その鬼神、ルビコンにて再び家族を作る   作:高橋ヒナタ

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ラミー、何から何までインパクトたっぷりなのに登場が「グリッド086侵入」と、その後のミッションで多少言及される程度で終わっちゃうの個人的にちょっと残念。もっと色々な意味で暴れ回って欲しかった。でもそこがフロムなんだろうね。



幕間:グリッド086

 

 

 

「アタシはカーラ。このドーザー共の集まり…"RaD"の頭目をしてる。しばらくの間よろしく頼むよ」

 

「C4-617。あるいは、セラ・ペニーウォート。腕には自信がある。よろしく」

 

 

ドーザー共を薙ぎ倒し、スマートクリーナーとかいう奇天烈マシンをぶっ壊した私は、ウォルターの知り合いだという技術者の女性「シンダー・カーラ」と顔を合わせる事となった。

 

作業用のツナギを着崩して、如何にも現場の技術者といったワイルドな雰囲気を身にまといつつ、どこか油断の出来ない鋭さのようなものも漂わせる不思議な女性だ。

20代後半…どう頑張っても40も行かないような見た目で、ウォルターの知り合いとしては些か若すぎるような気もするが、今どき強化手術を受ければ肉体年齢の維持くらい簡単に出来るので、年齢に関してはツッコまない方がいいだろう。

 

 

 

で、だ。

 

「これがアンタの傭兵ライセンスだ。目を通しておきな」

 

[登録番号:Rb25]

[識別名:イーター]

[ランク:--/F]

 

カーラがウォルターから頼まれて急遽用意したという傭兵ライセンスを受け取った。

本来の予定であれば621と一緒に汚染市街へ降下しACの残骸を漁って手に入れるはずだったものだ。

 

イーター(捕食者)…いいね、気に入った」

 

このライセンス名は別に私が付けた訳じゃないけど、前世でゴッドイーターしてた私にピッタリの名前でちょっと運命を感じた。少しでも名に恥じない戦いをするとしよう。

 

 

「あとついでに、これも渡しておこう。ウォルターからの特別手当だとさ」

 

「ウォルターから?」

 

[50,000COAM(コーム)]

 

それとは別で、少しCOAMを貰った。パーツの購入が必要なら足しにしろ、とのこと。

 

ACのパーツは当たり前だが非常に高額で、50,000COAMだと精々LUDLOWをもう1本買い足せる程度の額でしかないのだが、実はこのCOAMという通貨、500COAMもあればそこそこの乗用車が買えてしまう価値がある。つまり50,000COAMというのは──。

…あのさ、ウォルター。貴方良い人過ぎてちょっと心配になるよ、私。

 

 

「何か入り用かい?流石に星外企業のモノは難しいけど、それ以外であれば色々売ってやるよ」

 

「オススメはRaD製?」

 

「もちろん──と言いたい所だけど、うちらの製品は探査用やら土建用やらが主流でね…一癖も二癖もある製品ばっかりさ。性能は保証するけどね」

 

とりあえず、ライセンスの元の持ち主の物であろう150,000程のCOAMと合わせて少しACをいじっておくことにしよう。

 

カーラにRaDで取り寄せられるパーツリストを見せてもらい、そこから必要パーツを見繕っていく。

ウォルター曰く、今の機体は内装にまで手が回らなかったとのことで、特にFCSやジェネレータは現行の製品と比較すると見劣りしてしまうものとなっている。

 

「ジェネレータは今買うには高いな…」

 

ただ、今持っている20万COAMだとジェネレータは買い換えられそうに無かった。ルビコン土着企業のひとつ「BAWS(ボース)」が製造しているジェネレータ「AG-E-013 YABA」を買いたい所だが、なんと24万COAM。買うなら借金しなければならない。

 

 

 

「………じゃボス。これと、これを」

 

「ファーロンのブースターとFCSだね。分かった、頼んでおくよ。………しっかし面白みが無いねぇ…」

 

「仕方ないでしょ!お金足りないんだもの!」

 

買ったのは2つ。ファーロン・ダイナミクス製のブースター「BST-G2/P04」と、同じくファーロン製のFCS「FCS-G2/P05」。どちらも今使用しているパーツの順当な上位互換といった所で、安定した性能を持ちつつかなり格安という便利なパーツだ。

 

カーラ曰く"面白みが無い"との事だったが、尖った構成にしようと思うととてもじゃないがCOAMが足りないので断念した。

NACHTREIHER脚使ってるなら"FIRMEZA(フィルメザ)"とかどうだい、なんて言われたりもしたが却下だ。コアで452,000COAMするとか恐ろしすぎる。

 

 

 

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『617、いきててよかった』

 

「621も無事で何より」

 

事後処理やら諸々の手続きやらを終えた後、カーラが繋いでくれた通信で621と話をすることが出来た。

 

画面に映るのは、なぜか私とそっくりな銀髪をした小柄な美少女。C4-621──今の名義は「レイヴン」だったか。傭兵としては不似合い過ぎる位に庇護欲をそそられまくる、私の妹みたいな子。実際にルビコンへ密航するまでは妹のように可愛がってて、621も私の無事を喜んでくれている。

 

『621、これおとした』

 

「これは…!強くなったね、621」

 

『うん。ウォルターもほめてくれた。617がくれたブレードがあったおかげ。ありがとう』

 

「!!」

 

これは効く。疲れに効く。きっとガンにも効く。

強化手術の弊害でパッと見の表情は無表情のままだし、声帯の機能も失ってるせいで声も首元の発声機から発されているんだけど、それでも私への感情を精一杯表現しようとしているのがはっきり分かった。

 

あぁ、私はまだまだ頑張れそうだよ、621。

 

 

『ウォルター。617とはいつあえる?』

 

『しばらくは傭兵としての実績を積み上げていくことになる。会える機会もあるだろう』

 

『よかった。がんばる』

 

 

「……相変わらず親バカだねぇアンタは」

 

カーラ…!?いたのか』

 

「そりゃいるさ。ここはアタシの工房だからね」

 

 

とても微笑ましい光景だ。見ていて癒される。

 

 

 

この景色を守る為にも、私は戦う。かつてと同じように。

 

 

 

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621とのビデオ通話を終えて、カーラと共にグリッド内の街区へ出てきた訳なのだが──

 

 

「何だぁ?見ねぇツラだな?」

 

 

つい先日聞いたばかりのそのセリフに、思わず「げっ」と反応してしまった私は悪くないと思う。

 

目の前から歩いてきたかなりの肥満体の大柄な男は、どこか焦点の定まっていない目でこちらを睨み付けてくる。機体COMが表示していたデータが正しければ、彼の名は「インビンシブル(無敵の)・ラミー」。あの時チェーンソーを振り回して襲ってきたAC「マッドスタンプ」のパイロットだ。

グリッドの住人らしく薬物中毒者なようで、正直ちょっと怖い。

 

 

「そうか!アンタがボスの言ってた新入りだな?」

 

「えっ」

 

と思っていたのだが。

 

「悪かったよ、見ねぇツラだったもんでな。…そうだ、詫びといっちゃあ何だが、コイツやるよ。後で──」

 

「ラミー!誰彼構わずコーラルを勧めるんじゃないよ!」

 

「すっ、すんませんボス…」

 

「えっ?えっ?」

 

このラミーとかいう男、根は中々にいいヤツのようで、私が一時的にとはいえRaD所属になると知るやいなや、ガシッと肩を組んでニカッと笑い「よろしくな!」と言ってきた。初顔合わせで初手からコーラル勧めてくる辺り流石はドーザーといった感じだが…。

 

「とにかく、一緒に仕事する時は頼りにしてくれよな!何てったって俺は『無敵』のラミーだからな!」

 

「あー……ハイ、頼リニシテマス」

 

相変わらずクセ激強なのはともかく、彼からの印象は悪くなかったようだ。

 

 

 

 

 

「あいよ、ボス。こっちは新入りの分だ」

 

「ご苦労さん。ホラビジター。遠慮せず食いな」

 

ラミーとの顔合わせを済ませた私は、カーラやその部下と思しき技術者、ラミーとその知り合いらしきドーザー達と共にグリッド086の食堂へとやってきた。

 

いかにも工業グリッドといった感じであちこちから機械の駆動音やスチームの噴出音が鳴り響いている。基本的にどこも薄汚れていてテーブルが工業用オイルでベタついていたり工具が置きっぱなしになっていたりするが、活気自体はかなりのもの。

 

「これがミールワームですか?初めて食べます」

 

「俺がオススメの食い方を教えてやるぜ。ミールワームにはな、これを掛けるんだ!パチパチ弾けて幸せになれるぜぇ!」

 

「は、はぁ…」

 

あちこちで酒盛りならぬ、コーラル盛りとでも言えばいいのか…ともかくドーザー達が酩酊状態で騒いでいるおかげで、余計な事を考えるのが馬鹿らしくなってくる。ラミーは相変わらずコーラル勧めてくるし。

 

 

「これがコーラル…なんか不思議な液体ですね」

 

ラミーから手渡されたコーラル入りの小瓶を眺めてみる。

 

液体にコーラルが溶け込んでいるようで、ビンを揺すると照明に照らされてか赤くキラキラと光る。正直、星系を焼き尽くすほどの莫大なエネルギーを発生させられるとは思えないが、これが強力なエネルギー資源になるのは事実であり、この小瓶だけでも星外企業に売ればそこそこの金になるのだ。

ウォルターはこのコーラルを大量に手に入れたら、私達に失った人生を買い戻させるつもりらしい。どこまで聖人なんだアンタは…!

 

 

「……………」

 

 

────!

 

 

「…!」

 

 

…とまぁそれとは別に、不思議な感覚も覚えた。

コーラルがまるで生き物のように感じられたのだ。

 

前世の私は、感応現象という言わば第六感によるコミニュケーション能力が非常に高く、専用の機器を使えば遥か遠くのアラガミの位置を見通すことすら出来たのだが、恐らくはそのせいだろうか。

 

「ボス。コーラルって…元は生き物だったりしません?」

 

「………。コーラルには、鳥や魚の群知能に似た集まろうとする性質があるんだ。生き物に見えるってのも…あながち間違いじゃあないかもね」

 

一瞬、カーラのこちらを見る目が鋭くなった気がした。

きっとカーラはコーラルについて何か知ってる。でも今それについて聞くべきでは無さそうだ。

 

 

「なるほど。そういう事だったんですね」

 

 

今は、これで納得しておこう。

 

 

 

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「──よぉビジター。今ヒマか?」

 

RaDから改めて歓迎をして貰った翌日。私はラミーに声を掛けられた。

 

「暇ですけど…」

 

「そうか!なら少し付き合え!」

 

 

そうして連れてこられたのは、整備区画の近くにあるシミュレータ室。少し古びてはいるが私が使っていたのとそう変わらないAC操縦のシミュレーションが出来る設備だ。

 

「この『無敵』のラミーが、新入りの訓練をしてやろうと思ってな!心配すんな!俺は"ランカー"でもあるからな!手加減はしてやるよ!」

 

ラミー、君はいいヤツだよ。今後他のドーザー勢力やら星外企業勢力やら封鎖機構やらと戦うことになる後輩の私を想って強くなれるよう手ほどきの提案をしてくれたんだろう。あぁ、本当にいいヤツだ。──コーラルさえキメてなけりゃあな!

 

 

「おっ、俺のマッドスタンプがぁーっ!?」

 

…シミュレータでの戦闘はその一言に尽きた。

 

 

 

が、ラミーが厄介なのはここからだった。

 

「この『無敵』のラミーを倒すヤツがいただなんて…!すげぇなビジター!ボスの次にすげぇや!姉御って呼ばせてくれ!!」

 

この男、あまりにもコーラルがキマり過ぎているせいで記憶が1日しか保たず、それゆえ「無敵」を自称している訳だが、裏を返せば、1日間は自分を撃破した相手を"無敵であるこのラミーを打ち負かしたとてつもない存在"と認識する。

 

その結果がこれだ。まさしく舎弟といった感じで付いて回り、私の武勇伝をあちこちに喧伝して回ったのだ。ドーザー達はラミーと同じように長くても数日で忘れてくれるだろうが、カーラお抱えのジャンク技師達はそうもいかない。間違いなく一瞬でグリッド中にネタとして広まり、きっとカーラは腹を抱えて笑い転げることだろう。

 

「姉御なら俺と同じように"ランカー"になれるぜ!間違いねぇ!この『無敵』のラミーに勝っちまったんだからな!」

 

正直恥ずかしいのでやめてもらいたい。

 

 

 

 

 

その日の夜、ラミーが寝た隙を突いてシミュレータに引きこもり、傭兵支援システム"オールマインド"とやらが提供する戦闘技能検証プログラム「アリーナ」で、再現されたラミーをフルボッコにしてやった。

あとついでに一つ上にいた「インデックス・ダナム」さんも撃破し、あいつより2つ上のランクに上げておいた。

 

別にアリーナのランクを上げたところで(コーラル)頭のラミーには意味が無いのだが、そこは気分的な問題ということで。

 

 

 

 

 





ミッションの無いパートは今回のように幕間という形で出していきます。次回は密航後初のミッションへ。

うちのラミーさん、しっかりエミュれてましたかね?
フロム作品ゆえに色々な考察があるんでしょうけど、私はラミーを「敵には容赦なく食ってかかるけど身内となると凄く親身な兄貴分になる」キャラなのでは、と考察しました。


FIRMEZA腕は至高。見た目で愛用してる。
今回、1COAM=1万円という換算を使いましたが…その場合FIRMEZAコアは45億円…!高いような、そうでもないような…。
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