追憶の魔女(ジークアクス・二次創作)   作:あべ模型製作所

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旦那の設定は、全て私の妄想です。
今の内でないと書けないだろう、二次創作の醍醐味を味わっているところです。


君が遺したもの

 

 

「子供を作りましょう」

 

 告白した僕に、君はそう言って囁いた。

 

 パルダ・コロニーのとあるカフェ。数度のデートで想いを伝えた時の君の返事だ。

 

 当然、僕は狼狽えた。でも、その時の君は、いつもの遠い眼ではなく、真っすぐに僕を見つめていた。

 

 僕は君の手を取り、歓楽街の適当なホテルに駆け込んだ。

 

 服を脱いだ君は、華奢でありながら、体幹は元軍人だけあって鍛え上げられていたね。

 

 港で重機を扱う僕は、自分のだらしない腹を見てぼやいてしまったけど、そんな僕に君は「ううん、気にしないで」と微笑んでくれた。

 

 あの時、何回行為をしただろう? 君が「できたと確信するまで」というから、何度も交わった。

 

 幾度目かの交戦で僕が放って、満足そうに「うん、できた」と頷く君を、僕は目を白黒させて見つめたっけ。

 

 それから数週間もしない内に、君から妊娠したことを聞いたね。その日の内に婚姻届けを出したことを、僕は一生忘れない。

 

 十カ月後、君が産まれた坊やを抱いているのを見て、号泣してしまったのもいい思い出だ。

 

 

 あれから四年、そう、あのニュースが君を変えてしまった。

 

 あの赤いガンダム。それを見た君の眼。僕は今でも脳裏に焼き付いているよ。

 

 君は今まで見たこともない瞋りと歓喜に打ち震えていた。

 

「子供を作りましょう」

 

 それを聞いたのはその日の晩だ。

 

 僕は必死に君に注いだ。何度目かの行為の後、「できた」と頷く君に、僕は既に何かを感じていたのだろう。「どこにも行かないでくれ」と訴えた。

 

 でも君は「逃げたら一つ、進めば二つ」と呪詛のように呟いていた。

 

 

 次の日、君は僕と坊やを置いてイズマ・コロニーへと向かった。

 

 君は坊やの手を取り、「必ず帰ってくるからね」とキスをした。

 

 僕は「待ってるよ」としか言えなかった。

 

 あれから一ヶ月、とうとう、クラバの時間となった。僕はテレビの前で必死に祈った。

 

 ……だけど、最期に映ったのはコックピットを貫かれたMSの姿だった。

 

 その瞬間だろうか、「ラ・ラ……」という音が聞こえ、坊やが「まま……?」と虚空を見つめたのは。

 

 

 あぁ、とうとう君は戦争を忘れられなかった。

 

 思えば最初から君の魂は戦場に残されていたのかもしれない。

 

 デートの時、行為の時、ふとすると君は遠くを見つめていた。君は決して戦場の話をしなかった。

 

 ただ、「負けたのは連邦であって、私は、負けていない」とだけ呟いていたっけ。

 

 そう、あの赤いガンダムを見た瞬間の君の目は、紛れもなく戦士の目つきだった。

 

 あの時、僕は必死に留めるべきだったのだろうか。いや、必死に留めたんだ。

 

 でも君は首を横に振り、笑顔でパルダ・コロニーを離れた。

 

 あの笑顔の真意はもう、わからない。

 

 中立コロニー育ちの僕には、決してわからない感情が、そこにはあったのだろう。

 

 でも、でもさ……

 

 故郷のことわざにあるじゃないか……、「二兎追うものは一兎も得ず」って。

 

 僕と坊やを遺して、君は逝ってしまった。

 

 君は満足したのだろうか?

 

 

 横で坊やが手を引いてるよ。「ままは?」って。

 

 僕はどう説明したらいい? 教えてくれ。

 

 

 教えてくれよ……。

 

 

 

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