四冠(半端者)魔導師 作:息抜き
白の精霊が舞う暦を誰かが冬と言った
忽ちそれは冬と呼ばれ
それは一定周期でやってくることがわかった
『冬』と名付けられたことで明確となり
便利になった
「っグシ」
あれから早2週間が経った
冬の寒空の下
こうして冬の山奥で『瞑想』に
耽ることができるのも
魔導も本来長い詠唱を必要とするものだが
名前を呼べば発動することができるのも
名付けのおかげと言えよう
しかし寒いな
炎症が治り
大事を持って魔導は控えていたが
もう問題はないだろう
「さてさて、久々の魔導だ
何から唱えるべきか」
組んでいた足を解き、背伸びをする
立ち上がると同時に《ドサドサ》と
座っていた枝の傍を白い塊が落ちていった
僅かに残っていた頭に乗っている物を
はたき落とすと落ちていくものと
登っていくものに分かれた
登っていくのは白い精霊だ
踊りを踊るが如く空へと舞い上がっていく
白い精霊を見送る
視界に入る雲が黒みがかっているのが
やや不安だ
ここは蒼系統から鍛えることにしよう
緋系統との成長の差も気になるところだしな
「【ブルーボール】」
突き出した腕、手のひらを上に向け
蒼系統の初級を念じる
すると何もない空間に点が生じると
それは徐々に大きくなり球状を作り出し
魔力を供給している間
ひらの上を浮遊していた
「ふむ、初級でも"ちと"キツイな」
魔力線を繋げただけなのは仕方ないが
やはり魔導は引き継がれておらん様だ
【スケールシフト】はいよいよを持って
失敗だったと言わざるを得ない
あまりある知識もこれでは無用の長物だな
とはいえ、とはいえーとはいえ
初級だからと疎かにすることは
あってはならない
魔導の研鑽は1日にしてならず
地道にでも唱え続けることは大事である
修行を続ければいずれ、真髄の魔導さえ
この身で発動できよう
楽しみだ
「イッギシ、寒い寒い」
いかん、何のために蒼系統を使ったのか
忘れておった、このままでは
風邪に巻かれてしまう
「【ヒートスタンス】」
蒼系統の初級補助魔導
体温を高める効果を持つ魔導だ
今の状況にピッタリだろう
上級には【ライフスタンス】と言う
上位の魔導式があるが
やはり発動はできんか
使おうとすると激痛が走る
冬の間は空と蒼系統を鍛えることにしよう
白い精霊が漂っているうちは
空系統の独壇場だ
「帰るとするかの」
身体の震えが治り
今一度伸びをする
腰痛がないのはいいことだ
飛び降りようと下を確認した直後
燃える荷車が走り去っていったのが目に入った
世にも珍しい暖の取り方と惚けていると
その後ろを《ゾロゾロ》と
武器を抜いている男共が追っていた
瞑想していたとはいえ
山賊や盗賊の類は通っていないのは
この山林の立地を知っていれば分かるのだが
おそらくは
「傭兵の裏切りか」
冬とは実りなき時期
食うに困る者は当然おり
否応なく手を出すことも珍しくない
「しかし、そうではなさそうだな」
枝から枝へ乗り継ぎながら
男どもを観察するとどうにも
それだけではないのが窺い知れた
極め付けは会話の内容だ
「女だけの商隊って侮りすぎだ!」
「ち、折角の荷が」
「後で嬲ってやる」
やれやれ、何ともご苦労なことだ
しかし『5人』か
ちと多い気がするが
密集具合によっては【あれ】が有効だな
「今世は【ミラーズ】を目指すかの」
僕は【ブラックボール】を念じながら
後を追った