ハリーと侍と賢者の石   作:近衛陸

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第9訓 いざ城の中へ

 

銀時と土方はコンパートメントに入ると足音の人物を待った。しかし、こちらに来る前に他のコンパートメントに入ったようだ。

 

「あー、着替えようぜ。着くみたいだしよォ」

 

銀時が窓を見ながら言った。ハリーが窓をのぞくと、外は暗くなっていた。深い紫色の空の下に山や森が見えた。汽車はたしかに徐々に速度を落としているようだ。

四人は荷物から黒い長いローブを取り出して着た。ロンのはちょっと短すぎて、下からスニーカーがのぞいている。

 

車内に響き渡る声が聞こえた。

 

「あと五分でホグワーツに到着します。荷物は別に学校に届けますので、車内に置いていってください」

 

ハリーは緊張で胃がひっくり返りそうだったし、ロンはそばかすだらけの顔が青白く見え、銀時と土方はヒキガエル……と呟き探しに行こうとするも通路にあふれる人の群れに諦めた。

 

汽車はますます速度を落とし、完全に停車した。押し合いへし合いしながら列車の戸を開けて外に出ると小さな暗いプラットホームだった。夜の冷たい空気が肌寒さを感じさせる。

やがて生徒たちの頭上にゆらゆらとランプが近づいてきて、ハリーの耳に懐かしい声が聞こえた。

 

「イッチ年生!!イッチ年生はこっち!!」

 

ハグリッドの大きな髭面がずらりと揃った生徒の頭のむこうに見える。

 

「さぁ、ついてこいよーーあとイッチ年生はいないかな?足元に気をつけろ!!いいか!!イッチ年生、ついてこいよ!!」

 

 

滑ったり、つまずいたりしながら、険しくて狭い小道をみんなはハグリッドに続いて降りていった。右も左も真っ暗だったので木が鬱蒼と生い茂っている道であろう。

 

「みんな、ホグワーツがまもなく見えるぞ」

 

ハグリッドが振り返りながら言った。

 

「この角を曲がったらだ」

 

『うぉーーっ!!』

 

一斉に声が湧き起こった。狭い道が急に開け、大きな黒い湖のほとりに出た。むこう岸に高い山がそびえ、そのてっぺんに壮大な城が見えた。大小さまざまな塔が立ち並び、キラキラと輝く窓が星空に浮かび上がっていた。

 

「四人ずつボートに乗って!!」

 

ハグリッドは岸辺につながれた小船を指差した。ハリーとロンと銀時と土方が乗った。

 

「みんな乗ったか?」

 

ハグリッドが大きな声を出した。ちなみにハグリッドは一人でボートに乗っている。

 

「よーし、では進めぇ!!」

 

ハグリッドが言うとボート船団は一斉に動き出し、鏡のような湖面を滑るように進んだ。みんな黙ってそびえ立つ巨大な城を見上げ……

 

「ふっはははは!!」

 

一人の馬鹿が騒いでるようです。ボートの上に立ち一人の男の子がこちらに手を振っていた。

 

「ふっはははは、ギントキィィイ!!久方振りの再会だ」

 

「ちょ、桂さん恥ずかしいから止めて下さい!!」

 

桂が騒ぎ、新八がそれを抑えようとしているようだ。珍しく神楽と沖田は城を見上げ大人しくしている。

 

「頭、下げぇー!!」

 

ちょうど桂が騒いでる時、ハグリッドが掛け声を上げた。桂を除いて皆は一斉に頭を下げる。

桂は間に合わず頭上の蔦に顔をぶつけて倒れた。

そんな様子を見ていたロンは目をパチクリした。

 

「ひゃぁっ、ギントキの知り合い?」

 

「いや、知らねー」

 

ロンの問いかけに銀時は無表情で言った。ロンは相手が銀時の名前を呼んでいたことについて聞こうと思うもやめた。なんか聞いてはいけないように感じたからだ。

 

そうこうしているうちに船は城の真下……地下の船着き場に到着した。

 

全員が岩と小石の上に降り立った。

生徒たちはハグリッドのランプの後に従ってゴツゴツした岩の路を登り、湿った滑らかな草むらの城影の中にたどり着いた。皆は石段を登り、巨大な樫の木の扉の前に集まった。

 

「みんな、いるか?」

 

ハグリッドは大きな握り拳を振り上げ、城の扉を三回叩いた。

 

 

 

 

 

扉がパッと開いて、エメラルド色のローブを着た背の高い黒髪の魔女が現れた。とても厳格な顔つきをしている。この人には逆らってはいけないとハリーは直感した。

 

「マクゴナガル教授、イッチ年生の皆さんです」

 

ハグリッドが報告した。

 

「ご苦労様、ハグリッド。ここからは私が預かりましょう」

 

マクゴナガル先生は扉を大きく開けた。玄関ホールはダーズリーの家がまるまる入りそうなほど広かった。石壁がグリンゴッツと同じように松明の炎に照らされ、天井はどこまで続くかわからないほど高い。壮大な大理石の階段が正面から上へと続いている。

マクゴナガル先生について生徒たちは石畳のホールを横切っていった。入り口の右手の方から、何百人ものざわめきが聞こえたーー学校中がもうそこに集まっているに違いない。しかし、マクゴナガル先生はホールの脇にある小さな空き部屋に一年生を案内した。

 

「ホグワーツ入学おめでとう。新入生の歓迎会がまもなく始まりますが、大広間の席につく前に皆さんが入る寮を決めなくてはなりません。

寮の組み分けはとても大事な儀式です。ホグワーツにいる間、寮生が学校での皆さんの家族のようなものです。教室でも寮生と一緒に勉強し、寝るのも寮、自由時間は寮の談話室で過ごすことになります。寮は四つあります。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンです。それぞれ輝かしい歴史があって、偉大な魔女や魔法使いが卒業しました。ホグワーツにいる間、皆さんのよい行いは自分の属する寮の得点になりますし、反対に規則に違反した時は寮の減点になります。学年末には、最高得点の寮に大変名誉ある寮杯が与えられます。

どの寮に入るにしても、皆さん一人一人が寮にとって誇りとなるように望みます……まもなく全校列席の前で組み分けの儀式が始まります。学校側の準備ができたら戻ってきますから、静かに待っていてください」

 

マクゴナガルは長い長い挨拶を終えると部屋から出て行った。

 

マクゴナガル先生が出て行ってすぐに突然不思議なことが起こった。ハリーは驚いて三十センチも宙に跳び上がってしまったし、ハリーの後ろにいた生徒たちは悲鳴をあげた。

 

「いったい……?」

 

「あー、なんだよ。うるさッ!?」

 

「万事屋どうかしッ!?」

 

ハリーは息を呑み、銀時と土方は身体を固まらした。

後ろの壁からゴーストが二十人ぐらい現れたのだ。

 

真珠のように白く、少し透き通っている。みんな一年生の方にはほとんど見向きもせず、互いに話をしながらスルスルと部屋を横切って行った。

しかし、最後のゴーストの一人が急に一年生たちに気づいたらしい。何故か銀時たちの方にやってくる。

 

「新入生かな?……君たち二人は毛色が違うようだが」

 

銀時と土方を見ながら話しかけてくるゴースト。どうやらゴーストには異世界者だと分かるようである。

 

「おい、土方くん。話しかけられた……」

 

「知らん!!俺は何も知らん!!」

 

銀時は口の端をひくつかせ、土方は両耳を塞ぎ知らない知らないと言い続ける。

ゴーストは二人と話せないと分かるとまた後でと言い壁の向こうに消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、行きますよ」

 

ゴーストが去ってすぐに突然部屋に厳しい声が響いた。

 

「組分け儀式がまもなく始まります」

 

マクゴナガル先生が戻ってきたのだ。

マクゴナガル先生は生徒たちを見渡す。そしてゴホンと咳払いをすると手をパンパンと叩いた。

 

「さぁ、一列になってついてきて下さい」

 

マクゴナガル先生が言うと生徒たちは一列になってついて行く。

ハリーは黄土色の髪の少年の後ろに並び、ハリーの後にはロンが続いた。その後ろをゴーストにビビった銀時と土方が歩いた。ハリーはチラッと後ろを見るとマクゴナガル先生に聞こえないように小さな声で聞いた。

 

「ギントキ、ヒジカタ大丈夫?」

 

ハリーの言葉を聞いた銀時と土方は挙動不審に動きだす。

 

「え?大丈夫?え?何が大丈夫?銀さん意味分かんないんだけど」

 

「そ、そうだな。大丈夫ってほんと何?って感じだ」

 

明らかに大丈夫じゃなさげな二人を見るとハリーはため息をつき、しばらくほっとくことにした。

 

一年生は部屋を出て再び玄関ホールに戻り、そこから二重扉を通って大広間に入った。

そこには、ハリーが夢にも見たことのない、不思議ですばらしい光景が広がっていた。何千というろうそくが空中に浮かび、四つの長テーブルを照らしていた。テーブルには上級生たちが着席し、キラキラ輝く金色のお皿とゴブレットが置いてあった。

 

広間の上座にはもう一つ長テーブルがあって、先生方が座っていた。マクゴナガル先生は上座のテーブルのところまで一年生を引率し、上級生の方に顔を向け、先生方に背を向けるかっこうで一列に並ばせた。一年生を見つめる何百という顔がみえる。

 

マクゴナガル先生が一年生の前に四本足のスツールを置いた。その椅子の上には魔法使いのかぶるとんがり帽子が置かれている。その帽子はつぎはぎのボロボロでとても汚らしかった。しばらく帽子を見ていると帽子がピクピクと動いた。ハリーは目をまんまるくして見る。ハリーの後ろで銀時と土方が帽子を見てビクッと動いたのを感じた。

 

帽子はつばのへりの破れ目が、まるで口のように開いて、突然歌を歌い出した。

 

 

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