タイムワープ!逆行世界がなんか違う!   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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小学生に逆戻り

 時に小学生に戻れるとしたら皆さんはどうしたい? 

 

 告白出来ずに思いを秘めていたあの子に告白したい。

 

 挫折してしまったスポーツを1からやり直したい。

 

 もっと勉強して中学で内申点を上げて良い高校に行きたい。

 

 失敗したことをなかったことにしたい。

 

 やっておけば良かった事をやりたい……色々あると思う。

 

 でも、やり直せないのが現実……のハズなのだが、俺……いや、俺達は不思議な経験を現在進行系でしているのであった。

 

 

 

 

 

 

「「「カンパーイ!」」」

 

 時は12月31日……サクラ小学校に通っていた8人の男女が居酒屋で飲んでいた。

 

「サトシ、3年ぶりに会えて嬉しいぜ!」

 

 俺の名前は和田悟……皆からはサトシと呼ばれている。

 

 今この場に居るのは小学校を同じクラスで6年間生活を共にした幼馴染達である。

 

「畜産の仕事をしているとなかなか休みが取れなくてな。俺も皆に久しぶりに会えて嬉しいよ」

 

 皆仕事で遠くに引っ越した奴も居ても正月休みを使って集まるのである。

 

「うえーん! また男に逃げられた……」

 

「またかよ……相変わらず男の見る目がねぇな」

 

「次仕事の関係で関西に引っ越すかも……そうなったら毎年参加してたけど厳しそう」

 

「そうか……」

 

「あぁ……今年も結婚できなかった!」

 

「来年はいけるって」

 

 仕事の愚痴、恋愛相談、家族の介護……30歳を超えてくるとどうしても色々な事が迫ってくる。

 

 仕事では中間管理職となり、上と下から板挟みで、残業も多くなる。

 

 三十路を過ぎると結婚についての焦りも出てくる。

 

 親達は60歳を超えてくるので、元気なら良いが、介護が必要にもなってくる。

 

「愚痴を吐き出してスッキリしましょうや」

 

 俺は幼馴染の西ひかるちゃんに酒を注いでいく。

 

 学生時代はバレンタインチョコやホワイトデーのお返しをしあった仲である。

 

 ただ付き合うまでには発展せずに、そのままズルズルと今の友達以上恋人未満という関係が続いてしまっている。

 

「そう言えばサクラ小学校廃校になるって……」

 

「……マジか……」

 

 ボソッとひかるちゃんが言った母校の廃校……。

 

 開校100年を超えていたし、生徒数も俺達が小学生の頃から全校生徒が100人を割っていたが……遂にこの時が来てしまったかと思う。

 

 ガキ大将だった弦田真吾ことシンちゃんが

 

「あぁ〜小学生の楽しかった頃に戻りたいな〜! 皆で馬鹿やったあの頃に」

 

 と刺し身をつまみながらそういった。

 

 戻れるなら戻りたい。

 

 やり直せるならやり直したい。

 

 皆が皆そう思う。

 

『その願い叶えましょうか?』

 

 頭に謎の声が響いてくる。

 

 酒の飲み過ぎで酔っ払って幻聴が聞こえてきやがったか……。

 

 男に逃げられてやけ酒を飲んでいた篠崎貴音ことザッキーが大声で叫ぶ。

 

「やり直せるならやり直したい!」

 

 そうだそうだと酔った勢いで皆がそういい出すと、皆酔が覚めてえ? と困惑した表情を浮かべた。

 

「声聞こえた?」

 

「あ、あぁ……」

 

「確かに聞こえたよな?」

 

 そう言い合っていると、一気に眠気が襲ってきて、俺は居酒屋の座敷席で眠りにつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「サトシ! サトシ起きなさい」

 

 あれ? 俺は居酒屋で眠ったハズではと思いながら、なぜか母親の声で目を覚ますと、懐かしい子供の頃の部屋がそこにはあった。

 

 子供の頃に永遠と遊んだ電車のおもちゃだったり、積み木に指人形が箱に入れられて置かれていた。

 

 懐かしい夢だなぁと思いながら布団から起き上がり、時計をみると朝6時を示していた。

 

「ヤバイヤバイ!」

 

 牧場で勤務していた俺が起きるべき時間は朝5時……それを1時間もオーバーしている。

 

 俺は布団から飛び起き、慌てて部屋を出ようとすると、ドアノブの位置がめちゃくちゃ高い。

 

 というか部屋全体が広く感じる。

 

 頭がどんどん冴えてくると、そう言えば正月だし、今日は休み貰っているから寝れるじゃんと思い出して、布団に戻ろうとすると、ドアが開いて、エプロンを身に着けた母親が部屋に入ってきた。

 

「サトシ! 今日は入学式でしょ! 起きなさい!」

 

 そう言われると、母親に抱きかかえられて、子供部屋から洗面所に連れて行かれて顔を水で洗われる。

 

 その水の冷たさで夢にしては変だぞと思い始めた。

 

 顔を平手でパンパンと軽く叩いてみると、ジンジンと痛みを感じる。

 

 洗面台もなぜか高く感じるので、よじ登って鏡をみると、小学生頃の俺の姿が映っていた。

 

「え、えぇ!?」

 

 驚いた拍子に洗面台から転げ落ち、床に頭を思いっきり打ち付けたが、めちゃくちゃ痛い。

 

 これが夢で無いということが痛みを通じて理解した。

 

「な、何が起こっているんだ?」

 

 俺はぶつけた頭を押さえながら、トイレに移動して、放尿しながら考える。

 

「俺は皆と酒を飲んでいて……眠ってしまって……気がついたら小学生の姿に巻き戻っている!?」

 

 口にして整理していくが、あまりの非現実的なことに理解が追いつかない。

 

 手を洗って母親をみると、若い。

 

 具体的には25歳くらい若く、30代の肌艶やエネルギーに満ち溢れていた。

 

 俺は席に座って朝食を食べる。

 

 大人の頃であれば少なすぎるくらいの量の食事でも満足し、お腹いっぱいになる。

 

 食べている時の味もしっかり感じた事で、いよいよ夢じゃないってことを認識し始めていた。

 

 そのまま俺は用意されていた服を着替えて、置かれていた新品のランドセルを背負ってみる。

 

 母親は

 

「似合っているよ!」

 

 と言ってくれたが、ますます小学生に戻っていることへの混乱による困惑の方が大きい。

 

 今日は入学式ということで車で学校まで送ってくれるが、懐かしの徒歩だと45分、自転車でも20分近くかかるサクラ小学校までの道のりを助手席から眺めていく。

 

 学校に到着すると、俺は母親と別れて学校の中に入り、下駄箱に靴を入れて、職員室前に移動する。

 

 そこでは記憶だけの存在になっていた1年生の時の担任の先生が受付をしており、俺の顔を見て、1年生の悟君ですわね? と声をかけられた。

 

 俺は返事をすると、1年生の教室に案内されて、俺の名前の書かれた席に座るように言われた。

 

 クラスには俺が最初に入ったみたいで、誰もまだ居ない。

 

 机の数は8つ。

 

 後ろの棚にはそれぞれの名前のプレートが書かれており、とりあえず俺はそこにランドセルを収納する。

 

 そして教室を調べてみるが、机には俺の他にも小学生の頃のメンバーの名前が書かれていた。

 

「とりあえず他のメンバーにも話を聞かないとマズイな。俺だけ小学生に戻っているのか、それとも皆戻っているのか……」

 

 そんなことを考えていると、扉が開いた。

 

「わぁ! サトシだ! 若〜い!」

 

 入ってきたのは酒の席で男に逃げられたと愚痴っていた篠崎ことザッキー……。

 

「ザッキー記憶ある感じ?」

 

「え! サトシもあるの!」

 

「あぁ、昨日皆で酒飲んで寝てしまって……」

 

「起きたら小学生に逆戻り……だよね!」

 

「そうそう」

 

「よっしゃぁ! 夢じゃない! 確定! 若返った!」

 

 異常なテンションのザッキーにドン引きしつつも、話続ける。

 

「テンション高いなザッキー……」

 

「だって小学生に戻ってるんだよ! やりたいことやり直し放題じゃん。もっと勉強に取り組んで良い成績取りたいし、今度こそスパダリ(スーパーダーリン)を捕まえて……グヘヘヘへ」

 

「安心したわ……その残念さ加減ちゃんとザッキーだわ」

 

「でもサトシも良かったじゃん。牧場で地獄みたいな経験していたんでしょ? やり直せるんだから別の選択肢を選べるよ」

 

「それはそう。諦めた野球やり直したいな……」

 

「良いじゃん良いじゃん! やり直そうよ!」

 

 そう話しているとガラガラっとまた扉が開いた。

 

「あ、サトシとザッキー……なぁ記憶あるか?」

 

 この発言でもう記憶がある状態で若返っているの確定である。

 

「弦田真吾ことシンちゃん、10月24日産まれ、好きな物ロールケーキ、日本酒……」

 

「うん、記憶あるよな……良かった、俺だけじゃなくて……」

 

 次々に入ってくるクラスメイト達。

 

 皆似たような反応をしながら席に座っていくのであった。

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