれしかった……だって、最高の魔法学校だって聞いているもの。教科書はもちろん全部暗記したわ。それだけで足りるといいんだけど……私、ハーマイオニー・グレンジャー。あなた方は……カグラの友達かしら」
ハーマイオニーは一気に言うとハリーとロンの顔を見た。二人はコクンっと頷く。
「僕、ロン・ウィーズリー」
「ハリー・ポッター」
「ほんとに?私、もちろんあなたのこと全部知ってるわ。参考書を二、三冊読んだの。あなたのこと『近代魔法史』『闇の魔術の興亡』『二十世紀の魔法大事件』なんかに出てるわ」
「僕が?」
「ハリー、有名人だったアルか?」
ハリーと神楽は目をパチクリさせた。
「まぁ、知らなかったの?そういえば三人とも、どの寮に入るかわかってる?私、いろんな人に聞いて調べたけどグリフィンドールに入りたいわ。絶対一番いいみたい。っと私はもう行くわ。そろそろ着くみたいだからローブに着替えたほうがいいわよ」
ハーマイオニーは自分の言いたいことだけ言うとスタスタと戸を開けて出て行った。ある意味嵐のような子である。
「ハリー、ロン。私も着替えに戻るアル。じゃあ、また後でな」
「あっ。うん」
「後で」
神楽もローブを着替えに出て行った。ハリーとロンは顔を見合わせるとため息をつく。
「どの寮でもいいけど、ハーマイオニーのいないところがいいな」
ロンは杖をトランクに収めながら呟いた。そんなロンを見ながらハリーは苦笑いを浮かべた。
暫くハリーとロンが話をしていると、またコンパートメントの戸が開いた。
二人は今度こそ銀時と土方が戻ってきたのかと思ったのだが、違った。
男の子が三人入ってきたのだ。ハリーは真ん中の一人が誰であるか一目でわかった。あのマダム・マルキン洋装店にいた、青白い子だ。ダイアゴン横丁の時よりずっと強い関心を示してハリーを見ている。
「ほんとかい?このコンパートメントにハリー・ポッターがいるって、汽車の中じゃその話で持ち切りなんだけど。それじゃ、君なのか?」
「そうだよ」
ハリーが答えた。そして青白い子の両隣にいる二人に目をやった。二人ともガッチリとして、この上なく意地悪そうだった。
青白い男の子の両脇に立っていると、ボディガードのようだ。
「ああ、こいつはクラッブでこっちがゴイルさ」
ハリーの視線に気づいた青白い子が無造作に言った。
「そして、僕がマルフォイだ。ドラコ・マルフォイ」
ロンは、クスクス笑いをごまかすかのように軽く咳払いをした。ドラコ・マルフォイが目ざとくそれを見咎めた。
「僕の名前が変だとでも言うのかい?君が誰だか聞く必要もないね。パパが言ってたよ。ウィーズリー家はみんな赤毛でそばかすで育てきれないほどたくさん子供がいるってね」
それからハリーに向かって言った。
「ポッター君。そのうち家柄のいい魔法族とそうでないのとがわかってくるよ。間違ったのとは付き合わないことだね。そのへんは僕が教えてあげよう」
男の子はハリーに手を差し出して握手を求めたが、ハリーは応じなかった。
「間違ったのかどうかを見分けるのは自分でもできると思うよ。どうもご親切さま」
ハリーは冷たい口調で言った。ドラコ・マルフォイは真っ赤にはならなかったが、青白い頬にピンク色がさした。
「ポッター君。僕ならもう少し気をつけるがね。もう少し礼儀を心得ないと君の両親と同じ道をたどることになるぞ。ウィーズリー家やハグリッドみたいな下等連中と一緒にいると君も同類になるだろうよ」
ハリーとロンが立ち上がった。そしてドラコを睨みつける。しかし、三人の後ろの戸が開いたことに気づき視線をドラコの後ろに移した。
「ったくよォ、ローブを着てこいとか……怖い姉ちゃんだわ。もう少しで俺がヒキガエル見つける所だったのによォ」
「いやいや、万事屋何言ってんだ。俺が先に見つけるに決まってんだろ」
「いやいやいや、土方くんこそ何言ってんの?銀さんに決まっ……」
どうやら銀時と土方が帰って来たようだ。どうやら話からよるとハーマイオニーにそろそろ着くからローブを着替えてこいと言われたらしい。
銀時はコンパートメントの戸を開けて眉を寄せた。三人の男の子が突っ立っていたので中に入れないのだ。
「おーい、お前ら……ちょっとどけてくれねぇ?」
銀時が三人に言うと青白い子が後ろを振り向いた。
「なんだ?君たち……どこの者か知らないが僕たちは今取り込み中だよ。そんなことも分からないなんて下等な連中の友達は下等って奴だね」
ドラコは二人もハリーと友達だろうと判断して言った。すると両隣にいるクラッブとゴイルも銀時と土方を馬鹿にするよう笑い出した。
銀時と土方の額に青筋が浮かぶ。
「もう一ぺん言ってみろ」
ロンがドラコを再度睨みつけた。ドラコはその様子を見ると再度馬鹿にするように言った。
「なんだ?一回じゃ分からなかったのか?記憶力も乏しいなんて良いところないんだな」
ドラコが言うとガシッと肩を掴まれた。銀時が掴んだのだ。
「あぁ、そうだな。銀さん記憶力ないからもう一度言ってみろや」
ギシギシと掴まれたドラコの肩がなる。クラッブとゴイルはドラコを守ろうと銀時に向かって行こうとした。銀時は迎え撃つためにドラコから手を離した。
これからケンカが始まるのかと思いきや、騒ぎを聞きつけたのか此方に向かってくる足音に気付いたドラコは舌打ちするとコンパートメントの中にいるハリーとロン、そして外にいる銀時と土方を睨みつけ足早に去って行った。