ぬるぽ。 作:ぬるぽの気合釣り
──蟲の
当然のように僕の造語。この世界どころか“外”の世界にも存在しない単語だね。
“ああいうの”の内容をもう少し分かりやすく言うのなら……まあ、そうだね。バグとか、エラーとか。そんな感じ。
だから『蟲の鰓』なんだけどね。
そういう意味でも悪くない名前なんじゃないかって僕は思ってたりする。
蟲に鰓なんてあるわけないからね。
そう。この世界にバグやエラーなんて、本来生まれようがないんだ。
世の中に完璧なんて無い、理想は実現不可能だから理想なんだ、なんてよく言われてるけど、事実としてこの世界は完璧に作られていたはずだった。
安易に使うべきじゃないだろうけど──この世界を組んだ人たちは天才だったと僕は思ってる。これは裏側まで見通せる僕ならではの感想だろうけどね。
とはいえ、1,500万を超える人間を100年以上前から破綻させずにずっと演算してきたんだ。それよりも前からこの世界が続いている事まで考えれば……多少はその程度も伝わるよね。
まあ、長々といくつか言ったけど、結論としては『この世界はめちゃくちゃクオリティが高い』っていう事。
じゃあなんで蟲の鰓が出てきてるのか。気になるところだ。さて、その答えは──なんと知らない。
いや、僕は“ちょっとばかし”物知りおじさんをやってるだけだからね。知らない事もたくさんある。そもそも僕自身が生まれた理由も知らないんだから、そこは勘弁して欲しいかな。
っていう内容を、例え話なんかも交えながら明陽に説明した。
「……結局、結論は『あれはなんかよく分からないバグだ』ってことでいいの?」
「年寄りは話が長いって? 酷いなあ」
「そんなこと言ってないけど!? というか私ENP君の年齢も知らないし!」
「あはは」
いい反応を返してくれる明陽に笑いながら、改めてビルの屋上を見上げる。
うーん、すっごくsan値の減りそうな見た目。明らかにボス格の強敵とかそんな感じのやつだよね。
ただ、案外“ボス格”って表現は間違っていないかもしれない。少なくとも、僕は
そもそも、蟲の鰓──つまりはバグとかエラーとか──っていうのは無から発生するものじゃない。基になる何かがあって、元となる姿があって、そしてそれが崩れることで初めて生まれ落ちるものなんだ。
たとえば明陽に出会う直前に相手してた腕長おじさん(仮)は、元々はあの年齢にまで生きていた誰かが変異した存在だし、腕の異常だって『腕を伸ばす』っていう動作が狂った結果だ。
もっと詳しく言うのであれば、まずあのおじさんは腕の長さの上限値が無限大になっていた。だから全身ゴム人間みたいに腕を伸ばせていた。
その上で、何らかの動作を繰り返す職業に就いていたんだろうね。あのおじさんのよく実行していたっぽいコマンドである『繰り返し』がバグって、同じような動作を無限に反復するようになってた。
刺身にタンポポを乗せる仕事かな? あれ、実際には菊だっていうのは有名な話だけど。
話が逸れた。
とにかく、あの腕長おじさんはその辺りでエラー起こして、それがどんどん悪化して……で、最終的には識別名ですらバグに呑み込まれた。だから
さて、ここで分かったと思うけど、蟲の鰓には段階がある。
自己診断、あるいは世界からの定期チェックで解決される軽度。
その段階を過ぎ、言動にまで異常が出始める中度。
そして分かりやすく
大まかに言えば、この三段階に分けられる。
と、いう事で。
「明陽。君が何をしようとしているのかは何となく予想してるけど、その上で言うよ。アレには気を付けた方がいいと思う。何かがおかしい」
「私からしてみたら蟲の鰓? っていうのがそもそもおかしい存在だ……っていうのは、言わない方がいい?」
「あはは、この場面でも軽口を言えるのは素直に凄いね。さすが、“外”で生きていただけはある」
既に、明陽はその足を動かしている。
僕らに気付かれたことに気付いた赤子の蟲の鰓が逃げた方向へと。
僕としても蟲の鰓を潰すのに否やはないし、なんなら普段から率先して潰しているぐらいだ。本質的には無関係でしかないはずの明陽がどうして駆け出したのか……って部分に疑問を感じないワケじゃないけど、特に問題でもない。
今はそれよりも、この子に情報を共有する方が優先度が高いし。
というわけで、彼女に合わせて歩を進めながら、触りだけじゃなくもっと深い部分にまで説明を進める。
「まず、蟲の鰓にも段階が存在する。今重要なのは、あんな風にテクスチャにまで異常が出ているのはどうしようもない最終段階だって事だ。“外”風に言うのなら、サイバーフォリーだね」
「……殺すしか止めようは無いし、救いようもないってことね」
サイバーフォリー。肉体の機械化を進めすぎた結果、人間性を失って無差別に暴走するようになった人間だったモノたち。理性も感情も喪失し、ただ生前を思わせる動きで機械的に人を殺すだけの化け物。
利便性なり叛乱したAIに対抗する力なりを求めた結果そうなるっていうのは実に皮肉だと思うけど……うん、その辺りの割り切りは慣れているんだろうね。少しだけ苦渋を飲むように歪めはしたけど、すぐに明陽の表情は冷たく固まった。
あるいは、あの蟲の鰓が無差別な敵意をバラ撒いていたから、っていうのも大きかったのかもね。
「ここで重要なのは、あそこまで症状が進むのは稀だっていう事なんだ」
「そこもサイバーフォリーと同じって認識でいいの?」
「大体はそうかな」
違いとしては、そもそもの発症自体は無作為ってところかな?
「そもそも、明陽。バグとかエラーって、どういうところに発生すると思う?」
「……私、プログラミングの知識は無いんだけど」
「別にそんな難しい事じゃない。直感的にでいいから、言ってみて」
「じゃあ、まあ、複雑なところとか」
「うんうん、大正解」
まあ、別にそれ以外にもタイプミスとかスペルミスとか、凡ミスでエラー吐かれるのもあるあるなんだけどね。全角スペースと半角スペースとか。
そんなのは軽度の段階で解決されるから、今はどうでもいいんだ。
「蟲の鰓っていうのは、複雑に絡み合ったコードの奥側から進行していくものなんだ。ゆっくり、長い年月をかけて……積み重ねて。どうにもならなくなるレベルにまで」
というより、どうにもならなくなったから顕在化するとも言える。
テクスチャみたいな表面的な部分とか、名前の文字化けとか、そんな簡単な領域にまでエラーが伝搬しても手が付けられなくなったから。原因がもっと奥の部分にある以上は、対症療法じゃ焼け石に水でしかない。
「……なんか。サイバーフォリーっていうより、癌みたい」
「おお、なるほど。その発想はあんまり無かったかも」
癌……というか病気という概念自体が薄くなって久しい時代を生きていたんだろうに。よく知ってるね。いや、逆に終末世界だと怪我とか病気は身近な概念だったのかな?
どっちにしても物知りだとは思うけど。
しかしまあ、癌か。言い得て妙だね。
生身がある以上は根絶なんて不可能だと思われてた“外”で消え去って、完全な電子の世界になった“ここ”で似たような物が出てきてる──なんて部分まで含めて。
「癌って例えを使えば更に分かりやすいかもだけど、蟲の鰓っていうのは長い時間をかけないと発生しないモノなんだ」
「あー、つまり」
「そう。赤子の蟲の鰓なんてのは、まあほとんど有り得ない存在だ」
完全に、とは言い切れない。
“「ありえない」なんて事はありえない”っていうのはかなり有名になったフレーズだけど、まさしくその通りだからね。どんな事象であれ、可能性が零にまで落ち込んだりはしない。
その典型例が僕だし、“外”の世界でもある。
異世界と繋がる事もあるし、タイムマシンだって作られるし、AIの叛乱だって起こる。
もしかしたらどこぞからゾンビウィルスが発生してパンデミックが起こることだってあるかもしれないし、サメが空を飛ぶことだって有り得るかもしれない。
……いや、さすがに最後のはないか。いくらあの強欲さんでも『そりゃねえだろ』って言うよね、たぶん。
そんな僕の忠告の甲斐あってか、明陽の雰囲気は更に鋭く変わった。いわゆる“荒事に慣れていそう”って感じだ。思っていたよりも武闘派かも、この子。
それに、あの蟲の鰓の気配も近くで止まっている。衝突は近そうかな。
「……ふふっ」
思わずといった形で口角を上げながら、僕は明陽の隣を走るのだった。
──*──
入り組んだビル街の裏路地を右に左に、時に通行禁止領域を飛び越えながら進んだ先。不自然にぽっかりと、30メートル四方ぐらいの広さで開けたその場所で、赤子の蟲の鰓は僕らを待ち構えていた。
というか──
「罠っ、だよね!」
便宜上広場とでも呼ぶべきそこと路地との境目。
そこに僕らが辿り着いた瞬間の異常に、しかし明陽は予想通りと言わんばかりの機敏さで反応した。ナチュラルに壁を蹴って三次元的な動きをするのは流石って感じだね。
「──へぇ」
直後、襲い掛かる負荷。
言葉で表現するのなら、『重力が何倍にもなった』ってところかな。押し潰される程ではないけど、常人ならまず動けなくなるぐらいの圧迫感という塩梅。
さすがにその程度で僕をどうこうできたりはしないけど、それでも思わず声を漏らしてしまう程度には珍しいものだ。
つまりは──気になってくる。
「君、いったい何だい?」
蟲の鰓であっても、元になる存在があるのは間違いない。あるいは、その異常についても。
腕長おじさんなんかは分かりやすかったけど、あれの異常は『腕を伸ばす』と『繰り返す』という二つの動作から成っていた。そしてそれは、全ての蟲の鰓について共通している。
これは絶対の法則だ。
すぐに前言を撤回するようで悪いけど、これを外れるというのは“有り得ない”んだ。少なくとも、僕が生まれた後に発生した蟲の鰓に関しては。
それは、あるいは無から有が生まれるのと同義だからね。
それに僕も、そんな異常が起きて気付かないほど耄碌していないつもりだし。
というか世界が黙ってないんじゃないかな。僕が存在してる時点でかなりいっぱいいっぱいになってるんだ、追加で生えてきたなんてなったら、最悪根本から破綻しかねないんだから。
で、となると……あの赤子には『重力を操作する』という事象に関連するナニカがあった事になる、んだけど。
あるかなぁ? それも赤子に。
いやあ、うん。
「ほんとに謎だね、君。明陽といい、この世界自体に何か起きてたりするのかな?」
「ENP君! ぶつぶつ言ってる暇あるなら手伝ったりしてくれない!?」
「ああ、うん……必要?」
「割と全力近いんだけど!?」
まだ全力出してないって事じゃん、それ。いや、手の内を見せたくないってのは分かるけどさ。
そもそも素の身体能力だけで目に見えない重力攻撃を回避してる時点で十分じゃない?
「あ。もしかして気付いてない感じ?」
「何がぁ!?」
「いや、言ったでしょ? 明陽の情報量は常人の百倍とかになってるって。だから、この程度の攻撃なら一発二発食らったところで問題無いよ?」
ジグザグにステップを踏んで進む明陽と、まっすぐ重力の負荷を受け続けたまま進む僕。実に対照的な方法であの赤子に近付きながら、声を飛ばす。
ある意味、僕以上に存在が強固になってるのが明陽なんだ。そんな手の込んだ回避なんてしないでも、ごり押しで大抵はどうにかできると思うんだけど。
……ああ、もしかして僕の信頼度の問題?
「いや、そうだとしても当たらない方が良くない?」
「…………」
全然違った。それにド正論だ。ド級の正論だ。
困ったな、何も言い返せない。
…………。
「ぐう」
「ぐうの音も出ないってそういう事じゃなくない!? というかぐうの音は出るの!?」
うん、やっぱり余裕あるじゃん。
ツッコめるだけの余力があるんだから手助けなんていらないでしょ。ヤバくなったらさすがに助けてあげるしさ。
「は、薄情者ー!」
「あはは、僕のは無情って言うんだよ」
文字通りに、ね。
なんて茶番のようなやりとりをしながらも、僕たちは赤子に接近した。
至近距離、つまりは手を伸ばせば届く距離。そこそこゆっくり進んでいたとはいえ、まっすぐ歩いてた僕と同時に辿り着くのは凄いよね。
何かパーケィジとか入れてるのかな──っと?
「わっ、眩っ──!?」
「へぇ……」
突如、光が僕たちを照らした。
否。より正確に言うのならば、光源は輪っかだ。半径1メートルのを最小に、1.5メートル、2メートルと計三つの輪っかが同心円状に宙に浮いている。
丸型蛍光灯……というより、天使の輪かな? 赤子の見た目からして。
で、これが僕らの頭上に陣取っている事と、重力攻撃が鉛直方向からしか来なかった事を考えれば。
「素直に考えれば、これが重力を出してるって感じだけど……ねぇ」
「──っ!」
呟きと同時に、光輪の輝きが増す。
やめて欲しいよね、僕が含みを持たせたこと言った途端に行動起こすの。まるで僕が仕込んでるみたいじゃんか。いや、遡れば蟲の鰓自体が僕のせいになるかもしれないけどさ。
『蜉ゥ縺代※』
何事かを赤子が言い放ち、一際強く光輪が輝きを放つ。
はたして、その後に起きた事象は──
「まあ、うん。そんな気はしてたよね」
ズルリ、と、
怪物、あるいは物の怪、あるいは怪異。どうにか表現するのならば、ヒトガタを模した蠢く数字の羅列、だろうか。
怪物と言うには無機的に過ぎ、物の怪と呼ぶには東洋の気配が薄く、怪異と呼ぶには輪郭がはっきりとしすぎている。まあ、どちらにせよ一目見て人ならざるモノだと分かる異常だ。
半ば予想していた通りの現象に肩をすくめて、溜息を吐く。
“想像の具現化”、か。……あんまり当たってほしくなかったんだけどね。面倒が勝るから。
あれかな、悪い予感ほどよく当たる、っていうヤツ。中指立ててやりたいね。
なんて思いながら、手を伸ばす。明陽は光輪の光が強くなったタイミングで距離を取ったけど、僕は特に動いていない。赤子の至近距離に陣取ったままだ。
だからまあ、こうして手を伸ばせば。
スカッ、っと。
「あれ?」
視線を、ヒトガタから赤子の方に戻す。
ちょっとだけ、予想外。まさか躱されると、は──ね────
『クルルヮ?』
「は?」
眼前に。視界一面に。謎の顔。
梟のような、というよりも梟そのものな。どこかのっぺりとした印象を受ける、不気味な顔。それが、60度ほど角度を傾けて僕と目を合わせた。
『クルヮ──クルル』
いや、いや。
目を離したと言っても、それは数秒だけの話だ。5秒もない。その短時間で、赤子の姿から急成長したって? いくら想像を具現化できるからって、そこまでの自由が利くか?
……いや、というか。
この蟲の鰓、赤子だったのにどうやって『重力の操作』なんて想像をしてたんだ。
「前世の記憶、あるいは他人の記録……どれを参照してたとしても──」
何かが、腹部に押し付けられた。
見れば、随分とサイズを縮小したらしい光輪が二つ、二重丸を描くようにそこにある。
「邪魔」
『ルヮ!?』
ので、叩き割る。
種は割れてるんだ。その上で、僕もそこそこ本気だ。この程度を砕くのに苦労はしない。
というわけで、数時間前の焼き増しのように右手に雷を迸らさせる。
黒一色で構成された、有り得べからざる雷だ。もうちょっとだけ踏み込んで言うのなら、溢れ出た余剰分の力がエフェクトに変換されてるだけで、本質は僕の右手そのものなんだけど。
まあ、そんな事は今はどうでもいい。
コイツを消す事の方が、優先度が高い。
「そんなに熱意があるつもりはないんだけど。僕、古い友人に頼まれてるんだよね。『この世界のこれからをよろしく』って。だから、君は消す。一片のデータも残さずに」
『ククルヮ!』
「うん、そうだね。紛う事なきダブルスタンダードだ」
蟲の鰓は、僕が唯一関わる事のできる存在だ。
人間であるというだけで関われば歪めてしまう僕にとって、歪んだ先の結果である蟲の鰓はある種の同胞とも呼べる。ここまで理性を有している蟲の鰓は、なおさらに。
それでも、コイツを残す事はできない。
自発的に蟲の鰓を生み出す事のできるというだけで、世界にとんでもなく負荷をかけるから。……まぁ、だから“ダブルスタンダード”なんだけど。
「恨んでくれていいよ。その様子を見るに、君は望まぬ形で変質したんだろう。だから君は悪くない。十分に恨む権利がある。それを否定したりはしない」
進む僕と、怯えたように後退する赤子だったモノ。
梟の顔をした、翼を持った五頭身のてるてる坊主もどき。それを対象に見定めて、右手を大きく引いて、強く踏み込む。
地面を掴む感覚。
左足に体重を傾けて、軽くなった右足で初速を付けて。いざ──
「ちょっと待って」
「あぶっ」
くるり、ぶらぶら。
……えーっと。なんか、その。
さっきから出鼻を挫かれる事、多くない?
親猫に運ばれる子猫のように、首根っこを掴まれた状態で明陽と目を合わせる。もちろん掴んでるのは彼女の腕。
「どうかしたの、明陽? 何か言いたい事でもあるの?」
いや、それ以外にも気になる事はあるけどさ。
特にさっきの動きとか。
一瞬で僕の斜め前にまで移動して足払いして、地面に倒れ込むより先に今度は背後に移動して首根っこを掴むって。何その動きって感じだけどさ。
「……ENP君。あの子、どうするつもりなの」
“あの子”、ねえ。
向かってくる途中は、心も決まってたように見えたんだけど。怯える姿を見て、情でも芽生えたかな? ……なんて、そんなの有り得るわけないと思うけど。
その程度で揺らぐ人間が、終末世界を生き延びれるわけがないからさ。
「うん? どうするって、消すつもりだけど」
「殺すんじゃなくて、消すんだよね」
「……? だから、そう言ってるけど。転生させて同じようになられたら面倒だし」
この世界には16,777,214人の人間がいるんだ。もちろんそれは数で扱うべきものではないだろうし、同じ人間は一人としていないのは理解してるけど。
その“一人”の損失を躊躇わせるには、少し足りないかな。『代わりはいなくても上位互換は存在している』ってのも人間の言葉だったよね、なんて。
それが免罪符になりはしない、ってのも理解してるけどね。
「そっか。……そ、っか」
え……。
もしかして、本当に情を覚えてたりする? 嘘でしょ?
「あの、明陽? 言っておくと」
「分かってる。詳細はともかく、ENP君はENP君なりの考えがあってその結論に至ったっていうのは。ちゃんと、分かってる」
俯いていた顔を上げて、目を合わせられる。
今の僕と瓜二つな、翠玉の瞳。揺れるようなそこには確かな情の色と、それ以上に鮮烈な決意の色が。
「でも、なら。もし、あの子を元に戻せるかもって言ったら……どうする?」
それは、その。