鬼滅の毒使い   作:科学大好き人間

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黒死牟視点です。ほぼ原作通りですが、黒死牟が死んだ後は三人称視点になります。加えて急展開を迎えるので是非最後まで読んでいってください。


30話 元月柱の侍、生き恥を晒し消し炭となる

柱達は私の姿を見て驚愕するも、すぐに切り替え突進してくる。見事としか言いようがない。

 

しかし、決着はついたも同然。頸の弱点を克服した。これでどんな攻撃も無意味。太陽の光以外は。

 

私は内心ほくそ笑む。これで私はもう誰にも負けることは・・・

 

ふと風柱が携える日輪刀の腹に自身の姿が映る。透き通る世界に入っているためハッキリと視認できた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何だこの醜い姿は・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが私の抱いた嘘偽りない感想だった。

 

 

『兄上の夢はこの国で一番強い侍になることですか?』

 

 

不意に背後より子供時代の縁壱の声が聞こえた。

 

 

『俺も兄上のようになりたいです。俺は・・・この国で二番目に強い侍になります。』

 

 

私は茫然自失とする。刀身に映った自身の姿を眼で捉え、あっけに取られる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

侍の姿か? これが・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが本当に俺の望みだったのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう自問自答した瞬間、一度赫刀で破壊された私の頸が消し炭のように崩れ、そのまま頭部が床へと落下する。

 

再び視界が闇に閉ざされる。感じるのは一方的に自身の肉体が柱達に破壊される手ごたえのみ。

 

しかしやはりどんな攻撃も無意味。私は頸を落とされても肉体を破壊されても死なないのだ。私は再生と迎撃に意識を燃やす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何をしている・・・

 

技を出せ、技を・・・

 

何故だ・・・血鬼術が使えぬ・・・!!

 

まだだ。まだ再生できるはず。

 

まだ負けではない。

 

私はまだ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お労しや、兄上。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は膝を着いたまま動けなくなる。老衰で亡くなる前の縁壱の顔と声が思い起こされて微動だにできなくなる。

 

私は今の現状を俯瞰した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頸を落とされ身体を刻まれ潰され、負けを認めぬ醜さ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生き恥。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんなことの為に私は何百年も生きて来たのか・・・?

 

負けたくなかったのか? 醜い化け物になってでも。

 

強くなりたかったのか? 人を喰らってでも。

 

死にたくなかったのか? こんな惨めな生き物に成り下がってまで。

 

違う・・・私は・・・私はただ・・・縁壱・・・お前になりたかったのだ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死の間際になって、人間だった頃の記憶が思い起こされる。

 

縁壱と双子としてこの世に生まれてきたこと。

 

私は継国家の跡取りとして、縁壱は忌子として育てられたこと。

 

最初は兄としてそんな縁壱を可哀そうだと思っていた。見るたびに母の左脇にピタリとくっついていた様子を見て。

 

しかし縁壱は赤子の頃からニコリと笑うことすらなく、七つになるまで喋らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな縁壱の初めての言葉が『兄上の夢はこの国で一番強い侍になることですか?』だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気味が悪かった。

 

そしてある日、縁壱は、私がどれほど打ち込んでも一本も取れなかった父の配下に稽古をつけてもらうこととなり、瞬きの間にその男を打ち倒した。

 

縁壱は生まれつきの特別な視覚、それに即応できる身体能力持っていた。

 

今まで憐れんでいた者は、己よりも遥かに優れていたのだ。この時私は痛感した。

 

跡取りは私ではなく縁壱になるだろうとあっけに取られていたある日、母が亡くなり、縁壱は私の前から姿を消した。

 

母の日記によると、縁壱は己が跡継ぎに据えられると思い家を出たそうだ。そして母の死期も縁壱にはわかっていたようだ。

 

母は何年も前から左半身が不自由になりつつあり苦しんでいた。

 

そこで私は悟ってしまった。縁壱は母にしがみついていたのではなく、病で弱っていた母を支えていたのだと。

 

そこで私は自覚してしまった。縁壱という天才を心の底から憎悪し嫉妬に身を焦がしてしまったことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頼むから死んでくれ。お前のような者は生まれてさえ来ないでくれ。お前が存在しているとこの世の理が狂うのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから十年余りの平穏な日々が続いた。年月の流れが非常に遅く感じた。

 

しかし私たちは望まぬ邂逅を果たした。

 

ある日の野営で鬼に襲われ死を覚悟した時、私を救ったのは縁壱だった。

 

 

「申し訳ございません。兄上。」

 

 

縁壱は己の到着が遅くなったせいで私の配下が死んだことを詫びた。縁壱は強く、非の打ちどころのない人格者となっていた。

 

私は妬みと憎しみで胃の腑を焼いた。

 

しかし私はその強さと剣技を我が物としたかった。家も妻も子も捨て、縁壱と同じ鬼狩りになる道を選んだ。

 

縁壱は誰にでも呼吸と剣技を教える。しかし誰一人として縁壱と同じにはできない。

 

そのため日の呼吸の派生が次々と出来上がっていった。

 

痣者も増え、鬼狩りの戦力も高まっていく。私にも縁壱とそっくりな痣が発現した。

 

けれども結局私は日の呼吸が使えることはなく使えたのは月の呼吸と名付けたただの派生。

 

悔しい思いで懊悩していた時、痣者がバタバタと死に始めた。

 

私には未来がないのだと悟った。鍛錬する時間もなく、一生縁壱に追いつけることはないのだろうと嘆いていたある夜のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だったら鬼になればいいではないか? 鬼となれば無限の刻を生きられる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鬼狩りとしてうち滅ぼさなければならない存在、鬼の首領、鬼舞辻無惨が私の目の前に現れた。そして鬼の勧誘をされた。

 

頭ではわかっていた。命を擲ってでもこの男を殺さなければならない。そうしなくてはこれから先大勢の人が鬼に殺され凄惨な目に遭う。その悲劇を無くさなければならないのだと頭では確かにわかっていた。

 

だが私はその男に跪いた。私が心底願い欲していた道が拓かれてしまったばかりに。

 

けれどもこれで私は全てのしがらみから解放される。そのはずだった。はずだったというのに・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お労しや、兄上。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前はまたしても私の前に現れ、理さえ超越した存在であることを見せつけた上、寿命で逃亡し勝ち逃げた。

 

何故だ? 何故お前はいつも私に惨めな思いをさせるのだ? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

憎い、憎い!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・それなのに・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・何百年も生きていて・・・鮮やかに記憶しているのは一番忘れたいお前の顔・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前だけが鮮明だ。唯一無二の太陽のように。

 

お前の周囲にいる人間は皆、お前に焦がれて手を伸ばし、もがき苦しむ以外道はない。

 

消し炭になるまで。

 

ああ・・・何も・・・何も手に入れることが出来なかった・・・

 

家を捨て妻子を捨て人間であることを捨て・・・数百年の時を経て・・・それでも私は辿りつけなかった・・・縁壱が行き着いた場所に・・・

 

私はなりたいものになれなかったのだ・・・なぜ私は何も残せない・・・なぜ私と縁壱はこれほどに違う・・・

 

私は一体何の為に生まれてきたのだ・・・

 

・・・・・・教えてくれ・・・縁壱・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『無様だな。黒死牟。だが何も悲観することはない。貴様のおかげで打ち込まれた薬の無効化も間に合ったぞ? 褒めてやろう。』

 

 

消し炭となって消える直前、無惨様の声が聞こえた気がする。

 

 

「不死川っ!!! もう充分だ!!! 残すは無惨のみ!!! あとはあの肉の繭ごと屠るのみ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー岩の呼吸 伍ノ型 瓦輪刑部ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悲鳴嶼は攻撃を中断し、肉の繭の方へ突進する。加えて頭上より何度も鉄球と斧を打ち付け、血しぶきと共に破壊した。しかし、その内側に当の本人はいなかった。

 

 

「なっ・・・!!! 無惨は一体どこに・・・!!!」

 

 

すると頭上より赤黒い液体がぽたぽたと滴り落ち、柱一同はすぐさま天井を見上げた。

 

 

「フフフ・・・フハハハハハッ!!! 何が『だからもう決着はついたも同然なんだ。』だ!!! 毒使いの鬼狩りめっ!!!!!

 そもそも分解不能な薬なら体外に排出してしまえばいいだけではないか!!!!! 鬼の身体であれば造作もないっ!!!!!

 こんな簡単なことすら思いつくに至らないとは全く持って頭の足りぬ男だ!!! 次会った時奴の驚愕に染まる間抜け面が楽しみで仕方ない!!!」

 

 

鬼の首領は全身から赤黒い血を滴らせながら鍛錬上の天井に張り付いていた。加えて獰猛な笑みを浮かべ、満足げにそう高らかに言う。

 

柱一同は鬼の首領の言葉の意味を理解して驚愕に目を見開く。

 

しかし当初の目算が崩れ去ったとしても、諸悪の根源を目の前にして諦める者など柱の中にはいなかった。

 

負けじとばかりに不死川が大声で恫喝する。

 

 

「無惨っ!! テメェ・・・!!! 降りてこいやァアアア!!!!! ぶっ殺してやるっ!!!!!」

 

 

しかし、鬼の首領は怒号が聞こえて来ても笑みを消すことはない。取るに足らない脅威だと言いたげに嘲笑の声を漏らしている。

 

「ふっ・・・何かと思えば愚かな鬼狩り共が眼前で辛うじて生き残っているではないか。

 丁度いい。排毒で消耗した肉体を回復させるための食糧となるがいい。餓えた今なら多少は美味に感じるのではないか?

 もし私の前で跪き頭を垂れるならば鬼にしてやってもいいがな? 黒死牟を討ったお前達なら新たな上弦に加えてやってもいい。

 どうだっ!? 命乞いをしてみろ!!! それとも私の食事となり果てるか!? いいぞ!? 好きな方を選ばせてやるっ!!!

 

 フハハハハハハハハハハハハハハハッハハハッハハ・・・ハ・・・ゴフッ!!!???」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高笑いをしていた当人だったが、突如盛大に吐血し、胸元を抑える。その様子に柱達も困惑の表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 




この小説の無惨様ずっと下呂君の手のひらで転がされとるやん・・・
本当にこいつラスボスなんだろうか・・・
という感じで締まらないですが黒死牟編決着です。
次回から無惨討伐のネタ晴らし要素を多分に含んだ回想編となります。
珠世さんとの邂逅、しのぶさんの心情、薬の開発過程といった流れになる予定です。
下呂君、珠世さん、しのぶさんの陰なる奮闘劇も是非ご覧になって頂ければ幸いです。

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