四冠(半端者)魔導師   作:息抜き

4 / 28
『剥奪』

 較の儀はそれから数年は挑まれ続けた

 その度に返り討ちにした

 

 最近の若い衆は益々魔導の扱いに長けて来ている

 わしが一節を唱える間に三節を唱え

 タブーとされていた上位の魔導も唱え始めた

 

 わしだからいいものを情け容赦ないのは

 戦場だけに留めておかねば

 協会の秩序が乱れてしまう

 

 がしかし、それを制することで

 わしの実力は証明され、他のものも

 それに負けんと研鑽を重ねる

 

 素晴らしいことだと思う一方で

 制し続ければ、実力を持ちさいすれば

【ブレイズ】の地位を守れる

 

 わしの研究も日の目を浴びるやもしれぬ

 そう思っていた

 

【スカウトスコープ】が持ち込まれて8年

 わしの研究が輪郭を帯び始めた頃

 事件が起こった

 

◇◆◇◆◇

 

 突然の出来事だった

 協会長が没した、他殺だ

 

 第一発見者は

 一般協会員であり、その遺体の状況は

 

 

 

『全身を含む周囲が《ドロドロ》に溶けており

 見るも無惨な始末だった』

 

『それが協会長と分かったのは

 スカウトスコープによる

 鑑定結果のおかげだった』

 

 

 

 そして、現場の状況からわし、ゼノスが

 犯人として候補に上がった

 

 だが断言しよう

 わしはやっていない

 むしろ、やれない

 

 何故?

 それは協会長とは生きている時間が違うからだ

 

 アークメイジと呼ばれる所以は

 3つの魔導を『階位』まで修め

 それを十全に使いこなす経験にある

 

 緋の魔導の探究に生涯を費やしたわし

 3つの魔導を修め、今日に至るまで

 研鑽を続けていた御仁とでは

 天と地ほどの差がある

 

 たかだかひとつを修めた所で

 やり合える御仁ではない

 

 

 

「それが何故」

 

 

 

 たったひとつの魔導でその命を奪われたのか

 わしには不思議でならなかった

 

◇◆◇◆◇

 

「そんな馬鹿な」

 

 それから暫くして、新しい協会長が就任し

 わしは称号を受けた道で称号を剥奪された

 

 犯罪者だからではない

 才能が乏しく【ブレイズ】の名に相応しくない

 とのことである

 

 ふざけるな、と言いたい所だが

 研鑽を止めたわしと

 昨今の若い衆の実力は縮まる一方だ

 

 才能がなく、死に行く老ぼれと

 才能に富み、意欲溢れる若人とでは

 その名が相応しいのは考えるまでもない

 

 しかし、才能に溢れているとはいえ

 わし如きに勝てぬ者が【ブレイズ】を得ようとは

 お笑い種である

 

 魔導師の才能を数値として見れる以上

 それに縋りたいのは分からんでもない

 

 わしはその足で

 研究室から『成果』を全て破棄した

 どうにも『万物』に通ずる魔導は不評な様だった

 魔導協会に『凍結』されるより個人で

 保有することにしよう

 

 

 

「わしは去ることにしよう

 魔導を追求し続けるために」

 

 

 

 わしは天を仰ぎ見た後、呟く様に

 そう言った、わしの中の緋は未だ燻っておる

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。