※今話には結婚についてナイーブな内容が含まれています。無理だと思ったらブラウザバックしてください。
「城崎の言う通りだ。俺は大切な人を見つけるために婚活してんだ。なら現代に帰ることを諦めちゃ駄目だよな? それに・・・身近な人たちを蔑ろにするなんてどうかしてる・・・俺が間違ってたぜ・・・!!」
「んん? そこまで言ってないんだけど・・・まあいいや。下呂君が立ち直ったならそれで・・・」
「しかしだな城崎、結局俺たちは今後どうするべきなんだ? 現代に戻る手がかりは引き続き探した方がいいと思うんだが・・・」
「そうだね。でもがむしゃらにやればいいってもんじゃないと思うよ? 婚活と同じで、時には肩の力抜いた方がいいこともあるだろうし・・・」
「・・・というと?」
俺は城崎の言葉の意図が気になり聞き返す。すると城崎は得意げに笑みを浮かべる。
「輝哉さんに引き続き協力を依頼しようよ? 無惨討伐後は隊士達の治療で忙しかったんだから、ここで一度連絡を取ってみるのもいいんじゃない?」
「確かに・・・闇雲に動くより、あの人の人脈を頼りに情報収集した方が効率的なのは確かか・・・」
「そうだよ下呂君。だから引き続きこの蝶屋敷で鬼殺隊に貢献した方がいいと思うよ? 輝哉さんに恩を売って、その見返りにあっちで調べてもらおうよ。絶対その方がいいって。」
「だな。やっぱり城崎が居てくれると助かることが多いぜ。ありがとな?」
「ムフフ~。それに今後も蝶屋敷で仕事してたらさぁ~、胡蝶さんとの仲もより親密になるかもしれないしね~。」
「んん!? 待てなんでそこで胡蝶が出てくるんだ? あいつは俺に気なんてないだろ!?」
「え・・・ちょっと待ってよ下呂君・・・もしかして・・・気づいてないの?」
「は? 何がだよ?」
「・・・うわぁ・・・マジかよこいつ・・・今時鈍感系主人公なんて流行らないって・・・」
「おい、今こいつって言わなかったか?」
「はあ・・・まあいいや・・・とにかく今はどちらでも選べるようにすべきだと思うよ? 現代に帰れたとしても、帰れなかったとしても。」
「ん? 帰れなかったとしても?」
「うん。そう。下呂君覚えてない? 刀鍛冶の里で甘露寺さんとお話した時のこと。」
「ん? 何の話だ?」
「やれやれ、仕方ないなぁ~。私言ったよね?『もし現代に戻れなかったら真面目に胡蝶さんとの間を取り持ってあげようかな~?』って。」
「はあ!? あれって冗談じゃなかったのか!?」
「いやいや、大真面目な話だよ下呂君。そもそもこっちで婚活するとして、彼女以外に接点のある女性いないでしょ? 他に候補でもいるの?」
「いや、いる訳ねぇだろ。候補なんて・・・つか城崎・・・胡蝶はそもそも婚活するような年齢じゃねぇだろ? あいつまだ十八だぞ?」
「いや、『もう十八』だよ下呂君。この時代女性は十五から十八で殆どが結婚してたんだよ? 胡蝶さんは現代で言うなら三十手前の結婚適齢期後半な訳。だから放っておいたらすぐ見合いの話が来て結婚すると思うよ?
加えてあれだけ美人で聡明で器量良しで愛嬌もあるんだから超優良物件な訳。きっと結婚を申し込む人が殺到するんじゃないかな? 下呂君はそれでもいいの?」
「はあ・・・城崎あのなぁ・・・そういうのは胡蝶の気持ちが最優先だろ? 俺ら外野がとやかく言うことじゃねぇだろ?」
「ふ~ん。つまり胡蝶さんの気持ちを一番に尊重するって言うんだね? 言質取ったからもう言い逃れできないよ~?」
「は? 何の言い逃れだよ? 意味わかんねぇぞ。」
「フフフ~。まあ数日待ってのお楽しみかな~? まあ期待して待ちたまえよ下呂君。私の見立てじゃ勝算かなり高いと思うから。」
「あ? だからなんの勝算だよ? マジで何言ってるかわかんねぇぞ・・・」
「まあいいや今は。とりあえず私お腹がペコちゃんだから食堂の方向かうね~? 今日の献立は何かな~?」
俺が呆れていると城崎は満面の笑みを浮かべたままその場を立ち上がり部屋をあとにした。俺は暫く城崎の言ってた意味を考えていたが意図がわからず頭を悩ませるばかりだった。
「あ・・・あの下呂さん・・・少々お話良いでしょうか?」
「ん? なんだ?」
城崎と今後の方針を話し合い、輝哉さんに未来に帰るための手がかりについて情報収集してもらう旨の手紙を出してから三日が過ぎた。
再び胡蝶に藤の花の毒の分解薬を処方するために、俺は診療室に立ち寄っていた。
「薬の処方のついででもいいか?」
「あ、いえ・・・できれば打ち終わった後にしてください。下呂さんを動揺させてしまうかもしれませんので・・・」
「ん? まあいい。座れ。」
俺はいつも通り胡蝶が腕まくりした方の二の腕に薬を注入する。注射器の中身が全て打ち込まれたことを確認し、俺は針を抜いていつものように医療用ごみ箱に注射器を捨てる。
「で、なんだ? 話って言うのは。初週に比べてマシになったとはいえ、俺もお前も忙しい身だ。なるべく手短に頼む。」
すると胡蝶は静かに診療室の扉の前に立ち、内側から鍵を閉めて扉に背をもたれかけさせる。
その神妙な顔つきに俺はやや警戒度を上げる。
「なんだ? 他の奴に聞かれたくない話か? なら内緒にしといてやる。その様子だと悪い知らせか? まあ立ったままなのもなんだ。座れよ。」
俺が促すと、胡蝶は再び椅子に座る。暫く俯いていたが決心したのか俺の目を見て語りだす。
「えっと・・・城崎さんと今後の方針は相談できましたか?」
「ん? ああ、胡蝶には伝えてなかったか。悪いな。結論から言うと、未来に戻る手がかりの探索は、産屋敷家の人達に委託することにした。
まだ返事はないが、その見返りとしてこの蝶屋敷で引き続き隊士の治療に当たらせてもらう予定だ。いつまでかかるか見通しは立っていないが、これからも世話になる。悪いな。」
「っ!! いえ! 寧ろこちらから頼み込もうと思ってたぐらいです! 是非とも下呂さんにはここで一緒に働いてほしいと思っていましたので・・・」
「そうか・・・しかしもしかしたら手がかりが見つからず仕舞いになるかもしれない。その場合はどうするか正直悩んでいるんだが・・・」
「で、でしたら! 鬼殺隊が解散した後もここで一緒に働きませんか!? 下呂さんが居てくれると本当に頼りになることが多いんです!!
不謹慎ですがその・・・できればずっと一緒にいてほしいと思っています・・・!」
「おお・・・そうか・・・それは複雑な気持ちになるお願いだな・・・まあ確かに現代に戻れないのなら他に行く当てもないし俺としても助かるっちゃ助かるんだがな・・・」
暫く沈黙が続く。俺は腕組みしたまま黙っていたが、ふいに胡蝶が口を開く。
「その・・・ここからが本題なのですが・・・」
俺は反射的に胡蝶の目を見る。するとなぜか胡蝶は目を逸らして髪の先を指でいじり始める。何か言いにくいことなのだろうか。
俺がそう思っていると、胡蝶は意を決したのか、本題を切り出した。
「げ、下呂さんはその・・・結婚相手を探しているんですよね?」
「ん? ああ、そうだな。・・・不意に思ってしまうんだ。大切な人と一緒に心穏やかに生きたいって。散々人を殺してきて馬鹿みたいって思・・・」
「い、いえ!! そんなことはありませんよ!!!!」
「うお!? 急にどうした胡蝶!?」
なぜか胡蝶は食い気味に答える。俺の眼前まで顔を近づけて。一体全体どういう心情なんだこれは・・・!?
「わ、私・・・下呂さんには本当に感謝してるんです・・・!! 下呂さんが居なかったら・・・私は今頃姉さんの仇も討てず無念に死んでたって・・・!!
下呂さんが居たから・・・今の私があるんです・・・!! 鬼のいない世界を私に見せてくれたのは・・・間違いなく下呂さんのおかげですから・・・!!」
「お・・・おお・・・そうか・・・一旦落ち着こうか胡蝶・・・」
な・・・なんだ・・・この反応・・・まさか・・・まさかとは思うが・・・胡蝶は俺に気があるのか・・・!?
いや、待て。落ち着け。勘違いだったら後でとんでもない大恥をかくぞ。そもそも以前俺は城崎相手に勘違いして求婚しちまったことがあるんだ。
マジで末代までの恥だ。思い出すだけで羞恥に身を焦がす。だから落ち着け。胡蝶は単に俺に感謝してるだけだ。そうだ。こいつはその様子を他の奴に見られたくなくてこんな密室でお礼を述べてるに過ぎないんだ。
だから落ち着けと散々自分に言い聞かせるが、全身の汗が止まらない。絶対今挙動不審な振舞しかできないと思う。
俺は必死に自身の冷静さを取り戻そうと躍起になる。しかし・・・
「それだけじゃありません。下呂さんは私に言ってくれました。『間違いなく鬼殺隊に必要不可欠な要だ』って。『鬼殺隊で一番貢献してるのは間違いなくアンタだ』って・・・
私・・・下呂さんのあの言葉のおかげで・・・童磨に打ち砕かれた自信を取り戻すことが出来たんです・・・自信を喪失していた私にそんな前向きになれるような言葉を掛けてくれたから・・・!!
だから私、下呂さんの言葉に報いたくて、無惨討伐の為の薬の開発にも一層取り組むことができました。全部全部下呂さんのおかげなんです・・・!!」
胡蝶は胸に手を当てて、目を潤ませたまま続ける。
「童磨を倒す時だって、本当は下呂さんだけで倒せたかもしれないのに、敢えて私の気持ちを尊重した上で、支えて立ち上がらせてくれました。
泣くことしかできなかった私を勇気づけてくれて背中を押してくれたんです。そのうえで力を貸してくれて・・・
あの時だけじゃない。下呂さんは、私が頑張ってるところを真っすぐに見てくれる。私の今までの努力と行動を肯定してくれる人なんです。本当に嬉しかった・・・」
俺は胡蝶の矢継ぎ早の独白に圧倒されて何も言えなくなる。鼓動がさっきから五月蠅くて口を開けば心臓がまろびでそうなくらい緊張していた。
やがて胡蝶は息を整えて、落ち着いた声音で言葉を紡ぐ。
「私は・・・そんな下呂さんが好きです・・・貴方は私を支えて信じてくれる人だから・・・だから・・・///」
気が付いたら俺はキャパオーバーして頭から煙が出ていた。
いや、比喩的表現なんだが、マジで頭がぶっ壊れたんじゃないかと思うくらいこの時の俺は慌てふためいたと思う。
続く
そうです。みんな大好き胡蝶しのぶさんの描写を増やすことにしました。筆者も原作中三本の指に入るくらい好きなヒロインです。映画の声優さんの演技力の高さ、ufoの演出、サントラ、効果音のせいであのシーンはマジで精神に異常をきたして吐きそうになるくらい衝撃を受けました(一応制作に関わった人達を褒めてます)。
ということで救済しないと気が済まないので、もう数話ほどお付き合いください。