四冠(半端者)魔導師 作:息抜き
「ゼノ〜」
「ん?僕のことか?」
「そそ、ゼノ」
授業終わりに
窓辺に移動しようとするゼノスに
アンナが後ろから声を掛けた
アンナはカバンの中から
丁寧に包まれた箱?を取り出すと
ゼノスに見せた
包みからは禍々しいながら
整った魔力の流れが感じ取れた
「おぉ、この溢れ出る魔力」
「注文通り仕上げたよ」
「では、早速…おや?」
アンナの差し出した箱を
受け取ろうとしたゼノス
しかし、アンナはゼノスに渡すことなく
それをカバンへと忍ばせた
《キョトン》とするゼノスにアンナは
呆れながら話し始めた
「その前に」
「あぁ代金だったな」
「違う、それもだけど」
アンナは頭を掻き
ゼノスに耳打ちをした
「少し話があるんだけどいいかな?」
「ん?構わんが」
「よし、じゃ授業終わりに」
「あい分かった」
アンナは
そのまま包みを持って行ってしまった
ゼノスはそれについて何も言わず
むしろ楽しみができたことに《ほくほく》と
窓辺へと移動した
◆◇◆◇◆
「ゼノスさん」
「ん?これはレイアード嬢」
お昼近くの授業終わり
ミリィがゼノスへと声を掛けた
背伸びをするゼノスは振り返ると
視界の先でミリィの後ろに女性陣を見た
手を解き改めて向き直るゼノスに女性陣は
何やら興奮気味に身体を揺らしており
ただならぬ雰囲気を出していた
ミリィはと言うと
俯き気味な顔を真っ赤にしながら
何かに対して静かに怒っていた
ゼノスは何も言わず
ミリィからの言葉を待っていた
数秒の後
不意に女性陣が息を吸うと
「「「ミリィちゃん頑張れ!」」」
教室に声援を響き渡らせた
「そんなんじゃないわよ!」
(わしの時より順応が早いな)
そんな様子にミリィが吠え
ゼノスは子供のそんな姿に驚いていた
「全く…」
「都会もんは忙しいな」
「違うわよ」
ミリィの皮肉に気づかないほどの
冷静をかいた様子にゼノスは
ふざけた態度をやめた
ミリィは気を取り直して
手で髪を梳き、表情を新たに
ゼノスに向かって堂々とした態度で言った
「私はギルド『蒼穹の狩人』マスターの
ミリィ・レイアードです」
「ほほぉ、ギルド」
「ご存知ですか?」
「うむ、だがすまん
全く聞き覚えがない」
「ここにはギルド会館どころか
出張所もなさそうですしね」
「まぁそうだな」
◇◆◇◆◇
『ギルド』
志同じくする者通しが寄り集まって
活動をする団体の総称
ひとりでは達成が不可能な目標や
時間の掛かる物に対して
協力関係を築くこと
魔術協会もこれと同じであるが
規模の違いにより『
修飾詞がついたりする
◇◆◇◆◇
「率直に言えばスカウトです」
「明け透け過ぎんか?」
「嘘でも告白の方が良かったかしら?」
(僕は別にそうは思わないな)
ミリィは返す手で揶揄うも
ゼノスはミリィから目を離すと
取り巻きを一瞥した後、視線を戻した
「ギルドって?」
「何かのお誘いかも」
「デートのこと!おしゃれな言い方」
「違うわよ!!」
(愉快な子だな…)
ミリィは取り巻きの誤解に吠え
女性陣は半ば雑に怖がって見せた
そこでミリィは女性陣に向き直り
誤解を解こうと話し始めた
「ギルドっていうのはね…」
「一々反応していては話が進まんぞ?」
「う〜」
(そう、恨めしそうに見られても困るんだが)
ミリィが勧誘と弁解の
板挟みになっている中
ゼノスは助け舟を出した
「ボヤンスという雑貨店を知っておるか?」
「?えぇ」
「放課後そこで待つ」
「!絶対よ」
「分かったから早よいけ
あやつらもうおらんぞ?」
「え?ってまさか!」
(何と忙しのないことか)
急ぎ出て行ったミリィの背中を
懐かしい気分で見送ったゼノスは
背伸びをすると宿題を終わらせ
窓の外を眺めるのだった
◆◇◆◇◆
「マール殿」
「な、何だよゼノス」
最後の授業終わり
ゼノスはマールの机に来ていた
気まずそうなマールに
ゼノスは頭を下げた
「大変失礼なことをした、この通り」
「な、なんだよ急に」
「気がつかなかったとはいえ
不快な思いをさせてしまった」
「だから何だよ!」
「魔力過敏」
「…誰に聞いた」
「自力で辿り着いた」
「あぁそうかよ」
マールの魔力過敏
魔力による干渉を過度に防御してしまう疾患
あの時の突っ掛かりは
ゼノスの【スカウトスコープ】による
干渉を受けた時、悪戯をされたと同義の感覚に
不快感を示した故の行動だった
「あの時は知らなかったとは言え
申し訳ないことをした」
「別に、気にしていない」
「ついては、魔力過敏の…」
「気にしてない!って!!」
ゼノスの謝罪の最中
マールは鬼の形相になると
ゼノスを突き飛ばし
教室から去って行った
「治療を…」
静まり返る教室の内で
ゼノスはひとりため息をついた
◇◆◇◆◇
『魔力過敏』
疾患のひとつ
程度により異なるものの
その殆どは体を膜に包まれた
何とも曖昧な感覚なのだとか
しかし
マールの場合深刻である
騎士の家系ながら
自然治癒には余り良い環境ではなかった
騎士の特性上
魔力の干渉、魔力使用、魔力防御
多岐にわたる魔力からの干渉により
ただでさえ過敏になっていた疾患は
悪化、鋭い痛みを伴う物になり
恰幅の良さがそのまま
被弾面積となってしまっている
皮膚がない肌で戦場に立っている
と想像して貰えばその過酷さが
理解できるかもしれない
マールにとって
理解されている、されていない以前に
『気にしている』ことを明け透けに
言われるのは不快でしかなかった
◇◆◇◆◇
ゼノスもまた、他と同様
相手の琴線を悪い意味で
触れてしまっていたのだった