なんとかならないかもしれない   作:キケンなロウジン

3 / 5
感想評価、ありがとうございます


3.なるようになるさ

 

 

 

 部外者だけど久藤監督がこれから行う試合を見せてくれた。無印では言葉足らず、無能だと言ってすまんかった。助かります。

 

 それで、黒の騎士団とかいうギアス使いそうなチームに雷門サッカー部はボロボロにされていた。無印の帝国学園との戦いを思わせるボロボロ具合である。というかみんなパス回しはスゲェな。パス回しだけ。

 

 

 この試合を見ていて気付いたことは、南沢?と呼ばれてるストライカーがよわよわである事くらいだ。何回シュート決めて止められてるんだよ。あんだけ止められてたらカウンターでGKの三国先輩もキツいはずだよ。失点の半分はあの人だ。

 

 上下左右によく動く凄い試合、だが。ぶっちゃけつまんない。

 

 普通のシュートを繰り返して得点失点を繰り返しているだけ。たまにデスソードやソニックショットらへんは出るけど神童先輩のオハコである神のタクトすらでない。

 

 ボクの憧れた超次元的サッカーが、弱いというか。

 

 マジで面白くない。

 

「退屈そうだな」

「え?えぇ」

「何故だ?」

「それは…パスカットが全然入らないしシュートも甘いし連携も手を抜いているというかみんな心ここに在らずというか」

「……思ったより手酷く言うな」

「…………こんなじゃサッカーが泣いちゃうよ」

 

 なんて、松風天馬なら言うだろうか。この試合、自分の参考になるところが集団スポーツの流れが知れた事くらいでそれ以外は綱海にーにと特訓する時間の方が有意義である。ボールがあるのに雷門窮屈そうだし、クロキシはボクのスタイルと違いすぎる。

 

 サッカーの風がわかっていない。どうしてそこに出さないんだろう。どうしてドリブルで抜いてシュートを打たないんだろう。にーにが言うなら波に乗れていないと言ったところか。とにかく。

 

 つまらない、試合である。

 

「ふむ」

「……あ!すみません部外者が勝手言っちって!いやー連携すごいのに今一つゴールまで届きませんねーなんて」

「なら、試合に出てみるか?」

「へ?」

 

 監督はそう言うとベンチから立ち上がる。

 

「選手交代!南沢篤志(みなみさわあつし)に代わって……松風天馬(まつかぜてんま)

「なっ!」

「監督!!」

「ッ!監督、どうしてそんな部外者に交代なんて」

「いいから早くしろッ!!!」

「……フン」

 

 外された南沢さんはこちらを鋭い目で見てきた。そりゃそうだろうが、文句なら監督に言ってくれ。こっちも混乱してるんだから。

 

「……久藤監督、いいんですか?」

「松風天馬、今からお前を試す」

「…………わかりました。気分はさながら豪炎寺修也(ごうえんじしゅうや)ですね」

「ッ!?……ハッ」

 

 出られると言うなら出てしまおう。なーに、サッカーだというなら最終的にはなんとかなるさ。

 

 

 

 

「また、アイツか」

「剣城?」

「……ボールをよこせ。アイツを潰す」

「わかった!」

 

 

 

 

「キャプテン!」

「……天馬だったか。すまないが余裕は」

「ボク!ソロプレイしか出来ません!だからチャンスの時だけボール出してもらっていいですか?」

「!?何を言って」

「あとは勝手に動きまーす!」

 

 キャプテンである神童さんに挨拶を終えて、軽いストレッチに入る。だって有名チームに根回しなしで輪に入れられて活躍できるわけがないから。周りの雷門の方々もボクを胡乱な目で見ている。そしてお相手は…何処か憎たらしい目で見ている。当然か、さっき意表を突いて向こうのキャプテンの隙をついたのだから。

 

 初めての超次元サッカー。その第一幕。

 

 出だしとしては最悪に近いが気分としては最高であった。

 

「いくぞ剣城!」

「挟むぞ!」

 

 出だしはボクから。味方もどれだけやるのか実力を見たいのだろう。ボールを回してくれて助かる。そして、敵からの速攻鬼プレス。鬼気迫る様子で剣城ともう一人がボールを取りに来る。

 

「早速だけど【ブリーズフロー】!」

「なに!?」

 

 弱い風ながらもボールが導かれる。その様子に沿ってプレイをしていくと妨害をいとも簡単に抜けられた。ボクのオリジナル必殺技で中央のラインを突破。いきなりの必殺技に驚いてくれたようだ。サプライズした甲斐がある。

 

 実はボク、原作の風系の技があんまり使えない。この使えないは実戦で使えないという意味だ。超次元サッカーに憧憬を抱きすぎたせいか人の真似やプレイの自由度は原作よりも上がった気がするが最強系主人公、松風天馬の周りを巻き込みながら吹く強い風は吹かせられない。周りを巻き込むが別の意味になる。風の出力が強すぎたり弱すぎたり、なんなら顕現した化身すら違う(・・・・・・・・・・)し。

 

 まぁそれでも原作最初はいいだろう。なんなら雷門リスペクトプレイをするなら今の方がいいくらいだ。

 

 次々に襲い来るミドルサードのMFを交わして、DFの序盤まで辿り着く。気分は上々。体が軽い。今までやっていたサッカー以上に楽しく感じた。

 

「ぐっ!?」

「アイツを止めろッ!!」

 

「なんだあの新入生…」

「軽々と相手の選手を交わしている」

「……やるな、松風天馬」

 

 もうゴールラインだ。残りはDF二枚にGK一枚。ドリブルからのシュートフェイクなんてのもいいかも知れないが折角の雷門初サッカー。派手に決めてしまおう。

 

 ボールを高く打ち上げ、回転しながら後を追う。回転は風を纏い、炎を纏う。スローに見えるほど特異なシュートが体に纏った炎を足伝いにボールに移り強烈な勢いでゴールへと向かう。

 

「なっ!?」

「嘘だろ…」

「なんでアイツが!?」

「アレは、まさか」

「あの必殺技は!?」

 

 見ているものが口々にシュートを見て驚愕する。あるいは敵味方問わず魅了されていたのかも知れない。だってそれは、ここにいる皆が知っている必殺技だったから。炎の勢いのままに相手のゴールを蹂躙する必殺シュートそれは。

 

──【ファイアトルネード】。

 

 

 シュートがゴールを突き破りボールがネットから落ちるまで、皆が放心していた。シュートを決めた本人はその結果を見て心底楽しそうに笑みを浮かべた。

 

 

 ボクにとっての、始まりは炎のシュートだった。今になって振り返れば、アレは【爆熱ストーム】の方かもしれないがあの時は、いや自分は今でも【ファイアトルネード】だと思っている。

 

 サッカーが好きになる瞬間は人それぞれかも知れない。けど、自分はあのシュートに憧れた。

 

 誰かのピンチに颯爽と現れ、チャンスを与えるあのシュートに。

 

 

 皆が、騒然としている。そりゃそうだ。ボクだってそこらの人が【ゴッドハンド】使い出したら動揺する。もう誰もボクを侮っていない。誰かは忌々しい目で、誰かは憧れの目で。皆、普通ではない視線をこちらに向けてくる。

 

 内心としては成功してよかったぁと思うわけだが。正直に言えばあのシュート、完成度でいえば低すぎる。初見で、こちらに対する実力に半信半疑で、あの場面だからこそ成功した。あのシュートで雷門に()が吹いている。やる気の炎に火をつける追い風が。

 

「まだまだこれからだよ?黒のなんたらさん?」

「…チッ!?生意気な!」

 

 シュートを決めたので相手ボール。剣城は正面から突っ込んでくる。とはいえ実力的にはこちらが不利。メンバーは皆疲れているし、劣勢も劣勢だ。

 

「神童キャプテン!フィフスセクターって一体なんなんですか!?」

「!?お前、プレイに集中し」

「いいから教えてください!!!!」

「…………わかった」

 

 サッカー管理組織【フィフスセクター】。

 試合の勝敗、チーム構成や育成にまで関与する組織であり、逆らえば罰を与えられる。

大人であれば社会的立場を失い、学生であれば経歴がどうなるかわからない。

 

 そんな立場の相手と真っ向から挑まれ実力でも負けている。ほえー知らなかった。今生ではあんまり世情に詳しくなかったというか、サッカー出来ればあとはなんでもいいやと思ってたところがあるのでそんなものだとは。

 

 皆やる気ないわけである。まぁそれも負けた後で考えればいいやと。どうせ10点は一人で返せない。ならばここは割り切ってボクのプレイの実験場にしてしまおう。大丈夫、なんとかなるさ。

 

「キャプテン、ありがとうございます!」

「あ、あぁ。ッ!?……速い!?」

 

 キャプテンに一頻り事情を聞いた後、剣城を追いかける。今はDFの奮闘も虚しくチャンスタイムに入られたみたいだった。急いで追いつく。もちろん、相手の妨害もあったがギリギリで辿り着く。

 

「やっほー剣城くん」

「なっ!?お前は!!!」

「先輩達いたぶってシュートが遅かったね〜そんなんじゃ」

 

──サッカーが泣いちゃうぜ?

 

 シュートカットを入れようとしたが、フェイクを入れられた。あら、冷静になられちゃった?今の剣城の態度に誰かを嘲笑う様子はない。真剣に容赦なくこちらを潰そうと睨め付けている。

 

「松風天馬、お前は」

 

──ここで潰す!!!!

 

 強い決意と共に剣城の背後に巨人が現れる。鈍色の甲冑を身につけた騎士。並々ならぬ存在感。それこそ、現在サッカーの終着点。【化身】である。

 

 

「【剣聖 ランスロット】!!!!」

 

 

「アレが、【化身】!?」

「化身は人の作る気の力が極まりカタチとして現れたもの……アイツはそれが使えるというのか!?」

 

 雷門の先輩方、解説ありがとう。剣城はそれでも余裕を見せない。【化身】は圧倒的アドバンテージの筈なのにFA一人とGK一人のゴールに何をそこまで怖がっているのだか。油断の一切を見せず必殺技まで重ねてゴールを放ってきた。

 

「【ロストエンジェル】!!!おぉおおお!!!!!!」

 

 その強烈なシュートを、ボクは。

 

 

 

「いただき♪」

「は?」

 

 

 化身を出して取り返した(・・・・・・・・・・・)

 

 原作とは違う、黒く禍々しい魔神。魔神ペガサスをカラーチェンジした其れの名前は。

 

「化身【天魔 バイコーン】。じゃあねー剣城くん」

「…………!?待て!!!!!」

「バイバイ」

 

 カウンターチャンスである。相手のメンバーは今、剣城の優勢ムードに押されて前に集まってきてしまっている。でもそれは、相手のゴール付近の守りが薄くなっているということでもある。

 

「通すか!」

「ボールをよこせ!」

「調子に乗るな!」

 

 まぁ自陣営がもみくちゃになっているんだが。妨害が凄い。パッと見て六、七人抜きしなくちゃならないのか?けどなんとかなる。何気にラッキーなことに味方がスタミナ切れでコートに広がっている。なら、

 

「【ゲイルブラスト】!!!」

「何!?」

「ぐっ!!」

 

 化身専用必殺技で突き抜ける。一点を貫く激しい嵐。周りの選手を顧みない荒々しいプレイでどんどんと抜けていく。そしてもうゴール前。シュートに入る寸前。

 

「待て!!!!」

「待たない」

 

 

「がぁああああ!!!!」

 

 化身のシュートが突き刺さる。それは先程の一点目とは違った。アレは味方に希望を与え周りを魅了する篝火のようなシュート。これは、

 

 相手のやる気を削ぐ、絶対の実力を見せつけるようなシュートである。

 

 10-2。

 

 松風天馬がコートに入ってモノの数分で流れが変わった。周りをとにかく巻き込む嵐である。そのくせ自分だけは台風の目の中にいるように楽しそうに笑っている。

 

 そのあとは……余裕のない剣城を抜き去り、適当にコピーした【デスソード】をかまして得点。そしてボクと剣城の化身に影響を受けたのか神童キャプテンすらも化身の予兆を出しそれを見た相手の監督は帰って行った。

 

 体力はない。一人で、サッカーコートを何往復もしたのだ。後々より超次元になったらスタミナも超次元にならなきゃいけないのだろうか、今後の課題である。

 

 最終結果は10-3。

 結果としては散々であるがこれまでの特訓の成果を見せる場としては上々であったかもしれない。

 ふと、周りを見渡す。皆が皆疲れ切った中ボクを見ている。仲間なのになんともいえない視線である。その視線を受けてだんだん思考が落ち着いてきた。興奮が冷めてナーバスになりつつある。ボールを持っている時は楽しかった。それだけ。けど、このやるせなさだけは

 

「なんとかならないかもしれない」

 

 ボクの初陣はこれで終わった。

 




これ、イメージとしては初期に白竜が攻めてくるようなモノ
自分の必殺技すらパクられてメンタルボロボロにされた剣城くんの明日はどっちだ!!!
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