デート・ア・ライブIF 【エラー】   作:セルヴェイエ

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泰平郷編【異形郷進出】

 

 

 

 

 

 

 

 

──────『…【基準点】…ですか…。くひっ…くひひ……。あぁ、全てが上手く行き過ぎて心臓がひっくり返りそうですよ…』

 

 

 

その光景を、本を媒介にして視認しながら…少女は呟く。

 

 

ブロンドの髪につばの広い黒い帽子。黒い装丁の本を開きながら…彼女【転換点】は青い縁でいろどられた彼女以外が見ることのできないウィンドウに目を通していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

- 【基準点】

本名:■■■■

 

 

- 出自世界:【とある魔術の禁書目録】

世界線種類:■■に■■■るIF

 

 

- 特性:【幻想殺し(イマジンブレイカー)】=[世界の物差しの象徴。右手首の先のみに発動し、触れた事象や現実、物体が世界の基準に適さない特異ならば問答無用で消し去る力を持つ]

 

注意事項:この能力は当人も理解できない部分が多く、その上で良い悪い関係なく弾いてしまうため、使い勝手も悪い。

 

 

- 元立ち位置:【主人公】

 

出自世界座標:不明(消滅済み)

 

 

 

 

 

『へぇ…』

 

思わずその文章を見て、思わず感嘆の声を漏らした。

 

 

 

 

『異常でありながら……名前を持っているどころか、【主人公】と来ましたか…。くひひ…。これはこれは、面白い方ですね…』

 

 

 

けれど、今度は冷たくなった目でため息を吐く。

 

 

 

『……あまりにも弱い……ですね…』

 

 

その言葉を告げる。

 

 

そう、素の身体能力が弱いわけではないのだが、あまりにも能力が弱すぎる。────そもそも、世界の基準など改ざんしようとすればでき………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続けて現れた文章も、読むと……転換点はその、表情驚愕のものに変えた。

 

 

 

 

『………は、……【無盧無奥(■■■■)】…………?』

 

 

 

- 【無盧無奥(■■■■)】:右腕にある【幻想殺し(イマジンブレイカー)】がある状態でのみ発動することができる。

-

 

- 能力内容:%&!$^#*@)_+={[:;”’?/髢髢諳謎諪¥`~÷×§¶∞¢£譁謫謠讓譏謗謚譚譛-|€‹›fifl‡°·‰±œ®†™

 

- 注意事項:縺薙?蜉帙?蜿ウ閻輔?縲仙ケサ諠ウ谿コ縺励?代→縺?≧謚大宛縺後↑縺代l縺ー繝槭ヨ繝「縺ォ逋コ蜍輔〒縺阪★縲∫┌逅?d繧顔匱蜍輔☆繧後?縺昴?菴呎ウ「縺ァ荳也阜縺梧カ医@鬟帙?

 

 

 

 

やはりその能力は一旦すらも見ることができない。

 

 

 

 

 

が、さしてそこは重要ではない。なぜ、ただの主人公が"あの"力を使っているのかということである。

 

 

 

 

 

────まさか。

 

 

そんな、の…あり得る…のか…?

 

 

 

『…………許さない』

 

 

転換点はその予測を立てると、ギリと歯を噛み締め、うわ言のように呟く。

 

 

 

 

が、ハッとした様子で転換点はぶんぶんと頭を振った。

 

 

『ふぅ…。駄目…ですね。今回の目的は博麗霊夢に接触することだけなんですから…』

 

 

 

 

 

『もう、大勢殺してしまいましたし…』

ふふふと微笑みながら、転換点は背後を見やった。

 

 

 

 

そこには、愚かにも自分を襲ってきた男たちが居た。

 

 

 

否、その血溜まりは男たち"だったもの"と形容したほうが良いかもしれない。

 

 

 

 

多数の人間の内臓はグシャグシャに飛び散り、血は自然を汚し、転換点の足元にはもう誰のものだったかも分からぬ人間の目玉が転がっていた。

 

 

 

 

 

 

それを観ながら、ふうと吐息する。

 

 

怒りのあまり、【爆裂四散】にしてしまったが、今度は【感電死】や【窒息死】などにしたほうが良いかもしれない。

 

 

 

 

まぁ、こんな所で停滞していても匂いでそろそろ誰かが来るかもしれない。

 

 

 

そう思い……ウィンドウを開くと、その中の文章を付け足し、改変して、…今度はにこやかな表情を浮かべるとそのまま青塗りのウィンドウを閉じて歩き出す。

 

 

『さ、次の世界に行きましょうか…。全ては…あの方のために』

言いながら、本を開き…次の目的を確認しながら去っていく。

 

 

 

そうして、転換点が立ち去ったあとには……血溜まりも、血しぶきも、グシャグシャになった人間の欠片や内臓も…何も無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────嗅いだこともない世界の香りが鼻腔をくすぐる。

 

 

 

 

 

もう、ため息も疲れも憂鬱も現れない。

 

 

 

 

 

ただ、ただ、"反吐が出る"

 

 

 

 

 

結局、あの方に負を遭わせる全ての要因に憎しみが募る。

 

 

 

 

 

けれど、それはいけない。『憎しみは不幸しか呼ばない』…そう言われたから。

 

 

 

 

だから、その想いを必死に抑え込み、気分を変えるように本を開く。

 

 

 

 

 

 

 

見開いたページには自分の能力とリンクしてこの世界の情報が出力されていた。

 

 

 

 

『ふぅん…。【葬送のフリーレン】…です、か……。聞き覚えもないですし、…やはり二週目は長い道のりですね』

 

 

読み進めながら、転換点は放念の息を吐く。

 

 

 

────と、そこで

 

『へぇ…"魔族"ですか。それに魔王も居る、魔法や呪いもある、と。ふふ…っ…懐かしい響きですね』

 

 

少女は次のページに進むと…以外そうにニコリと、微笑んだ。

 

 

 

 

 

けれど……少女は一つ、気に食わぬ事実を見て、顔をしかめる。

 

 

 

 

「────人を殺しても何も罪悪感を抱かない?」

 

 

 

ポツリと本に書かれた文を読む。

 

 

そう、魔族の事について説明がある部分には───過去未来の内容も含めてその魔族という生態がかかれていた。

 

 

 

別に、自分の世界とは違うから仕方ないと言えるだろう。

 

 

法則も摂理も始まりも価値観も何もかも違うえばそういう世界が生まれるのは〝理解はできる〟。

 

 

 

 

 

けれど、「────〝許容はできない〟」

 

 

 

 

「魔王という存在が居るだけでも無性に腹が立つのに、………人間を何も理解しない…だと?」

 

その世界は元々いた自分の世界とたった一つを除けば殆どが同じだ。

 

 

 

 

魔族や魔物が存在し、魔法や呪いが介在し

 

人間やエルフやドワーフなどの多数の種族が居て

 

魔力があって、"科学"というモノが進んでいない

 

魔族が人間の常識を理解できず、それこそ「ただ人の言葉を真似るだけの獣」と言われるような怪物としてしか成り立っていない。

 

 

 

 

 

たった一つの違い、それは

 

 

 

統治者が居て、その方はどこまでも……優しく強く厳しかった事。

 

 

 

 

『くひっ、…くひひっ…。良い、ですよ。…ちょうど、ムカッ腹が立っていたんです。この世界に居るすべての魔族とやらを皆殺しにしてから次の世界に行くとしましょうか』

 

 

 

 

転換点は三日月のような笑みをつくると、そのまま…北に向き直り…歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は────〝転換点〟変化を嫌い、永遠を好む者。

 

 

 

自身が愛し、信じ、忠誠を誓った主の心を理解するために名を捨てて

 

 

 

死んでしまった主にもう一度出会うことが生涯の目的であり夢

 

 

 

 

 

そして─────又の名を郢晢スャ郢ァ?、郢晢スエ郢晢スウ郢晢スサ郢晁シ斐°郢晢スウ郢ァ?ケ郢?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜■〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ……。し、死ぬかと…おもっ、た…」

そんな風に肩で息をする少女、博麗霊夢はようやく境内に帰ってきて…冷や汗を流していた。

 

 

 

『や…、悪かった…。まさか、飛んだ真下がマグマとは思わず…』

 

汗だくの少女の背中をさすりながら言うのは…そんな現実を作り出した張本人である青年──基準点だった。

 

 

 

 

 

 

────そう、数分前、少女の言う「主」の世界に行くために、この世界にかけられたという能力の残穢を辿り、その世界に行こうとしたのだが…。

 

 

慣れない能力のため、失敗し、その上で火山口の上に転移するという低確率を引いてしまったのだ。

 

 

 

一応、二人とも浮遊能力は持っていたため、大事には至らなかったが…。戻ってきた時には霊夢が顔を青ざめさせていた。

 

 

 

 

『ホントにすまん…。慣れない能力で…』

 

 

基準点が申し訳なさそうに言うも、

 

 

「あと少しで死ぬ所だったんだぞ!?慣れない能力だとしても"運がなさすぎる"んだが!?」

 

最悪の想像をしながら霊夢は、叫んできた。

 

 

その言葉に、ほんの少しだけ、基準点は肩をピクリと震わせたが…そんな些細なことに霊夢は気付かない。

 

 

 

 

「まぁ、失敗の確率を了承はしたから文句を言う資格はないのだが…」

 

 

そして、ふうと吐息してから。大事な事を思い出すように…顔をしかめた。

 

 

 

『?どうしたんだよ』

 

 

 

「いや、よくよく考えてみれば…今ここで我が主の世界に行けば後から早苗にどつき回されるところだった…」

 

霊夢が恐怖に慄いた顔でわなわなと手を動かす。

 

 

『いや、確かにそんな話してたな…』

後頭部を掻いて言うと、霊夢はぶんぶんと頭を縦に振ってくる。

 

 

 

「さて、…私は早苗を探してスイーツでも奢ってくる…。君は、ここでその能力でも慣れさせておいてくれ」

 

霊夢が憂鬱そうに口を開き、そのままトボトボと襖を開けて去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………え、俺一人…?』

足音が聞こえなくなった頃、現実を理解した基準点がポツリとつぶやく。もちろん、その声に反応するものは───────

 

 

 

 

 

「おい、そこのお前」

 

 

と、その時。今帰ってきたのか博麗早苗が部屋に顔を覗かせ基準点に話しかけてきた。

 

 

 

 

「え…、あ、あぁ…。なんで…しょう、か?」

吃りながら、疑問形で返すと、早苗は舌打ちをしてから部屋を見渡し口を開く。

 

 

「あの巫女…どこいった?」

 

 

『霊夢か?アイツならあんたを探しにさっき出かけたが…』

 

 

それを聞くと、早苗は額に手を当てがい、深いため息を吐いた。

 

「面倒くさ、…萎えるんだけど……」

 

 

 

 

 

 

 

そして、彼女は"コインを投げる"

 

 

 

 

 

 

 

『……は…っ?』

 

 

 

 

 

────「え、何で…私がここに」

 

 

 

 

 

 

直後、基準点は瞠目し、霊夢はキョトンと首を傾げた。

 

 

 

「面倒くせぇことしてんじゃねぇよぉ、疲れんだからやらせんな」

 

そんな戸惑う二人を意に介さず、博麗早苗はもう一度深いため息を吐いてから霊夢に向き直った。

 

 

 

霊夢は、一瞬状況が飲み込めないように部屋を見渡したが…早苗がいることに気付き、ああと理解の声を上げた。

 

「君の能力…か?…それなら私がここに転移したのも納得だが…」

 

 

「んなことは、どうだっていいし。話終わったんだろ、だったらさっさと街行ってスイーツ奢れ」

 

 

「え、…いや…。早くな────」

 

 

「良いから、さっさと歩け」

 

 

 

 

 

そうして、霊夢は早苗に引き摺られていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『結局…俺一人かい…』

目の前の光景を遠い目で見つめながらポツリと基準点は呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜◆〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、基準点は二人の少女が出ていったのを見届けてから、先ほどの神社から3kmほど離れた開けた森の中に来ていた。

 

 

 

 

何故、か。─────それは

 

 

 

 

『やっぱり…、違和感がある…』

 

基準点は小さく唇を動かしながら顔を難しげにゆがませた。

 

 

 

 

周囲の地面や木々には齟齬感はない。

 

 

 

 

 

───『ま、…試してみたら分かるか』

 

 

 

 

気だるげそうに右腕の裾をまくると、再び右腕を顕現させる。

 

 

 

そして。その右腕で地面に触れ、【無盧無奥(■□□■)】を発動させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────が、

 

 

 

 ばちぃッ…と、雷に打たれたかのような痛みが走ると同時に基準点の右手は弾かれた。

 

 

 

 

 

 

『な…ッ…!?』

 

顔を驚愕に染めながら、その場所を見やる。

 

 

 

なんも変哲のない地面しかない…筈なのに…。

 

 

 

ありえない、まず…その思想が頭を巡った。

 

 

 

何かが在ろうと無かろうと、関係なくその事実が分かる。

 

 

 

なのに、弾かれた。───例え自身が【無盧無奥】を使いこなせていなかったとしても…この能力を正面から弾いた…?

 

 

 

 

そんな、力。基準点は殆ど知らない。

 

 

 

 

 

 

『…………チッ…。一体どういうことだよ』

 

この能力を正面から弾ける、真っ先に思いついた存在は…。

 

 

 

 

『アイツが…来てた、のか…?』

 

 

けれども、その可能性は低いと頭を横に振る。

 

 

 

 

 

『あー…考えたって仕方ねぇ…』

基準点はガリガリと後頭部を掻くと、そのまま先ほどの神社へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜◆〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ぜぇ…はぁ…はぁ…。す、すま…ない…。お…っ…遅くなっ、なった…」

 

 

 

 

居間で、基準点がぼーっとしていると、突然。襖を開けて肩で息をする少女が現れた。

 

 

 

 

 

結局。少女、霊夢が帰ってきたのは、夕方の刻であった。

 

 

 

 

「げほっ…ごほっ、ごぼべぶぁ……っ」

 

苦しそうに、壁に手で寄りかかりながらせき込んでいる。もう、咳に聞こえていなかったような気もするが…。

 

 

 

 

『何があったんだよ…お前』

思わず遠い目で基準点は尋ねてしまっていた。

 

 

 

「い、いや…。私のことは…。ごふっ…。構わなくても…大丈夫だ…。──ぐふ…っ」

 

 

 

 

『………………まぁ。なら良いんだが』

特段ツッコむのも疲れたので基準点はそれ以上の詮索はしなかった。

 

 

 

『俺も終わらせてぇし、さっさと飛ぼうぜ』

 

と言って、基準点は霊夢に手を差し出す。

 

 

 

「あ、ああ…行こう、か…」

ぎこちなく、言葉を発すと霊夢は手を握り返してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『────【無盧無奥(□□■□)】』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜■〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出てきた場所は雑木林───いや、竹林だった。周囲に霧がたちこめており、地理は把握できない。

 

 

 

 

先ほどの座標ミスの件もあり、緊張をしていたが…少なくともすぐに命の危機にありそうなことはなかった。

 

 

 

 

しかし、『なんだ…この場所…』

 

 

基準点は思わず唸ってしまっていた。

 

 

 

多数の世界を経験している基準点ではあるが、この場所は形容できないほどに不気味で生気がなく、自然の中だと言うのにほんの少し怖気があった。

 

 

 

 

「……なんだ…この場所は…」

 

そんな事を考えていると、隣に居た霊夢が恐らく基準点と同じような事を思ったのか周囲をキョロキョロと見渡していた。

 

 

 

 

「……だが、…うぅむ…。どこか…見覚えが……」

 

と、霊夢は上空を見上げて、どこかうわ言のようにぼやいた。

 

 

『どうした?』

 

 

「いや、なんでもない」

 

 

 

基準点はそうか? と小首を傾げたが、次いで────背後からガサガサと音がして、二人は揃ってばっと振り向いた。

 

 

 

しかし、霧の中から顔を出したのは至って普通の可愛らしい兎だけだった。

 

 

 

 

『はぁ…。何だよ…』

強張らせた顔でため息を吐こ、うとした時。

 

 

 

 

 

 

 

『────っ…』

 

 

 

霧から現れた兎の全貌が明らかになり、基準点は息をつまらせた。

 

 

 

 

 

頭部は先ほど見たように、耳は丸っこく、愛らしい見た目をしているのにもかかわらず。

 

 

 

絡み合った触手のようなものが首回りから夥しく溢れたように吐出し、首から下は、骨が浮き出たような肉つき、腹の肉を裂いて出でた肋の骨、左後ろ足はひしゃげたように潰れ地に引き摺っている……そんな、生き物とは思えぬ体つきをしていたのだ。

 

 

 

 

 

基準点は一瞬でこれだけは理解した。────ここはヤバい。

 

 

 

 

『…っ! 今すぐ元の世界に帰るぞ!』

 

 

 

「……?!わ、分かった!」

 

基準点が叫ぶと、霊夢は驚いたように肩を震わせながらも返してきた。

 

 

すぐに、二人は手を取り合い…転移をする。

 

 

 

 

 

 

 

一つだけ良かったのは、この兎が自分たちに敵意がなかったことだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

─────しかし、忘れてはいけない。

 

 

彼、基準点は……右腕がある状態ではとてつもなく不幸になることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〘 くすくす 〙

 

 

 

 

 

 

『………』

 

「………」

 

 

 

笑い声、なのだろうか。

 

 

 

再び、後方から…そんな〝音〟が聞こえた。

 

 

 

両者そろって、動きを止める。呼吸が止まる。心臓の鼓動さえも止まった気がした。

 

 

 

 

 

基準点は、ごくりと…唾液を飲み込んでから…。錆のついた機械のように、震えながら…背後を振り向いた────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〘 ほ ほ ほ ほ 〙

 

 

 

 

 

容姿は平均的な人間に近く、長く黒い髪も能面のような表情と顔も、地に引き摺らせている着物、自分たちを微笑む姿

 

 

 

 

 

 

 

『………っっ…!!!霊夢!!!離れろ!』

 

 

その、姿を認識した瞬間。基準点は思考よりも先に脊髄で叫びを上げた。

 

 

 

 

 

 

確かに…アイツは、普通の存在のように思える。

 

 

 

 

 

 

でも、基準点は…アイツがどれだけ、異端かを殆ど直感で感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

そして、すぐに答えはわかった。

 

 

 

 

基準点は叫んだ直後に、霊夢を手で突き飛ばし、互いに距離を大きく開けたのだが。

 

 

 

 

 

その刹那、能面野郎の腕が蠢き、左腕の裾口から腕ではなく、絡み合った枝の塊のような物が凄まじい速度で伸びてきて…丁度、一瞬前まで霊夢と基準点が手を繋いでいた空間を攻撃してきた。

 

 

しかも、その攻撃はそこで止まることなく竹林に大穴を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

『(あいつ…、まさか…。俺たちを…逃さないために…?)』

 

 

考えすぎかとも思ったが、そんな事を思考している暇はない。

 

 

『れい──…っ!』

 

 

霊夢に声をかけようとして、隣を見ると、失神していた。

 

 

おそらく、先ほど基準点が霊夢を突き飛ばしたときに竹に頭でも打ったのだろう。

 

 

思わず歯噛みする。

 

 

 

 

 

 

 

〘 ほ ほ ほ 〙

 

 

能面野郎は基準点の心情を知ってから知らずが、そんな音を発しながら…メジャーのテープのように、枝のような塊をぎゅるぎゅると裾口まで戻していく。

 

 

 

 

 

『おい、お前!いきなり攻撃してくるってどういうことだよ!何がしたいんだ!?』

 

冷静になることのできない基準点が能面野郎に向き直りながら、叫ぶ。

 

 

 

 

〘 ……… 〙

 

すると、ソイツは何故か押し黙った。

 

 

 

 

 

 

『………』

 

基準点が能面野郎への警戒心を解かずに問いながら、霊夢をみやる。

 

 

 

 

 

やはり、頭から血は流しているが…。それほど深い傷というわけでもない。命には特段別条はないだろう。

 

 

転移する前にどこか疲れた様子だったし、少し休ませればよかった。

 

 

 

そんな、後悔が押し寄せるが…今はそんな事よりも目の前の能面野郎をどうするかを考えないといけない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────すぐに霊夢の手を取って転移する?

 

いや、駄目だ。アイツの攻撃はそれよりも速い。それに、それぐらいはアイツも警戒してる、無理に決まってる。

 

 

 

 

───霊夢を抱えて空を飛ぶ?

 

それも、出来ない。俺は飛行というよりも浮遊に近い、それこそ、人一人を抱えた上であの能面野郎の攻撃を避けれるとは思えない。

 

 

 

───アイツを…倒す…?

 

一番…無理だ。────勝てる気が俺はしない。

 

 

 

 

 

 

 

───なら、みすみす…やられるのを待つ…?

 

 

 

 

 

 

 

 

ゾワリ…と、基準点は背を震わせた。

 

 

 

「やらせるかよ…」

呻くように呟く。

 

 

 

霊夢は今日出会ったばかりの、ただの少女。でも、だとしても、基準点はそんな少女を置いて逃げるだなんて出来るはずなかった。

 

 

 

 

きっと、それは……

 

 

昔助けることのできなかった一人の少女と霊夢を重ねているだからなのかもしれない。

 

 

 

もう二度と、目の前で誰も死なせない。

 

 

 

 

「ああ、良いぜ!?さっさとかかっこいよ!能面野郎!」

 

基準点は目の前の存在を挑発するようにくいくいと指を曲げる。

 

 

 

 

 

 

 

………〘 ほ ほ ほ ほ 〙

 

 

 

 

能面野郎は大層可笑しいかのように、真っ黒で深淵のような目を大きく開き、口角を動かし笑い声を上げてくる。

 

 

 

 

 

まるで、殺しを遊びとしてしか考えていないようなお気楽さ、けれどそこにある、確実な異質さ。

 

 

 

それを踏まえた上で基準点は

 

 

『【無盧無奥(■■■■)】!!』

 

 

右腕を振り上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

〘 ほ 〙───

 

 

 

 

 

ソイツの笑い声はそこで止まる。

 

 

 

何故なら、基準点が振り上げた場所の延長線上に位置するソイツの肉体が頭から足元の縦にかけて、着物も含めて真っ二つに裂けたからだ。

 

 

 

 

血が面白いぐらいに噴き出し、能面は苦しげにうめきながら地面に倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……や、やっt───』

その言葉を言う前に基準点は自分の口を塞いだ。

 

 

 

が、そんなものは関係なく……目の前の能面野郎は倒れ伏しながらこちらに真っ黒な目を向けてきた。

 

 

そして、関節を無視するような動きで無理やり、立ち上がってくる。

 

次いで能面野郎の両断面から髪の毛のような細長い触手が縫い合わせるように…ぐちゅぐちゅと不快な音を鳴らしながら異様に修復していく。

 

 

 

数瞬後には衣服も含めて…全てが元に戻り、笑みをこちらに見せてきた。

 

 

 

【これで終わりか?】と言わんばかりに。

 

 

 

 

時間を与えずに、すぐに基準点は右手を能面野郎に向ける。

 

 

まるで、照準を定めるようにしながら

 

 

『………【無盧無奥(■■■□)】…っ!!!!』

 

この力をもう一度放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

今度は能面野郎の肉体をバラバラの細切れにした。

 

 

 

 

ぼたぼたと肉体の欠片が落ちていく。

 

 

 

 

 

『はぁ…っ、はぁ……』

ぽたぽたと汗が顔から垂れ落ちる。

 

 

 

やはり、慣れないこの能力は体力消費が凄まじい。それを無理やり連続で発動しすぎたものだから、疲れがたまっていた。

 

 

 

 

 

 

〘 ほ ほ ほ ほ 〙

──が、その肉体の欠片たちが今度は宙に浮いたかと思うと、一つ一つが能面野郎の顔のようになり基準点の周囲を包囲し、再び笑ってくる。

 

 

 

 

『……クソが…』

 

それを見ながら疲れ切ったように息を吐く。

 

 

 

 

別に、基準点は死ぬのはどうでも良いのだ。彼は殺されたとしても勝手に別の世界で蘇る。

 

 

 

異常はきちんとした手段でないと死ねない。だからこそ、当人に目的意識があるのならば二次元が免疫反応のような形で勝手に他の世界に復活を遂げさせる。

 

 

 

でも、霊夢は違う。───少なくとも基準点は、この霊夢という少女の目的の終わりまでは連れて行くと決めているのだ……こんな所で終わるわけには行かない。

 

 

 

そんな、〝覚悟〟をしながら…身体にムチを打って能面野郎に向き直る。

 

 

 

 

 

〘 ほ ほ ほ ほ 〙

 

 

 

 

 

『うるせぇよ、───能面野郎』

 

 

言葉を吐きながら…彼自身も冷たい声と笑みを返す。

 

 

 

 

 

『【無盧無奥(■■□■)】─────【天地再定(フェルミナス)】』

 

 

 

 

 

 

今度は一片の欠片すら残さずに……能面野郎の顔たちをひしゃげさせ、絞り、曲げて、押し潰した。

 

 

 

 

びちゃびちゃと血溜まりが滴る、それ以外は何も起きない。

 

 

 

一番良かったのは、霊夢と自身に返り血が付かなかったことだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

しかし─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はは……まじ、かよ…』

 

そんな、適当な事を考えているのも束の間。

 

 

 

 

今度はその血溜まりが蠢いたかと思うと、基準点の眼前の宙に収束し始め、骨と肉と髪と布を形成していき、

 

 

 

再び能面野郎は人型の姿で再生した。

 

 

 

 

ぞぞぞと怖気が募る。

 

 

 

 

直感でわかる。こいつは殆ど本気なんて出していない。…例えるなら、呼吸一つで虫を殺してしまう…、そんな、不可抗力の力の差。そんな所だろうか。

 

 

 

能面野郎が動く、無造作で手入れのされていないような髪が…蠢き、基準点の〝右腕〟にまとわりつく。

 

 

 

 

 

────そして、『…………ッ』

 

 

 

めりめりと音を立てて、ぐちゃり…と指一本一本から肩までの右腕が潰され、千切られた。

 

 

 

 

 

 

〘 ……… 〙

 

 

しかし、能面野郎はこれ以上なにかしようとはせず…基準点の身体から離れるとそのまま通り過ぎる。

 

 

 

 

一瞬、霊夢に何かしようとしているのかとも思った。でも、ソイツは…先ほど現れていた兎を抱き抱えた。

 

 

 

 

『…な、…おま、え…。』

狼狽を隠せずに基準点が……殆ど戸惑いに近い問いを放つと。

 

 

能面はぐしゃぐしゃと身体を変形させ、〝少女〟のような顔つきになってから唇を開いてきた。

 

 

 

 

〘 私はただこの兎を連れ戻しに来ただけ 〙

 

 

 

そう、答えてきた。

 

 

 

『じゃ、じゃあ…。何で、攻撃を…』

 

 

 

〘 その右手は危険。早々に潰しておかなければ貴方たちが死ぬ 〙

 

 

 

『……は?』

 

 

 

〘 この世界ではその右手は目立つ。死にたくなければそのままでおいたほうが良い 〙

 

 

 

『戦う気がない…?………だったら、…先にそれを言えば…。戦闘になんか──────』

 

 

〘 あんなモノは私にとっては戦闘ではない。道で遭遇した犬と戯れたに過ぎない 〙

 

 

 

少女はそう言うと、最後に

 

〘 どこか目的があるなら早く去ったほうが良い。ここにはあの子が来る。久しぶりに楽しめた、この教えはその礼 〙

 

言葉を告げてそのまま着物を地面に擦らせながら去っていった。

 

 

 

 

 

『……何、なんだ…。アイツ…』

 

 

霧によって、すぐに少女の姿も見えなくなったが、基準点は数秒間…呆けてしまっていた。

 

 

 

『(まさかアイツ…。だから、最初に俺の腕を…?)』

 

 

 

 

 

しかし、すぐにハッとして霊夢に駆け寄ると…肩を優しく揺さぶった。

 

 

 

『霊夢…っ…。霊夢…!大丈夫か!?』

 

 

 

すると、霊夢は…唸りながらゆっくりと瞼を開けた。

 

 

良かった…と、安堵する基準点。

 

 

 

 

「基準点……?こ、こは…どこ…」

 

 

 

『記憶もすっ飛んでんのか?まあいいや、この世界もミスっちまってるからさっさと帰るぞ』

 

 

頭をゆらゆらと揺らす霊夢の背中を支えながら言葉を投げかける。

 

 

 

 

「……あ、…だっ…駄目だ!基準点!」

 

 

 

そうして、もう一度右腕を治そうとした瞬間。霊夢が大声を上げてきた。

 

 

 

『……?何でだよ』

 

基準点が小首を傾げて言うと、霊夢は咳き込みながら答える。

 

 

 

「いや、…世界の場所は恐らくここであっている…」

 

 

 

 

『はぁ!?───そんなわけねぇだろ!あんな、化け物がリポップするんだぞ?!』

 

 

 

「こ、この…世界、は…。た、ぶん…へい、こう…せ、かい…、だ…」

 

 

意識を朦朧とさせているのか、そのまま霊夢は基準点の身体に寄りかかってきた。

 

 

 

「─────すぅ…、すぅ……すぅ」

 

そのまま静かな寝息を立て始める。

 

 

 

 

 

『……ちっ…』

思わず彼は霊夢の病弱さに顔を歪めた。

 

 

 

 

あの能面少女の言葉を鵜呑みにするわけではないが、確かにこの右手がある時に決まって不幸になるのも事実。

 

 

 

 

だが、『そんな事言ってる場合じゃねぇよな』

 

 

 

この世界が本当に合ってるのか、合っていないかはともかく…今は霊夢を休ませたほうが絶対に良い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから、右腕をもう一度生やそうとしたのだが…。その時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シュン────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不意に、後方から飛来した何かが頬を掠めた。

 

 

 

 

 

『……?』

 

 

 

状況がのみ込めず、頬に手をあてがうと…血が垂れていた。

 

 

…表情を困惑に染め、基準点は視線を動かす。

 

 

 

視線の先、1本の竹。

 

 

 

するとそこには、小さな槍のような大きな針のような…ものが突き刺さりを竹を貫通していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「〝カチカチカチ〟」

 

 

 

 

 

 

『………』

 

 

 

 

初めに〝それ〟が背後から聞こえ、思ったのは。判断を間違えたということ。あの能面少女は、【あの子が来る】と言っていたような気がした…。だとするなら……

 

 

 

 

 

 

───人の不快感と恐怖を同時に煽る。何かをこすれ合わすような無機質な金属音。

 

 

 

 

 

 

基準点はゆっくりと、振り向く…。

 

 

 

 

 

 

 

そこには───────

 

 

 

 

 

 赤と白の二つの色で彩られた巫女装束と小柄な少女のような体躯。

 

 肩にギリギリかからないほどの長さの茶髪。

 

 

 白と黒、陰陽玉を埋め込んだかのような異端な顔面。その文様の境目が裂けた個所からのぞかせる剥き出しの歯。

 

 

 背中から黒く鋭い棘が多数生え、禍々しさを醸し出している。

 

 

 

 

 

 

化け物だとか妖怪だとかクリーチャーとか、そんな言葉よりもまず最初に浮かんだのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

           異形(いぎょう)

 

 

 

 

 

 

 

たった一つのシンプルな単語だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『───ま、待ってくれ!!!!』

 

基準点は両手を挙げながら、思わず叫んでしまっていた。

 

 

 

 

「カチカチ───」

 

 

すると、目の前の少女の動きが一瞬止まる。

 

 

 

 

 

 

彼は馬鹿という訳では無い。霊夢からのあの言葉と、目の前にいる少女の姿で…ここがどういう世界なのかをなんとなくは理解していた。

 

 

 

 

 

 

平行世界。霊夢はそう言っていた。つまり、この世界は…幻想郷という世界の…パラレルワールドというわけだ。

 

 

 

だとしたら、目の前にいる…少女は………。

 

 

 

 

『アンタは…〝博麗霊夢〟…だよ、な?──俺たちは決して邪な気持ちがあってこの世界に来たわけじゃないんだ!頼む、…攻撃を辞めてくれないか…?』

 

 

 

 

「…カチカチカチカチカチカチ」

 

 

 

少女は不服そうに(?)歯を何回も鳴らしてくる。

 

 

けれど、いつの間にか、彼女の背中から吐出していた棘のような針のようなモノは消えていた。

 

 

 

 

次いで彼女はどこからともなく、手を掲げると…指を弾き、渇いた音を鳴らした。

 

 

 

 

 

 

と、認識した瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

『………は…?』

 

基準点はいつの間にか、どこかの談話室のような場所に移転していた。

 

 

 

 

もちろん、抱き寄ってきていた霊夢も含めて

 

 

 

まるで〝最初からそこに居たように〟

 

 

 

 

 

「カチカチカチカチカチカチ」

 

 

 

『……お、おい…これ、どういう────』

 

 

戸惑う基準点に構わず横を過ぎ去る…少女に声をかけるも…無視をされる。

 

 

 

不審に思いながら周りを見渡しても、特段何かがあるわけでもない。強いて言うなら見晴らしの良い所に居るという所だけだ。

 

 

まぁ、それにしては…見晴らしが良いと言っても、広大な自然や綺麗な都会景色が見えるわけでもなく、無機質な針山地獄のような風景しかないのだが…。というか、ここから落ちたら死ぬくね…?

 

 

 

 

 

 

と、その時。基準点の眼前にあった扉が開き、柔和な声が響いた。

 

 

「あら、永琳から知らせはあったけど。ホントに侵入者が居たのね」

 

 

そう言うのは、どこか、古風な日本人形味を思い出させる…一人の大人っぽい女性だった。

 

 

 

 

『……??』

 

 

 

その女性はこちら値定めるように、じっとりと頭からつま先まで見つめると…。吐息した。

 

 

 

「……うぅん…。…基準点?……ここ、どこ…」

 

 

すると、雰囲気をぶち壊すように今更…肩に埋めていた顔を上げて霊夢が目を覚ました。

 

 

 

 

 

「お目覚めかしら?博麗霊夢さん。随分と、まぁ…舐め腐った態度ねぇ?」

 

 

 

「え、えぇ…っ…!!…や、〝八雲紫〟!?なぜ、ここに!?」

 

 

その声をかけられると、霊夢は跳ね起きて、辺りキョロキョロと見渡した。

 

 

 

 

 

「……その…声、ネックレス。やっぱり、貴方…幻葬狂の博麗霊夢ね?」

 

 

八雲紫と、名を呼ばれた女性はそのまま椅子に腰掛けると…指で基準点にも対面のソファに腰掛けるように促してきた。

 

 

 

 

『……そう、なのか?霊夢』

 

 

霊夢は何故か、当たり前のように基準点の膝の上に座ってきていた。自然すぎてツッコむタイミングを見逃し、もう諦めた基準点は、そう問うた。

 

 

 

「いや、少し違うな。私たちの世界は幻葬狂に〝なるはずだった世界〟だ」

 

 

 

 

それを、聞くと更に紫は目を鋭くする。

 

 

 

「それで?貴方たちは一体何をしにこの世界まで来たのかしら?──報告によれば宣戦布告ではなさそうだけど」

 

 

 

 

「愚問だな。────私たちの世界を救ってくれた我が主に会いに来たのだ」

 

 

 

 

 

「……へ?」

 

 

そこで、初めて紫は今までの雰囲気がなくなり、素っ頓狂な声を上げた。

 

 

 

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい。貴方…今なんて?」

 

 

 

 

「だから、我が主に会いに来た。と言った」

 

 

 

 

「────偵察じゃなくて?」

 

 

 

 

 

「……???意味がわからん」

 

 

 

 

 

その問答を終えると、紫は深いため息を吐いた。

 

 

そして、先ほどまでの雰囲気は消して、伸びをしながら子供のように…大声をあげた。

 

 

 

 

「らーん!!お茶持ってきてー!」

 

 

…その言葉に返答をする者は居ない。

 

 

 

 

「カチカチカチ」

 

 

 

「ん?なぁに、霊夢」

 

 

 

「カチカチ」

紫が小首をかしげると、…霊夢は小さな手帳から1枚紙を破り、紫に見せた。

 

 

 

 

 

何が書いてあったのかは知らないが、紫は何かを思い出すように頬に指を当ててから「あ〜…確かに言ってたわね…」と吐息して、面倒くさそうにどこからともなくカップとティーポットを取り出す。

 

 

 

 

 

「?どうしたの?貴方も飲みたいの?」

 

 

 

『あぁ、いや。そういうわけじゃない、です…』

 

 

「なぜ敬語…?」

 

 

『うるさいなぁ、理由があるんだよ理由が』

 

 

 

 

 

 

 

 

そこで、ふふっと紫は基準点を見て微笑みを投げかけてきた。

 

 

「予測だけど、貴方がその女をこの世界に連れてきたんでしょう?」

 

 

 

『え…っ、あ…はい。そう、ですね』

 

 

 

やっぱり、と紫は笑う。

 

 

 

「転移した場所が【忘却の竹林】で運が良かったわね、貴方たち」

 

 

 

『ぼ、忘却の竹林…?』

 

 

ええと紫は首肯で返してくる。

 

 

「もし、【魔法の死森】とか【腐霧の湖】はもちろん。…いや、……とゆーか、多分貴方たち、忘却の竹林以外に出てたら絶対死んでたわね」

 

 

 

『え ゙』

 

 

「冗談なんかじゃないわよ?あの竹林は広いし、滅多に"妖精"たちも近付かないし…。それに、最初に貴方たちが会ったのが輝夜っていうのも幸運ね、あの子は殺しになんて興味ないし、あまつさえ貴方の右腕を潰してくれたんでしょう?」

 

 

 

 

『……? だったら、俺の右腕が何かあるんですか?』

 

 

 

「……当たり前よ。その右手…例えるなら…そうね、〝正常の具現化〟みたいなものだもの。異端しかないこの世界の住人からしたら、…真っ暗闇の夜中にランタン照らして道歩いてるようなものよ。そんなの狙って下さいと言ってるようなものじゃない」

 

 

 

 

『そ、そういう…?こ、こと…?』

 

 

あの時の輝夜?と、言う名の少女を思い出し…確かに…それならあの言葉も納得できるような気がした。

 

 

 

 

まぁ、それならそれで口下手にも程があると思ったのだが…。

 

 

 

「だから、霊夢が悪人だと思ったらその場で殺して、話を聞くぐらいは許せる人間なら連れてきなさいって…言ったのだけれど…。──あの輝夜に立ち向かった男の子だもの、どうせ霊夢なら少し驚かせたあとに連れてくると思ったわ」

 

 

 

 

 

「…まぁ…。それはそれで、ね」

 

と、そこで紫は霊夢の方に視線を変えた。

 

 

 

 

「すぅ……すぅ………、すぅ」

 

 

 

 

まぁ。うん。さっきから無言になってたからなんとなくさっしていたが…寝てるなコイツ。しかも人様の膝の上で。どれだけ、ふてぶてしいんだコイツ

 

 

 

 

紫も同じような事を悟ったのか、ため息を吐いて話を切り出してくる。

 

 

 

 

「で?貴方たちはその…主さん?を探しに来たって言ってるけど…一体誰のことかしら?」

 

 

 

『おい、霊夢。言われてるぞ』

 

 

「カチカチカチカチ」

 

 

『ああ、すみません。そっちじゃないっす』

 

 

 

 

恐らくこの世界の博麗霊夢がゆらりとこちらを向いてくる。

 

 

ややこしいったらありゃしないから俺の膝の上に乗ってるコイツ名前変えてくれないかな。

 

 

 

 

 

「んんぅ…?ああ、我が主の事か…ぁ…?」

 

 

 

「ええ、…教えてくれる?」

 

 

 

 

霊夢は眠たげに瞼を擦ったあと、大きく伸びをしてから含み笑いを浮かべて口を開いた。

 

 

 

「私だからこそ記憶を保持出来たのだが、…そうだな。我が主の事は殆ど知らないのだが…私達の世界の〝負を肩代わりして〟救ってくれたことは知っている…。逆に言えば、それ以外は知らないのだが…」

 

 

その言葉を聞くと、基準点は呆れたように息を吐いた。

 

 

『お前、それぐらいしか知らないのにここにこさせたのか?』

 

 

 

「何故呆れられないといけないんだ」

 

不服そうに頬を膨らませながら、霊夢が顔を上げて基準点を見つめてくる。

 

 

 

「私の知っている事は初めて会った時に言っただろう?」

 

 

『え…あれで全部だったのか?───憶測っぽいソイツの人間性ぐらしか喋ってなかったぞ。…その割にはまる2時間言ってたけど…』

 

 

 

「ふふふ、当たり前だ。我が主のことならば…半日はいける!」

 

 

 

 

 

 

 

と、そこで。

 

 

 

「待ちなさい。────貴方…今、なんて言ったの?」

 

 

紫が驚愕に満ちた表情で、恐る恐る何かを確かめるように尋ねてきた。

 

 

 

 

「? 我が主のことなら、半日は喋れ────」

 

 

「それよりも、一つ前よ…貴方が唯一知っている事」

 

 

「………???えぇ…っと…。我が主が私達の世界の負を肩代わりしてくれた…こと、か?」

 

 

 

「…………負の……肩、代わ…り…?」

紫は顔を手で覆い、ぶつぶつと独り言を唱えた後。深いため息を吐いてから……話を始めた

 

 

 

 

「貴方は…その主に会いたいのよね…?」

 

 

 

「ああ、もちろんだとも。」

 

 

 

そこまで言うと、紫はにこりと…少し怖いと思える笑みを浮かべて……指を三本立てた。

 

 

 

「なら、この世界への滞在許可を他の娘たちから貰ってなさい」

 

 

 

『滞在───』

「───許可?」

 

 

 

ええと、紫は首肯する。

 

 

 

「一つは紅魔城、二つ目はモリヤ神社、三つ目は……そうね、そこは後で伝えるわ。とにかく、私達は外来人には敵意があるの、しかもそこに居る娘達は特に憎しみが強い。だから、貴方たちが言う主に会いたいならあの娘達の所に訪問して認められてきなさい」

 

 

 

 

基準点はその台詞に顔を歪めた。

 

『いや…その。───俺たちはコイツの言う「主」に会えればそれだけで良いって言うか。この世界に滞在する気は無いんですけど…』

 

 

「え ゙っ、しないのか??!!」

 

『お前はちょっと黙ってろ』

 

 

 

 

ふむ…と、紫はあごに指をあてがってから「確かにそうね」と理解の声をあげる。

 

 

 

 

『なら──────』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも、貴方たち。何か一つ勘違いしてない?」

 

 

 

 

『え…っ』

 

 

「私達は決して、外来人には優しくはないわ。決してね。───それどころか、そこの女。お前は私達の世界を襲った『幻葬狂』の人間でしょ?───逆に、ここまで下手に出てやってあげているのを感謝してほしいのだけれど…ねぇ?」

 

 

最初と全く変わらない声音と物腰で紫は淡々と告げてくる。

 

 

 

「良いだろう!!その試練!受けて立ってみせるぞ!」

 

 

しかし、霊夢はまったく物怖じせず…。さっきよりも勢い付いて立ち上がった。

 

 

「君の言う通り、私はこの『異形郷』を襲った博麗霊夢の平行世界の人間だ。だが、だからこそ…このような試練は燃えるんだ!さぁさぁ、行くぞ基準点!」

 

 

『いや、え…?ちょっ…、ま…っ…!お前が膝乗ってたせいで今痺れて……』

 

 

 

霊夢は言いながら無理やり基準点を立ち上がらせると、そのまま強引に手を引っ張っていく。

 

 

 

 

「方角はどっちだ?!」

 

 

 

 

「………そこから左方よ」

 

 

 

 

『だから、…ちょっとまって…て、うわぁぁぁぁ!!!』

 

 

そのまま基準点は霊夢に腕を掴まれ、強引に空の旅に連れて行かれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

それを見届けた紫はもう一度深くソファに腰を沈めると…紅茶を一口飲んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「カチカチカチ」

 

 

 

「そうね、淹れ直してくれる?久しぶりに霊夢の紅茶が飲みたいわ」

 

 

 

 

「カチカチ」

 

 

 

 

「うふふ、ありがとう」

 

 

 

 

────────────────

 

 

 

「カチカチカチカチカチ」

 

 

 

「……そう、ね。上手だったわよね。あの子の淹れた紅茶はなんていうのかしら、とても口に合うような…それこそ魔法でも使ってるじゃないかってぐらい美味しかったわ」

 

 

 

「カチカチカチカチ」

 

 

 

「そういうつもりはないのよ?だって、霊夢もそう思うでしょ?マリちゃんだって絶賛するレベルなんだから」

 

 

 

「カチカチカチカチ」

 

 

 

「うふふ、そんな拗ねなくてもいいじゃない」

 

 

 

「カチカチカチカチ」

 

 

 

「え?───うーん、そうねぇ…。多分、無理だと思うわよ?次あの娘達が行くのはモリヤ神社だけど………早苗は嫌いだもの外来人が」

 

 

 

 

「カチカチカチ」

 

 

 

「別に、100%死んじゃうとは思ってないわよ?ただ……早苗は絶対に一人は祟るわ。だとして、生き残れると思う?……」

 

 

 

「カチカチカチ」

 

 

 

 

「ええ、早苗は怒ると怖いもの。アポイントは取っておくけど……今から怖いわー」

 

 

 

 

「カチカチ……」

 

 

 

「ほんと?ならありがたいけど…。」

 

 

 

 

 

 

 

────そうして、霊夢は手を上げると…指を鳴らし、渇いた音を響かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜◆〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ぜぇ…はぁ…ぜぇ…はぁ…』

 

 

 

 

「何だ、このくらいで音を上げるなんて芯が弱いな」

 

 

 

『そりゃあ、あんな高速で空飛ばれたら誰だって怖がるに決まってるでしょうがぁぁ?!?!』

 

 

 

 

 

 

そう、霊夢は基準点の手を取ってから飛んだは良いのだ。

 

 

 

そう、そこまでは良いのだ。

 

 

 

なのに、この少女と来たら、飛んでいる最中に周囲を見たかと思えば…途端に高速飛行を始めたのだ。

 

 

絶叫したのも束の間、気が飛びそうな体験を何度もして…ようやく…目的地に着いたのか…地に足をつけれていた。

 

 

 

 

 

 

「光速じゃない。マッハ2.5だ、光速にはほど遠いぞ」

 

 

 

『字が違う字が違う。というか、マッハ2.5って何だよ!?戦闘機なみの速度出てるじゃねぇか!!てか、それなら何で俺たちは無傷なんだよ!』

 

 

 

「………自分で考えろ。全く、根性なしめ」

 

 

 

 

 

「─────」

 

 

 

 

 

『え…?なんて…?』

 

 

 

「うるさい!このバカめ!」

 

 

 

『何でここまで罵倒されないといけないの?…俺』

 

 

 

基準点はそこまで言った後。視線を前方にやり、上を見上げた。

 

 

 

石階段が気の遠くなるような長さで上に続いていたのである……おそらく、ここがモリヤ神社だろう。

 

 

 

なら、ここら辺でいいか。

 

 

 

そう意を決すと、基準点は唇を開いた。

 

 

 

『じゃ、俺はそろそろ行くよ。霊夢』

 

 

 

 

 

「…………行くのか…?」

 

 

 

 

『ああ、元々この世界に送るだけだったしな』

 

 

 

「ここまでついてきたのに?」

 

 

 

『〝連れてこさせられた〟な?』

 

 

 

 

「………」

 

『………』

 

 

 

 

そうして、数瞬。互いに見つめ合った後…霊夢が小さく唇を開いた。

 

 

 

「なぁ、基準点」

 

 

 

『?どうした?』

 

 

 

「どうして、あの時…。私を守ってくれたんだ…?」

 

 

 

『……………』

 

 

その質問を、一瞬…冗談で返してみようと思った。けれど、目の前の少女の目を見て…すぐにそんな気は失せた。

 

 

 

 

 

 

『…似てたんだ』

 

 

ポツリと事実をありのまま告げる。

 

 

 

 

「似てた…?」

 

 

 

基準点は霊夢の困惑をみて、自嘲的な笑みを浮かべながら…言葉を続ける。

 

 

 

「昔……救えなかった知り合いが居たんだよ。──我儘で能天気で…どこか、お気楽で…。それでいて、優しい…奴で…」

 

 

馬鹿みたいだよな…と、自嘲的な笑みを崩さずそのまま基準点は唇を開く。

 

 

 

「──俺は…ソイツを、救えなかった…。助けれなかった…。だから、もう…アイツに似たお前が傷付くのを見たくなかったんだよ………。それじゃあ、駄目か?」

 

 

 

 

それを聞くと、霊夢は暫く俯いた後。

 

 

「ぷ…っ…。ふふ…っ…あは、あははは…っ!!!」

 

 

腹を抱えて大笑いを始めた。

 

 

 

『……………へ?』

 

 

 

「い、いや…すまない…。まさか、そんな話だったとは思わず…。ふふ…っ…お、おなか痛い……w」

 

 

 

目尻の涙を拭った後、霊夢はそのまま口を開いてくる。

 

 

 

「合点がいった。だから、君は私から少し距離を置いていたのか」

 

 

 

 

『…っ…。気付いてたのかよ…』

 

 

 

 

「気付くさ。最初は私の美貌に一目惚れでもしたのかと思ったのだが…まさか、そういうこととは…」

 

 

 

 

「なら、いいじゃないか。───私が我が主に会えるまで延長するというのも悪くないだろう?」

 

 

 

『んな、勝手な…』

 

 

 

「私は我儘だからな。悪いか?」

 

そう言って、霊夢はニヤリと微笑んでくる。

 

 

 

『────良いのか?』

 

 

 

「何がだ?」

 

 

キョトンと首を傾げてくる霊夢に基準点はため息を吐く。

 

 

『お前、これには気付いてないのか?────俺と長く居すぎると自分が無くなるぞ』

 

 

 

「………?」

 

 

『いや、だからぁ…。俺と出会ったから違和感とか感じなかったか?…例えば、二人称が不自然になったり、普段使わないような口調になったり…。みたいな』

手振り身振りで伝えると霊夢はポンと手を叩いて納得の声を漏らす。

 

 

 

「…?ああ、そんな、事か。何か問題でもあるのか?」

 

 

 

『え…?』

 

 

 

「確かに〝貴様〟といて、不自然さはあったが…人格でも変わるのか?記憶でも無くなるのか?破滅を望み始めるのか?」

 

 

 

『…そういう、わけじゃないが……』

 

濁し気味に基準点が言うと、ふふんと胸を大きくしながら霊夢は鼻を鳴らしてきた。

 

 

 

「なら、私は別にどうでも良い!口調や思想が変わるなど風化すれば当たり前だろう?───なら、私はお前のような下ぼ───ゴホンゴホン、友が居たほうが我が主を待つのも楽しそうだからな!」

 

 

 

そうやって、手を差し伸べて微笑みかけてきた。

 

 

 

「さ、まずは…モリヤ神社だったか?──階段上がるのなんて疲れるし、基準点、さっさと飛ぶぞ」

 

 

 

『…………』

 

 

 

基じ、───はその手を取って…一言呟く。

 

 

 

「当麻だ。上条当麻(かみじょうとうま)……それが俺の名前だ」

 

霊夢は数瞬間、目を丸くした後…。な…っ…と、声を上げて当麻の身体をポコポコ…ボコと叩いてきた。

 

 

 

「ま、まさか…私に偽名を使っていたのか!?」

 

 

 

 

 

『い、いや…そういうわけじゃ…って…いてぇよ!お前力強すぎだろ!?』

 

 

途中から、音が鈍器で殴られているような音になっていた。

 

 

 

 

『仕方ねぇだろ!こういう身になったら名前は捨てるんだよ!!』

 

 

そこまで言うと、霊夢は

 

 

「後で君の過去もじっくり聞かせてもらうからな」

 

 

と言って、ぎろりと睨んできた。

 

 

 

 

『……へい…へい…』

 

 

「……」

 

基準点がやる気なさげに返事をすると、ブチッと額の血管を浮かび上がらせた霊夢は…そのままさっきよりも、超高速で空への旅を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



















キャラ能力解説


- 「博麗早苗」
能力:【可能性のコインを投げる程度の能力】
詳細-あらゆる事実や事象の確率を50%:50%の二者択一に強制的に収束させることができる。「敵の攻撃が当たるか当たらないか」「目の前の扉が開くか開かないか」「世界が滅亡するかしないか」「目の前に特定の人物が現れるか現れないか」など、どんなに確率が偏っている事象や現実世でも、彼女が望めばその瞬間の確率を完全に五分五分にする。そして、そのコインを「投げる」ことで結果を決定させる。当人の運がそもそも高いのと試行回数を一瞬で稼げるため殆ど五分五分は意味などない。



- 「博麗霊夢(狂)」
能力:【主に宙を飛ぶ程度の能力・無何有浄光(むがうじょうこう)を放つ程度の能力・浮世の理を無に還す程度の能力】

詳細-それぞれ3つの能力があるが、一つ目は元々所持している能力、二つ目は幻葬狂の博麗霊夢の力であり、三つ目はその二つの力が組み合わさった能力である。また、合成されたせいか元々所持していた能力は攻撃的な側面が強くなっており、相手の攻撃のベクトルや力量を計算し〝浮かす〟ことで力を相殺させる。や、相手を全ての法則から〝浮かばせ〟無抵抗の間に光で滅し尽くす使い方もする。最後に備考だが、無理やり能力を連結させられたせいかは不明だが、身体が極端に病弱となっている(多少の運動で息切れしたり など)。



- 「博麗霊夢(異)」
能力:【『結果』を抽出し、自由に扱う程度の能力】

詳細-無数の異なる時間軸(パラレルワールド)を認知・観測し、その『結果』だけを利用する能力。1000通りの未来を試行し、その中で最も敵に有効だった行動(「このタイミングで、この角度で攻撃する」など)の結果だけを、現在の自分の行動に収束させる等のことができる。これにより、彼女の行動は常に「必中」あるいは「最善手」となる。また、致命傷を負った際、その「傷を負った」という結果を含まない別の時間軸の『完全な状態』の結果を、現在の自分に上書きさせることで、瞬時に回復も可能。他にもそれを、他者にも適用させることで他の時間軸に、『そこに居る』という情報があるならば、その結果を上書きし、適所に転移させることもできる。無論、これらの事象は自身にも適用できる。



以上



















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