こんにちは、対ホロウ特別行動部第0課です。~新エリー都の影だった少女は、自分探しに行くようです~   作:俺がいれば、他はいらん

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前夜×遭遇×失敗 上

 新エリー都、某所。

 

 とあるビルの中では、けたたましい警報が鳴り響いていた。

 

『侵入者を発見、研究所内のセキュリティロックダウンを実施します。スタッフはその場に留まり、対応チームの報告をお待ち下さい。繰り返します。研究所内のセキュリティロックダウンを──』

 

 アナウンスが響く中、騒がしい研究所内で、シルエットは機を伺っていた。

 

 傍らには、先のEMPグレネードによって機能不全に陥った同僚の玉偶である黒猫と──同じく機能不全に陥った、玉偶の治安官が揃って倒れていた。

 

「……なんでこんなことに?」

 

 経緯は少し前にさかのぼる。

 

 ***

 

 十数分前──

 

「ここがあのホワイトスター学会のハウスですね」

 

『セキュリティは……頑強、治安局から、その、出向してきた部隊が……警備チームとして、駐在、してるみたい』

 

「そのおどおどした喋り方はやめてください、『レト』。しばきますよ」

 

『ひん、ごめんなさい……』

 

 ホワイトスター学会研究所前。それなりの高さを持つ高層ビルの前に、青い髪の少女──シルエットと、黒猫が一匹。

 この黒猫は()()であり、その中身は彼女の同僚である『レト』と同期している。

 

 周囲の建物はすでに暗い。夜の暗がりの中で、照明がついたままのビルが目立っていた。

 

「作戦はこうです。まず、偽装IDを使って研究所に入ります。IDの準備はいいですね?」

 

『ま、任せて。すでに準備はできてる。君は……これ。この研究所は、ペットの同伴も、許されるはず』

 

 ピコン、とシルエットの携帯端末が通知音を鳴らす。

 どうやらレトから、認証に必要なデータが送られてきたようだ。

 

「……なんでですか?」

 

『ひい、ごめんなさい……えっ、これ僕謝る必要ある?』

 

「なんでわたしの連絡先を知ってるんですか?」

 

『いや、仕事仲間として、知っておいたほうが、いいかなと思って……』

 

「思って?」

 

 彼女は圧をかけるように、黒猫の瞳を覗き込んだ。右目のデバイスが静かな機械音を立てる。

 

『異動初日に、全員の端末にハッキングして、僕の連絡先を登録、しておきました……』

 

「信じられない。乙女のプライバシーをなんだと思っているんですか、あなたは」

 

『ひぃん……で、でも……』

 

 猫はその場でクルクルと回転し始めた……無言の抵抗のようだ。

 

「まあ、今回は許してあげます。それじゃあ、行きましょうか」

 

 一人と一匹は、研究所の入り口へと向かい、厳重…というほどでもないセキュリティを通って、無事研究所に入り込むことができた。

 

 

 研究主任との面談を名目としていた彼女たちは、客人用の応接室へと通されていた。

 シルエットが座るやいなや、足元の黒猫から懐疑の声が上がる。

 

『でも、妙だよね……』

 

「何がです?」

 

『話を続ける前に、少し待って……一応……秘匿回線に切り替えるから』

 

「ちょっと。そんなことしたら……」

 

『ダミーの通信を、流してる……怪しまれることは、ない、から』

 

「はぁ……それで妙というのは?」

 

『この情報を知り得たのは、僕ら零課以外にも、いたはずなんだ……だというのに、不思議なほど、警備が手薄でしょ?』

 

「……」

 

『仕事は、全うする、つもりだけど……』

 

「同僚のよしみで警告しておきますが『レト』。好奇心は猫を殺しますよ。さて、そろそろです」

 

 彼女がそういった瞬間だった。

 

 ドカアアアン!! という爆音とともに、建物全体がビリビリと振動する。

 同時に、彼女の右目のデバイスが警告音を立てる。

 

「エーテルエネルギーを観測。『レト』、通信は?」

 

『問題、ない。爆発があったのは正面入口。すでに赤牙組の面々は侵入を始めてる。彼らの計画によれば、向かう先は……地下3階、サンプル保管室!』

 

「ルート案内を頼みます」

 

 部屋を飛び出し、廊下に出ると、慌てふためく研究員たちが出口へ向かってよたよたと走り出していた。

 彼らを誘導しているのは、どうやら駐在していた治安局の局員のようだった。

 

「あ、あなたは……」

 

 シルエットを見た治安局の職員は困惑する。

 当然か、と彼女は自分の服装を思い出し納得した。

 とうてい研究所の職員には見えないからだ。

 

「わたしは主任と面談に来た者ですが……何かあったのですか?」

 

 治安局の局員に声をかけられるとは思っていなかったシルエットだったが、ひとまず応じることにした。

 

「いえ、少々、その、事故があったようで。正面入口が使えないので、避難のため……あっ、ちょっとどこに行かれるんですか?」

 

「ご忠告痛み入ります。ですが、わたしにもやることがあるのです」

 

 そういうと、シルエットは右目のデバイスに触れる。

 

「これを、よく見てください」

 

「は、はぁ……?」

 

 治安局の男は、言われるがままに彼女の右目を凝視した。

 

 デバイスの中心──ちょうど瞳に当たるところが、一瞬まばゆい光を放つ。

 その光を直視した男は、まるで呆けたようにその場に立ち尽くしてしまった。

 

「お互いに、()()()()()()()()()()。それでは、さようなら」

 

 立ち尽くした男の肩を叩き、彼女は自分が進むべき先へと向かう。

 

『君と、現場に出るのは、初めてだけど』

 

 あとを追う黒猫は問う。

 

『今、何をしたの?』

 

「少し、忘れてもらっただけですよ。影は当たり前に存在しますが……その存在を悟られてはいけませんから」

 

『き、記憶処理、ってこと? 君の右目は……』

 

「どうでもいいことです……どっちですか?」

 

『あっ、えっと、左っ!』




これを期にゼンゼロ1からやり直してるんだけど、インターノットのスレッドに思いの外大事なことが書いてあって、見返してみるとなお面白いですね~。
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