四冠(半端者)魔導師   作:息抜き

9 / 28
『炎症』と『治療』

 日常というのは驚く程平坦である

 今更、通うのも忍びないのだが

 現在

 ナナミの郊外にある学校へ向かっている

 

 母さんに迷惑をかけるわけにもいかないため

 今尚通い続けているが

 ちょっとした問題に差し掛かっていた

 

【スケールシフト】の影響というべきか

『魔導』を使うための『魔力線』に

 やや不具合が生じていた

 

 症状としては『炎症』に近い

 無意識下で『魔導』を発動させようとし

 未発達の『魔力線』を使おうとして

 痛めているものと思われる

 

 経験と成長段階の差により

 元々持っている知識が仇となっている

 何とも不便なこと極まりない状態である

 

 

 

「一先ず瞑想をしなければ」

 

 

 

【スカウトスコープ】も使えない今

 一刻でも早く『瞑想』をとらなければ

 魔導の真髄どうの"の"前に身体が腐り落ちる

 

 しかし、瞑想か

 実践ばかりに傾倒した老齢期には

 全くしておらんかったな

 

 

 

「ゼノス君、おはようございます」

 

「これはクレア先生、おはようございます」

 

 

 

 この人は相変わらず朝が早いな

 

 考え事をしながら登校していると

 思いの外早く到着したら初等学校の校門前につき

 そこで落ち着いた様子の彼女に会った

 

 クレア先生の愛称で親しまれている

 初等学校をナナミ郊外にある学校を

 切り盛りする先生

 

 ここ1週間、この人より早く来れた試しがない

 今も校門の掃き掃除をしているということは

 少なくとも日が昇る前、陽が差す直後には

 職員室に荷物を置き

 諸々を済ませていることになる

 

 いやはや、教育熱心

 はたまた働き者かいずれにしろ素晴らしい

 教え子が成長する様は

 使い魔の成熟を見守っている気分だ

 

 思い出すな、羽を広げ大空高く舞ってみせた

『風の申し子』の愛おしさ

 

 矮小といえる

 手の器の中で息をしておったあのモノ

 

 それが

 猛禽類の鋭くも愛嬌のある身体

 器用、鋭利、柔軟な足に爪

 何といっても懐いた時に見せる表情がまた

 

 

 

「いかんいかん」

 

「ゼノス君どうしましたか?」

 

「クレア先生、お手伝いしますよ」

 

「いい子にしててもご褒美はありませんよ」

 

「いえいえ」

 

 

 

 今世とは関係のない話に

 傾倒していては足を掬われかねない

 

 クレア先生の冗談に返事をしつつ

 竹箒を手に取り、地面に落ちた茶色の葉っぱを

 学校とは反対に掃き飛ばす

 

 クレア先生の手伝いがしたい

 というだけではない

 

 これは僕のためでもある

 

◇◆◇◆◇

 

 今問題になっている『瞑想』は元来

 人気がなく自然に満ちたその地にて座禅を組み

 満ちる空の魔力を借りつつ

 全身の魔力線を

『一筆書き』に整える作業なのである

 

 1日を必要とし、危険ながら一般的な行為

 体内にある魔力線をパズルが如く

 整え繋げていく

 

 長い時間と体力を要求する修行である

 これをしなければ悪戯に繋がった魔力線が

 後々悪さをすることになる

 

『瞑想』以外にも『パス』という

 他者の魔力線の力を借りる解放方法が存在する

 こちらは最低2人での作業となる

 

◇◆◇◆◇

 

 その為

 今取れる最善の手は『瞑想』なのである

 しかし、僕にはそんな時間はない

 

 ならばどうするか

 そこで考えた

 

 自分自身を実験台に『瞑想』『パス』に変わる

 新たな『魔力線解放』の手段を実施するのだ

 

 なぁに、確証のない実験はしない主義だ

 ちゃんと構築済みだ

 試運転は今日が初めてだがな

 

 手段としては『日によってわける』

 ただそれだけだ

 

 何も『一気』に解放しなければ

『空の魔力』は

 それ程多くの量を必要としないのではないか?

 という前提での検証だ

 

 そして

 元々そこら中に魔力は漂っているのだから

 何も問題はない筈だ

 

 

 

「…」

 

「…?」

 

 

 

 全身ではなく竹箒を掴んでいる指先から

 徐々に全身へと充していく

 

 負担を考慮し、薄く広く充していく

 

 早くて数週間で不調は治るだろう

 受けていた全身のむず痒さが

 治りをみせたことが誇らしい

 

 さて

 目下の悩みの解決に目算が立ったところで

 どうしたものか

 

 大課題【スケールシフト】

 わしは転生などではなく

『才能』に捉われない『外付け』の魔導

 

 それを想定しておったにも関わらず

 こともあろうか

『記憶』が『外付け』されていると見える

 

 その弊害に『体調不良』と

 情けない結果に陥っているのだ

 

『ブレイズ』の名が泣くわい

 もう剥奪されてるし

 まだ僕には付与されてないけど

 

 

 

「ゼノス君、ありがとうございます

 助かりました」

 

「お役に立てたのなら」

 

 

 

 そうこうしているうちに掃除は終わった

 木の葉が色を変え地面を彩る時期の風物詩

 木の葉の山が校門の傍にできていた

 

 遠くを見れば雪化粧する山頂の何と白いことか

 見える景色と陽の昇り

 

 学友が"ちらほら"訪れる今日この頃

 吹いて崩れる山を背に

 今日も日が過ぎていく

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。