四冠(半端者)魔導師 作:息抜き
ソウルハーベスターを狩ってから
数週間がたった
ゼノスはあいも変わらず
魔物を狩っていた
教会での一件以降
大物は湧かないものの
各地で自然湧きし始めたアンデッド系
日に日に討伐量は増えていった
◆◇◆◇◆
学舎の一室にてゼノスは窓辺で
いつものように魔導の空撃ちを行っていた
普段通りの1日の始まりの前
淀んだ空気の中で生活するのが嫌とあって
ゼノスは授業毎に換気を行っている
環境整備と魔導の修練
同時にできるとあってゼノスは
《ノリノリ》だった
しかし
そんなゼノスだったが今日
ふとそんな行動をやめていた
普段であれば
換気は十分できているが
授業が始まるまでの間
やることがないため
修練の時間として続けるのだが
この日、妙な気配を感じ
警戒するため魔力を温存したのだった
◆◇◆◇◆
席に戻る間、生徒が教室に入るや否や
落ち着きを欠いた様子を見せた
「…」
ゼノスは辺りを見回す
注視の末、職員室の方向に気配を感じた
ゼノスは謎の気配の方向をジッと眺める
「…害はないが、何だこの気配?」
ソウルハーバスターよりは劣るものの
かなり強い魔力が壁越しに感じられ
ゼノスは机を指で幾度も叩き始めた
(田舎好きにしては
魔力に重きをおいた成長の仕方だ)
この街に常駐している騎士の家系
マールを遥かに凌ぐ魔力量
魔力は様々な要因で増えるモノであり
そのいずれもが争うことで増える
(あまり好ましくはないな
何故このような
落ち着きのある街なんぞに?)
ゼノスは成長の方法を知ってるため
相手が田舎好きである可能性を切り捨てた
(もしやクロードだったりしてな)
ゼノスが苦笑を浮かべる中
クレア先生が教室に入ってきた
ひと通りの挨拶ごとを済ませると
手を叩き、教室の皆を鎮めた
「今日は皆さんに転校生を2人紹介します」
(ひとりはアンナ殿として)
ゼノスが眺める視線の先
ジト目のアンナが鍛治エプロン姿で入ってくる
(またビビアン殿に叱られそうだな…)
ゼノスがそんなことを考えていると
教室の中に感嘆の声が上がった
アンナの後ろを歩く
凛とした佇まいの少女
その立ち居振る舞い
背格好から服装に至るまで
ナナミの街では見かけないモノであり
続く名乗り口上もまた
皆が聞きなれないモノだった
「アンナです」
「ミリィ・レイアードです」
苗字を含む名乗り口上
育ちの良さが窺い知れるのも納得である
国への献上、英雄譚に晒される偉業
など苗字を持つ者は例外なく
血筋を含む名家として『苗字』を
名付けられる
苗字そのものが称号であり
価値のある者の証拠となる
「よろしく〜」
「皆さん、よろしくお願いします」
(2人して何故僕を見る?)
アンナは特定の人物へ
ミリィは全員に手を振っていた
そして、2人してゼノスを見る時に限り
やや視線が留まりを見せていた
◆◇◆◇◆
「授業はここまで
皆さん復習を忘れないように」
教室の皆はクレア先生の話へ挨拶を返し
そのままミリィとアンナの周りに
マールとゼノスを除き皆が群れを作った
ゼノスは教本やら羊皮紙をまとめつつ
終わりしな、窓の近くまで移動した
花びらの満開な季節
暖かくなりようやく花開いた景色
いつもの落ち着きのある様子から一変
華やかさ香る色鮮やかな季節、春
換気のために開けた窓から吹いた
柔らかな風と香りに
ゼノスは表情を和らげた
「ミリィちゃん?」
「どうしました?」
「どうしてゼノス君の方ばかり見てるの?」
「不思議な子だったので」
「分かる、大人びてるって言うか」
「枯れてる」
「そうなのね」
(それを本人の近くで言うかね?)
「アンナちゃんとゼノス君って知り合い?」
「うん?どうして?」
「アンナちゃんの
お家に入っていくのを見たの」
「なるほどね〜お客さんだよ」
「お客さん!!」
「こう見えても工房持ち〜」
「見たまんまw」
「それで?それで?」
(何ともなさそうだな)
「ミリィとか言うやつ強そうだな」
「なぜ僕のところに?」
「いいだろ別に」
(マールの考えていることがよくわからん)
わいわいと賑わう教室ながら
いつも通りとゼノスは緊張を解いた
窓辺でのんべんだらりとしようとしたゼノス
その近くにいつの間にかマールが立ち
三つの集まりで教室は分かれていた
前回のこともあり
冷ややかな目で返すゼノスと
何処か居辛い雰囲気に
窓辺に避難してきたマールを除き
雰囲気は上々そのものだった
気を取り直し
物思いにふけようとするゼノスだったが
微かに見えた
魔力の揺らぎに視線を上げた
そこには
面を下げるマールのしかめ面が目に入った
(何だ?それにこの魔導…)
魔力の揺らぎを目で追い
「… … …?」
「そうなのよ」
(僕はつくづく気が抜けているな)
会話を続けながらゼノスを凝視するミリィ
ゼノスはミリィと目が合い
己の失敗に自嘲気味に笑った
◇◆◇◆◇
『魔力探知』
魔導師として基本的な技術
直感の鋭い者や先天的に備わっている者を
除き、魔力を可視化して捉えることができる
技術、特徴
そう、魔導師なれば『あたりまえ』の技術
それを逆手に取られ
ゼノスはミリィにまんまと
魔導が使えることを見抜かれたのだった
冷や汗が垂れるゼノスと
してやったりと笑みを浮かべるミリィ
だったが
「ロマンチック〜」
「え?」
「だってゼノスに一目惚れだなんて」
「え?そんなこと…」
「だってさっき『そうなのよ』って」
「あ、あれは」
(…杞憂やもしれんな)
会話を続けながらも内容はそっちのけ
空返事に誤解が生まれていたのだった
走った緊張を台無しにする
ミリィのドジっぷりに
ゼノスは呆れ笑いを浮かべた