鬼滅の毒使い   作:科学大好き人間

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猗窩座視点です。本小説の猗窩座編は今話で決着です。これがアップされる頃には映画放映されてると思います。猗窩座戦を書き切った上で映画を見に行けることが只々嬉しくて仕方ありません。応援してくれる方々がいなければきっとこのエピソードは書けなかったと思うので、今はただ皆様に感謝を。


25話、役立たずの狛犬、最期の戦いで自己矛盾に気づく

俺は目の前の毒使いの発言に頭を抱える。眩暈、頭痛、吐き気が止まらない。

 

可笑しい。なんでこいつは俺のわずかな発言だけで俺の人間だった頃の出来事がわかったんだ? 俺の口からは一切過去について話していないというのに・・・!!

 

俺は息を整えたのち、苦痛に表情を歪めて苦々しく答えるしかなかった。

 

 

「黙れ・・・今更・・・俺はあの人たちと同じところには行けないんだ・・・お前はもう・・・いい加減さっさとくたばれっ!!!!!」

 

 

俺は酷い体調不良を起こす中、自身を一喝して目の前の男に殴りかかる。こいつさえ消せば、もう俺は人間の頃のことなど考えなくて済むんだ。

 

俺は過去の因縁に決着をつける。この毒物に頼る卑劣な男を殺し、役立たずだった頃の自分を払拭する。それ以外に今の俺ができることなど・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バキィイイイッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がっ!!??」

 

 

突如、俺は凄まじい衝撃と共に上体をのけ反らせて背後へと押し下げられた。

 

一拍遅れて自身の顔面を拳で殴り返されたのだと気づいた。

 

俺は必死に体勢を整え、迎撃しようとするが、思うように身体が動かない。結果、一方的に目の前の男に拳でタコなぐりにされる。

 

 

「ごはっ!! なぜ・・・なぜこれほどまでに動けるっ!! あれだけ盛大に吐血しておきながら・・・!!」

 

「あれはお前との度重なる攻撃で負傷した分の血を絶えず飲み込んでたものだ。毒血解離を使うにはあれ以上血を失う訳にはいかなかったからな。

 胃に流し込んでた分をお前が腹部に打ち込んでくるもんだから盛大に吐き出しちまったんだよ。だから内臓破裂とかは一切してねぇ。痛みで一瞬失神しかかったがな。」

 

「ば・・・馬鹿な・・・空式の直撃を受けて致命傷を負わないとは・・・!!」

 

 

俺は盛大に袋叩きにされて床を転がる。こいつの肉体強度はどうなっているんだ? 本当に人間なのか?

 

加えてこいつの拳打の威力は相当なものでこちらの全身は既にズタズタだ。薬のせいなのか、再生力も衰えている気がする。

 

 

「まあもっとも・・・血を大量に失って毒血解離を使えなくなっちまったのは事実だがな。頸の弱点を克服したお前にとどめを刺すのは難しいだろう。」

 

 

俺は必死に息を整えて立ち上がり、目の前の男に殴りかかる。しかし、返し技として左右交互の連続で放たれる拳打に滅多打ちにされ、俺はそのまま地に臥すことになった。

 

 

「ごはっ!! こ・・・これは俺の・・・!!」

 

「お前の技は散々見たからな。『鬼芯八重芯』だったか? 見よう見まねで再現した。」

 

 

これではまるで・・・俺が師範と初めて出会ったあの日のようだ・・・

 

自暴自棄になった俺が大人七人をのしてそれの仲裁に入ってきた師範に叩き伏せられそのまま意識を失ったあの日と同じ・・・

 

 

「生まれ変われ、猗窩座。俺もさっき聞いたんだが、お前に打ち込んだ胡蝶の薬は人間化薬だ。お前が人間になるまでの間、拳で付き合ってやる。気が済むまでかかってこい。」

 

 

その言葉を聞いて師範の声と言葉を思い出す。

 

 

『生まれ変われ、少年。』

 

『罪人のお前は先刻ボコボコにしてやっつけたから大丈夫だ。』

 

『お前はやっぱり俺と同じだな。何か守るものがないと駄目なんだよ。』

 

『この道場を継いでくれないか、狛治。恋雪もお前のことが好きだと言っているし。』

 

 

俺はそこからもう立ち上がれなかった。膝を着いたまま、うなだれてしまう。目頭が熱い。

 

そうだ・・・こいつは・・・ヒカルは寧ろ師範や人間だった頃の俺と似ている・・・毒を武器に使うがそんなの表層的な話でしかなかったんだ・・・

 

師範と同じように・・・心に太刀を持ち・・・人を助ける・・・かつての俺が憧れた生き方そのものだ・・・

 

師範や恋雪を殺した奴とは似ても似つかない。甚だしい見当違いだった。

 

俺は力なくその場で膝を着いたまま動かなくなる。その様子を見て、ヒカルは怪訝そうに声を掛けてくる。

 

 

「どうした猗窩座? もう終わりか? 既に気が済んだならそのままじっとしてろ。数日もすればお前は元の人間に戻れる。今まで積み重ねてきた悪行は、その後お前なりの方法で償えばいいんだ。

 俺もこう見えて多くの人間を殺してきてる。そんな俺が偉そうに言えることじゃないが、もしお前が望むなら、お前のこれからの人生のために俺も多少なりは力になってやるよ。」

 

 

俺はうなだれたままヒカルの声を聞いていた。

 

鬼となって無意味な殺戮を繰り返した俺に情けをかけようと言うのか。

 

まるで罪人だった頃の俺を諭してくれた師範のように・・・

 

だが俺はその情けに応えてやることはできなかった。もう遅い。何もかもが遅すぎたんだ。本当に・・・残念でしかない。

 

俺は観念してゆっくり立ち上がると、闘気を立ち昇らせ、滅式の構えを取った。

 

流石のヒカルも異変を感じたのか、やや後ろへと下がる。一拍遅れて別の声が聞こえてくる。

 

 

 

「下呂さんっ!! 離れてくださいっ!! 猗窩座は煉獄さんを殺そうとした時の技を出そうとしていますっ!!」

 

 

俺の後ろから炭治郎の声が聞こえる。そうか、奴は杏寿郎との戦いを見てたから知っているのか。

 

ヒカルも炭治郎の警告を聞いて距離を取ろうと予備動作に移る。その様子を見て、俺は安堵の笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「世話になった。下呂ヒカル。おかげで漸く自身の矛盾に気が付くことができた。だが、だからこそ、潔く終わりにしたい。 ・・・然らば。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は持てる力全てを解放して自身に滅式を打ち当てる。その瞬間視界が再び真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「親父・・・もう平気か? 苦しくねぇか?」

 

 

俺は真っ暗闇の中、かつての肉親を前に棒立ちしていた。

 

 

「大丈夫だ、狛治。ありがとうなァ・・・」

 

 

俺は親父の前で両膝を着き、うなだれる。

 

 

「ごめん親父・・・ごめん・・・俺やり直せなかった・・・最期に気のいい奴に声かけられたんだけど・・・どうしても自分のことが許せなくて・・・駄目だったんだ・・・」

 

「関係ねぇよ。」

 

 

ふと俺の頭に師範の手が乗り声が聞こえる。

 

 

「お前がどんな風になろうが息子は息子、弟子は弟子。死んでも見捨てない。・・・天国には連れて行ってやれねぇが。」

 

 

師範はそう困ったように笑い俺の頭を撫でる。それに俺が言葉を失っていると、突如、俺の頭部を鷲掴みする者が現れる。

 

 

「猗窩座ァアアア!!! これは一体どういうことだっ!!! 貴様なら毒使いの鬼狩りを間違いなく殺せるのではなかったのかぁアアアアア!!??

 頸の弱点まで克服しておきながら・・・!! それほどまでに鬼として成長したにも関わらず!!! 自死を選ぶなど!!!!!

 ふざけるなっ!!! このような結末ありえんだろうがァアアア!!??

 貴様が死ねばもうまともに戦えるのは黒死牟と鳴女しかいないのだぞ!!??

 散々目を掛けてやったにも関わらずこの仕打ちはないだろうがァアアア!!!

 勝手に死ぬなどこの私が許さんっ!!!!! 絶対に許さんっ!!!!!

 もう一度再生して戦えェエエエエ!!!!!

 死ぬまで私の為に戦えェエエエエエエエエエエ!!!!!」

 

「・・・」

 

 

俺は閉口する。今更そんな罵倒を受けても何の感慨も浮かばない。

 

やがて周囲の闇と共に無惨様の声と姿がかき消える。いや、どこか遠くで喚き散らしてる声が薄っすら聞こえるが、そんなことなどどうでも良くなってしまった。

なぜなら身の前に愛しい人が代わりに現れ、俺の頬に手を添えて語り掛けて来たからだ。

 

 

「狛治さん。ありがとう。もう充分です。」

 

「恋雪・・・」

 

「もういいの・・・もういいのよ・・・」

 

俺の全身を駆け巡るような無惨様の血の力が消えていくような気がした。

きっと俺はもう死ぬ。けど、だからこそ、最期だけは人間に戻って彼女と言葉を交わすことができるのだと悟った。

 

それを自覚した瞬間、俺は嗚咽を漏らして恋雪に泣き縋りみっともなく懺悔の言葉を吐き散らした。

 

 

「ごめんっ!! ごめんっ!!! 守れなくてごめんっ!!!!!

 大事な時に傍にいなくてごめんっ!!!!!

 約束を・・・何一つ守れなかった・・・!!!

 許してくれ!! 俺を許してくれっ!!! 頼む!!!

 許してくれ・・・!!」

 

 

これ以上にないほど顔をクシャクシャにして俺は泣いてそう叫ぶ。まるで小さな幼子のように。今更どの口が言っているのだろうと自己嫌悪するが、そんな俺を恋雪は優しく包み込んでくれる。

 

 

「私たちのことを思い出してくれて良かった・・・元の優しい狛治さんに戻ってくれて良かった・・・おかえりなさい・・・あなた・・・」

 

「ああ・・・ただいま・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はかすれた喉からそう声を絞り出す。恋雪の着物を必死に握りしめたまま。

やがて地獄の業火が包み込んでくるが、俺と恋雪は身じろぎすることなく、共に抱きしめ合っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 




猗窩座戦はこれにて決着です。原作と異なるエピソードとなりましたが如何だったでしょうか。もしよろしければ感想などで聞かせてください。
次回から黒死牟戦です。もし続きを読んでくれる方いらっしゃいましたらお気に入り登録してお待ち頂けると励みになります。それではまた次回。
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