「ん~! この松茸ご飯サイコー!」
「メイちゃんも結構食べるのね!? 私も負けてられないわっ!」
「俺もお二人を見習って一杯食べて強くなります!!」
「ムームー!」
「おい。お前ら、味わって食え。飯がもったいねぇだろ。」
朝食の時間、なぜか俺たちは甘露寺の部屋に集められて食事をしていた。なんでも城崎と甘露寺が意気投合したため、折角だからと集められたからだ。
「それにしても凄いわっ! 未来ではそんなにお化粧品があるのねっ! 凄く便利っ!!」
「そうそう。でもこっちでは売ってないから下呂君に頑張って作ってもらってるんだ。ね~? 下呂君。」
「薬の調合が得意とは言え、化粧品をまさか自作することになるとは思わなかったぜ。まあ材料は産屋敷家の伝手で言えば調達してくれるから有難いんだが・・・」
「凄い下呂さんっ! 私にも融通してくれないかしらっ!?」
「下呂君。お願いできる? ついでに胡蝶さんにも分けてあげようよ?」
「・・・胡蝶は自前のがあるだろ? いつも紅差してるみたいだしな。」
「へ~。良く見てるね。もしかして気になってる?」
「なっ!? お前はすぐそういうことを・・・そもそも俺は現代に戻らなきゃいけねぇんだぞ!! こっちの女性と親密になれる訳ねぇだろ!?」
「ふ~ん。でも、もしそんなしがらみが無かったら婚活相手としては有りなんだね? もし現代に戻れなかったら真面目に胡蝶さんとの間を取り持ってあげようかな~?」
「・・・」
俺は何を言ってもどうせ振り回されると思って無言で食事をすることにした。
だが、その間ずっと城崎が俺を指でつつき回すののが物凄くうぜぇ。俺はしびれを切らして言い返す羽目になった。
「確かに・・・胡蝶とは毒物薬物の調合や研究について話が合うし、怪我人に誠実に向き合ってる姿もすげえ尊敬できる。凄く魅力的な女性だと思うぜ。」
「キャー///!! 下呂さん素敵っ!! 私も好きな殿方ができたらそんな風に言われてみたいわっ///!!!」
「お~、下呂君が自発的にそんな熱烈なラブコールを口にするなんて凄く意外。もしかしてかなり真剣に悩んでるかん・・・」
「けど、それでも俺は、やっぱり現代でちゃんと将来まで見据えて婚活をすべきだと思ってる。
結婚ってのは、相手の人生まで一緒に背負って生きていくことだろ? なのに別れる前提で好意を伝えるのは違うんじゃないか?」
俺がまじめな返しをして、城崎も甘露寺も押し黙る。すげぇ気まずい。少し言い過ぎたかと反省した。すると・・・
「下呂君ちゃんと成長してるようで私嬉しいよ。それって本当に真剣に下呂君が相手のことを考えてないと出てこない言葉だからね?」
意外にも城崎は肯定的な反応をした。俺ははっとして振り向く。
「城崎・・・」
「でももうちょっと冗談が通じるようにならないとダメかな~?」
「ぐおっ!」
俺があっけに取られていると、城崎が俺の脇に肘打ちをする。俺は暫く悶絶した。
「まだまだ私がついてあげないとダメかな? 修行不足だね~、下呂君。」
「おまっ・・・飯食ってる時に肘打ちは容赦なさすぎだろ・・・吐くかと思ったわ・・・」
「アハッ! ごめんごめん! ちょっとやりすぎちゃったかも~。」
俺が恨めしく呟くと、城崎も悪いと思っているのか苦笑いを浮かべていた。その後再び城崎は甘露寺との会話に戻る。
「ちなみに甘露寺さんはどうなの?」
「え!? 何がかしらっ!?」
「甘露寺さんも婚活してるんでしょ? 下呂君は無理だけど、気になってる相手いたりするの?」
「え!? ええ!? そ、そんな、皆の前でなんて恥ずかしいわ・・・///」
「え~? でも昨日の夜、靴下をくれた男の人の話してたでしょ? その人はどうなの?」
「ええ!? い、伊黒さんのこと!? そそそそれは・・・///」
甘露寺は城崎の質問で真っ赤になり食事の箸を止めてしまう。
「おい、城崎。甘露寺が嫌がってんだ。お前ら二人きりの時に話せばいいだろ?」
「いや、折角だから下呂君からもアドバイスしてあげなよ? これは下呂君にとってもいい経験になると思うよ?」
「ぬ!? そ、そうか・・・甘露寺! 俺でよければ相談に乗るぞ?」
俺は冷や汗を流しながら必死にガッツポーズを決める。以前も城崎の恋愛相談室の付き添いでいろんな人の相談に乗ったことがある。あの時はダメダメだったが、今の俺なら大丈夫なはず!
「えっと・・・/// じゃあ少しいいかしら下呂さんっ! 実は・・・///」
それから甘露寺から伊黒という蛇柱の隊士との出会い、その後の逢瀬についていろいろ聞かされる。加えてその時の出来事から、どれだけキュンキュンしたかなど事細かくだ。
俺は一通り聞いて、震えながら虚勢を張る。
「ふ、ふふ・・・か、甘露寺・・・きっと相手はお前に好意を寄せている・・・俺の毒使いの勘がそう言っている・・・ぞ・・・」
「え!? ホントッ!? 本当にそうなのかしらっ///!!??」
「あ、ああ・・・ま、間違いないぞ・・・あ、あとは相手のことを思って丁寧に・・・」
「うんっ! うんっ! それでっ!? その後はっ!?」
「そ、その後はだな・・・え、ええっと・・・それは・・・まあ・・・なんというか・・・その・・・」
「下呂君。途中まではそこそこ良かったんだけど、あんまり適当なこと言っちゃだめだよ? 20点ってところかな?」
「ぬう・・・やはり俺に恋愛相談なんて無理か・・・」
「まあでも以前よりはずっと成長してるよ。今後に期待ってところかな?」
「むう・・・辛だな・・・」
城崎は俺にそう言い放ったのち、今度は竈門に語り掛ける。
「竈門君はどう? 甘露寺さんに何かアドバイスある?」
「え!? 俺ですか!? でも俺、恋愛経験なんてないですし・・・」
「え? 本当? でも蝶屋敷の子たちと仲いいよね? 結構モテてるし。特に栗花落ちゃんなんてかなりいい感じなんじゃない?」
「え? カナヲがですか? あんまり実感ないんですが・・・」
「ええ・・・栗花落ちゃん、君が入院してる間ずっと看病してたのに気づいてないの? これは下呂君とは別の意味で課題ありかも・・・」
「そ、そうなんですか!? が、頑張ります!!」
「う~ん。頑張れば何とかなるものでもないんだけどなぁ。まあ竈門君の方はまた後日話聞くよ。まあいいや。それじゃあ私からの甘露寺さんへの助言なんだけど・・・」
それから俺と竈門がせっせと食事を進める中、城崎は甘露寺に様々なアドバイスを続けていた。やはり元結婚詐欺師。すげぇ量の引き出し持ってやがる。加えて滅茶苦茶説得力がある。
流石男も女も騙してきた奴だ。面構えが違う。男性向け女性向け問わず、ここまで的確なアドバイスができるとは。改めて城崎の有能さを実感した。
「わ、わかったわっ! 今度伊黒さんをご飯に誘った時に実践してみる! ありがとねメイちゃんっ!!」
「うん。また何か困ったことがあったら気兼ねなく相談においでよ? いつでも力になるからね?」
「ありがとぉおおお!! メイちゃぁあああん!! 私頑張るからねぇえええ!!!」
甘露寺が城崎に抱き着いたのを締めに、この場の朝食を兼ねたお食事会はお開きとなった。
甘露寺が刀鍛冶の里を発って五日経った。本来なら俺もこの里を発っていたはずである。
しかしそうはならなかった。理由は大きく分けて二つある。
一つは城崎がこの里の温泉に激ハマりしてしまい、滞在日を伸ばすと言い出したこと。
俺は城崎に言いくるめられ、蝶屋敷に帰ることは叶わなかった。そしてもう一つの理由が・・・
「炭治郎さん! この程度で死んでるようじゃカスですよ!? 頑張ってください!!」
「待って!? 死んでしまう!! 腕6本はきつい!!!」
俺は離れたところで、竈門が腕六本の侍みたいな格好をした人形にしばき倒されているのを傍観していた。
暫くして、俺の後ろからある少年が近づいてきた。彼こそが、俺がこの里を発つことができないもう一つの理由である。
「下呂さんだっけ? 相手してよ。あの人形よりもずっと鍛錬になるから。柱命令。」
「あのなぁ、時透っつったか? 俺は一時的に鬼殺隊に協力してるだけだ。別に上官命令とか関係ないんだが・・・てかこの話四日前もしたよな?」
「あれ? そうだっけ・・・覚えてないや。そんなことより相手してよ。上弦の参と引き分けて、上弦の陸も倒したんでしょ? 相手にとって不足はないと思うから。」
「それは覚えてるんだな。記憶障害だっけか? どっちにしてもそれは変性血統を使った時の話で、日ごろの俺はお前ら柱の実力の足元にも及ばねぇよ。
腕を磨きたいなら他を当たりな・・・っておい!!??」
俺はすぐさまその場を離れる。俺が寄りかかっていた樹木は一瞬で真っ二つにされ、地に倒れて辺りに地響きが鳴る。
「おいおい! マジか!? 先日もやめろって言ったよな!?」
「え? そうだっけ。まあいいや。君も本気出さないと死ぬよ?」
「やめろ!! 隊士同士の戦闘はご法度なはずだろうが!?」
「でも君、さっき一時的な協力者って言ってたよね? じゃあ隊士じゃないし問題ないはず。」
「それは覚えてんのかよ!? おいやめろ!! マジで死ぬって!?」
なぜこんなことになったのか。それにはちゃんとした理由がある。
甘露寺が里を発った翌日、竈門は縁壱零式とかいうカラクリ人形で修業をすることになった。
何でも時透が小鉄という人形の持ち主の恨みを買ったらしく、竈門を鍛えてやり返すためだそうだ。実にくだらない理由だった。
しかし、俺は俺で巻き込まれた。時透は柱だったそうで、新しい刀を打ってもらう間、この里で修業したいそうだった。
そんな中、竈門の傍にいた俺が時透の目に留まり、強引に手合わせすることになってしまった。
ご存知の通り、柱は皆化け物だ。下手すると鉄使い*1の主戦力よりも強いかもしれない。
俺は結局、時透の猛攻を捌き切れず、
結果、反動で身体が疲弊し、湯治の時期を延ばす羽目になった。城崎は滞在期間が伸びて丁度いいとか言ってたが、もともと疲れを癒すために来てるのに、こんなんで寿命削るとかマジでどうかしてると思う。
だがそんなこと言っても、時透はどういう訳か話が通じねぇ。昔脳に障害を負ったって聞いたけど、コミュニケーションが通じないのはマジで洒落にならねぇ。
どうしたもんかと頭を捻るが、結局実力で片を付ける意外他になかった。
「わあ。凄いね。まさか刀を蹴りで折るなんて。」
俺はやっとの思いで時透との戦闘を終わらせる。俺は息を切らせていたが、時透は息切れ一つしていない。体力だけなら、鉄使いの人間とは比べものにならねぇ。
「今後は勘弁してくれ。俺はお前らと違って、寿命を縮めるぐらいのリスク背負わないと、このレベルで戦えねぇんだからよ。」
「うん。わかった。でも数日したら忘れちゃうかも。その時は悪いけどまた付き合ってほしいな。」
「マジかよ・・・こりゃあ城崎に頼んでさっさとこの里から出ないとまずいな。今夜あたり頼み込んでみるか。」
俺は去っていく時透の背中を眺めてそう呟いた。やがて傍に全身青あざだらけの竈門が駆け寄ってくる。
「だ、大丈夫ですか? 下呂さん・・・」
「・・・見た目だけならお前の方がやばそうだが・・・」
「あ、俺は平気です。小鉄君の目を盗んで下呂さんがご飯と水をくれたので何とか生きてます。」
「おい、小鉄ちょっといいか?」
俺と時透が初日にバトってからの三日間、俺は変性血統で疲労した身体を休めていた。
竈門に事情を聞いたが、まさか俺が目を離してる日は絶水・絶食・絶眠だとは思わなかった。
俺は今日、何も知らずに竈門に差し入れを持って行ったのだが、あれが無ければ死んでたらしい。
俺は時透との一件もあって、半ギレ気味に小鉄を呼び出しきつく言っておいた。
小鉄が反省しだしたのを見計らって、俺は宿に戻る。三日後こそはこの里を発とう。そう思い、城崎に事情を話して何とか納得してもらった。
俺はこれで身体に鞭打つこともないと胸を撫で降ろした。
しかし、里を発つ前日の夜、刀鍛冶の里に上弦の鬼が襲来した。
続く
下呂君湯治で里来てるのに休めないやんけ・・・