鬼滅の毒使い   作:科学大好き人間

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下呂君視点です。時系列的には刀鍛冶の里上弦襲来から数日後くらいです。
それと最終話まで書き終わったので今日から毎日投稿します。よろしくお願いします。


31話 毒使い、鬼の医者と薬の開発に勤しむ

「下呂さん。身体の具合は如何ですか?」

 

「ああ、もう八割方回復したと思う。これも全て珠世さんと愈史郎の手厚い治療のおかげだ。改めて礼を言わせてくれ。」

 

「礼で済ませるな無礼者が!!! 最低でも土下座の一つでも披露しろ!!! 珠世様に感謝し尽くせ!!!」

 

「こら、愈史郎。恩着せがましいですよ? 私たちは下呂さんに協力してもらうために助けたのですから。」

 

 

ここは珠世と名乗る鬼の医者の診療所。俺は上弦の壱、黒死牟に殺される直前、二人に救出され、命からがら逃げおおせることができた。

 

あれから三日経った。珠世さんが治療し、俺が自作で薬を調合し、愈史郎が身の回りの世話をしてくれたおかげで、体力含めほぼほぼ回復したと思われる。

 

俺は病床より起き上がり、部屋に掛けてあった自前の黒コートを羽織って二人に向き直る。

 

 

「それじゃあ早速無惨討伐用の薬の調合を始めようぜ。まずは俺の毒血を生成する。薬剤室に案内してくれ。」

 

「貴様!! 珠世様に敬語を使え!!! 無礼者がァアアア!!!」

 

「愈史郎、いい加減にしなさい。今日から私たちの関係は対等なものです。無惨を亡き者とするために力を合わせるのですから貴方も少しばかりは協力的な姿勢を見せるのですよ?」

 

「・・・珠世様の望みとあらば・・・」

 

 

珠世さんはかなり乗り気なので有難いが、対して愈史郎はずっとこの調子だ。コミュ障の俺では打ち解けるのは恐らく無理だろう。

 

しかし、こいつは珠世さんには絶対服従の姿勢を貫いている。珠世さんが鬼にしたと言っていたからそういったパワーバランスでもあるのだろうかと俺は勘繰ったが、恐らく違う。

 

ただ異常なまでに心酔してるだけだろう。

 

どちらにせよ、俺は珠世さんとさえ良好な関係を築いていれば何も支障はない。愈史郎が静かになった後、俺は珠世さんに診療所の薬剤室に案内される。

 

 

「ただのビーカーでよろしいのですか?」

 

「一旦はな。だが扱う時はくれぐれも注意してくれ。生成後の俺の毒血は上弦の鬼だろうが何だろうが死に至らしめる。うっかり触れないよう充分に注意してくれよ。」

 

 

俺の発言に愈史郎が珠世さんの前に出て庇うような動作をする。まあ、俺の意思一つで無毒化できる代物だから、俺の目が届く範囲内ならうっかり血がついてもすぐ処置が可能だろう。

 

とは言えそんな大惨事起こしたくはない。なので愈史郎がこれだけ警戒してくれているのは逆に有難かった。

 

俺はそう判断し。両手の指を組んで掌を返すように五指を伸ばし、合掌する。暫くして俺の指先からどす黒い血が染み出し、俺はそれをビーカーに滴下する。

 

傍にいる二人もその様子に息を飲む。本能的にこの血が命を脅かすものだとわかるのだろう。

 

やがて、毒血の生成が100 mLを超える辺りで俺は作業を中断し、傍の椅子に腰を下ろす。

 

 

「済まない。今日はこの量が限界だ。次の生成は最低でも翌日にさせてくれ。体力を回復させたい。」

 

「えっ、あ、はい。ありがとうございます・・・やはりお辛いですか?」

 

「毒血解離を使うと必ずこうなるんだ。万全だったとしても一日に何度も使える代物じゃない。暫く仮眠を取らせてくれ。自作の栄養剤を服用して眠ればある程度は回復すると思う。」

 

「わかりました。病み上がりなのに無理させて申し訳ありません。下呂さんが休んでいる間、薬の研究は進めておきますので・・・」

 

「ああ。だがくれぐれも血には触れないでくれ。万が一触れてしまったらその時は愈史郎、俺を叩き起こしに来い。速攻で駆け付けて無毒化する。いいな?」

 

「はっ! 当たり前だ!! 寧ろ貴様がどれだけ疲弊していようが引っ張り起こしてやるからな? 覚悟しておけ!!!」

 

「こら! 愈史郎!! 下呂さんは本当にお辛いんですよ? 余り無理をさせるんじゃありません。それでは下呂さん、私は作業に移りますね? 他に事前に確認しておきたいことはありますか?」

 

「ああ。優先順位は任せるが、俺の毒血から無惨用の自白剤を作ってくれ。無惨に投与して尋問したいことがあるんだ。難しいかもしれないが頼めるか?」

 

「はい。私の血鬼術でも似た効果を発揮するものがあるのでそれを応用すれば簡単に開発できるかと。だからご安心くださいね?」

 

「わかった。じゃあ俺はもう休む。安全第一でよろしく頼む。」

 

 

そう言い残し、俺は元の病床に戻る。それから数日間、俺は毒血を生成し休息を取る生活を淡々と繰り返した。何か大事なことを忘れている気がするが、あまりの疲労感に俺はその違和感の正体を突き止めることはせず、ただひたすらに時間を費やした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やべ・・・城崎に俺の安否連絡してねぇ。まずいな・・・もう一週間も経っちまった。やっぱ心配かけてるよな・・・どうすっか・・・」

 

「あら? 下呂さんそれは行けませんよ? 貴方の身を案じている人をそう待たせるものではありません。手紙を出したら如何でしょうか?」

 

「そうだな。とりあえず安否連絡と現況報告をしねぇとだが・・・ん?」

 

 

俺と珠世さんが休憩がてら書斎で話し込んでいると、開けっ放しにしていた窓から一羽の烏が侵入してくる。

 

 

「これは・・・鎹烏!?」

 

「そんな・・・どうしてここがバレたのでしょう!?」

 

 

珠世さんが慌ててその場を立ちあがった瞬間、その鎹烏は低音の落ち着いた声音で話しかけてきた。

 

 

「こんばんは、珠世さん。物騒ですよ。夜に窓を開け放っておくのは。」

 

「ん? お前珠世さんの知り合いか?」

 

「下呂さんもお元気そうで何より。初めまして、吾輩は産屋敷輝哉の使いの者です。」

 

「っ! 輝哉さんの?」

 

 

俺は驚きに声を上げ、その鎹烏に向き直る。

 

 

「丁度良かった。珠世さんとの対無惨用の薬の開発で連絡するのを忘れていたんだ。輝哉さんのついでに城崎にも手紙を届けてくれねぇか?」

 

「ほう。もうすでに珠世さんと薬の開発をしていたのですね。流石輝哉が一目置く存在。しかし先に要件を伝えさせては頂けないだろうか?」

 

「要件?」

 

「・・・なんの御用でしょうか?」

 

 

俺の反応と一拍遅れて、後ろから警戒の声音で珠世さんがそう聞き返す。

 

 

「ふむ。不信感で一杯のご様子。無理もない。吾輩が炭治郎や下呂さんのように貴方から信頼を得るのは難しいですね。やはり・・・」

 

「おい、要件をさっさと言え。話はそれからだ。内容次第では俺が珠世さんを説得する。」

 

 

俺がそう提案すると、目の前の鎹烏は満足げに頷いた。

 

 

「では要件を話しましょうか。鬼殺隊にも鬼の体と薬学に精通している子がいるのですよ。禰豆子の変貌も含めて一緒に調べて頂きたい。

 鬼舞辻無惨を倒すために協力しませんか? 産屋敷邸にいらしてください。」

 

薬学に精通・・・十中八九胡蝶のことだろう。大丈夫か?

あいつは鬼を死ぬほど憎んでいる。両親だけでは飽き足らず、最愛の姉までも殺されているため当然と言える。

そんな胡蝶に鬼である珠世さんを引き合わせる?

正直修羅場どころの騒ぎで収まる気がしないんだが・・・

 

俺は珠世さんの顔色を伺う。当然と言えば当然だが、青ざめており動揺しているのが見て取れる。珠世さんとて鬼なのだ。身の危険を感じて当然だろう。

 

 

「こら!! 下呂貴様ァアアア!!! 珠世様に何をしたァアアア!? 珠世様の気の乱れをヒシヒシと感じたぞこの馬鹿者がァアアア!!!」

 

 

すると愈史郎が大声を出して部屋に入り込んでくる。

 

気の乱れがわかるとかコワッ!! テレパシー的なあれなのか!?

 

 

「ん? なんだその烏は? まさか鬼殺隊にここが・・・?」

 

「愈史郎・・・そうです・・・加えて彼らの本拠地に招待されました。無惨を滅ぼすために協力を打診されたのです。」

 

「っ!! 珠世様!!! 絶対に罠です!!! そもそも鬼狩り共の協力などいりません!!! 下呂!!! お前が片っ端から上弦の鬼を毒殺して鬼舞辻も始末すれば済む話だろうがっ!!! その為に共同開発してるんだろうがっ!!!」

 

 

「いや・・・流石に俺一人じゃ無理だろ・・・黒死牟とか暗殺できる気がしねぇし・・・」

 

「何弱気なことを言っているのだ下呂貴様ァアアア!!! 死んでも暗殺してこい!!! 珠世様のためにその命捧げてこい!!! この薄情者がァアアア!!!」

 

「こら、愈史郎。それ以上下呂さんを悪く言ったら私が許しませんよ。彼だって出来ることと出来ないことがあるのです。」

 

「た、珠世様・・・しかし・・・」

 

 

意外なことにこの場を珠世さんが治めた。何かを決意したような表情が見て取れる。

 

 

「わかりました。産屋敷邸に赴きます。共に無惨を滅ぼすために協力しましょう。」

 

「た、珠世様!!?? なぜそのようなことを!!??」

 

「私たちの利害は一致しています。鬼舞辻無惨。あの生き汚い男をこの世から葬り去る。それだけが私の悲願なのです。それさえ叶えばこの頸差し出したとしても後悔はありません。」

 

「た、珠世様!!?? ダメです!! それだけは・・・!!!」

 

「愈史郎の言う通りだ、珠世さん。アンタが命捨てる必要なんてねぇ。」

 

「っ!? 下呂さん・・・?」

 

 

珠世さんの発言に俺は釘を刺す。俺は珠世さんの目を見て諭すように語り掛ける。

 

 

「折角人間化薬も開発できたんだ。アンタは無惨を倒した後、人間に戻って第二の人生を歩んで幸せになるべきだ。」

 

「っ!! しかし!! 私は鬼になった後、大勢人を殺しました!!! あの男の甘言に乗せられ鬼となり家族を喰い殺した後に自暴自棄になって大勢を・・・!!! 私は死んで罪を償わなければならない大罪人です!!!」

 

「それを言ったら俺だって大罪人だ。家業で強制とは言え、大勢を毒殺してきた。他に選択肢なんてなかった。でもだからこそ奪った命に向き合うために大勢の人の手助けをすべきだと思っている。」

 

「げ、下呂さん・・・」

 

「人殺しの罪は死罪でしか償えないものじゃねぇだろ。そもそもそんなことをして、死んだ人間の命は還ってこねぇ。だったら奪った命よりも多くの命を救うべきだ。俺はそう思う。被害者の連中がそれで許してくれるなんて微塵も思わねぇが、それでも困ってる人に手を差し伸べること自体は間違っていないはずだ。」

 

「・・・・・・」

 

 

俺の話に珠世さんは俯くが、やがて観念したのか顔を上げる。

 

 

「わかりました・・・確かに今の私は死に逃げようとしていただけなのかもしれません。これからの人生も己の罪に向き合おうと思います。下呂さん、本当にありがとう。私にそれを気づかせてくれて・・・」

 

「お、おう・・・わかってくれたなら良かった・・・」

 

「おい!! こら下呂貴様ァアアア!!! どさくさに紛れて珠世様に色目を使うな!!! この不届き者がァアアア!!!」

 

「なんで!!?? 別に口説いてる訳じゃねぇだろ!? ちょっ!! 待て愈史郎!!! 窓から突き落とそうとするな!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして俺たちは輝哉さんの提案を飲み、先に手紙を送ったのち、産屋敷邸へと赴いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 




以上が珠世さんとの邂逅でした。次回はしのぶさんの心情になります。
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