四冠(半端者)魔導師 作:息抜き
翌年、家の前には
街の情報屋がひっきりなしに来る始末
静かにしてくれ
記者会見?そんな暇はない
一刻でも長く机や修練室に居なければ
1日サボればその時得られたであろう経験は
2度と手に入らない、戻ってこないのだぞ?
そんなものに時間は費やすことなどできるか
…しかし
「何故だ?」
魔術協会の呼び出しには
どうしても応じなければならないだろう
焦っていても仕方がない召喚に応じなければ
あとが怖いからな
わしは魔導協会へと向かった
◆◇◆◇◆
「クスクス」
「情けない」
「嘘でしょ」
道行く者が笑っている、不思議でならない
それと言うのも、どうやらわしを
笑っている様だった
嫉妬とは違う嘲り、嘲笑
魔導の気配がそこかしこで確認できるが
見たことのない『魔導式』だった
あれがなんだと言うのだろうか?
◆◇◆◇◆
「ゼノス、久しいな」
「アークメイジ殿!お久しゅうございます」
通された一室で魔導協会の会長に頭を下げる
「今日は持ち込まれた新たな魔導式を
伝えたく呼び出したのだ」
「はっ、拝見致します」
手渡された魔導式に目を通す
…これは!
既存の物とは全く異なるアプローチ!
『開祖』魔導における最初の到達者
となってもおかしくない
以降続く者『階位』を羨ましく思うばかりだ
「して、どの様な?」
「これはその者の
魔導の"才能"を示すと言われている」
「何と!素晴らしいではありませんか」
「あぁ、だが」
「失礼して」
「ゼノス!」
わしは協会長の静止を振り切り
自分に対して【スカウトスコープ】を行った
◇◆◇◆◇
『魔導』5つの系統からなる事象を【もたらす力】
【緋】
炎に関する魔導、詠唱速度や効果範囲
優秀な変換効率を持ち
最も攻撃性に特化した系統
【蒼】
水に関する魔導、補助、回復など
直接的な干渉ではなく
様々な特性を持つ系統
【翠】
大地に関する魔導、地に語りかけ
地形、空間を持って顕現する
地形を統べる系統
【空】
大空に関する魔導、空に語りかけ
風や雲、雷を持って顕現する
大気を統べる系統
【魄】
異界に関する魔導、世に語りかけ
異なる世界を持って顕現する
不可思議をウツす系統
◇◆◇◆◇
魔導はその成長において
途方もない時間を費やす
だからこそ、ひとつに絞り
生涯をかけて伸ばすのだ
わしはその中で【緋】を選び
【ブレイズ】となった
しかし、このスカウトスコープがあれば
己に適した魔導を選び
無駄なく頂へと向かえるときた
これ程嬉しいことはない
さすれば、先代で起きてしまった
『空席』もまた予防できるというもの
さて、【ブレイズ】となったわしの
才能とやらはどんなもんだろうか?
【スカウトスコープ】
『ゼノス』
緋/62
蒼/87
翠/99
空/89
魄/97
「…ッ!?」
「ゼノス」
「これは」
ほぉ、これは、何というか
嫌に具体的だな
察するにこの数値が高ければ
それだけ伸びが良いということだろう
なるほど、あの嘲りはわしの才能が
見合っていないことを指していたのか
「ゼノス、すまない」
「いえ、なるほど
わしは【レリック】を目指せたかもしれませんな」
「ゼノス」
「要件はこれだけですかな?」
「え?あ、あぁ」
「では失礼致します」
わしは、道を間違えたのだろうか
いや、今まで以上に
費やせばいいだけのこと
「ふふ、ハハハ」
思い返すだけで笑いが止まらない
嘲笑った者たちがわしを笑うに値する
実力を持っているとでも?
答えは否、断じて否【ブレイズ】は
わしであること、どれ程笑おうが
心地の良いそよ風と同じこと
それに【スカウトスコープ】
これは面白い着眼点だ
「どれ、若人に習うとするかの」
わしはその日を境に
【緋】の魔導に手をつけることはなかった