鬼滅の毒使い   作:科学大好き人間

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しのぶさん視点です。今話には他作品のオマージュが含まれます。予めご了承ください。


7話 片羽の蝶、逢瀬に誘われる

「胡蝶。週末空いてるか? もし良かったら俺と水族館行ってみようぜ。確か以前金魚とかも飼ってたしそういうの興味あるかと思ってよ。」

 

「っ!!」

 

 

 

ある日二人で仕事から帰って来た後、家で食卓を囲んでいると、不意に下呂さんからそのような素敵な提案をされる。私は思わず胸が高鳴った。

 

私が内心一人感動していると、私の返答がないのを不安に思ったのか下呂さんは一転バツが悪そうにし始めた。

 

 

「あ・・・いや・・・仕事で忙しいなら・・・無理にとは言わねぇが・・・」

 

「ちょっ!? ちょっと!! だからなんですぐ取り下げようとするんですか!! 別に嫌だなんて言ってないじゃないですか!?」

 

「お、おう・・・すまん。」

 

 

私は下呂さんの発言を撤回させた後、胸に手を当てて笑みを浮かべる。

 

 

「嬉しいです。下呂さんから誘ってもらえるなんて・・・///」

 

「そ、そうか・・・胡蝶が喜んでくれたのならよかった・・・つう訳で予定空けておいてくれ。」

 

「はいっ!」

 

 

不意に舞い降りた下呂さんとの逢瀬(デート)の予定。結果、私は当日までずっと気持ちが高鳴り常にウキウキしていた。

 

そうだ。当日着ていくお洋服を城崎さんに相談しておかないと。場合によっては新しく買い足した方がいいかもしれない。なら城崎さんの空いてる日程も抑えなきゃ。

 

それと事前にどこでお昼を食べるかも調べておいて、あと水族館を全力で楽しめるように予習もしておいた方が良いかもしれない。

 

図書館で調べる? それとも最近使い始めたインターネットやSNSの方がいいのかな。でもやっぱりここは不慣れな方じゃなくてやっぱり堅実に図書館で予習を・・・

 

一週間寝ても覚めてもずっとそんなことばかり考えていた。

 

結果、あっという間に逢瀬(デート)の日を迎えるに至ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー当日ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イソギンチャクはクラゲの仲間で生えている細かい毛で魚とかエビとか動物性プランクトンを痺れさせて食べるそうです。でも何も食べてなくても何年も生きることができてそこはクラゲと一緒ですよね。ちゃんとお世話すれば70年以上も生きれた個体も過去にはいたみたいです。世界中どこの海にも生息していてゆっくり体を動かす事もできてイソギンチャクの中に住んでいる魚もいるみたいです。クマノミっていう魚で外敵から身を守ってもらったり食べ残しを分けてもらうこともあるんですって。イソギンチャクは熱帯の水域にいてサンゴ礁とか岩にくっついていて・・・」

 

「スゲェな胡蝶・・・まるでイソギンチャク博士だ・・・」

 

 

 

ふふっ。下呂さんも楽しんでくれているみたいです。良かった。昨日まで図書館で借りた本で必死に徹夜で勉強しておいて。私、薬学と同じくらい海洋生物にも詳しくなったかもしれませんね。もしかしたらこういう分野にも比較的興味がある方なのかもしれません。

 

私は満足げに説明を終えた後、次のブースへと下呂さんの手を引いて上機嫌に歩いて行く。

 

 

「ヒトデは棘皮動物でウニの仲間らしいです。世界中に2000種類もいて星型じゃないヒトデもいて腕が30本もある種類もいるみたいです。敵に襲われた時に自分で腕をもぎり取ってその腕を食べてる隙に逃げたりもするそうです。腕は再生能力があるので後でいくらでも生えてくるみたいですね。ヒトデは海の殆どの生き物を食べることができて胃袋を吐き出して口の代わりにして食べるんですって。因みに熊本県の一部地域ではヒトデが食べられていてウニの仲間だけあってウニみたいに皮膚を剥いて食べることもあるそうなんです。ヒトデは海外でもだいたい星系の名前をつけられていて例えばフランスでは・・・」

 

 

「スト~ップ!!!!! 胡蝶さん一旦スト~ップ!!!!! 下呂君の魂抜け始めてるからちょっと待って~!!!」

 

 

気が付けば私と下呂さんのすぐ後ろに城崎さんが立っていて、必死に私を制止していた。

 

 

「わっ! 城崎さん!? 一体いつから居たんですか!?」

 

「き・・・城崎・・・お前まで来てたのか・・・けど助かったぜ・・・胡蝶が余りにも楽しそうに解説するもんだからよ・・・とてもじゃないが俺じゃあ止められなかった・・・ありがとな・・・」

 

 

もしかして私たちのことを心配して今日は陰ながら見守りに来てくれたのかもしれない。ふと私は下呂さんの顔色を伺った。

 

今まで解説するのに夢中で気が付かなかったが、彼はとても疲れ切ったような顔をしていた。

 

私は急いで頭を下げるのだった。

 

 

「す、すみません!! 私、現代での下呂さんとの初逢瀬(デート)で少々舞い上がり過ぎてたみたいです!! 本当にごめんなさい!!!」

 

「大丈夫だ胡蝶・・・俺のことは気にしないでくれ・・・」

 

 

下呂さんは魂が抜けたかのようにか細くそう呟いた。うう、穴があったら入りたい・・・

 

 

「アハハ・・・意外と胡蝶さんも変わってるところあるんだね・・・今まで気が付かなかったけど正直意外だったよ。」

 

「すみません自覚がなくて・・・確かに鬼殺隊に居た頃は蝶屋敷の子達から少し変わってると言われていたのでもしかしたらそうなのかも・・・生前の姉さんにもそんな風に言われたことあった気もしますし・・・」

 

 

私は意気消沈してしまう。折角下呂さんが誘ってくれた逢瀬(デート)なのに・・・

 

彼にがっかりさせてしまったかもしれない。思わず私は涙目になる。

 

 

「気にすんなよ胡蝶。」

 

 

ふと顔を上げると下呂さんが私の隣で頬を掻いていた。

 

 

「寧ろ俺は嬉しいぜ。お前の新たな一面が見れてな。まあ情報量が多くて頭パンクしそうになったのは事実だが、なんだかそういう研究者チックな部分も含めて胡蝶の魅力なんじゃねぇか? 少なくとも俺は良いなって思ってる。だからその・・・元気出せって。」

 

 

私の心臓が一瞬痛い程高鳴った。今しがた恥ずかしいところを見せたばかりなのに、そんな部分でさえ彼は肯定してくれるなんて。

 

さっきまで落ち込んでた気持ちが一気に舞い上がり、思わず頭がクラクラしてしまう。不意に下呂さんの胸元に寄りかかり私は顔をうずめた。

 

 

「なっ・・・胡蝶!?」

 

「うう・・・///」

 

 

私は声にならない呻き声を漏らす事しかできなかった。幻滅されたと思ってたのに。けど下呂さんはそんな私ですら受容してくれるんだ。

 

そんな素敵な大人の一面を見せられて、私はつい感情の制御ができず、彼に縋り付いたまま顔を上げられなくなってしまった。

 

 

「あらあら~? じゃあ私はお邪魔虫みたいなんで一旦帰るね~。もしデート中何か困ったことあったら迷わず連絡してよ。それじゃあバイバイ~。」

 

「待て城崎!! 胡蝶がこんなんなってるのに俺に何とかできる訳ないだろ!? 頼む!! 力を貸してくれ!!」

 

「もう下呂君ってば、さっきまでマジイケメンムーブかましてたのになんで急にヘタレになるのかね~?」

 

「うっせぇ! 俺は兎も角! 胡蝶にこのまま初デート悪い印象で終わってもらう訳にはいかねぇだろうが!?」

 

「もう仕方がないな~。じゃあ今回だけ特別にレクチャーしてあげるね? 折角だから最高に楽しかったって思えるデートにしよっか。二人とも。」

 

 

どうやら城崎さんも今日は一緒に傍についててくれるみたいだ。これなら今日私がまた何かやらかしても大丈夫な気がする。やっぱり城崎さんが居ると安心感が違う。

 

 

「んじゃ次はペンギン見に行こうぜ? 俺見るの初めてなんだ。」

 

「へ~意外。下呂君ってあまり水族館とか来た事無い感じ?」

 

「あまりって言うか、そもそも俺、毒の研鑽と鍛錬漬けでまともに遊んだことねぇからな。成人後も仕事ばかりだし、こういう所に一人で来るのもあんまりねぇからな。」

 

「・・・そうなんですね・・・」

 

 

私は落ち着いてきたので下呂さんの胸元から離れて顔を上げる。下呂さんは自身の生い立ちを話して少し気まずそうにしてる。

 

 

「だからその・・・今後はこうやって胡蝶と色んなところに出掛けられたらって思ってる・・・構わねぇか?」

 

 

下呂さんと視線が合い再び私の胸はどうしようもなく高鳴る。ああ、これが甘露寺さんの言うキュンキュンするという状態なのか。とても心地良くてずっと浸っていたい。つい癖になってしまいそう。

 

 

「はいっ! 下呂さんさえ良ければどこまでもお供させてください! 私も下呂さんと色んな場所に行ってみたいですっ!」

 

「おお・・・そうか。なら良かったぜ。」

 

「ムフフ~。やっぱり良いね二人とも~。二人の間を取り持ってあげた甲斐があるってもんだね~。」

 

 

下呂さんは照れくさそうに笑い、城崎さんは傍らで上機嫌に笑顔を見せていた。私も頬を赤く染めて笑っているのだろう。

 

今の私をもし姉さんが見ていたのなら喜んでくれていたのだろうか。不意にそんな考えが脳裏を過った。

 

そうして残りの時間、私たちは思う存分逢瀬(デート)を満喫するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄かったですね下呂さん! イルカのショーなんて私初めて見ましたよ! とても楽しかったですっ!」

 

「そうか。胡蝶が喜んでくれたなら良かったぜ。こんだけ楽しんでくれるならまた時間あるときにもう一度来ても・・・ん?」

 

 

私たちは水族館のベンチに座り込んで楽しく談笑していた。するとその途中で突如私たちの目の前に見知らぬ女性が現れる。

 

 

「お久しぶりです。下呂様。つい先ほど仕事終わりに見かけまして・・・」

 

「え・・・潮・・・?」

 

 

現れたのは、水色の髪を短く綺麗に切り揃えた切れ目の女性だった。クリーム色のゆったりしたお洋服を着ているものの、引き締まった筋肉と安定した重心から一目で只者でないことが見て取れる。

 

ふと私の脳裏にある考えが過った。すぐさまその真偽を確かめようと私は下呂さんに詰め寄った。

 

 

「下呂さん、こちらの女性はどちら様ですか? もしかして以前お話していたあの・・・」

 

「い・・・いや・・・胡蝶・・・それについては・・・その・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時私は思い出した。下呂さんにはかつて婚活を通じて出会った複数の恋人候補が居たことを。それを認識した途端、私の中には形容し難い()も言われぬ感情が止めどもなく膨らんでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 




ヤキモチ妬く女の子って可愛いですよね(え)。

次回!! 下呂ヒカル死す!! デュエルスタンバイ!!!
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