四冠(半端者)魔導師   作:息抜き

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『交渉ごと』工房人アンナ

「試飲卓を貸してくれてありがとうビビアン嬢」

 

「いえいえ、茶葉を買ってくれてるのでお客様

 としての対応ですから」

 

 

 

 ビビアンとゼノスが話す側で

 ミリィとアンナは

 お互いが険悪な雰囲気になっていた

 

 

 

「こう言うのダブルブッキングって言うんですよ」

 

「僕は別に構わないけど」

 

「そう言うわけにはいきません

 私のは重要なお話でして…」

 

「僕もそうなんだけど?

 嫌なら順番待ちしなぁ〜」

 

「あのですね

 こう言ったお話をする場は対面で、真剣な」

 

「まどろっこしい」

 

「はぁ!?貴方ね!」

 

「これこれ他の客人に迷惑をかけるでない」

 

 

 

 口論の末、机を叩き立ち上がったミリィ

 それを宥めるように厨房から

 茶を持ってきたゼノスは卓上に三つの

 カップを置いて席に戻った

 

 怒られたミリィはおずおずと席に座った

 その様子に

《ニヤニヤ》とアンナが笑顔を見せた

 

 ゼノスはお茶を一口のみ

 ミリィに向き直った

 

 

 

「ギルドの話し合いに

 秘匿性は発生しないと思ったのでな」

 

「…そうですけど」

 

「話し合いをするにしても2人きり

 とするのは貴殿の都合にも悪いだろうしな」

 

「…ッ」

 

 

 

 ゼノスはお茶を飲みながら小指を上げ

 それを第二関節から曲げた

『恋人→ではない』とした意味に

 

 学校での出来事に言及した

 ハンドサインをした

 

 それに対して、反論をしようとするミリィは

 口籠もり、仕方なく沈黙を持って

 同意の意思を示した

 

 

 

「お二人さん、いい関係のところ

 ごめんだけど僕が先だからね?」

 

「そのつもりだ」

 

「分かっております」

 

 

 

 アンナはお茶を宅の縁に移動させ

 右手に座るゼノスに対して包みを差し出した

 

 その様子にミリィは顔面蒼白となり

 俯き、出る冷や汗を必死に止めようと努めた

 

 

 

「確認お願い」

 

「うむ」

 

「え?まっ…」

 

 

 

 卓上の包みに手を伸ばしたゼノスを

 ミリィが止めようとするより早く

 包みを持ち上げたゼノスは

 中から『円環の髪留め』を取り出した

 

 蛇が己の口で尻尾を喰んだ口尾の装飾品

 それを中心で捻り、穴を二つ設けた物に

 それぞれ『阿吽の宝玉』を嵌め込んだもの

 

 ゼノスは手のひらサイズのそれを手に取り

 満足そうに確認すると包みに戻した

 

 

 

「良き仕事だ」

 

「当然」

 

「して、代金なんだが」

 

「あ〜それなんだけど」

 

 

 

 ビビアンがアンナのその一言に

 羊皮紙を取り出すとゼノスの前に置いた

 

 ゼノスはそれに目を通すと

 お茶を飲み、一息ついた

 

 

 

「うむ、金貨50とはな」

 

「50!?」

 

「結構大変だったんだからなぁ〜?」

 

「それにしたって!そんな法外な値段!!」

 

「それは相分かっておるが

 かなり大雑把な価格であるな?」

 

 

 

 ミリィの取り乱しは無理もない

 金貨50とは一般家庭における年の稼ぎ

 場合によっては

 商売を始める事のできる金額であった

 

 それが『忌み物』と同じ魔力を

 放っているものに付けられた値段なら

 尚更のこと

 

 ゼノスは茶碗を持ち上げ片肘をついた

 側から見れば険悪な雰囲気

 

 前述した通り『見事な仕事』は良いとして

『法外な値段』と言える場

 

 ミリィは何のことか?とあたふたする

 その様子にアンナは

 

 

 

「分かっちゃうか」

 

 

 

 観念した様子で肩をすくめた

 ゼノスは茶碗からお茶を飲み

 卓上に戻した

 

 アンナは請求書と別に

 羊皮紙をもうひとつ取り出し

 それを卓の上に置いた

 

 

 

「ゼノ、今回持ってきた宝石系を

 安定供給はできる?」

 

「無理と言っていいだろうな」

 

「なら手に入れた時で

 いいから下ろしてくれない?」

 

「対価は?」

 

「この装飾品」

 

「価格設定と取り分は?」

 

「価格設定は僕達に

 その代わりに取り分は半分」

 

「駄目だな」

 

 

 

 ゼノスはお茶を継ぎ足した

 

 

 

「取り分はもっと少なくしていい」

 

「え?それじゃぁ…」

 

「まぁ慌てるでない」

 

 

 

 空になった茶碗を

 真ん中に置かれた急須に並べると

 ゼノスは手を組み口元を隠した

 

 

 

「今後とも鍛治依頼を頼みたいと思っておる」

 

「うん」

 

「無償と言うのは」

 

「取り分の話を買い物を割引にするなら」

 

「なら鍛治を安く提供して貰うなら?」

 

「ん〜それなら取り分3で」

 

「相分かった」

 

 

 

 トントン拍子に進んでいく交渉に

 ビビアンとミリィは目を丸くした

 

 

 

「買取はしてないと言うておったが

 どう言った風の吹き回しだ?」

 

「一般流通してない宝石に

 装飾品は強みになると思ってね〜」

 

「そう言うことにしておこう」

 

 

 

 ゼノスは羊皮紙に魔力を込め

 サインをするとアンナに手渡した

 

 アンナは茶碗と

 それを交換する形で受け取った

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