鬼滅の毒使い   作:科学大好き人間

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下呂君視点です。長くなりましたがここまで読んで下さった皆様にこの場をお借りして御礼申し上げます。ご愛読ありがとうございました。もし宜しければご感想下さい。次回作へのモチベーションにさせて頂きます。


最終話 毒使い、最愛の人と生きる

「いいのか。胡蝶・・・本当に・・・」

 

「はい。城崎さんとカナヲ、アオイに説得されて来てしまいました。皆お節介が過ぎますよね?」

 

「そうか・・・お節介か・・・なら仕方ねぇよな。」

 

 

俺は輝哉さんの奥さん、あまねさんの実家の神社の鳥居の前に来ていた。

 

俺も胡蝶も城崎も身支度を整えて、この場に集っている。

 

俺は現代で着ていた紺色のスーツに柄付きの襟シャツ。城崎は白色主体の綺麗系な洋装で身を固め、胡蝶は藤色の着物に蝶の羽織を着こんでいる。

 

俺は傍の鳥居を一瞥する。本当に不思議なんだが、鳥居の向こう側がぼんやり光って見える。摩訶不思議な現象である。

 

あまねさんの予知夢が本当なら、俺はこの鳥居をくぐり抜ければ現代に帰れるってことだ。

 

今まで散々鬼退治で苦労して情報収集してた身としては本当に拍子抜けだ。

 

輝哉さんも人が悪い。知ってたなら予め教えてくれればよかったのに。

 

まあ、恐らくは俺が現代に帰る方法を知れば下手すると無惨を倒す前に帰っちまうとでも思ったのだろう。流石にそこまで俺は薄情者ではないんだが・・・

 

 

「ヒカル。本当にありがとう。君のおかげで無惨を討伐することができた。産屋敷家を代表して礼を言わせて欲しい。本当にありがとう。」

 

「もういいって、輝哉さん。そもそも無惨討伐に一番貢献したのは胡蝶だ。俺は血の提供と・・・ちょっとした意見を出しただけだ。だから礼なら胡蝶に言ってくれ。」

 

「うん。そうだね。しのぶ、本当に今まで鬼殺隊に尽くしてくれてありがとう。十四で姉を殺され、辛いことばかりだったはずなのに、それでもずっと蝶屋敷の長として献身してくれたことを私は決して忘れないよ。どうか・・・今までの不幸が全部帳消しになるくらいに幸せになることを願うよ。」

 

「はい、お館様。私、絶対幸せになります。死んだ姉さんが安心して私のことを見ててくれるくらい、羨むくらい幸せになって見せます・・・!!」

 

「だって、ヒカル。しのぶを泣かせちゃ駄目だよ? メイから聞いたけど、君は複数人の女性とも交流を持っているそうだね? しのぶを泣かせる真似だけは絶対に承知しないよ? いいね?」

 

「ああ・・・勿論だ。」

 

 

そうして輝哉さんは後ろへと下がる。すると竈門や我妻、嘴平に加え、栗花落をはじめとした蝶屋敷の面々が大勢押し寄せる。

 

 

「しのぶさん!! どうかお元気で!! カナヲは絶対俺が幸せにして見せます!!」

 

「城崎さ~ん、俺が頑張るからねぇ~? 城崎さんの教えを忠実に守って絶対禰豆子ちゃんに振り向いてもらうからねぇ~? しのぶさんも本当にありがとうございましたっ!! 貴方に手を握ってもらったことを生涯忘れませんっ!!」

 

「しのぶ!! お前はもっと飯食えよ!! 身体軽すぎて心配だからな!! 眼鏡ノッポの真っ黒黒助にうまいもん沢山食わせてもらえ!!」

 

「しのぶ姉さん。どうかお幸せに。こっちは大丈夫だから本当に心配しないで。約束守ってね? ちゃんと自身の心の声を聴くって。元気でね?」

 

「しのぶ様・・・今まで本当にありがとうございました・・・!! あと時々失礼なこと言って本当に申し訳ありませんでした。どうかお元気で・・・うっ・・・うっ・・・うおぉおおおん!!」

 

「「「しのぶ様ーーー!!お元気でーーー!!どうかお幸せにーーー!!」」」

 

 

続いて柱の面々が一人づつ声を掛けてくる。

 

 

「胡蝶。あの日幼子のお前を鬼から救った時がつい昨日のことのように思える。どうかこれからの人生に幸あらんことを・・・」

 

「ありがとう。悲鳴嶼さん。」

 

「胡蝶、お前が下呂に惚れてたのは派手に驚いたがまさか未来までついて行っちまうとはな? それはもう派手派手な余生を過ごせよ? 達者でな!」

 

「ふふ、まだまだ余生というほど生きてませんよ、宇随さん。」

 

「胡蝶!! お前には本当に世話になった!!! お前なら剣の必要ない時代でも立派に生きていけるだろう!!! 健闘を祈るぞ!!!」

 

「はい、こちらこそお世話になりました。煉獄さん。」

 

「しのぶちゃぁあああん!!! これ今朝焼いたパンケーキなのぉおおお!!! 向こうでも元気にしてねぇええ!!! 私絶対しのぶちゃんのこと忘れないからぁあああ!!! 下呂さんとお幸せにねぇえええ!!!」

 

「ふふ、甘露寺さん、泣き過ぎですよ。私も忘れません。ありがとうございます。」

 

「・・・胡蝶・・・甘露寺が済まない・・・俺は下呂とは接点がなかったが、お前が好いた男なのだ。きっとお前を幸せにしてくれると信じているぞ。元気でな。」

 

「はい、伊黒さん。甘露寺さんのことよろしくお願いしますね?」

 

「胡蝶さん。今まで本当にありがとう。時々僕も炭治郎や蝶屋敷の子たちの様子見に行くから。安心してよ。」

 

「ありがとうございます、時透君。炭治郎君やカナヲ達のことよろしくお願いしますね?」

 

「胡蝶・・・(お前には柱達との交流や任務の際に間を取り持ってもらったり俺の気持ちの代弁をしてくれたりと本当に様々な点において)世話になった。」

 

「冨岡さんは相変わらず言葉が足りませんね。はい、こちらこそお世話になりました。」

 

「しのぶ・・・達者でなァ・・・カナエも喜んでると思うぜェ・・・元気でなァ・・・」

 

「はい。不死川さん。姉さんのお墓参りいつもありがとうございます。これからも私の代わりに姉さんに会いに行ってあげてくださいね?」

 

 

胡蝶は本当にいろんな奴から慕われてるんだなと、この別れの挨拶で実感した。そんな奴を本当に俺が連れてっていいのだろうか。

 

ここに来て不安になる。なにせ俺の家は使い手の汚濁の極みとも言える五大名家の毒使い。胡蝶が手を汚さずに、加えて誰にも傷つけられずに生きていけるのかは甚だ疑問ではある。

 

俺と明確に婚姻を結べば、当主の妻としてある程度の権利が保証されるだろうか。そもそも現当主のお婆ちゃんや先生は認めてくれるのだろうか。その確証はない。

 

俺は胡蝶が一通り他の連中に挨拶を済ませ隣に戻ってきた時に、改めて問う。

 

 

「なあ・・・胡蝶・・・」

 

「はい。どうしましたか? 下呂さん。」

 

 

胡蝶は笑顔だった。純粋な汚れの無い綺麗な笑顔。守れるだろうか。この俺に。

 

 

「済まない。何度も聞いちまって。胡蝶は本当にいいのか?

 俺の家は使い手の大手、即ち殺し屋家業だ。現に俺は手を汚しまくってる。自身の意思とは無関係とは言え大勢を手に掛けて来た。

 胡蝶はまだ一人も人間を殺めていない。堅気の人間として生きることができる人間なんだ。

 勿論お前に人殺しなんて絶対に強制させたりなんかしない。俺が絶対に他の奴らに干渉させない。

 とは言え、無関係でいられないのも事実だ。お前を薄汚い裏の世界に引きずり込むかもしれないと思うと俺は・・・」

 

 

俺が不安そうにしてると、胡蝶は俺の手を握りしめてくれる。

 

 

「もう・・・今更何言ってるんですか・・・散々そのことについては話し合いましたよね?」

 

 

俺は胡蝶の目を見返す。真っすぐな視線が俺を射貫く。

 

 

「大丈夫です。何も心配いりません。それに城崎さんからも聞きました。

 そっちの世界では殺しを生業にする使い手の他に、護衛を生業にする守り手という職業もあるんですよね?

 なら私はそれになります。今まで鬼から人を守ってきた仕事が、悪人から善人を守る仕事に変わるだけです。何も問題ありませんよ。

 それに私は下呂家と結婚するんじゃありません。私が好きになった目の前の下呂ヒカルさんと結婚することを前提にお付き合いするんですから。

 それが本来の・・・幸せな結婚の形ではないでしょうか?」

 

「胡蝶・・・」

 

「だからそれについては問題ありません。

 私が一番心配しているのは・・・その・・・下呂さんが心変わりをして私を見限らないかということです・・・

 他の婚活相手の人をやっぱり選ぶのではないかと・・・私は気が気でありません・・・

 それにいざ結婚に踏み切ろうとした時に、下呂さんの家の人に反対されないかどうか・・・それらがとても不安です・・・

 下呂さんは・・・私を選んでくれますか?

 そして私の為に家の人と間を取り持ってくれますか?

 それさえ約束してくれるのなら・・・私からはもう言うことはありません・・・!!」

 

「ああ、勿論だ。ぜってぇお前を選ぶ。約束する。そんでそれを家の奴らにも認めさせる。胡蝶はすげえ奴だって俺も家のみんなにアピールしてやるよ!!

 だから安心してついて来てくれ、胡蝶・・・!!」

 

「はい・・・下呂さん・・・///」

 

 

俺が胡蝶と手を握り合い、話し込んでると、突如城崎に背中を叩かれる。

 

 

「辛気臭くなったと思ったらイチャイチャしちゃって~? この分なら私がうまく立ち回ればゴールインまでもう少しかな~? 下呂君も胡蝶さんも大船に乗った気でいてよ?

 なんたって私、五大名家の次期当主から直々に任命された婚活アドバイザーだからね~?」

 

「城崎・・・」

 

「城崎さん・・・」

 

 

すると俺が握る胡蝶の手と反対側の手を城崎は握る。

 

 

「万が一にも胡蝶さんがはぐれることがないよう、両手を私と下呂君で握ってあげようよ! これなら胡蝶さんも安心できるでしょ?」

 

「っ! はい、ありがとうございます・・・!」

 

「はは、いいなそれ。じゃあそろそろ現代に帰るか!!」

 

「よ~し、レッツラゴー!!!」

 

「はい、よろしくお願いしますね!」

 

 

後ろから鬼殺隊の面々の声が聞こえる中、俺たちは鳥居をくぐり抜ける。すると不思議な感覚が全身を通り抜け、そのまま俺たちは立ち止まった。

 

 

「よし。ひとまず三人ともそろってるな。」

 

「うん。胡蝶さんもはぐれてないね。」

 

「はい、無事ご一緒できて良かったです。」

 

 

そうして俺たちは潜り抜けた鳥居を振り返る。その先には大正時代の街並みで見ることがなかった高層ビルと整備された道路の連なる光景が広がっていた。

 

 

「す、すごい・・・ここが・・・下呂さんが生まれた時代の街並みなんですね・・・!」

 

「ああ、大正から100年以上経ってるからな? 人類の文明の発展度合いを実感するぜ。」

 

「よーし!! まずは胡蝶さんの洋服買いに行くよーーーー!!!

 洋服と靴とバッグに帽子揃えて、そしたら化粧品も揃えて現代風にメイクアップしちゃおう!!

 きっと下呂君が赤面するぐらいめっちゃ美人な胡蝶さん見れるよ? 楽しみだね~?」

 

「えっと、城崎さん? 先に衣食住の確保では?」

 

「胡蝶、心配するな。暫くは俺の家で匿う。当面の生活には困らないはずだ。」

 

「えっと、生活費は・・・」

 

「大丈夫大丈夫!! 下呂君はこっちだと億万長者だからどんだけ散財しても平気だよ!!

 折角だから先に高級レストランでも行こうよ! Tボーンステーキとか胡蝶さん食べたことないでしょ?

 滅茶苦茶美味しいからね! 勿論下呂君の奢りで!!」

 

「ったく、わかったわかった。金については気にすんな。胡蝶に現代を案内するついでにいろんな飯食わしてやる。俺の行きつけの店とかな?」

 

「あ! もしかして味使いの彼が経営してるあそこ!? いいね~! じゃあ晩御飯はそこで、お昼はTボーンステーキで!!」

 

「はいはい、ったく城崎は食い意地張って仕方ねぇぜ、全く。胡蝶もそれでいいか?」

 

「はい・・・! 下呂さんが居る所ならどこにでもついて行きますよ?///」

 

「お・・・おお・・・わかった・・・案内するぜ・・・///」

 

「ムフフ~! やっぱり二人ともメッチャ推せるね!! これからが本当に楽しみだよ~?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長いようで短い、そんな鬼を滅する毒使いとしての生活が終わり、俺は最愛の人を連れて現代に帰ってきた。

 

いつか胡蝶と、夕食寝る前に『今日どうだった?』みたいな・・・何気ない会話をして、咳をしたら『どうしたの?』って声を掛けたり掛けられたりするような・・・そんな生活を送れるんだろうか。

 

胡蝶と二人で、フツーに仲良く楽しい人生を送れるんじゃないかと、俺はこれから先の人生に期待感で一杯だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




因みに本小説のタイトル「鬼滅の毒使い」は下呂君としのぶさん二人のことを示唆してます。最終話のサブタイトルも相まって個人的には綺麗に締めくくれたかなとは思っていますが如何だったでしょうか。本小説全体のことでもいいのでご感想頂けたら幸いです。
需要があるかわかりませんが、ここで執筆裏話をさせて頂きます。実は執筆当初は無限城編以降を書く気がありませんでした。理由は16話までUA数、お気に入り登録数、評価数が異常に少なかったからです。なので、当初は産屋敷邸に現れた無惨を愈史郎の目隠し札をつけた下呂君が毒血解離で瞬殺して完結させる予定でした。それはそれで面白無惨が書けそうでモチベはあったのですが、嬉しいことにしのぶさんと童磨の戦い以降評価して下さる人が増え、UA数もじわじわ増えたので、期待されているのならもう少し頑張ってみようと思い、結果42話と当初の倍以上の長さになってしまいました。振り返ると兄上の話要らなかったかなとも思っています。やはり兄上はお労しい。それは兎も角、実はしのぶさんをヒロインに据える予定もありませんでした。本小説は主人公の下呂君が現代で婚活してるので、鬼滅キャラとカップリングさせなくてもいいかなと思ってたのですが、感想欄で「仲が良好なら現代に連れてってしまうのはありでは?」といった意見をもらい、「なるほどその手があったか!!」と感激し急遽展開を変更した次第です。本当に感想を下さる方々からは様々な面で支えて頂いたと思っております。この場をお借りして御礼申し上げます。本小説を楽しんで読んで頂けてればこれ以上の喜びはありません。今まで本当にありがとうございました。

さて、最後に次回作の告知なんですが、本作最終話と同時に既に投稿しております。題名は「狛治外伝 ~誰が為に振るわれる拳~」です。完全に狛治と恋雪ちゃんの救済ものです。映画を見てから二人としのぶさんのことしか考えられない脳味噌になってしまったので、暫くはこちらの小説を投稿して、のちにしのぶさんヒロインものを書く予定です。気が早すぎるのですが、次々回作は炭しのものになると思います。刺さる人にしか刺さらないかもしれませんが、もし興味があれば覗いてみてください。それでは縁があればまたよろしくお願いいたします。
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