四冠(半端者)魔導師 作:息抜き
較の儀はそれから数年は挑まれ続けた
その度に返り討ちにした
最近の若い衆は益々魔導の扱いに長けて来ている
わしが一節を唱える間に三節を唱え
タブーとされていた上位の魔導も唱え始めた
わしだからいいものを情け容赦ないのは
戦場だけに留めておかねば
協会の秩序が乱れてしまう
がしかし、それを制することで
わしの実力は証明され、他のものも
それに負けんと研鑽を重ねる
素晴らしいことだと思う一方で
制し続ければ、実力を持ちさいすれば
【ブレイズ】の地位を守れる
わしの研究も日の目を浴びるやもしれぬ
そう思っていた
【スカウトスコープ】が持ち込まれて8年
わしの研究が輪郭を帯び始めた頃
事件が起こった
◇◆◇◆◇
突然の出来事だった
協会長が没した、他殺だ
第一発見者は
一般協会員であり、その遺体の状況は
『全身を含む周囲が《ドロドロ》に溶けており
見るも無惨な始末だった』
『それが協会長と分かったのは
スカウトスコープによる
鑑定結果のおかげだった』
そして、現場の状況からわし、ゼノスが
犯人として候補に上がった
だが断言しよう
わしはやっていない
むしろ、やれない
何故?
それは協会長とは生きている時間が違うからだ
アークメイジと呼ばれる所以は
3つの魔導を『階位』まで修め
それを十全に使いこなす経験にある
緋の魔導の探究に生涯を費やしたわし
3つの魔導を修め、今日に至るまで
研鑽を続けていた御仁とでは
天と地ほどの差がある
たかだかひとつを修めた所で
やり合える御仁ではない
「それが何故」
たったひとつの魔導でその命を奪われたのか
わしには不思議でならなかった
◇◆◇◆◇
「そんな馬鹿な」
それから暫くして、新しい協会長が就任し
わしは称号を受けた道で称号を剥奪された
犯罪者だからではない
才能が乏しく【ブレイズ】の名に相応しくない
とのことである
ふざけるな、と言いたい所だが
研鑽を止めたわしと
昨今の若い衆の実力は縮まる一方だ
才能がなく、死に行く老ぼれと
才能に富み、意欲溢れる若人とでは
その名が相応しいのは考えるまでもない
しかし、才能に溢れているとはいえ
わし如きに勝てぬ者が【ブレイズ】を得ようとは
お笑い種である
魔導師の才能を数値として見れる以上
それに縋りたいのは分からんでもない
わしはその足で
研究室から『成果』を全て破棄した
どうにも『万物』に通ずる魔導は不評な様だった
魔導協会に『凍結』されるより個人で
保有することにしよう
「わしは去ることにしよう
魔導を追求し続けるために」
わしは天を仰ぎ見た後、呟く様に
そう言った、わしの中の緋は未だ燻っておる