四冠(半端者)魔導師   作:息抜き

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『クロード』

「お主が協会長を、アークメイジ殿を殺したな?」

 

「…」

 

「クロードとやら」

 

 

 

 正気のない目に《ボロボロ》の甲冑

 顔を隠してはいるが身体つきからして女人

 だが、骨と皮だけの肢体は見るに堪えん

 察するに

 

 

 

「お主は騎士かの?」

 

「…・」

 

「そうさな、貴様には兄弟がおるな」

 

「!?」

 

 

 

 何ともまぁ、ここまで

 当たって嬉しくない問答が他にあるだろうか?

 

 察するに騎士、いや元騎士の家系

 所謂没落家系の末の者

 吐き気を催す騎士の誇りと見栄の産物

 

 貢がねばならぬ身

 上の者が居ればそれが末の者の定めと言うべきか

 おなごの身であれば尚のこと

 

 しかし同情こそ、あれ

 もう許すには…遅い

 

 

 

「セルベリエに宜しく伝えて貰おうか」

 

「自分で言いに行け!死に損ないが!!」

 

 

 

 激昂し、剣を抜き飛び出したクロードに対し

 緋系統の【レッドバレット】で真正面から迎え撃つ

 眉間に一撃、即死だ

 

 しかし、クロードに向けて放った一撃は

 クロードに当たった瞬間に霧散した

 糸束が水の中で広がり解けるように

 

 

 

「何!?」

 

「…」

 

 

 

 異常に上がった口角

 クロードの細い腕からは想像もつかない一閃に

 わしの片腕は宙を舞った

 

 

 

「ッ…」

 

「口先だけか老ぼれめ」

 

 

 

 何だ?魔導が(ほど)けた?

 触れる寸出のところで解けて消えたと様に見えた

 わしは、額から垂れる汗をそのままに

 今一度神経を集中させた

 

 魔導の不発?いや、発動はしておった

 不発なら形にすらならん筈じゃ

 

 

 

「次はその首だ、ゼノス!」

 

「もう勝った気でおるのか?」

 

「その身体で何ができる」

 

「そうさな」

 

 

 

 わしと言い、この者といい

【スカウトスコープ】もそうだ

 時代というのはわしを飽きさせてはくれない様だ

 

 

 

「お主のことを倒すことができる」

 

「魔導師のお前が?私を?」

 

「しかも、わしのとっておき"のみ"でだ」

 

「はは、戯れるな!!」

 

 

 

 意識が朦朧とする。血を流し過ぎたか

 しかし、そうさなー推し量るに

 

 わしは【レッドボール】を唱えると

 足元に落とした

 初級だが立派な魔導だ

 

 

 

「ゼノス最後の魔導がボールとはな!」

 

 

 

 わしの胸を冷たい鉄の塊が貫いた

 素晴らしいな、落ちぶれた騎士の家系でありながら

 腐らずにここまで積み重ねるのに

 どれ程の研鑽を積んだのだろうか

 

 知りたい

 

 

 

「首、では、ないのだな」

 

「馬鹿正直に狙うわけないだろ」

 

「そう、だな!!!」

 

「!?」

 

「【クイックレコーダ】【セカンド】」

 

「きさ…ぐぁあ!!」

 

 

 

 わしは渾身の力でクロードを締め上げる

 

《ミシミシ》と骨が軋む音がする

 わしのものか、こやつのものか

 分からぬがどうでもいいことだ

 

 気がつけば

 わしの足元から森へと延焼が完了していた

 どうやらセカンドの発動に問題はなさそうだ

 

 

 

「くそ!くそ!!離せよクソ爺」

 

「お得意の手品は自己強化には及ばんようじゃな

 …これでは検証にならんではないか」

 

「っ!だったらなんだ。その傷じゃ

 この状況を切り抜けたところで」

 

「知識欲じゃよ!

 気になったことは試さずにはおれん質でな」

 

「こんな、状況で」

 

 

 

 はしゃぎ過ぎたな

 これではこやつの手品の検証にならんではないか

 体質なのか、新手の魔導なのか

 

 腕の拘束が解かれつつある

 やはり騎士と筋力勝負はするものではないな

 だが、この状況詰みだ

 

 

 

「次は、その、??」

 

「どうやら、魔導にのみ適応しておるようじゃな」

 

「なにを?いって」

 

「そして、それが体質でないことも分かった」

 

 

 

 わしらは空の中で生きておる

 空は環境により変質し、生きとし生けるものは

 変質した空の中では生きてはいけない

 

 それはわしも同じだがな

 

 

 

「今度は、そんな研究もありだな」

 

「今度?はは、何を、呑気に」

 

「わしは本気だがな」

 

「…」

 

「ん?」

 

「羨ましい、なぁ、って」

 

 

 

 先程までの力みはもうなかった

 瀕死だからなのか

 抵抗する意思がなくなったのかは知らないが

 

 

 

「クロードよ、お主の家名は何という」

 

「改まって、なにさ?」

 

「いいから言わんか」

 

「…レオンハルト、名乗って、なかったね」

 

「あい分かった」

 

「さい、ご、まで、へん、な…」

 

 

 

 わしも罪なものだな

 恨みがすっかり消えてしまったわい

 腕の中で横たわる亡骸を地面へ寝かせる

 

 

 

「セルベリエに宜しくな」

 

 

 

 わしは星の袂まで向かった

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