鬼滅の毒使い   作:科学大好き人間

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黒死牟視点です。原作では見せなかった兄上の本気ってこんな感じなのかなと想像しながら書きました。所謂『僕が考えた最強の兄上』です。一応筆者の推し鬼なので、この際描写をを盛らせていただきました。
それとお気に入り登録者数がついに100を超えました。この場で皆様に御礼申し上げます。引き続き楽しんでもらえるよう頑張って書いて行こうと思います。


29話 元月柱の侍、とうとう侍であることを辞める

岩の柱が現れてから一気に潮目が変わった。結論から言うと私は防戦一方となった。

 

この男、透き通る世界で見たが、極限まで練り上げられた肉体の完成形。これ程の剣士を拝むのはそれこそ300年振りだった。

 

本来なら一対一で手合わせして見たかったが、当然向こうはそんな意向などない。

 

現在に至るまで、私は五つの呼吸の柱から周囲より滅多打ちに遭い、頸を刎ねられまいと六尺刀を振り回すのみだった。

 

しかし私がこれほどまでに追い詰められたのには理由がある。

 

それは岩柱の実力もさることながら、その得物の特性が想像以上に厄介だった。

 

鎖、斧、鉄球、全ての鉄の純度が極めて高いため、私の肉から造られたこの刀では斬る前に灼け落ちてしまうのだ。

 

加えて、他の柱と異なり、中距離からの攻撃。他の柱なら間合いにすら入れずに立ち回れるが、奴の攻撃を刀で受けるたび、へし折られ、攻撃範囲が狭まる。

 

無論、折られた所ですぐに再生できるので、一対一での勝負ならまるで問題ない懸念事項だった。

 

しかし、一瞬とは言え、刀の再生に時間を取られると、その隙に他の柱が接敵してくる。

 

流石の私も4人の柱に間合いの内側へ迫られれば、大なり小なり攻撃を受ける。

 

今のところは頸まで刃は届いていないのだが、刀一本でこれらを全て迎撃するとなれば、私の命が刈り取られるのも時間の問題だろう。

 

できれば最後まで誇り高き侍として己が剣技のみで柱達と渡り合いたかったが、拘りのために命を失う訳にもいかない。

 

私はそう判断し、全身より新たな刀を複数本出現させ、技を放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー月の呼吸 伍ノ型 月魄災渦ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今までと比較にならない物量の月の呼吸の斬撃を、刀を振るうことなしに周囲へとまき散らす。私に群がる柱達もその光景に面食らったようで、驚愕に目を見開いていた。

 

私は周囲50尺以内に柱達が近づいてこないことを確認し、六尺刀を更にもう一本生成し、二刀流の構えを取る。

 

 

「今代の柱達よ・・・見事なり・・・貴様らの腕前は・・・戦国の世の柱達と遜色ないばかりかそれをゆうに超える・・・故にここから先は元月柱としてではなく・・・上弦の壱として全力で迎え撃つ・・・」

 

 

驚嘆する他あるまい。一対多の勝負だったとは言え、私は根負けしたのだ。とても刀一本で勝てるとは思えなかった。

 

これから披露する私の鬼としての戦い方を見て、全ての人間たちが卑怯だと理不尽だと非難するであろう。

 

しかしそれは私が無惨様の軍門に下り、縁壱を超えるべく鬼の力を得てまで力を求めた時点から薄々自覚はしている。

 

あの日・・・縁壱が私の前で老衰で亡くなり・・・誉れ高き死が永遠に訪れることはないのだと悟ったあの時から・・・私は負けるわけにはいかないと誓った・・・

 

そうだ。勝ち続けることを選んだのだ。私は。

 

このような・・・醜い姿になってまでも・・・!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー月の呼吸 拾肆ノ型 兇変・天満纎月ー

 

 

ー月の呼吸 拾陸ノ型 月虹・片割れ月ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀で薙ぎ払い、もう一刀を打ち下ろす。その瞬間、私の鍛錬場は月の呼吸の斬撃で飽和する。

 

私はそれを無慈悲に繰り返す。ただ理不尽な暴力をありったけ周囲の柱達に浴びせる。

 

透き通る世界で周囲を視認する。一瞥で周囲360度を視界に収めることは無理だが、斬撃の幕の向こう側で柱達が四苦八苦しながら必死に回避に専念するのが見えた。

 

もうこれで誰も私の頸には届かないだろう。よしんばこの斬撃の幕を潜り抜け、間合いの内側に入り込んだとしても、全身より生やした刀より伍ノ型を浴びせればそれで済む話だ。

 

品性の欠片もない戦い方をして、周囲を轟音で騒がしくしてしまい、無惨様には申し訳が立たないが、私の作った刀の檻により守っている故身の安全だけは保証できる。

 

柱達が全滅するまで、今暫く目をつぶって頂く他なし。

 

私はそう思考しながら攻撃を続ける。大黒柱が次々となぎ倒され、瓦礫と粉塵が舞うが、私の視界を妨げるものではない。

 

岩の柱はまだ攻撃を受けきって立っているが、炎、風、水は既に地に臥している。もう間もなく決着はつく。私はそう思い、一瞬気を緩めた。緩めてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー霞の呼吸 漆ノ型 朧ー

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!??」

 

 

信じられぬものを見た。私の背後に無一郎が迫り、私の片腕を一刀両断にしたのだ。

 

 

「有り得ぬ・・・!! なぜ生きて・・・!!!」

 

 

どういう手段で私の背後を取ったのかはわからぬが、それもここまで。私は背より月の呼吸の斬撃をありったけ浴びせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー月の呼吸 伍ノ型 月魄災渦ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は振り向きざまに切り刻まれたであろう無一郎を一瞥しようする。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー霞の呼吸 伍ノ型 霞雲の海ー

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!??」

 

 

なんと無一郎は驚いたことに致命傷だけは全て避け、更には私に斬り込んできた。私の全身から鮮血が散る。辛うじて頸だけは守ったが、身体から突出した刀の大半は折られてしまった。私は驚愕する他なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー月の呼吸 拾ノ型 穿面斬・蘿月ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は月の呼吸の中で比較的出の早い拾ノ型を放つ。流石にこの斬撃の密度を捌くのは無理だったのか、無一郎は横跳びに回避し、そのまま地面を転がる。床が無一郎の血で赤く染め上がる。

 

無一郎は立ち上がれないまでも私の前で顔を上げる。その瞳を見て私は確信した。

 

 

「・・・見えているのか・・・私と同じ世界が・・・」

 

 

無一郎は歯を食いしばって立ち上がろうとするが、身体が言うことを聞かないのかその場にうずくまる。加えてあの出血量。すぐに死んでも不思議ではない。

 

私はそんな無一郎の姿を見て逡巡してしまった。ここで死なせるには惜しい。この少年を鬼にして生き永らえさせるべきだと考えてしまった。戦闘中であったにも関わらず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー風の呼吸 壱ノ型 塵旋風・削ぎー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如轟音を上げながら私の側面より風の柱が接敵してくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー月の呼吸 捌ノ型 月龍輪尾ー

 

 

 

 

 

 

 

 

私は反射的に刀を打ち振るった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー水の呼吸 拾壱ノ型 凪ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如水の柱が飛び出し、半ばで折れた刀で私の斬撃を妨害した。水の柱は血しぶきをあげてその場に倒れたが、風の柱はその背後から回転しながら突進してくる。

 

間合いの内側に入られ、無一郎に体中の刃の大半を折られた私は反射でその場を跳躍し回避する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー炎の呼吸 奥義 玖ノ型 煉獄ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凄まじい衝撃と共に私の刀を持つ腕が肩口より斬り飛ばされてしまう。宙に浮いた状態の為、踏ん張りも効かず、私は頸を庇うことしかできなかった。

 

その結果、私は刀を持たない状態でありながら空中で無防備となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー岩の呼吸 弐ノ型 天面砕きー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地鳴りが響いたのち、私の頭部に鉄球が撃ち降ろされ、そのまま床に打ち付けられる。

 

 

「ぐぅああアアアアア!!!!! ぬぅああアアアアア!!!!!」

 

 

頭部は潰れていないものの、頸へと触れる鉄球が私の皮膚を灼く。打撃の衝撃もさることながら、陽光に炙られるような熱さに私は思わず絶叫する。

 

私は両腕を再生させ、自身の頸に打ち付けられた鉄球をどかそうと両手で掴む。凄まじい重量の為、うつぶせの状態では一瞬でどかすことができなかった。

 

そうこうしてるうちに今度は斧の打ち下ろしなのか、鉄球の上より斬撃が打ち下ろされ、私の頸はひしゃげかかる。

 

鉄球は鬼の細胞が灼けつくような凄まじい熱を帯び、赫赫と発光する。

 

その瞬間、突如として脳内に溢れかえる縁壱との記憶が私の思考を埋め尽くす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『兄上。私たちはそれほど大層なものではない。長い長い人の歴史のほんの一欠片。』

 

『私たちの才覚を凌ぐ者が今この瞬間にも産声を上げている。彼らがまた同じ場所まで辿り着くだろう。』

 

『なんの心配もいらぬ。私たちは、いつでも安心して人生の幕を引けばよい。』

 

『浮きたつような気持ちになりませぬか、兄上。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

縁壱・・・お前が笑う時いつも俺は・・・気味が悪くて仕方がなかった・・・

 

それぞれの呼吸の後継がいないという話をしていた時もお前は、突如奇妙な楽観視をし始めて、笑った。

 

何が面白いと言うのだ。

 

日の呼吸の使い手ですらない者たちが刃を赤く染める。終ぞ俺にすらできなかったことだと言うのに。

 

そんな未来を想像して何が面白い。己が負けることなど、考えただけで腸が煮えくり返る。

 

俺はもう二度と敗北しない。そうだ。例え頸を斬られようとも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「っ!!??」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

私は頸が千切れたことで抑えから解放され、その場を一瞬で離脱する。柱達の驚きの声が聞こえる。やがて私の視界が復活する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は頭部を再生させた。ついに頸の弱点を克服したのだ。これで私は誰にも負けることはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 




二刀流ってカッコイイですよね。宮本武蔵みたいで。まあ今話の兄上は更に全身から棘出しまくってるので、絵面のダサさでプラマイゼロかもしれませんが(笑)

次回は土曜日更新予定です。お労しい兄上編も次回でラストになります。最後まで楽しんで頂ければ幸いです。
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