鬼滅の毒使い   作:科学大好き人間

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下呂君視点です。今回から本格的に猗窩座戦です。もしこの小説の評価バーに色がつかなかったらお蔵入りしてたであろうエピソードだと思います。
皆様の応援のおかげで無事投稿するに至りました。この場をお借りして御礼申し上げます。
話数は4話を予定しています。下呂君と猗窩座の生い立ちを考慮すると書けることが多すぎてまとまり切らなかったのが理由です。なるべく冗長化しないよう要点を押さえて書いて行こうと思います。


20話 毒使い、武を極めん鬼とあいまみえる

「お前は・・・上弦の・・・」

 

「そう言えばまだ名を名乗っていなかったな。俺は猗窩座。もっともお前はこの場で殺す。覚えたところで冥途の土産にしかならんだろうがな。」

 

 

俺は猗窩座と名乗る鬼と正対していた。

 

俺は周囲の様子を確認し、思考を巡らせる。少なくともこの周辺に他の敵はいない。あくまでも一対一の戦いをご所望って訳か。

 

ただ、もし本格的に戦闘をするなら、このまま遮蔽物無しの広場で戦うよりも、ふすまや障子を盾に視界を遮りながら潜伏して戦った方がいいと長年の経験がそう告げてくる。

 

猗窩座は見るからに搦手を意識しない様相だと見て取れる。恐らく正攻法で殴り合いをしてくるタイプの敵で間違いないだろう。

 

一方、こっちは搦手が本命の毒使い。馬鹿正直に相手するよりも、罠や小細工で翻弄して殺すことが本業だ。

 

ならこの城の構造を思う存分利用して戦えばいいだけのこと。俺はそう判断し笑みを浮かべる。

 

 

「随分と自信満々じゃねぇか。お前は無惨と違って俺の毒血解離が怖くねぇのか?」

 

 

俺の問いに対し猗窩座は不敵に笑い返す。

 

 

「ふっ、妓夫太郎や童磨を殺した例の猛毒か。まるで問題ないな。そもそもあれは一対一で使えるような代物ではないだろう。戦闘中にあれ程長い溜めを要するのであれば、使用する前に殺せばいい。対処は容易だ。」

 

 

猗窩座の冷静な物言いに、俺は内心舌打ちをする。確かにこいつを前にしてあんな長い溜めをする隙が作れるとは思えない。毒血解離を使う暇は恐らくないだろう。

 

そもそもあれは使えば反動で動けなくなる俺の奥の手だ。安易には使えない。

 

仮に無惨が俺の投与した薬で弱体化したとしても、奴の傍には恐らく黒死牟とかいう上弦最強の鬼が居る。

 

奴と戦う時の為に毒血解離は温存しておきたい。

 

そうなると猗窩座をどうやって倒すか。その策略に思考を巡らせるが悩ましい限りだった。

 

 

「なにやら卑怯な戦法を考えているようだが無駄なことだ。貴様のように正々堂々やり合わず毒物に頼るような弱者など恐れるに足らない。この拳で直々に殴り殺してやろうっ!!」

 

「っ!!」

 

 

猗窩座は拳を振りかざし俺に突進してくる。

 

俺は間一髪で煙幕を焚き付けるのに成功し、奴の視界を塞ぎ、拳をギリギリで躱す。

 

 

「またそれか!! つくづく卑怯な戦術ばかりだ!! お前は!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ー破壊殺・砕式 万葉閃柳ー

 

 

 

 

 

 

 

 

突如凄まじい轟音と共に、足場が砕け散る。その衝撃とともに一瞬で煙幕は四散する。

 

しかし、その場には猗窩座一人が立ち尽くすだけだった。

 

 

「ふっ、煙幕で目眩ましした挙句逃げの一手とは。どこまで卑劣で汚い手を使えば気が済むのだ?」

 

 

猗窩座は周囲の様子を伺っている。俺はというとふすまの裏で潜伏し、毒薬(トキシン)(みる)】を首筋に打ちこんでいた。

 

流石に奴の動きを素の視力で捉えることは俺には難しい。このままつかず離れずの戦術で猗窩座を嵌め殺す。

 

そうすれば毒血解離を使用せずとも奴の息の根を止められるはずだ。

 

俺がそう目算を立てて息を潜めていると、猗窩座は突如その場を踏みしめ、足元に何やら氷の結晶のような紋様を展開させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー術式展開 破壊殺・羅針ー

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこか・・・!!」

 

 

猗窩座はまるで俺の位置を把握しているかの如く俺の潜伏する方向に振り向き笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー破壊殺・乱式ー

 

 

 

 

 

 

「うおっ!!??」

 

 

奴はかつて俺めがけて放った空圧正拳と比べものにならない威力の遠距離攻撃を連射してくる。凄まじい衝撃に俺が潜伏していた場所は無数のふすまや障子、木の壁をぶち抜いて周囲に瓦礫を散乱させる。

 

 

「げほっ!! ごほっ・・・」

 

 

俺は間一髪奴の攻撃の余波に巻き込まれない位置まで移動しやり過ごしたが、周囲の塵煙が舞いむせる。

 

そんな視界の悪い中、猗窩座は正確無比に俺へと拳打を放ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー破壊殺・鬼芯八重芯ー

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおっ!!!」

 

 

猗窩座は素早い左右交互の突きで俺を粉砕しようと攻撃してくる。

 

猗窩座と言い、黒死牟と言い、なんで上弦の鬼は視界が悪くてもこうも正確に敵を追跡できるんだ? これじゃ俺の煙幕全般封殺されているようなものじゃねぇか。

 

俺はそんなことを考えながら、毒薬(トキシン)(ほこづくり)】×【(みる)】で何とか奴の拳を捌き、後ろへと後退していく。

 

 

「素晴らしいっ!! 見事だ!!! しかし貴様はなぜこれ程の技量を持ち合わせておきながら正々堂々と勝負しないっ!!?? 武の道を極めようとする者として理解しかねる!!!」

 

「うるせえ・・・こっちはこう見えて暗殺が本業なんだよ・・・真正面から殴り合いなんてそんな非効率的な戦いする訳ねぇだろうがっ!!!」

 

「下呂ヒカルだったか!? ここまでの武芸を修めるのに貴様は相当の修練を積み重ねているはずだ!! これほどの武を持ち合わせていながらなぜ卑劣で卑怯な戦術しか使おうとしないっ!! 答えろっ!!!」

 

「だからそれは俺の家の下呂家の方針なんだっつうの!! 俺は毒使いだ!! 鍛錬至上主義の輩は同じ五大名家の鉄使いだけでもう間に合ってんだよっ!!!」

 

「貴様は恥ずかしくないのかっ!? 弱者のような醜く汚い戦法ばかり使っていながら貴様は自身の行いに胸を張っていられるのか!!??」

 

「真っ当なこと言ってんじゃねぇよ!!! そもそも人殺ししてる時点で胸張れる訳ねぇんだよ俺もお前もっ!!!! それに俺は人を殺すよりも本当は人助けの方がしたかったんだ!!! 困ってる奴らの力になってそいつらに命一杯笑ってほしかったんだよ!!! 城崎と婚活続けて漸く本来俺がしたかったことが出来るようになったんだ!!! 俺は誰かに手を貸すことでしか幸せにはなれない人間なんだってやっと自覚した!!! 助けを求めている奴らの力になるためなら、どんな汚い手段を使おうが別に構いやしねぇだろうが!!!!」

 

「やはり貴様とは相容れないな!!! 同じ武の道を極めようとする者でも理解しかねる!!! ならばこのまま小細工も使わせないまま真正面から実力でねじ伏せてやろうっ!!!」

 

「くっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー破壊殺 冠先割ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猗窩座は俺の蹴りを躱し下段から真上に蹴り上げを放ってくる。俺はそれを寸でのところで躱すが、そのせいでのけ反ってしまう。

 

 

「死ね!!」

 

「ぐっ!!!」

 

 

 

俺の鳩尾めがけて猗窩座は正拳突きを打ってくる。俺はサマーソルトキックの要領で猗窩座の腕を思いっきり蹴り上げて攻撃を回避する。

 

 

「それだけ体勢を崩した上で大したものだ!!! 蹴りの威力も申し分ない!!!」

 

「いちいち批評してくんじゃねぇよ・・・!!」

 

 

俺はそのままバク転の要領で後ろへと下がりつつ、懐から煙幕を取り出して地面に投げつけて猗窩座の視界を奪う。

 

 

「芸がないな!!! 貴様の場所などお見通しだ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー破壊殺・空式ー

 

 

 

 

 

 

 

「がっ!!??」

 

 

猗窩座の空圧正拳が正確無比に俺へと打ち込まれる。俺はとっさに肘で受けてガードしたが、そのあまりの威力に骨が軋み激痛が走る。加えてその威力で後方へと吹き飛ばされ床を転がる。

 

 

「とどめだ!!!」

 

「くっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー破壊殺・砕式 万葉閃柳ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び足場を打ち砕くほどの拳の振り下ろしで辺り一帯に轟音が鳴る。

 

俺は必死に床を転がり足場を蹴って後退しつつ猗窩座と距離を取ろうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー破壊殺 鈴割ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!!」

 

 

奴のあまりにも正確で鋭い裏拳が床に膝を着く俺の頭蓋に迫る。俺は反射的に地を跳ねて空中に飛ぶがそれは悪手だったと気づく。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー破壊殺・脚式 飛遊星千輪ー

 

 

 

 

 

 

 

猗窩座は突風を巻き起こす勢いで蹴り上げを放つ。宙に浮いた俺では躱せない。だが生身で受ければ俺は粉々に打ち砕かれるだろう。一瞬でそう判断し俺は懐から薬液ボトルを取り出して一気に猗窩座へ噴出する。

 

 

「ぐぅうおおおお!!?? これは以前俺の胴を泣き別れにしたあれか!!??」

 

 

猗窩座の蹴り上げた足を薬液で溶かし攻撃を中断させる。そのおかげで俺は天井へと到達し半回転して蹴ることで無事床へと降り立つ。

 

 

 

「はあ・・・はあ・・・」

 

「ぐうううう!!! 己っ!! 小細工を弄しおってっ!!!」

 

 

猗窩座は鬼のような形相で自身の片足を引っこ抜き、薬液で溶けかかってる足は遠くに投げ捨てて、即座に新しい足を再生させる。

 

俺は観念してため息を付く。

 

 

「はあ・・・やっぱり使うしかないか・・・」

 

「っ!! 例の猛毒か!! させんぞ!!!」

 

 

猗窩座は一瞬驚愕するも即座に俺に殴りかかってくる。俺はそれよりも早く自身の首筋に新しい毒を打ち込んで注射器を捨てる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

毒薬(トキシン) 【(もんがまえ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な・・・んだと・・・!!??」

 

 

俺は猗窩座の拳を掌で受け止める。凄まじい衝撃を受けたが、俺の肉体強度はその威力に無事耐えることができたようだ。俺はそのまま猗窩座の拳を握りしめる。

 

 

「赤倉*1用の毒薬(トキシン)を俺にも使えるようにチューニングしてて良かったぜ。これで今までよりかは3倍にガチガチに護れる・・・!!!」

 

 

俺が今打ったのは、毒薬(トキシン)(もんがまえ)】。赤倉の為に俺が一から開発した護りに特化した毒薬(トキシン)だ。

 

骨格筋及び皮膚の強靭度と柔軟性の亢進を行うものだが、その分動作の精密性は落ちる。戦闘中の毒や薬の細かい調製が出来なくなるに等しい行為だが、搦手を使ってこない猗窩座相手ならおあつらえ向きな毒薬(トキシン)と言える。俺の性根に合わなくて癪だが、今日ばかりは目の前の男と同じ流儀で戦ってやるしかなさそうだ。

 

 

「猗窩座。お望み通り正々堂々殴り合ってやる。純粋な武術の勝負だ。下呂家の遠大な歴史が積み重ねてきた武芸の研鑽をてめぇ自身に味合わせてやるよ・・・!!」

 

 

俺は全力で猗窩座の鳩尾に拳打を放った。

 

 

「がっ!!??」

 

 

その瞬間、凄まじい打撃音と共に、握っていた拳だけを残して猗窩座が遥か遠くに吹き飛ばされる。俺はちぎれた猗窩座の拳を投げ捨てて、先生*2から散々叩き込まれた古武術の構えを取る。

 

やがて遠くの塵埃が舞う場所から、猗窩座の高笑いが聞こえてくる。

 

 

「ふふふ・・・はははははっ!!! 素晴らしいっ!!! 凄まじい一撃だった!!! まさか貴様がこれ程の威力の拳打を放てるとはっ!!!

 俺が上弦の鬼でなかったら、今ので全身が粉々に吹き飛んでいたぞ!!! やはりお前は正攻法の武の道に突き進むべきだっ!!! 下呂ヒカルッ!!!」

 

 

猗窩座は歓喜に震えながら塵埃の煙を跳ねのけ俺へと突進する。俺は迎撃の構えを取る。

 

 

「さあっ!!! お前の技を存分に見せてくれ!!! 今宵は思う存分俺と一緒に武を高め合おう!!!」

 

「うるせえよ・・・戦闘狂が・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奇しくも、俺が一番嫌う力押しで最後は決着をつけなければいけなくなった。猗窩座は俺を前にこれ以上ない位にご満悦だが、逆に俺はどうしようもない程この戦いにうんざりしていた。

 

 

 

 

 

続く

 

 

*1
赤倉:下呂の婚活相手の一人。使い手とは対極に当たる護り手と呼ばれる要人警護のような仕事をしている。

*2
先生:下呂君を幼少期の頃から鍛え上げた先生。作中ぶっちぎりのヤバい人間性を持つ人間(?)。暗躍で新旧問わず五大名家に干渉して弱体化を図っている上に、下呂君の婚活相手が好意を自覚すると確定演出の如く出現するホラー担当(マジで怖い)。




これがRPG系だったら二人のジョブは暗殺者VS武闘家なんでしょうが、次回は武闘家VS武闘家になります。
いよいよ下呂君が人類卒業し始めた・・・(今更)
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