鬼滅の毒使い   作:科学大好き人間

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しのぶさん視点です。読者の方より、かつての鬼殺隊メンバーの子孫との絡みが見たいとの感想が多かったので今話でちょっぴり応えます。好評ならこういった描写を今後増やすかも。


5話 片羽の蝶、呼吸の指導を頼まれる

産屋敷邸の敷地内にある『護り手』専用の鍛錬場にて、私はある人物と試合をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー炎の呼吸 壱ノ型 不知火ー

 

 

 

ー蟲の呼吸 蜂牙ノ舞 真靡きー

 

 

 

 

 

 

 

 

最後の応酬で両者とも剣道着に裂け目が入り、試合終了の合図が出る。私は一息を付き、手拭いで汗を拭っていた。

 

 

「うむ! 凄まじい腕前だ! 下手すると俺以上かもしれんな!」

 

 

振り返るとその先には、私が鬼殺隊現役時代に何度も顔を合わせた仲間と瓜二つな方が豪快に笑い声をあげていた。

 

私はその様子を見て苦笑する。

 

 

「やめてください煉獄さん。実戦を離れて数か月ぶりに全力で動いたんです。今の型の動きだって精細さに欠けてたと思いますし・・・」

 

「なんと! 今の動きでか!? いやはや流石は輝利哉様が何度も我等に語り継いでいた鬼殺隊最強の御方だ! 全盛期の貴方の前では俺程度など足元にも及びませんな! ワハハッ!」

 

「ちょっ・・・やめてください。言っておきますけどここでは貴方の方が目上の立場なんですよ? 間違っても同僚の方がいらっしゃる前でそのようなことは仰らないで下さいね?」

 

「おお! 確かにそうだったな! であれば今後気をつけねば!」

 

「それに私は階級が最上位だっただけで最強の隊士だった訳ではありません。寧ろ柱の中では最弱な方でしたし。」

 

「なんと!? 当時は胡蝶よりも強い御仁が大勢居たのか!? 全く恐ろしい時代があったものだ! ワハハッ!」

 

 

私たちは休憩を兼ねてそんな他愛のない雑談をする。加えて私はここ最近のことを振り返っていた。

 

私が産屋敷直属の『護り手』として再雇用されてから数日が経過した。現在は研修期間中であり、殆どが業界や業務内容の座学研修に明け暮れる日々だった。

 

しかしそれでは退屈だろうと、研修終わりにこの方が声を掛けてくれるようになった。

 

彼の名は煉獄京寿郎。奇しくも私が柱だった頃の煉獄さんと同じ読みの名の方だった。

 

見た目もそっくりで話し方もそっくり。まるでこの人といると大正のあの時に戻ったんじゃないかと錯覚してしまうくらいに似ている方だった。

 

とは言え、この時代の彼は既に年齢も四十手前。どちらかと言うと槇寿郎さんに近い年代の方だった。

 

今では桃寿郎君と言う中学生の一人息子も居て、立派に父親をしているようだ。現在産屋敷家直属の『護り手』の筆頭として人材を一手にまとめ上げている程の方だ。

 

なのでこのように謙遜されるとこちらとしては畏まってしまう。私なんてここでは見習いと言っても差し支えない半人前同然なのだから。

 

 

「しかしやはり胡蝶は『常中』が使えるのだな! 正直君のことは頼りにしている! 現代において、そこまで呼吸の技術を練り上げている者もそう多くはないからな!」

 

「・・・そのようですね。」

 

 

煉獄さんが今口にした内容には最初私も戸惑ったものだ。

 

なぜならこの時代、『常中』まで修めている者は殆どいなくなってしまっていたからだ。

 

確かに今でも一部の人達の間で全集中の呼吸の継承はされているようだった。研修内容にも基礎実技として組み込まれていたのでそれは間違いないと思う。

 

しかし『常中』まで習得しているのは、『護り手』の中では既に煉獄さん含め片手で数える程度の人数しか居ないようだった。

 

 

「正直呼吸の継承も少しずつ途絶えて来ていてな! 今では俺しかまともに教えられない上に最重要な仕事の依頼が入ると現場に出掛けっきりになることが殆どだ!

 だから今後胡蝶が現場の任務に出始めるまでは、俺の代わりに他の者たちに呼吸の指導をしてもらえると有難い! 頼めるか?」

 

 

現在、産屋敷お抱えの『護り手』の中には『常中』をどうしても覚えたいと志願する人達も意外と多いそうで、結果煉獄さんは現場の仕事との両立で相当苦労しているようだった。

 

それ故の提案なのだろう。正直私に役割を与えてくれるのは嬉しいし有難い。けど私には懸念事項があった。

 

 

「お引き受けしたいのは山々なのですが・・・その・・・私のような新参者がベテランの先輩方に指導なんかして・・・揉めたりしないでしょうか?」

 

 

煉獄さんとは既に何度も手合わせしているし、信頼も充分に勝ち取った手応えもあるので平気なのだが、他の同僚に降って湧いたような私が突如指導なんてし始めたら、組織に余計な軋轢を生んでしまうのではと不安に思っていた。ところが、

 

 

「何を言う! 産屋敷家直属の『護り手』は一人も漏れなく、かつての鬼殺隊の偉業を口伝にて聞かされているのだぞ! 寧ろ我等からすれば胡蝶は新参者ではなく最古参の生ける伝説の方とも言える! 文句など出るはずもないだろう!」

 

「・・・成る程。」

 

 

つまりお館様たちの采配により、現代の配下の人達はその辺の事情について既に教育済みだと言う事なのだろうか。

 

確かに輝哉様や輝利哉様なら、この時代に転移してきた私のことを思って、事前にそのような入念な根回しをしてても何ら不思議ではない。

 

死して尚、私はあの御方たちに支え、守られているのだとそう実感しないではいられなかった。

 

 

「わかりました。その話お引き受けしたいと思います。若輩者ですがどうぞよろしくお願い致します。」

 

「ワハハッ! 若輩者どころか大ベテランの間違いじゃないか!? 何せ胡蝶は大正時代から生きている言わば・・・おおっと! つい失礼なことを言いかけた! すまんっ!!」

 

「・・・」

 

 

不意に私は自身が周囲からどう見られているかを自覚する。

 

成る程。いわば私は見てくれが若いだけの老齢熟練の猛者という訳ですね。今後も年齢についての話題は度々挙がりそうです。その度に目くじらを立てないよう気をつけなければ。

 

 

「それでだな胡蝶! 早速で悪いが明日、外部の人間に呼吸の指導を頼めるか? 以前から再三頼み込まれていたんだが中々時間作れなくてな! 代わりにその者の応対を任せたい!」

 

「いきなりですね。別に構いませんが外部の方ですか? その方は一体どういった御仁なのでしょうか?」

 

「ああ! なかなかの大御所だぞ!? 何せあの五大名家の次期当主なのだからな!」

 

「っ!? 五大名家の・・・!?」

 

 

私は驚愕に目を見開く。まるで想定だにしない話だった。下呂さんと同格の方がまさか教えを乞いに来るなんて。一体誰が・・・

 

 

「その者の名は有馬錐人(きりと)。五大名家の一角にして近接戦闘随一の『鉄使い』を輩出する有馬家の将来を背負う御方だ。わかってると思うが、くれぐれも粗相のないようにな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後の一言だけ、煉獄さんは酷く落ち着いた声音で私に語り掛けていた。私はその様子に固唾を飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 




本当は順次下呂君の婚活相手を登場させる予定だったんですが、話の流れの都合で錐人君がマリトキメンバー最初の登場キャラとなりました(ラスボス候補ペアを除く)。ぶっちゃけ錐人君はマリトキメンバーの中で最も鬼滅との親和性が高いキャラクターかと思っています(日本刀主体で戦うので)。一応マリトキ読んだことない方でも次回を読めば彼のことがだいぶわかるよう描写するつもりではいます。個人的にはかなり好きなキャラなので皆様にも愛着持って頂けたら嬉しいです。

次回4/22 19:00更新予定。
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