四冠(半端者)魔導師 作:息抜き
思い出すのは
白銀のキャンバスに赤色を落とした時
初めは雫の形を保っていたものの
段々と染み込んで行き
やがて薄紅色へと変わっていく
不可逆の摂理
不思議と忘れていたあの時を思い出す
わしが辛酸を舐めたあの吟光の一夜
まだ両腕が自由に動かせていたあの時
化け物との闘いにより肩に深傷を負い
体術の世界から
手を引かざるを得ないことになった
あの忌まわしき出来事
今と同じ若かりし頃の出来事だ
◆◇◆◇◆
既視感の中
昔のことを思い出し惚ける
近々アレが来るのであったな
魔力線を繋げるほどに
鮮明になっていく記憶が告げる
脅威への警鐘
「あいつらどこへ行った?」
「【レッドウェーブ】」
「おわ!?」
彼らが晴れ舞台に入ろうとした瞬間
乗っていた馬を
緋色の閃光による熱風にて
退避させる
レッドウェーブで荒ぶった馬から次々に
落馬する男達は雪がクッションとなり
怪我に至らなかった
雪から這い出そうと"もがく"
稚児の様な男どもを尻目に
ふらつく足で馬の元へ向かった
【轟き賜ふ、奏賜ふ、皆が見惚れる
天の御業を今ここに】
言葉に呼応し
雷が顔を覗かせ、雲の上を飛び回る
それに合わせ【フロストバイト】とは
別の雪が降り始めた
頭に血の上った男どもは
各々の武器を地面に突き立て
それを杖代わりに強引に立ち上がった
【原初の火よりも遥かに尊し一矢にて】
今も流れる詠唱をしているのは
『ゼノス』ではない
【クイックレコーダ】である
【今も天を仰ぐ我々に今一度の奇跡を示されたし】
この男どもについていた2人の魔導師が
より卓越した魔導の使い手ならば
この詠唱を耳にした瞬間
『退避』『離脱』の言葉が頭に浮かぶだろう
しかしながら、はぐれものである
半端者どもでは今から何が起こるのかなぞ
目先の苛立ちを解消することに比べれば
些細なことでしかなかった
【ランブルクラッシュ】
◆◇◆◇◆
怒り狂い、血眼の男ども
声を頼りに次々と
銀一色の舞台へ次々と上がっていく
その最中、荒れ始める空模様
男どもはついぞ声の主を見つけることはできず
続き飛来した天河からの溢れ雫により
死を感じる間もなく貫かれ絶命した
◆◇◆◇◆
「どうどう」
これほど離れた山奥ならば
被害が出ることはないだろう
僕は
使い過ぎた魔力の補填と
身体を休めることを同時に行うために
暴れる馬を宥めつつ
魄系統の初級【意思疎通】を使い
ナナミの街までの順路を送った
運が良ければ街に向かってくれるだろう
そうでなくとも馬とはやはり
重宝されるもの乗り手がいない馬は
誰かしらが見つけてくれるだろう
そうたかを括っての行動だ
「…」
課題が山積みな戦場を背に
歩き出した馬の背中の上
『瞑想』擬きを行いながら意識を手放した