四冠(半端者)魔導師 作:息抜き
殺気が抜け微笑んだ彼女の声色は
とても穏やかだった
それは同時に
生きようともがいている彼女への
とどめとなった
直近の目標を失ったことで
抵抗を諦めた結果
細く小さい鼓動は今止まった
わしらの内を巡り動かす魔力は
常に増減を繰り返しておる
環境の変化はそれを乱す劇薬じゃ
未だ腕の中に残る熱を手放した
さて、最後の研究といこうかな
「【スカウトスコープ】」
【スカウトスコープ】
『ゼノス』
緋/62
蒼/87
翠/99
空/89
魄/97
?/??
「これは興味深いな」
星空の下を《ふらふら》と歩き通す最中
わしは己の情報を今一度確認すべく
スカウトスコープを使った
そこには不思議なことに
新たな記述が発生しておった
なるほど、開祖となったばかりの場合
これらは名付けをせねばならぬようだ
「僭越ながら介系統、ではちと格好がつかんな」
開祖となって初めて躓くのが名付けとは
贅沢な悩みだな
わしはふと空を見上げた
夜空に浮かぶ散り散りな物を眺め
ふと、その名が思い浮かんだ
「【刻】系統魔導、無難じゃが
こいつにはピッタリじゃな」
わしは改めてスカウトスコープを使用した
【スカウトスコープ】
『ゼノス』
緋/62
蒼/87
翠/99
空/89
魄/97
刻/??
「ふむ、才能はなしか、仕様が点でわからんな」
更新された情報を眺め、ひとしきり笑う
わしの口元から
生暖かいものが地面へと垂れた
「そろそろ、限界かの」
クロードの一撃は
わしを絶命へと追いやるには十分なものだった
では何故今、こうして考えることができ
歩き通することができるのか
それは刻系統【ディレイ】
蒼系統【ポンプアップ】のおかげと言える
心臓の障害を誤魔化し
心臓を代替する力で押し出す
クロードを討つには足りたが
回復するには手遅れといったところだ
「だが、収穫は上々じゃ」
この老ぼれた身でやり残したことはもうない
しかし『過去』に
やり残したことは数知れない
であるならば叶えようではないか
「呼び起こすは星の夢」
わしは最後の研究、開祖にして
刻系統魔導の真髄をここに顕現させるべく
魔力を集中させ『儀式』の場を整えていく
この魔導こそ、抜きん出た成果といえよう
◇◆◇◆◇
対象の時間を加速させる
【ウロノス】
対象の時間を遅らせる
【ディレイ】
予め準備しておいた魔導を呼び出す
【クイックレコーダ】
周囲の時間を諸共進める
【セカンド】
◇◆◇◆◇
丁度切り飛ばされた腕の先から垂れる血液で
方陣を描いていく
中々どうして死に瀕しているというのに
気分が高揚してしまうな
『星の夢』ー星を一つの生物とした時
そこで起こる事柄は等しく星が記憶している
情報とする解釈、儀式とはこれに接続し
様々な恩恵を受ける段階のことを言う
いよいよだ、今から試すのは
刻魔導のひとつの真髄
刮目せよ、世界
我が生涯の集大成を
「夢を現に、ならば今一度
泡沫の微睡みへと沈み賜う
【スケールシフト】」
意識が《ぷつりぷつり》と千切れていく
身体は痺れから始まり、喪失に至る
自身が立っているのか、座っているのか
はたまた倒れていることすら
分からなくなって…
「ゼノス、幸多からんことを」
僅かに思い浮かんだ、その言の葉を
唱え、夢に流れて解けた