タイムワープ!逆行世界がなんか違う! 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
全員が着席し、入学式まで時間があるから自己紹介をしましょうとパンチパーマの効いた女性の先生が言う。
記憶が確かであれば1年の担任の先生になる人物である。
皆知っているが、一応自己紹介を苗字順にしていく。
「岩山涼介(山さん)です。好きな事は料理、特に和食を作るのが得意です。よろしくお願いします」
皆知っているが拍手をする。
というか岩山は和食の料理をメインで作る食堂の店主をしていた人物であったので、料理は得意中の得意。
確か高校卒業後には調理学校に通っていたハズだ。
「栗山明里(あかりちゃん)です。特技は裁縫。よろしくね!」
はい、デザイナーをしていたあかりちゃん。
東京の衣服ブランドで働いていた。
本人は皮物を扱う勉強をしたいと言っていた中での逆行であった。
「篠崎貴音(ザッキー)です。年下の子供と仲良くするのが得意ですので……よろしく!」
残念美人のザッキーは小学校の先生をしていた人物で、正直小学校の先生が小学校の生徒として通い直すのはストレス凄そうだな……と俺は思うのだが……。
というか仕事ではしっかりしているのに男運が本当に無いのが可哀想な人物でもある。
「弦田真吾(シンちゃん)。体を動かすのが好き。よろしく」
シンちゃんは陸上自衛隊勤務だったはず。
北海道の東千歳駐屯地ってところでトラック運転手をしていたと聞いたが……逆行したらまた自衛隊に入りたいのだろうか?
俺と一緒に中学まで野球をやっていたし、野球選手を今一度狙うのかな?
「西ひかる(ひかるちゃん)でーす! 勉強頑張ります!」
家が近い(1キロ以上離れているが……)ひかるちゃん。
幼稚園から一緒だった幼馴染であるが、恋愛に発展しなかったのが謎である。
農家の実家を継いでいたはず……。
「藤原歩美(フジさん)です。オシャレには自信ありまーす」
フジさんは都心部で美容師をやっていた。
それなりに成功していたハズである。
「堀田正義(マー君)。まぁ堅実にいきたいですね、はい」
市役所職員をしていたマー君。
中学では生徒会長をしたり凄い真面目だった。
逆行をどう思っているか結構気になる。
あと酒豪だったので酒の飲めない生活耐えられるのか?
「和田悟(サトシ)です。スポーツが得意です」
で、最後は俺ことサトシである。
とりあえず無難にスポーツと言っておく。
正直全員小学校だけでなく、同じ中学校にも通ったし、高校は別だが、大人になってからも付き合いがあったので腐れ縁どころか鋼の縁である。
そのまま入学式に移り、在校生達が新入生に向けて歓迎の言葉を言ったり、校歌を歌ったり……。
案外体に染み付いているもので、母校の校歌も音楽が流れれば歌えてしまう。
懐かしいなーと思いながら歌い終わり、再び教室に戻る。
それから教科書が配られたり紅白帽子や白衣等の必要な物が配布されていく。
「懐かしー、白衣だ。サクラ小学校は給食美味しかったよな」
「人参のサラダが異常に美味しかった記憶があるわ」
「懐かしいな……」
そんな会話をしながら入学式も終わり、今日の日程は終了。
その日は外で待っていた親達と一緒に車で送迎されて家に帰るのだった。
俺が記憶にある親父はハゲになって、トラック運転手として働いている印象が強いが、まだ30代で髪がふさふさしている。
久しぶりに元気な両親を見て懐かしいなーと思いながらも、寝て起きたら元の体に戻ってるかもしれないと考えながら眠りに就くが……そんな事は無かった。
朝起きて体を見るが、小さな体。
両親も若いままで、ランドセルを背負って集団登校で学校に向かう。
年上の先輩達も小学生……めっちゃ若いな……と思いながら、早朝に公民館前で合流して学校に徒歩で移動する。
小学生の小さな歩幅で学校までの約4キロの道のりはとにかく遠い。
ランドセルの中にほとんど荷物が入ってないとはいえ、それでも小さな体にこの道のりは普通に堪える。
朝7時から出発して7時50分頃に学校に到着する。
教室に入ると、他のメンバーがもう教室で談笑していた。
「お、サトシ来たな」
「ういーっす、皆おはよー」
俺もランドセルをロッカーに入れて会話に加わる。
「ランドセルが重く感じるし、家が凄まじく広く感じる……子供の体ヤバいわ」
「捨てたハズの人形が綺麗な状態であって感動したなー」
「子供の頃に使っていた毛布があって懐かしくて涙出てきたわ……」
そんな会話をするが、俺が
「なぁ……これタイムスリップ……いや逆行しているってことで良いんだよな?」
「うん、そのハズだけど」
「勉強……小学生からやり直しだよな……」
「そうだよな……」
流石に小学生の勉強を1からやるとなると苦痛である。
そんなことを考えていると先生が入ってきて、席に座るように言われた。
校内案内をされるが、俺達もよく知っている校舎であり、別に違いは無いと思っていた……しかし、違った。
「屋上と裏の森にダンジョンがあるので入る時には必ず先生や大人に報告をしてくださいね」
……?
一同聞き覚えの無いダンジョンという言葉に困惑しつつ、屋上に行くと、黒い煙を放つ異空間がそこに鎮座していた。
「本当にダンジョンじゃん……」
先生に連れられて、ダンジョンの中に入るが、中は不思議のダンジョン形式では無く、ダンジョン毎に内部構造が決まっているのが殆どで、不思議のダンジョン形式は上級ダンジョンと言われているらしい。
で、学校の屋上にあるようなダンジョンはほぼ危険度が無いようになっているらしく、ふわふわと毛玉みたいなモンスターがダンジョンの中で浮かんでいた。
「ガチでモンスターもいるじゃん……」
俺の呟きに皆同意の様で驚愕の顔で固まっていた。
昼休み……俺達は集まって話し合いをしていた。
「ダンジョンって前の世界では空想の存在があるってことは……普通の世界ではない異世界ってことか」
「ちょっとこれは詳しく調べる必要があるな」
「まずは図書室で調べてみて、先生に言ってパソコン室を使えないか聞いてみようよ」
「パソコン室か……いや、インターネットに接続して調べ物をするのが重要だよな」
とにかく情報が欲しい俺達は図書室に移動してダンジョンについての本を借りてみたり、担任の先生に言ってパソコンを使って調べ物をしたい……と言ってみるが、頭の硬い先生はまだ1年生の君達にパソコンは早いと断られてしまった。
そうなると家にパソコンがある人に調べてもらうことにして、それぞれ個別に情報を集めることにするのだった。
それから1週間……色々情報を集めてみて幾つか分かってきた。
まずダンジョンアタッカーと呼ばれる存在はプロ野球選手やプロサッカー選手の様なスポーツの側面とそこから採掘されたり入手出来る素材は産業を支えている。
例えばスライム……俺達の知るゲームでは雑魚キャラであるが、加工すれば液化燃料だったり、可燃性物質、合成ゴムや人工繊維になることが判明した。
そんなダンジョンで長く活動していると魔法を覚えることが出来るようになったりするらしい。
そしてダンジョンでの活動によってはプロ選手として活動することも出来るとのこと……。
高校野球の甲子園の様に人気のある、大きなダンジョンでモンスターを狩る姿はモ◯スターハン◯ーの様な迫力があった。
「なぁ……せっかく逆行したんだから金持ちになりたいよな」
ガキ大将のシンちゃんがそう言う。
俺を含めた7人もシンちゃんが言いたい事はわかった。
「プロダンジョンアタッカーを目指して頑張ってみないか?」
この言葉から俺達は始まるのであった。