第六話、今までと比べたらほんとに短くなってると思います。まぁ、無理やり伸ばしたみたいなもんなんで許して下さい。
来禅高校の屋上は今、影に覆われていた。
何の比喩でもない。
時刻は一七時、傾き始めたとはいえ、未だ太陽は空に輝いている。加え、彼かの恒星と地上の間に、光を隔てる雲を見ることもできない。
そんな世界と隔絶された空間の中で。息を詰まらせていた。 身動きはおろか、身じろぎ一つさえできない。否、それどころか、言葉を発することさえ困難だった。
理由は至極単純。士道は今、幾人もの少女に手を、足を、身体を拘束され、地面にうつぶせに押さえつけられていたのだ。ご丁寧に口の中には細い指が差し込まれ、あごと舌までも固定されている。
──明らかに、異様な光景だった。 屋上を埋め尽くす幾人もの黒衣の少女。それらが全て、全く同じ貌をしていたのである。 左右不均等に結われた黒髪に、ともすれば病的にさえ見える生白い肌。
そして──文字盤と針のある、時計のような左眼。 その少女たちは全員が、一分の狂いなく『時崎狂三』その人であった。 辺りには、十香と折紙の姿も見える。
二人とも士道と同じように幾人もの狂三に取り押さえられ、苦しげに顔を歪めていた。
士道の位置からは見取ることができないが、先ほど撃ち落とされた真那もまた、狂三の壁の向こうにいるはずである。
絶体絶命。こちらの戦力は完全に無力化されている上、圧倒的なまでの兵力差がそこにのし掛かかっていた。
──だが。狂三が片手を高く掲げ、空間震を起こそうとした瞬間。 それが、士道たちの前に現れたのだ。
齢は十〇を行っているのか、それすら疑わしい小さな体躯。そんな少年は似つかわしくない〝装備〟を纏い、世界を滅ぼす精霊の前に立っていた。
そして、士道は思考を働かせている間に…自分を拘束していた幾人の少女たちの姿が消えていることに気づく。
〜〜〜★〜〜〜
『……こんな事は辞めて下さい狂三さん。』
少年───佐藤鷹禾は、真面目な物腰で眼の前に居る一人の少女に語りかけた。
「………また、…ですの。」
狂三は何か思案するように鷹禾を見て、目を細めた。
そして、次の瞬間。
ゾワッと…そんな感覚が士道たちを襲う。〈時喰みの城〉だ。狂三の作り出した影は校舎を埋め尽くすように再び展開された。
しかし。
「………」
それを認識した瞬間。狂三はようやく違和感に気付けた。あの少年が来てから全ての分身体が消えた。
その上で〈時喰みの城〉を展開しようとしたが、それを上書きするかのように校舎を飲み込む
緩和などではなく消滅。それによって狂三の疑念は予測へと変わる。
『士道さん!大丈夫ですか!?』
鷹禾はちらりと背後の士道を一瞥しながら顔を向けずに問うてくる。
「あ、ああ…」
士道は聞きたいことで一杯ではあったが、今は言葉を返した。
『士道さんは、皆さんを近くに纏めて守ってあげて下さい!ASTの増援が来るまで…僕が時間を稼ぎます!』
そう言うと、士道の真隣に気絶した十香と折紙と真那が現れる、恐らく随意領域で移動させたのだろう。
「もう邪魔はされたくありませんの。ここで、貴方も殺して差し上げますわ」
短銃を鷹禾に向けると、弾丸を装填しようとした。
「……?」
狂三は目を点にしながら自分の銃を見やる。次の瞬間、まさか…っ。と、狂三は絶句する。
「〈
しかし、狂三の背を張る文字盤はそれに応えない。
「そういう……、ことでしたの…。」
狂三は鷹禾に指をさしながら告げる。
「……
しかし、言い終えると、狂三は余裕の笑みを作り上げてもう一度〈時喰みの城〉を展開する。
『……っ』
その時、初めて鷹禾の顔が歪む。
やはり…と、更に狂三の笑みは濃くなる。
「わたくしの〈時喰みの城〉を消せるのは
『なんで…、こんな事するんですか…人を傷つけて…楽しいことなんてありませんよ!』
呻くように鷹禾は顔を歪めながらその質問を狂三に投げかけた。
「なんで…、ですの?」
その時、ふっと狂三はその質問を鼻で笑う。
「残念ですけれど、故人になる方にお話することはありませんの」そう言いながら
カチャリ───と、鷹禾の額に銃口を当てる。
「天使の効能はある程度封じれても、ただの弾丸ならば撃てるようですわね。」
鷹禾は顔を顰める…、ここまで来たのに結局自分ができたのは数分の時間を稼げただけ、見積ってもASTたちが来るのに数十分は時間がかかる。
「では、さようなら。後で真那さんも同じ場所に送って差し上げますわ」
しかし、その弾丸は放たれることはなかった。何故なら…
『ナイスだクソガキ。時間稼ぎお疲れさん』
そう何者が言った直後に狂三の短銃が蹴り飛ばされたからだ。
狂三は一旦距離をとるように後方に飛び退いた。そして、訝しげるような目で目の前にいる青年に向かって口を開く。
「あら…〝佐藤〟さん。これを見なかったことにしてそこの扉から帰るのならば…命までは奪いませんわよ?」
指を扉に向かって指しながらそう告げるが。
『悪いな。流石にこんな状況をみて見ぬふりできるほど俺の頭は良くできてないんだよ。』
佐藤はヘラヘラと笑いを崩さずにまるで…狂三と戦おうとしているかのように身体を構えた。
「───殺しますわよ」
佐藤はその強烈な殺意に臆すことなく……それどころか、更に笑みを作り上げて口を開く。
『来いよ。ぶっ飛ばしてやるから』
クイクイと挑発をするかのように人差し指を動かし手招きをする。
しかし、狂三はもはや…呆れと失望の感情が現れたのか、盛大にため息を吐く。
「なら貴方からどうぞ?まぁ、効くわけがないですけれど」
『後悔するなよ?』
───霊装。人間が用いる兵器など簡単に防ぎ、随意領域などの〝人智を超えたナニカ〟を使いようやく傷が付くかもしれないという、そんな領域にある…鎧、…盾。
だから、狂三は〝ただの人間〟である佐藤からの攻撃だなんて回避も抵抗もする必要はない。
が。
「………っ」
腹部に強烈な痛みが走り、声にならない声を上げながら狂三は思わず飛び退いた。
『後悔すんなって言ったからな。文句はなしだぞ』
しかし、そんな佐藤からの軽口も聞こえないほどに狂三は狼狽していた。
そう───自分の口から血がほんの少しだけ…されど、タラリと零れていたのだ。
─────痛み? わたくしが?
思わず佐藤を睨みつける。何か、特異な装備を纏っている様子もなければ武器を使った様子もない。つまり、ただの素手。
「ありえま…せんわ…」
うめくように呟くと、自分の考えを否定した。
ただの人間が精霊である自分に傷を付けられるわけがない。恐らくあの少年の
───夜刀神十香、鳶一折紙、崇宮真那は当分動けないだろう。
───五河士道…も、既に気絶している。彼女らと同じく気を回す必要はない。
───そして、鷹禾。未だあの少年の作り上げる
現在使用可能かつ、実用性のある弾丸は
加速の弾:【
鈍化の弾:【
……それと、強いて言うなら…未来視の弾:【
────────────────────────
『戦闘中に考え事ってのは悪手じゃないのか?』
「……っ!」
思考を纏めていたその瞬間。先ほどまで、鷹禾の前に居た佐藤が狂三の前方まで近付いて来ていたのだ。
「【
呟くと同時に弾を装填。自身のこめかみに発砲し、簡単に佐藤の攻撃を避ける。
やはり……深く考える必要などなかったのだ。相手はただの人間で、自分は精霊。普通の殴り合いでも精霊が圧倒的に有利な状況。
狂三は短銃を佐藤に向けると。そのまま影の弾丸を発砲する。
───しかし。
佐藤はまるで、その弾丸の軌跡を認識できているかのように首を傾けると弾丸を避けた。
『ただの銃じゃぁ俺は殺せねぇぞ?』
ビキリと、短銃を握る力を強くすると。狂三は次いで【
でも。
『……遅え』
佐藤は背後を向くこともなく、腕を回し、掌で狂三の拳を止めてきた。
「……ッ」
狂三は又も距離を取る。そして、口を開く。
「貴方……何者ですの。」
『ただの人間だよ。見たら分かるだろ?』
「ただの人間が銃弾を避け、精霊の攻撃を止められるわけがありませんわ!」いきり立つように狂三は声を大きく上げる。
『銃弾なんて、……銃口の向きと、ソイツの指の動きさえ見とけば割と避けられるさ。』
「では何故、わたくしの拳を───」
『悪いが一々問答してやる時間なんてねぇんだよ。』
佐藤は先ほどと同じようにその場を駆けると、指を硬く握り締め、狂三に向かって拳を振り下ろした。
しかし、狂三は逆に佐藤の右腕を掴み上げるとニヤリと笑った。
「動きを止めさえすれば…こちらのものですわ。」
佐藤が何かを言う前に狂三は握る力を込めると。そのまま──
バキリッ…と。嫌な音がその場に響いた。
『……ぐ…っ。』
狂三は佐藤の右腕を解放する。佐藤は痛みに顔を歪ませ、そのままだらりと右腕を地に垂らさせた。
「つぎは…左──ですわ。」
そう言うと、狂三は次いで佐藤の左腕を掴み上げた。
『辞め…ッ』
ボギッ────。佐藤が言葉を終える前に又も耳塞ぎたくなるようや音が響いた。
「あらあら、どォうしましたの?先ほどまでの威勢はどこへいきまして?」
『クソ女が……ッ!』
佐藤は唇を噛み締めながら言葉を発すると、息を荒くしながらも立ち上がり…狂三を蹴り飛ばした。
『おい、ガキ!お前の
『え…っ、えっと…。あと…持って…二分です。』
『! ……はは、そうかそうか…十分だ。もう解除して良い』
どもどもした回答に佐藤は空を見上げると………安堵したように笑った。
「何を話しておりますの?どうせ、貴方達が骸と化す運命は変わりませんわ」
『……じゃあ、かかってこいよ。』
両腕を重力に従って垂らし。骨折の痛みに顔を歪めながらも。佐藤は……また、挑発をした。
「きひひ、ひひひ…!良いですわ、次は両足をぶち折って差し上げますわ!」
しかし、佐藤は言葉を付け加える。
『後は頼んだぜ、〝司令様〟』
「なにを……」
狂三が不審そうに眉を歪める。
すると、「──ほんと、こういう時だけ司令って。調子の良い奴ね」 それに答えるように、頭上から、凜とした声音が響いてきた。
「──っ、何者ですの?」
狂三が頬をぴくりと動かし、右手に銃を握り直して顔を上に向ける。
───空が、赤い。
きっと普通の人間が見たら出てくる最初の感想はそれだろう。
屋上の上。佐藤や狂三たちの頭上に、炎の塊が浮遊していたのである。
そして──その炎の中に、一人の少女の姿があった。 和装のような格好をした女の子である。風になびく袂は、半ばから炎と同化しているかのように揺らめき、腕に腰に絡みつく炎の帯は、まるで天女の羽衣のようだった。
そしてその頭部には、無機的な角が二本、生えている。その様は、お姫様のようであり──鬼のようでもあった。
だが、それだけではなかった。
そう。五河士道の妹にして、〈ラタトスク〉司令官。 炎を纏った少女の姿は──五河琴里にしか見えなかったのである。
琴里が、徐々に高度を下げ、気絶している士道たちの方にちらと視線を落としてくる。
「──少しの間、返してもらうわよ、士道」
そう呟くと次いで言霊を紡ぐ。
「──焦がせ、〈
次いで琴里が、その名を口にする。 すると再び彼女の周りに炎が生まれ、巨大な棍のような円柱形を形作っていった。
そして、琴里がその棍を手に取った瞬間、その側部から真っ赤な刃が出現する。
それは──あまりに巨大な、戦斧だった。 鷹禾や狂三が言葉を失っていると、琴里はその巨大な戦斧を軽々と振り、狂三に向けた。
「さあ──私たちの
■■■■■──────◆◆◆◆◆◆◆───…・・・・……◆◆◆◆★★★★★★★★──ーーーーーーーー★◆〜■───●●─────■■■■■ー…ーー。
──────それは、この物語の本当の終わり方。
──────とある少年が自分の幸せを見つけられなかった物語。
彼は物語の最後に、その幸せを。望みを。やっと…口にすることができた。
「あの人たちが…どんな選択をして、どんな幸せを掴むのか。〝見たかったなぁ〟」
彼は、死んだ。
死ぬ前に…とある青年を蘇らせ、とある少女と世界の因縁を絶ち。とある最悪の男の人格を改竄した。
結果───世界は幸せになった。
誰も悲しまない。誰も責の念はない。誰も〝彼を覚えていない〟。
記録にも写真にも記憶にも思い出にも何も残りはしない。
彼のしてきた偉業は都合良く主人公である少年がやってきた事にして、最後までその根回しは完璧だった。
もちろん、終わりに行くまでに死者は二人だけ居た。しかし、去り際に彼は……死者すら蘇らせ、記憶を弄り、全てを元通りに戻した。
しかし、とある少女は〝記憶を持ってしまっていた〟
彼女は彼の記憶を見たイレギュラー。だからこそ、彼の記憶喪失を唯一逃れた。
「わたくしは────」
少女は目を覚ます。彼を誰も覚えていない世界で。
彼女は一度死んだ。
──────【
黒化した精霊。形を持った〝悪意〟。それを倒すために隣界にて相打ちとなった。
「どうして……」
生き返ったと自覚してからこの世界の少女たちと会話して理解をした。
「誰も…覚えて〝ないのよ〟…。」
嗚呼、分かっている。失敗したんだ。あの時、あそこで黒化した精霊と相打ちをするのが自分の使命だと思った…否、思ってしまった。
「ごめん、なさ…い…、ご…めん…なさ、い…。■…■■。」
少女は泣き崩れるしかできなかった。
───あの子はどんな思いでこの世を去ったのだろう。
誰よりも努力をして、涙を隠して、誰にも本心を吐露せずに、誰にも支えられずに…。
もし、あの時…。彼が最後に隣界を出ていく時、私が手を握れていれば…止めれていれば、彼がロキとして生きることもなかった。わざわざ、主人公の敵として君臨することもなかった。
しかし、この世界では異端者は私なのだ。居もしない誰かの存在を認知している異常。
ゆっくりと、ベットから足を下ろし。とぼとぼと歩き始める。いつまでもこうやって居るわけには行かない。
「…あっ。〝シスタス〟さん…。」
扉を開けると、目の前には…長く白い髪を持ち、白と黒を基調にしたメイド服を着ている少女が居た。
恐らく私にご飯を持ってきていたのだろう。お盆の上に乗ったお粥からは湯気がでていた。
「その、もう…大丈夫なんですか…?」
心配そうに少女───緋衣響が問いかけてくる。
「……えぇ」
目を合わせることもなく、そう返すと…響の横を通り過ぎていく。
歩き続けるその目に生気はない。今にも倒れてしまいそうな歩調で足を動かし続ける。
時に通り過ぎるエンプティたちは自分の顔を見るとヒッとして後退りする。…しかし、そんな事を気にするほど彼女は周りが見えていなかった。
そうして、歩き続けていくと。その場所へと着いた。第三領域を一望できて、風が一番なびく場所である。
彼が──好きだった場所。城の最上階に露台をつけた所。
ここにきたら少しは良くなると思ったが、逆効果だったらしい。目からは更に止めどなく雫が溢れ、頬を伝って落ちていった。
目下げると、その集団が確認できた。
青い髪の青年が様々な少女たちに囲まれている。そこには、彼女───山打紗和も居た。
「……はは…」
思わず乾いた笑みが口から漏れ出る。
現実世界と隣界の霊力のバランスが変動することも危惧してあの子は根回しをしている。だから、問題などなかった。
現実世界からは沢山の少女たちが来ていた。それは、世界からは精霊と呼ばれて〝いた〟少女たち。
彼女らの顔には、悲しみはない、ただ日常が幸せ…という表情だった。
───これで、ほんとうに良かったの…?
誰も……いや、私以外誰も貴方を覚えていない。違和感も齟齬感も感じていない。
でも、それを自覚する度にシスタスの心はチクリと痛んだ。
───だって、おかしいじゃないか。あれだけ頑張って、彼らを幸せにしようと努力をして、本心を誰にも相談せず、ただ……約束のために走り続けた。
そんな、人の終わり方が……〝これ〟?
バカバカしい…。そんなの…おかしい…よ。
「どうして…よ。……何で…何で……貴方は…ここに居ないのよ…。」
溢れる雫によって目はぼやける。それをゴシゴシと手甲で拭う。
生きていけるわけない。…どうせなら、あのまま死んだほうがよかった。
でも、それはやっぱり駄目なのだ。あの子は命を賭してでも、蘇らせてくれた。幸せになってと言ってくれた。
なら、やっぱり……生きなきゃ。
「ありがと…、■■■。」
一言感謝を告げて、彼女はシスタスへと戻る。
けれど、そこで物語は終わらない。
『おいおい、そんなヌルいハッピーエンドで終わる気か?』
そんな、声が、聞こえた。
「…は…?」
シスタスが踵を返して城内に戻ろうとした時のことである。
露台の柵にトンッと立ちながら、その人物は立っていた。
真っ黒い外套に、真っ白い仮面。
「…あな…た…は…」
震える声で確認を取ると、目の前の人物は仮面を取りながらニヤリと笑い、答える。
『俺の名は、〝矛盾点〟。始祖の次、真実点の前に呪いを知ったエラーだよ。』
ぴょいと作から飛び降り…次いで、矛盾点は口を開く。
『変えたいか?』
「…は?」
『この完璧で幸せな世界に、唯一取り残された男を救いたいか?』
彼が何者なのかなんて分からない。でも、彼が言った男が誰か…なのかは分かった。
だからこそ、シスタスは質問を返す。
「どうやって…ですの…? 天使の消えた今。わたくしは何もできませんわ。」
そうだ、何度も試した。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。
【
でも、私の天使は応えてくれてなかった。
『ふふっ、確かにあの男の【無盧無奥】を解くなんて俺でも不可能だ。…けど、お前の天使だけに絞るなら…解くことが出来る。』
「──っ、本当ですの?!」
思わず食い気味に言葉を発す。
『当たり前だ。─本来ならすぐに飛んでもらいたいところだけど。その前にお前の天使を改竄させてもらう。』
「……改竄…?」
『ああ。お前の……【
「それは…構いませんけれど…。貴方……彼の何でして…?」
その質問をすると、矛盾点とやらは大きく笑い始めた。
『何って?それ聞くか?……簡単に言えば、元復讐者。今は……、あんなに綺麗な終わり方をしたアイツに、幸せを教えるために動いてるのさ。』
そんな言葉を言っているうちに。
『……っと、ほら。天使は復元しといたぞ。』
「…へ?」
『何だよ、その顔。』
「い、いえ…。それで…ほんとうに出せますの?」
『やってみたら分かるだろ。』
シスタスは意を決するとその言霊を紡ぐ。
「〈
その瞬間。今まで応えなかったシスタスの天使が文字盤として現れる。
「本当に……」
シスタスは胸の中に様々な感情を抱いていたが、そのどれもが…〝あの子を救える〟から…派生したものだった。
『さ、改竄させてもらうぞ。』
「改竄とは…何をしますの?」
『まず、【
「……戻す?」
『簡単に説明してやるなら…。ブラウザバックボタンみたいな能力だよ。』
「ますます分かりませんわ…」
──────────────────
『【
「……ねぇ、矛盾点さん。」
『んぁ?何だよ。』
「わたくしは…戻る権利などあるのでしょうか。あの人を救えずに…自分の力ですらない力で…。烏滸がましいにもほどがありませんこと…?」
『知るか。』
「………っ?」
『…でも、…。俺は見た。……幸せになる権利なんてない。そんな事を言って……この世界で消えた馬鹿を。』
「………■■■の…事…?」
『ああ。アイツも似たようなことを死に際に言ってたよ。『僕は……幸せになる権利なんて…最初から持ち合わせてない…。だから、あの人たちに幸せになってほしいんです…』……とな。』
「………わかり…ましたわ…。感謝いたします…矛盾点さん。」
その言葉を皮切りに矛盾点はどこからともなく指を鳴らした。
「……?」
思わずシスタスは疑問符を浮かべるが、矛盾点は苦笑しながら言った。
『盗難防止だよ。勝手に心の中見られちゃいかないだろう?』
「なにを…?」
『あぁ、悪い。』
本当に意味がわからないといった調子で首を傾げるシスタスに矛盾点は苦笑することしかできなかった。
次いで…大仰に手を振りながら矛盾点は言葉を紡ぐ。
『さぁ、始めようじゃないか。奴らを出し抜き、始祖すら出し抜き、…世界を変えてやろうじゃないか。』
矛盾点はトンッと、シスタスの額に手を当てて口を開く。
『頑張ってこいよ…───シスタス。いや、◆◆◆。
【
ほんっとにさぁ。こんな尺稼ぎみたいなことしたくなったのに。
とまぁ、狂三編はこれで終わりです。次は琴里編。次回もお楽しみに。