こんにちは、対ホロウ特別行動部第0課です。~新エリー都の影だった少女は、自分探しに行くようです~   作:俺がいれば、他はいらん

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あの子の落とし物を探して その①

『速報です。十四分街で共生ホロウが突如発生。管制レベル3を突破。ホロウ調査協会が緊急対応にあたっており──』

 

「ンナンナ! ンナナ!(ねえリン! これ見て!)」

 

 六分街のビデオ屋、『Random Play』。その一室で、リンはボンプの声に顔を上げる。

 テレビのニュースでは、ここ新エリー都ではよくある話──共生ホロウ災害が発生したことが速報で報じられていた。

 

 

「お兄ちゃん、このニュース見て」

 

 兄のアキラのほうは、ビデオの在庫を整理しながらテレビの画面に目を向ける。

 

「どうした? ……十四分街……確かほかのニュースで」

 

「ヤヌス区がね、管制レベル3を超えたって」

 

 よくあることでも、恐ろしい災害に違いはない。若干の心配と興味が入り混じった声でリンは言う。

 アキラはPCモニタに向かい、今日のニュースを検索した。

 

「やっぱり、治安局が今日そこで捜索をしている。避難は手こずるだろうね」

 

「……それって」

 

「準備しておこう。近々……仕事が舞い込むかもね」

 

 この都市では、身分を偽っている人々など珍しいものではない。

 ホロウという虎穴から巨利を得ようと画策するものは、大抵の場合は無法者(アウトロー)なのだ。その動機が何であれ、静かな街の小さなビデオ屋の店長であるこの二人も、そんなアウトローであることに変わりはない。

 

 ホロウ案内人、通称プロキシ。その中でも伝説の異名を持つ凄腕、「パエトーン」。

 インターノットでは無数の噂が立てられるほど名の知れた彼らにとって、ホロウ災害はビジネスチャンスに他ならなかった。

 

 

 ***

 

 

 所変わって、十四分街、古いアパートの一室。

 ホロウ警報の音で目を覚ましたシルエットは、のそのそとベッドから起き上がり、窓の外を見た。

 

「……あれ、もうこんなに」

 

 ホロウの特徴的な外殻──ブラックホールのごとき暗黒に、うっすらと虹を纏うかのような──が自宅のすぐそばまで迫っているのを見ても、彼女は一切慌てる素振りを見せない。

 着たままだった制服の襟元をただし、ベッドサイドに雑に放りだしていた武器を手に取る。右目のデバイスの調子を確かめ、オフィスへと連絡を取る。

 

「こちら『シルエット』。『レト』、聞こえますか?」

 

『聞こえてるよ。急に連絡してきたって、ことは……今、もしかして、十四分街?』

 

「ええ。自宅で休養中ですから」

 

『君、十四分街に住んでるの!?』

 

「なんですか? 文句ですか?」

 

『いや、そういうわけじゃ、ない、けど……今位置情報を出すね。……すぐその場を──』

 

 離れて、と言いかけて、レトは口をつぐむ。通信回線に割り込んできた上司に気がついたからだ。

 

『おっ、お疲れ様です、「ノワール」』

 

『あら、そんなにかしこまらないで『レト』。『シルエット』も、お元気?』

 

 対ホロウ特別行動部第0課、課長「ノワール」。わけあって、レトは彼女のことをひどく怖がっている。

 それは彼が0課に所属することになった経緯のせいなのだが……今はその話を深堀りする時ではない。

 

「仕事ですか?」

 

 シルエットのほうは冷静そのものだった。

 彼女はノワールとの付き合いも長い。課長が急な連絡をよこすときは、決まって仕事か、あるいはお土産をねだる時なのだ。

 

『そうよ、お仕事の場はあなたの目の前のホロウ。今、そのあたりで赤牙組の拠点捜索が行われているのはご存知?』

 

「寝ていたので存じ上げません。それで?」

 

『……。赤牙組といえば、分かるでしょう? あなたがまんまと奪い取られた金庫が……今度は別の誰かに奪取された』

 

「なんと……」

 

『少なくとも私達の上層部は、こんな形で第三者に奪取されることは想定していなかったみたいね。さっき大慌てで指令があったわ──今度こそ、あの金庫を取り返してこい、とね』

 

「承知しました」

 

『サポートには「レト」をつけるから。ホロウは慣れてると思うけど、充分気をつけること。それじゃあね』

 

 とだけ言って、ノワールは回線を抜けてしまった。

 それから少しして、レトが思い出したかのように喋り始める。

 

『はっ……えっと、それじゃあ……ひとまず、目の前のホロウに入ろうか……』

 

「バックアップはよろしく頼みますよ、『レト』。……この回線ホロウの中でも通じるんでしょうね?」

 

『そこは、信じて。《S.S.D》の通信システムは、ホロウ内部でも問題なく通信できる。……具体的な技術は機密事項だけど』

 

 ならいいです、とだけ言って彼女はベランダに出る。

 すでに、ホロウは間近に迫っていた。

 

「はぁ……引っ越しなんてことにならなきゃいいですが。それでは──『シルエット』、ホロウ内部へ突入を開始します」

 

『ああ、行こう』

 

 シルエットはその無表情な顔に少しだけ笑みを浮かべ、3階のベランダから跳躍した。

 急速な落下感。ホロウの外殻まで、あと3秒。

 2秒。

 1秒。

 とぷん、と。

 水の中に沈むような感覚とともに、先ほどまで星が広がっていた空が一気に明るくなる。

 ホロウの中では、天気も時間も、時には物理法則でさえ、外界とは断絶している。

 現に彼女は今、()()()()()()()()()()()()




次回、アンビー登場!
アンビー好きなので書きたかった~!
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