泰平郷編【出会いはあまりにも唐突に】
それは、とある男の能力によって運命の変わった世界。
負を肩代わりされた結果、未来永劫…絶対に悲劇の起こり得なくなった世界。
「………なー…霊夢…?一体どうしちまったんだよお前」
そんな■■■に位置する、とある神社にて、魔女服を着た十代ほどの少女は呆れたような…心配するような目付きで…目線の先に位置する少女を見つめていた。
「…? どうかしたのか?そんなに私がおかしいか?」
───また、これだ。
思わず少女、霧雨魔理沙はため息を吐く。
声は同じ、姿形も同じ、記憶喪失というわけでもない。
なのに、今……親友である少女、博麗霊夢は魔理沙が知っている霊夢とはかけ離れた口調と所作で尋ねてきた。
「いや、そりゃあ…不審がるだろ。…この一週間で何があったんだお前……?」
キラリ…と、首に提げた銀色の十字架のネックレスを反射させながら霊夢は振り返ってくる。その表情は口角を上げて笑っていた。
「ふふっ…聞きたいか?」
時は遡り一週間前。
「い…っ…たた…」
神社の一室の中で、とある少女は目を覚ました。
「……?何が…どう、なって…」
最後に見ていた景色とは違って、目覚めると…何故か自分は部屋の中で眠っており、ご丁寧に毛布まで掛けられていた。
困惑気味に部屋を見渡すと、丸机の上に置き手紙のように紙とペンが残っていた。
立ち上がり、その紙を手に取る。
【昨晩の非常識な行動、伝言で申し訳ありませんが謝罪させて下さい。私自身、かなり舞い上がっていまして…説明もなしにあれほどの愚行をしてしまいました】
「愚行?」
小首を傾げて読み進める。
【実は、あの時。強引に別世界の記憶と力、この世界の情報を入れてしまいまして。一割ほどの確率で貴方様が死んでしまうところだったんです】
「は…?」
【ですが、無理やり入れられても形の変異など無いならば大丈夫だと思い書き残しを置いていきました】
「はぁぁぁぁ!?!?!?」
そこまで読んでから、少女は頭を抱えて叫びをあげた。
取り敢えずあの女を十数回ぶん殴ってやりたいところだが、裏に続きがあると気付き、紙をめくった。
【貴方に入れた記憶と知識には「幻葬狂」という世界の貴方の記憶と、その「幻葬狂」についての説明…いわば知識。「幻葬狂」については後で分かってくれればよいのですが、一番重要なことがあるのですが。
まず、貴方の世界──そうですね…仮名として「泰平郷」と、付けますが。その泰平郷も「幻葬狂」という世界になるはずだったのです。が、とある男性の使った能力【
「……よめない…」
……と、彼女───転換点の書き残した手紙はそこで
塗り潰されたように読めなかった。
この手紙を読んでも取り敢えず怒りしか湧いてこず、よく分からないが、…確か記憶を入れておいたみたいな事が書いてある。
「……んんぅ…? そんな記憶はないんだがな…」
と、腕を組んで唸った瞬間。
飛行船は墜落し、
少女は地上に着弾する……。
火だるまとなって四つん這いになりながら身体と服がグズグズになっても少女は怨嗟を込めて口を開く…。
「お゛の゛でぇ゛ぇ゛────」
喉から絞り出すような、思わず耳を防ぎたくなる声が響く。
「ゆぐ…っ…許ざんじょ゛ぉ゛ぉ゛……。ごの゛ま゛ま゛でだま゛るがぁぁぁ……」
「がぎゃらじゅ…っ!…ぎぎゃまだぢをぶだだび…びな゛ごろ゛じに゛─────」
しかし、その怨嗟の声を断ち切られることになる。
「お前が行くのは地獄だ」
身体は真っ二つに切られ、そこで…神に成ろうとした少女。博麗霊夢は死に絶えた。
「……っっ…は…ぁ…!!!」
少女、博麗霊夢はそんな…見たこともない感じたこともデジャヴもない記憶を追体験し……息を荒くしていた。
「なん…、だ…こ、れは…」
感情の起伏のせいなのかもしれないが、思わず左手を強く握りしめた時。
手に違和感を感じ…掌を開けると…
─────左手に持っていた置き手紙が塵屑を残して消滅していた。
「は…?……意味が…わから、な…」
思わず…その意味の分からさに目眩をした霊夢だが、ぶんぶんと頭を振って思い起こす。
違う、あの女の伝言にあったではないか。この世界の成る筈だった世界の博麗霊夢の記憶と知識、そして力を与えたと。
そして…「幻葬狂」という世界が生まれたきっかけは、とある存在たちが密接に関わっている。
もう二度とあんな歴史は繰り返させない…。 幾つもの平行世界を壊すだなんて…そんな事…この世界の皆にはさせない。
そして、そして…それが終わったら……この世界を救ってくださった─────あ、名前。……まぁ、良いか。「我が主」に感謝を伝えるのだ!
それから、霊夢は巫女の仕事をしながらも、色々な場所に行くようになった。
「あのー…霊夢さん?そんなくっつかれると邪魔なんですが…」
永遠亭の竹林の中、恐らく薬草でも探しに来ていたのだろう。そんな、鈴仙・優曇華院・イナバに擦りつくと…霊夢はジトーっとした目で鈴仙の顔を凝視しながら腕に絡みついた。
「…気にしなくて良い。私は監視しているだけだ」
「………キャラ変わりました?」
「そ…っ、そんなことはないぞ?…私は博麗の巫女!博麗霊夢だ!」
「…………」
「なっ、何だその目は!」
「はぁ…。それで、何の用で?」
鈴仙はよく分からない霊夢に呆れたのか、ため息を吐くと話を催促する。
「────鈴仙。君は、"世界を支配したい"と、思ったことはないか?」
霊夢が目つきの色を変えて問うと、鈴仙は────
「はぁぁぁ…??? 何言ってるんですか、霊夢さん。風邪がなんか引きましたか?」
ほんっとうにドン引きしたような目で霊夢を見貫いてきた。
「あぁ…いや、君にそういう意志がないなら…いいんだ。うん…。そ、それじゃあ、私はもう行くよ」
霊夢はわざとらしく目線を彼方に向けると、そのまま"飛んでいった"。
またあくる日、白玉楼。
霊夢は白玉楼にて、とある探し物をしていた。
「大丈夫なんですか?霊夢さん。…数時間前からずっと…そんな調子ですけど……。あ…っ、お茶入れましょうか?…それか私も手伝いますけど…」
「茶も手伝いも結構。──君たちのご厚意でこんな事をさせてもらってるんだ。探し物くらいは私がするさ」
「…そ…そう…ですか…」
そんな、妖夢の優しさも振り切っている霊夢。
それもそのはず、今現在霊夢は…白玉楼にて数日前から入り浸り探し物をしているのだが、その探し物は妖夢に見せては駄目なのだ。
(───折角…土下座までして探し物始めたんだし…。)
まぁ、あの時から鈴仙のところに行ってみても特に変わった様子は無かったため、あの例の物を妖夢が見てもどうにもならない可能性はあるが……、だとしても可能性は可能性。自分一人でやったほうが危険性は少ない。
土の中にでも埋められているのかと思って、それっぽい所を掘り起こしても何も出てこなかった。最後は……
「───あの蔵…か」
嘆息すると、霊夢は歩を進めた。
また、あくる日。紅魔館。
「へ?咲夜さんの事を聞きたい……ですか?」
「そうとも。何でも良いから聞かせてくれないか?」
真剣な物腰で、門番である紅美鈴にそんな事を霊夢は尋ねていた。
何故かニヤつかれて…背中をぽんぽんと叩かれたのだが…どういうことだろうか。
「あ、…でも…そうですねぇ…。変な噂は聞きましたけど」
「変な噂?詳しく聞きたいな」
「えぇと…確か……───────ていう話は聞きましたけど…。怖いですよね、まぁ…咲夜さんなら大丈夫だと思いますけど…」
「………ちっ…」
霊夢はその話を聞き終えると…不機嫌そうに眉を歪めた。
その後─────ようやく霊夢はある男を捕まえることに成功していた。
「ひ…っ…、お…お前……博霊のみ、巫女が…こん、こんな…事して…言い訳が…っ…!」
十六夜咲夜のストーカーであった街の人間界は恐怖に顔を歪めていた。
夜の森林は、真っ暗で人けなど全く無く、ただ月影が霊夢の冷たく嗤う表情を際立たせている。
「……君か、咲夜を殺す男というのは…」
表情を同じくして告げると、男はただわけがわからないように眉をゆがめ、叫んだ。
「…な、何言ってんだお前!頭イカれてんじゃねぇか!?」
霊夢はそうかそうか…と、静かに呟くと男の左腕を消し飛ばした。
「あぁぁぁぁぁぁ!!!!」
断面は焦げたようになり、血すらも出ていないが。男は苦しみ悶えながら地面に転がった。
それを感情の揺れ幅を全く見せない表情で、霊夢は見届け、小さく唇を動かす。
「……────確かに君の心情は理解できなくはない。人を嫌い、他者を近づけさせない彼女は君のように凡庸なものからすれば惹かれるのも頷ける」
まあ…と言って霊夢は続ける。
「…我が主が…わざわざ救ってくれた世界を…。たった一欠片でも崩すわけには行かない。」
ガシリ…と、男の頭を手で掴むと…そのまま霊夢は能力を使い…男を一欠片の分子も残さず滅し尽くした。
「……さ、帰るか…」
──────そして、時は現在に戻る。
霊夢の変な噂でも聞きつけたのか、神社の縁側に魔理沙は座りながら…こちらにジメッとした視線を向けていた。
そんな魔理沙に構わず霊夢はとあることを尋ねる。
「……変な薬とか作ってないだろうな…魔理沙」
「何言ってんだお前???」
「魔法使いなら『元気になるお薬』とか、作ってそうじゃないか」
「お前は魔法使いをなんだと思ってんだ!?少なくとも私はそんなことしないわ!」
くわっと、魔理沙が息を荒くして叫ぶ。
「そもそもお前なんで、巫女のくせに十字架のペンダントなんか付けてんだ?」
「ん、あぁ。香霖堂でビビッときてな、買ったんだ」
そう言うと、本当に心配そうに魔理沙が顔を歪めてくる。
「…お前ほんとにどうしちまったんだよ。この前会った時には金が無い事を嘆いたじゃねぇか…」
ため息を吐いた後、魔理沙は聞くと、霊夢は含み笑いをこぼした。
「私は変わったんだ」
「変わった?」
「ああそうとも、────というか…そうだな、逆に聞きたいが…。魔理沙には無いのか?…そういう別の世界の自分の記憶が…」
「…………」
魔理沙は見たこともないぐらいに、霊夢にドン引いた顔を見せると…。何かを思い出すように、数秒思案し…小声で「あぁ…なるほど…口調も格好も…そういった年頃か…」…と、何かつぶやいたかと思うと…苦笑いを浮かべてきた。
「私は良いと思うぜ?別に非難されることでもないしな。────ただ、その…早く治せよ…?」
と、言って気まずそうな表情を作ると。箒に乗り、…そのまま去っていった。
また、あくる日。霊夢は八雲紫にとある頼み事をしていた。
「……急に来たと思ったら…何の相談よ…それ」
話を終えると、紫は不可解そうに眉をひそめていた。
「…紫ならできるだろう?"現実世界の女性1人を攫うことぐらい"…な」
「そんなことをするメリットが誰にもないわね。───というか、そもそも貴方どうしたのよ。巫女なのになんで十字架?」
「………前者の質問のみに答えるが、メリットは勿論あるぞ。────私が我が主に褒められる!!」
「………は?」
「??? どうした」
「いや、…え?…ごめんなさい。よく聞こえなかったわ。もう一度言ってくれる?」
「私が我が主に褒められる!」
「…………………」
霊夢が即答すると、紫はなんとも言えぬ表情で、深いため息を吐くと…そのまま霊夢を嗜めるように優しく語りかけてきた。
「あのね、霊夢。確かに貴方の変な噂はここ最近耳にしていたわ。【咲夜と鈴仙を狙ってる】だの【白玉楼に入り浸って変なことをしてる】だの【人間の街に行っては誰かもわからない存在の偉大さを演説してる】だの……。話したらキリがない…」
でもね?と言って紫は続ける。
「結局、貴方が言っている「主」って誰のことなのよ」
「………分からない」
「……名前は────」
「知らない」
「…え、…えぇと…。特徴は───」
「とんでもなく優しいお方だ」
「………性別は?」
「きっと男性だ」
「貴方はその…「主」に褒められたいから…こんな奇行をしてるの?」
「そうとも」
その問答中、紫は頬を痙攣させたようにピクつかせて…、呆れ果てたような声音になっていた。
「……そもそもね、霊夢。貴方…おかしいのよ最近。…その主の事も分からないのに…なんでそんなに…なってるのよ…」
紫から詰めたてられると、…霊夢は「うるさーい!とにかく、紫は現実世界にいる【東風谷早苗】を攫ってくれば良いんだ!」
と、言葉を砕けさせながら叫び、そのままマヨヒガを去っていった。
「……一体…彼女に何があったのでしょうか…」
その一部始終を聞いていた藍が…霊夢の去っていった方向を見ながら紫に問いかける。
「……はぁ…。仕方ないわよ…。でも、東風谷早苗…ね…。霊夢がなんで彼女を知っているのか分からないけど……」
紫は嫌そうな顔をしながらも、……終いにはため息を吐き、現実世界へのスキマを開けた。
「………」
その後、霊夢は……紫の協力のもと、緑色のロングヘアーをした、女子高生を縄で神社の柱に縛り付けていた。
霊夢からしたら何か暴れるのかと思っていたが、意外にも早苗は暴れず、すんとした表情でこちらを見据えていた。
「何も、言わないんだな」
「別に……どうでもいいし…」
自分のことだというとに、まるで他人事のように早苗は言ってくる。
だが、霊夢は知っている…。彼女は…今から数日後にクラスメイトと家族を殺害することを。
てっきり、鈴仙の狂化催眠がなければ大丈夫かと思ったが…こちらはそういうことでもなかったらしい。
────そして、もう一つ。霊夢は知っている。彼女、東風谷早苗が…退屈な日々に飽き飽きしていることを。
だから、こそ…この提案をする。
「東風谷早苗…少し提案をいいかな?」
「なに …」
気怠げそうに言う、早苗にこの神社を指しながら大仰に放つ。
「博麗神社の…巫女になってみる気はないか?!」
そんな、提案を。
「────は?」
早苗はそこで始めて顔を歪め、こちらに視線を合わせてきた。…きっと、何もかもが意味不明なのだろう。
「…ふふ…っ、後で説明はするが…。この世界はとても面白いぞ?それは、君もわかるだろう?────本来ならばこんなことなどないのだがな…、どうだ?受けてみる気はないか?」
しかし、早苗は鼻で笑って返す。
「何言ってんの?あんた、そんな事やる意味が一つもないんだけど?」
けれど、霊夢は全く引かずに言葉を返す。
「………これだけは保証してあげよう。君は…必ず、その"退屈な日々から抜け出せるぞ?"」
と。
そして、そんな日々から合計で一ヶ月。
霊夢は自分でも完璧だと思えてしまうほどに、全ての要因を消せているような気がした。
「ふふ…っ、これなら…我が主も褒めてくださるはず…。」
が、一つ、問題があった。
「…………我が主は…いったいどこに…?」
そう、それが全くわからない。
……まぁ、今の霊夢は特段やることもない。最近は新しく博麗の巫女に付いた博麗早苗(名字は簡単に捨てていた)が、意気揚々と巫女仕事を楽しそうにしているため…前任の霊夢には全くやることがないのである。
だから、その日も我が主の事を演説していたのだが……。
『何やってんだお前…』
「……?」
見たこともない青年から、霊夢は話しかけられた。
「何だ、君は」
演説用の脚立から降り、霊夢は青年に視線を向けた。
黒色の外套を羽織った青年である。
頭は整髪料でも使っているのか、ツンツンと尖らせている。
『────いや、行き交う奴ら全員に無視されてるのに演説続けてる奴が居たら…話しかけたくなるだろ』
至極当然のような顔で青年は言ってきた。
「……あのなぁ、私は今、我が主の素晴らしさを演説していたんだ。静かにきくならまだしも、話しかけるとはどういうことだ?」
詰め寄り、グリグリと指で青年の胸元を押す。
『我が主?』
青年が眉をひそめてくる。
「あぁそうとも。……そうだな、近づきの証として君にも我が主の事を教えてやろう。」
『???いや、良いんすけど…』
「まぁまぁ、何も逃げることないじゃないか」
逃げようとする青年の肩をガシリと掴み、制止させると…。霊夢は話始めた。
『うげ…っ…吐きそう…』
「ふふっ気分が良いものだな。ここまで聞いてくれる者が居るだなんて…」
一仕事を終えたように、霊夢は汗を拭うと…清々しく言った。
『お前、……名前…なんだよ…』
青年は気分悪そうにフラフラとさせながらも、まるで恨みの対象のように見てきながら名前を問うてきた。
「…知らないのか?───博麗霊夢。元、博麗の巫女だ。君は?」
『……基準点』
その名を聞くと、霊夢は不快そうに眉をひそめた。
「き、…基準点…?なんだその名前は…」
『うるせぇな…そういう名前なんだから仕方ねぇだろ…。』
「……まぁ、そうだな。だとしても…我が主の話をマトモに聞いたのは君が初めてだな。………そうだ!我が主に会えたなら、"貴様"を我が主の下僕として働かせてやらなくもないぞ?」
『やるわけないよね?何言ってんのお前』
「……?」
『何意味がわからないみたいな顔してんだ…?』
それが、彼…基準点と博麗霊夢の出会いだった。
「はぁぁ、…客ぅ…?何勝手に話し通してんだよ。そもそも、神社の管理すべて私にさせておいて…客人を招くとかどう言う神経してんだよ」
その後、基準点が話をしたいと言ったので博麗神社に招こうとしたのだが…。
博麗早苗によって、霊夢は床に正座させられていた。
不機嫌そうに顔をゆがめながら、ガムを噛んでいる。
「わ、わかった!…今度街のスイーツを奢ってやる…!だから、今回は────」
「幾つ?」
「え」
「だからぁ、幾つ?」
「…ふた…、いや…三つ──」
「は?」
「…っ!あぁいやその…。五つ…」
「チ…ッ…。勘弁してやるよ」
早苗は舌打ちをすると、去り際に基準点も睨んで階段を降りていった。
「───で、私の出費が痛くなることが確定したわけだが…何の話があるんだ?」
霊夢は、殆ど涙目になりながら…口調は決して崩さず、基準点に向き直ってきた。
『───おまえ、その平行世界の何処かに居る主の場所が知りたいとか言ってたよな。……』
特段基準点は反応してやることなく、言葉を紡ぐ。
「そ、そうだが?」
『……多分、俺の力を使えばいける。』
基準点は静かに呟いた。
「な…っ…ほ、本当か!?」
『あぁ、だけど…失敗しても文句言うなよ?』
「勿論!一%でも確率があるなら私は責めないさ!」
霊夢がそう言ったのを確認してから、……基準点は右腕を引き千切った。
「え……」
『安心しろ、義手だ。』
絶句する霊夢にそう言うと、基準点は……その力を解除し、…発現させる。
グチュグチュ…と、生々しい音を立てて…基準点の右腕が変貌していく…。
骨が伸び、筋肉繊維が纏わりつき、肌、指、爪を生み出す。
そして、数秒後には完全に基準点の右腕が生えてしまっていた。
『
彼は止まることなく、そう呟くと…そのまま─────────博麗霊夢と一人の青年は泰平郷から姿を消した。
泰平郷編、第二話に続く