鬼滅の毒使い   作:科学大好き人間

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猗窩座視点です。思いのほか反響があって作者冥利に尽きます。いつも感想を下さる皆様方、誠にありがとうございます。暫く爽快感のない展開が続いていますが、猗窩座編の真骨頂って心理描写だと思っているのでこんな作風になっている次第です。次回で決着が着くと思うので、是非最後まで読んで頂けたら幸いです。


24話 役立たずの狛犬、目を背けて来た事実を自覚する

俺はふらつきながらも目の前の鬼狩り二人に拳を振るい続ける。女の日輪刀に塗ってあった毒のせいか寒気までしてくる。加えて一向に分解できる気がしない。

 

俺に打ち込んだものは、毒使いの男の血から作り出したとあの小柄な女は言っていたが、あれは世迷言でもなんでもなかったようだ。

 

しかし問題ない。この毒は恐らく俺を殺すためのモノじゃない。

 

なら根性で耐えればいいだけの話だ。炭治郎ともう一人の小娘如き叩き伏せるのは容易のはずだ。

 

炭治郎の方は顔面が真っ赤になるほど頭から血を流している。加えて、時折俺と同様ふらつき地に足を付き掛けながらも必死に戦っている様子。

 

小娘の方も俺が先ほど攻撃した時に足を痛めたのか動きが緩慢だ。距離を取れば足を引きずりながら追撃してくる。接敵を許すこともない。

 

 

「いい加減に諦めたらどうだ? なぜそうまでして俺の邪魔立てをする? お前らが俺の命を絶つことなど天地がひっくり返ってもありえんのだぞ?」

 

「黙れ・・・下呂さんは殺させない・・・その人は・・・無惨を葬り去るために絶対生き残らせなきゃダメな人なんだ・・・!! 手足が千切れても食らいついてやるっ!!!」

 

「私もまだ戦える・・・!! 炭治郎を殺すのならまず私から倒せっ!! 逃げるな卑怯者っ!!!」

 

「卑怯者・・・!?」

 

 

俺はその言葉に青筋を浮かべる。どの口が言っているんだ。毒に頼り縋って戦いを挑んできているのは貴様らの方じゃないか・・・!!

 

 

「女だと思って生かしておけば調子に乗りおって・・・!! 四肢を引き千切ってやればその減らず口も多少は収まるかっ!? 小娘っ!!!」

 

「猗窩座っ!!! お前の相手は俺だっ!!! カナヲには絶対指一本たりとも触れさせないっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーヒノカミ神楽 飛輪陽炎ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が小娘の方に意識が集中した隙を突いて、炭治郎が接敵してくる。俺は裏拳を打ち振るうが、こいつは躱し、俺の頸に刀を一閃する。

 

しかしこんなヨロヨロの死にぞこないの一撃を喰らうなど万に一つもあり得ない。

 

俺は首を傾け刀の一閃を避けた。そしてお返しとばかりに突きを放とうとしたが、視界が上下反転する。

 

 

 

「は・・・?」

 

 

俺の頸は切断され床を転がっていた。何をした? 俺は奴の攻撃を紙一重で躱したはずだ。一体どんな手を・・・

 

 

「っちぃ!! 無駄なことをっ!!!」

 

「がっ!!!!」

 

「っ!! 炭治郎っ!!??」

 

 

俺は首無しのまま炭治郎を殴り飛ばす。また刀を盾に防いだのか甲高い音が響き床を転がっていく。

 

すぐさま小娘の方が俺に接敵しようと近づいて来ているのを知覚し、俺は素早く自身の頭を拾って切断面にくっ付ける。

 

 

「これでわかっただろうっ!? 頸を斬っても俺は死なない!! 俺を滅することなど陽の光以外では不可能だとっ!! いい加減諦めろっ!!!」

 

「諦めるものかっ!! 炭治郎は絶対に殺させないっ!!! 刀を振れる限り何度でも頸を刎ねてやるっ!!!」

 

「貴様も炭治郎と同様頭に脳味噌が詰まっていないのか!? そんなことをしても無駄だと言うことがなぜわからないっ!!??」

 

「五月蠅いっ!! 炭治郎を守るのが私の役目っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー花の呼吸 陸ノ型 渦桃ー

 

 

 

 

 

 

 

 

再び俺の視界が上下反転する。その女はどうやら片足のばねだけで宙を跳ねて俺の頸を切断したらしい。

 

そのまま床を転がりなかなか立ち上がれずにいたので、俺は首無しのまま小娘の胴に蹴りを放ち、床を転がして距離を離す。

 

 

「ああっ!!!」

 

「カ、カナヲっ!!??」

 

 

俺は再び頸と胴を繋げるも息切れを起こしふら付く。高熱が出ているのか汗が止まらない。まるで人間が重い病気に掛かってしまったように。

 

 

「ゼェ・・・ゼェ・・・己・・・」

 

 

つくづく腹立たしい。毒なんぞに頼り切って相手を弱らせてから倒そうと言うのだから。こんな戦い、卑怯者のすることだ。

 

俺は炭治郎がなかなか立ち上がれずその場でうずくまってるのを一瞥して、再び(くだん)の毒使いの男にとどめを刺そうとその方向を振り返る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると驚いたことに、その男は血反吐で外套を汚しながらも俺の前で棒立ちしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な・・・貴様・・・なぜ生きて・・・!!」

 

「下呂さんっ!! もう逃げてくださいっ!! 後は私たちが下呂さんの盾になりますっ!! だからもうっ・・・!!」

 

 

傍で小柄な女が懸命に毒使いの男を下がらせようと必死に引っ張っていた。今回ばかりはあの女と同意見だ。仮に治療で命を取り留めたとしても、俺と戦える状態とは思えない。

 

 

「ふっ・・・折角拾った命・・・むざむざ捨ててまで俺と決着をつけようと言うのか? 毒物に頼る卑怯者にしてはなかなか見上げた度胸だ。」

 

 

俺はそう嘲笑の声を上げる。一方で毒使いはひどく疲れ果てたように無表情だった。

 

 

「なあ・・・猗窩座・・・」

 

「・・・なんだ?」

 

 

まるで幽鬼のようなか細い気配でその男は俺に問いかけてくる。俺はその様子が気になりつい聞き返す。

 

 

「猗窩座・・・お前にとって弱ぇえ奴っていうのは・・・全員卑怯者に該当するのか・・・?」

 

「ああ? 何を今更・・・」

 

「さっきからお前・・・俺だけじゃなく胡蝶や竈門や栗花落のことまで弱者だ卑怯者だと蔑んで・・・一体どういうつもりでそんなことほざき倒してるんだよ・・・」

 

「なんだと・・・」

 

 

俺達はふらつきながらお互いを見据える。弱弱しく見えるが、目の前の男からあふれる殺気は凄まじいものだった。加えて射貫かれるような眼光。俺は僅かにたじろぐ。

 

 

「どうも何も・・・弱い奴は醜い・・・正々堂々やり合わず・・・井戸に毒を入れるような・・・」

 

「井戸に毒? ・・・それはあれか? お前が人間だった頃の話か? そう言えばさっき竈門たちと戦ってる時に言ってたな。

『今更死んだところで三人と同じ場所には行けない。よくも思い出させたなあんな過去を。』って。

なるほど・・・お前が俺を目の仇にしていた理由に漸く合点がいったぜ。要はかつてのお前は毒殺されたんだな? 自分の大切な人たちを・・・」

 

「っ!! 黙れっ!! 貴様のような卑怯者に話すことなど何もない!! 殺すぞっ!!!」

 

「つまり・・・人間の頃のお前に真正面から戦っても勝てないと判断した卑怯者たちがお前の家の井戸に毒を入れたっていうことか。その結果お前以外の大切な人たちが被害に遭って殺された。

 だからお前は力の弱い奴を・・・力がなくて正攻法で戦わない人間を嫌悪してるって訳だな。なら俺はその最たる者だろう。毒の業を研鑽し続けた下呂家の跡取りなんだから・・・」

 

「黙れと言ってるのが聞こえないのか!! いい加減に・・・」

 

「だがな猗窩座・・・竈門たちは本当にそんな奴らと同じだったか? お前が殺してきた鬼殺隊の剣士たちはみんな卑怯な戦い方をしていたか?

 脆弱な身一つで鬼に立ち向かう・・・心とその両手に太刀のみを持って・・・人を・・・力の無い弱い人たちを守るために・・・」

 

「・・・っ!!」

 

「なあ・・・猗窩座・・・今のお前とお前が殺してきた剣士たち・・・どっちがお前の大切な人を殺した奴らと似ていると思うよ・・・

 お前は鬼の始祖の軍門に下り・・・人智を超えた理不尽な暴力で多くの人を殺してきたはずだ・・・力無き人たちを必死に護ろうとしてきた鬼殺隊の剣士たちを大勢殺してきたはずだ・・・

 そんな理不尽な暴力で一方的に弱者を殺すのは・・・お前の大切な人たちを毒で殺したことと何が違うって言うんだよ・・・」

 

「ぐっ・・・黙れ・・・!! そんな虚言で俺を惑わそうなどと・・・それこそ卑怯者の・・・」

 

「なあ・・・猗窩座・・・寧ろ竈門たちの方が・・・かつてその拳で大切な人たちを守ろうとしたお前自身と似ているんじゃないのか?」

 

「なっ・・・!?」

 

「正々堂々自身の技を研鑽し高めて・・・必死に強くなって力をつけて・・・自分より弱い者を助け守る・・・それがかつてのお前だったんじゃないのか?

 どうしてそんなお前が鬼になんてなったんだよ・・・自暴自棄になって・・・守るための拳で人を大勢殺して・・・そんなことを繰り返して・・・本当にお前は・・・お前の大切な人たちは笑ってくれるとお前は本気でそう思っているのか?」

 

「ぐぅううう・・・!!!」

 

「なあ・・・猗窩座・・・もしかして・・・お前は本当は・・・」

 

「五月蠅いっ!! 黙れ黙れ黙れっ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は辛抱できず怒号を上げる。息を切らし肩を上下させる。ずっと目を逸らし続けて来た事実を自覚させられてとても正気ではいられなかった。

今まで生きてきた中で最低最悪に酷い気分だ。

まるであの日の出来事のように・・・悪夢を見ているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 




丁度映画放映開始の時期に猗窩座戦を書ける喜び、筆舌に尽くしがたい。
まあそれはさておき、次回更新はまた一週間後です。よろしければお気に入り登録をしてお待ち頂けると嬉しいです。原作こそ至高だと思いますが、本小説の一味違った読後感を味わってもらえるよう頑張って仕上げていきたいと思います。
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