鬼滅の毒使い   作:科学大好き人間

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しのぶさん視点です。ややタイトルが不穏ですが次話以降で登場させたいキャラがいるのでこのような展開になってます。ひとまず『銃剣使い』との戦いは今話で決着となります。


12話 片羽の蝶、大切なモノを失う

私たちはお館様の命により、『真・銃使い』残党の殲滅任務に赴いていた。

 

『真・銃使い』の根城である廃病院に潜入した私たちは、瞬く間に大半の殲滅を済ませた。しかし主犯格の『銃剣使い』の実力は想定だにしない程のもので、あっけなく私は戦闘不能にされてしまった。

 

結果、冨岡さんを前衛に据えたまま、援護射撃を護衛対象の別府さんに委ねる羽目になってしまった。

 

お館様の期待を裏切る形になってしまい、私は床に突っ伏し奥歯を噛み締める他なかったが、一刻でも早く復帰できるよう全集中の呼吸で内臓に受けた痛手の回復に努めた。

 

口内に鉄の味が広がる中、私は目の前で繰り広げられる壮絶な応酬を静かに観察していた。

 

一瞬の隙を縫う様に、『銃剣使い』の男は冨岡さんの剣撃を捌いて距離を取り、そのまま小銃を構えて別府さんを射殺しようとする。だが、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー水の呼吸 漆の型 雫波紋突きー

 

 

 

 

 

 

 

「ああ・・・もう・・・だっる。まとわりついてくんなよ。うざったい。」

 

「俺の仕事は依頼主を守ることだ。射殺はさせん。」

 

「はあ~・・・もう先にお前から殺すか。」

 

 

すると冨岡さんの横薙ぎを伏せるように躱し、『銃剣使い』はそのまま銃剣の切っ先を心臓部目掛けて突き穿とうとする。しかしその必殺の一刺は途中で中断される。

 

 

「ちっ・・・跳弾とかうざってぇ・・・」

 

「HAHAHA!! このレオ様の目の黒いうちは誰一人殺させやしないぜ!! BANG!!」

 

「いいぞ別府。そのまま遠慮なく続けろ。」

 

 

『銃剣使い』が小銃を構えて射撃に移れば冨岡さんが距離を詰め斬りかかり、冨岡さんが決死の一撃を貰いそうになればすかさず別府さんが援護射撃でそれを牽制する。

 

その絶妙な連携に奴も攻めあぐねていることが見て取れる。緻密な実力の拮抗が今この場で起きていた。

 

 

「はあ・・・あんまり『視続ける』と脳に負荷かかり過ぎてしんどいし・・・多少手の内晒すくらい仕方ないか。」

 

 

すると『銃剣使い』は小銃の引き金に指を掛けたまま、小銃を旋回させ周囲を切り払うような予備動作を行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー隊式銃剣術 二式 斬幕砲火ー

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ!!??」

 

「WHAT’S!?」

 

「えっ!!??」

 

 

一瞬で周囲三百六十度に斬撃と弾幕の嵐が放たれる。冨岡さんに無数の斬撃を浴びせつつ、その遥か後方に位置する私と別府さんにまで銃弾が飛んできた。

 

私は床に伏していたためギリギリ当たらなかったが、援護射撃中の別府さんに弾丸が掠り、ベストの左肩部分がはじけ飛ぶ。

 

 

「野郎っ・・・!! 射撃と斬撃を同時に繰り出しやがったっ!! とんでもねぇ技量だぜこいつはっ・・・!!」

 

「別府さんっ!! 援護射撃を中断してはいけません!! 冨岡さんが殺されてしまいます!!」

 

「YES!! わかってるぜそんなことはっ!!」

 

 

再び別府さんが銃口を構える先では、先ほど以上に苛烈な打ち合いが繰り広げられていた。

 

 

「ぐっ・・・!! なんて奴・・・!!」

 

「いや、それはこっちの台詞だっつーの。なんでお前ほぼ無傷な上に後ろの二人に向けて放った弾丸まで剣で弾いてんだよ。お前が余計なことしなきゃ今ので別府の心臓は確実に打ち抜いていたってのに。」

 

 

どうやら私たちの命は、とっさに冨岡さんが『凪』を放ってくれたおかげで救われていたようだった。もしそうでなかったらと、私はその仮定に身震いする。

 

 

「まあいいや。今のは本来一対多を想定した型だからな。一人一人を確実に狙い撃ちするための業でもねーし。けどおかげで対処に追われてさっきよりも戦いにくくなっただろ? 護る側は大変だよな。」

 

「黙れっ!!」

 

 

冨岡さんは負けじと剣を振るうものの、『銃剣使い』はそれを余裕もって躱し、再び次弾を装填して銃剣を旋回させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー隊式銃剣術 一式 炸裂弾ー

 

 

 

 

 

 

 

「ぐあっ!!??」

 

「冨岡さんっ!!??」

 

 

今度は斬撃射撃すべてが冨岡さん一人に集中し殺到する。その結果、冨岡さんの身体のあちこちから血飛沫が舞い、彼はそのまま後退して膝を着いた。

 

 

「がっ・・・はっ・・・!!」

 

「まったく・・・本当にどうなってるんだお前は。この近距離射撃すら剣で切り払って急所全て外すなんてな。ある意味化け物かよお前はよ。」

 

 

冨岡さんは立ち上がれないでいた。もう自分に歯向かう余力もないだろうと判断した『銃剣使い』は、そのまま小銃を別府さんに向けて構える。だが、

 

 

「・・・なんのつもりだ?」

 

 

私は呼吸で痛みを緩和し、その場を立ち上がり別府さんの正面に両手を広げて立ちふさがった。

 

 

「WHY!? 胡蝶っ!? 一体何してるんだ!? そんなことしたらアンタ撃たれて・・・」

 

「私は『護り手』です!! 護衛対象を身を挺して守り通すのは当然のことです!! せめて別府さんだけでも逃げてください!!」

 

「WHAT’S!? んなことできるかよ!? レディに庇ってもらって一人しっぽ巻いて逃げるなんざ、このレオ様にできる訳ねぇだろうがっ!!」

 

「それでも逃げて下さい!! もう私たちにはこうすることしかできないんですっ!! だから・・・!!」

 

 

次弾を装填する音が闇夜に静かに響いた。私は死を覚悟し目を瞑る。

 

ごめんなさい下呂さん。私、貴方を追いかけてこの時代にまでついてきたのに、最後まで貴方の傍に居られないみたいです。本当はもっと貴方と二人の時間を積み重ねて行きたかったのに・・・それなのに・・・

 

私はそう胸中で未練の言葉を溢す。そのまま力なく俯き立ちふさがるものの、一向に発砲音は聞こえてこなかった。

 

私は気になり目を開ける。

 

 

「えー・・・マジすか。この女だけは絶対に殺すなって? あの~・・・本気で言ってます? しかしですね、そうするとアンタの計画が・・・ええ・・・ええ・・・はい・・・そうですか・・・」

 

 

私の視線の先では、『銃剣使い』が耳に手を当てて独り言を呟いていた。いや違う。あれは恐らく誰かと通話しているのだ。耳に何かしらの機器のような物をつけているのが見て取れる。

 

あれってもしかして無線という通信機? 以前下呂さんが携帯の説明する時に言ってた気がする。となると今奴は背後にいる黒幕と何かしらのやり取りをしているということ。しかし一体何を・・・

 

やがて『銃剣使い』は大きな溜息をつき、やれやれとかぶりを振ったのちに私に目線を移す。

 

 

「悪い。『あの人』にとっての目の上のタンコブから『胡蝶しのぶだけは絶対に手を出すな』って言われてるらしくてな。不本意だが今日はここまでだ。『真・銃使い』の連中は置いてってやるから俺はこのままトンズラさせてもらう。」

 

「・・・は?」

 

 

すると『銃剣使い』は小銃を背に担ぎなおしてその場をあとにしようとする。だがその瞬間奴の真横を弾丸が通り過ぎると同時に発砲音が鳴り響く。

 

 

「ふざけんな! ミユキ姐たちだけじゃなく、相棒のフィアンセやその仕事仲間までこんな目に遭わせておきながらタダで済むと思ってんのか!?」

 

「ああ?」

 

「ちょ・・・別府さん!!」

 

 

振り返ると同時に『銃剣使い』から凄まじい殺気が放たれる。私も別府さんもその瞬間怖気が走る。奴は背に担いだ小銃を再び肩に担ぎ直した。

 

 

「おいひよっ子。言っておくが俺が殺すなって言われてるのはそこの女だけだ。お前とそこで死にかけてる半々羽織は殺してやってもいいんだぜ?」

 

「っ!!」

 

「別府さん!! どうか引き下がって下さい!! ここで奴の反感を買えば貴方は生きて帰れないかもしれないんですよ!? 城崎さんと二度と会えなくなってもいいんですか!?」

 

「仲間やダチを好き放題ひどい目に遭わせられて大人しくしてるような奴が、ハニーに顔向けできる訳ねぇだろ!! そもそもこの件にハニーは関係ねぇ! 俺の譲れない信念の下、奴を許す訳にはいかねぇんだ!!」

 

「へぇ・・・偉く威勢がいいな。そこの女が言うように黙って引き下がっていれば良かったものを・・・」

 

 

すると『銃剣使い』は小銃を再び構えようとする。その瞬間私も別府さんも身構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー水の呼吸 壱ノ型 水面斬りー

 

 

 

 

 

 

 

突如冨岡さんが奴の背後から斬りかかろうとする。しかしそれを寸でのところで躱した『銃剣使い』は冨岡さんに回し蹴りを浴びせ吹き飛ばす。

 

 

「面倒だな。『視ない』とお前は厄介そうだし、先にお前から殺すか。」

 

 

 

 

 

 

 

ー蟲の呼吸 蜂牙ノ舞 真靡きー

 

 

 

 

 

 

奴が転がる冨岡さんの方へ小銃を向けるので、私は反射的に突進し刺突を放つ。しかし奴はそれにすら反応し私の日輪刀を模した得物を横薙ぎ一閃して弾き飛ばす。

 

 

「っ!! そんなっ・・・!?」

 

 

得物を失った一瞬の動揺で硬直する私の右手を、『銃剣使い』はすぐさま握り締め、奴はそのまま溜息をつく。

 

 

「はあ・・・殺さないって言ってんだろ。だから大人しくしていろよ。」

 

「くっ・・・!!」

 

 

私の腕力ではこいつの腕を振りほどくことはできそうにない。であれば寧ろこの至近距離の状況を利用する他はない。

 

私は蝶の髪飾りに仕込んだ毒針を左手で引き抜き、奴に一刺しして無力化しようとする。この近距離に加え、私の速度なら間違いなく反撃を喰らうよりも先に入る。そう思っていたのだが、

 

 

「おっと。危ない危ない。そういやアンタ、『毒使い』下呂家に嫁ぐ予定なんだってな? つまりこれは毒針か。」

 

「っ!!??」

 

 

信じられない。私の方が間違いなく速かった。なのに奴はまるで私の動きを先読みしてたんじゃないかって思うくらいに的確に動いて私の左手までも掴んでいた。そのまま握力を籠められ、私は毒針を取り落とす。

 

 

「まさか髪飾りに毒針仕込んでるなんてな。こんなおっかないモノはさっさと没収するに限る。」

 

「あっ!! 待って!!!! それは姉さんの・・・!! それだけはやめて!! ダメっ!!!!」

 

 

すると奴は私の髪を一瞬で解いて髪飾りを奪い取り、それを遥か遠くに放り投げてしまった。

 

投げた先は廃病院が面する断崖絶壁の更にその先。その下には途方もない程広い樹林が広がっており、姉さんの形見でもあるその髪飾りは夜の闇の中へと消えて行ってしまった。

 

 

「うっ!!」

 

「お前の毒針を刺した。追いかけられると面倒だしな。暫く解毒でもしてろ。」

 

 

私は筋弛緩剤が塗ってあった自身の毒針を打ち込まれ、身体の自由も効かなくなり、その場で倒れ込んでしまう。

 

 

「胡蝶っ!!」

 

「いや、だから殺さねえって言ってんだろ。お前も命が惜しいなら追ってくるな。まあ俺はどっちでもいいけどな。それとレオだっけか?」

 

「っ!!」

 

 

『銃剣使い』の最後の一言に別府さんは肩をびくつかせる。銃口は下げないままだったが、僅かに腕が震えていた。

 

 

「もし次一発でも撃てば即座に殺し返す。彼我の力量もわからねぇようなひよっ子だって言うんなら・・・俺は止めねぇけどな。」

 

 

そう言い残し『銃剣使い』は廃病院をあとにした。

 

やがて全身を引きずる冨岡さんと我に返った別府さんが突っ伏す私の下へと駆け寄ってくる。

 

 

「胡蝶!! 無事か!?」

 

「HEY!! 急いで解毒した方がいいんじゃねぇか!? 大丈夫なのかよ!?」

 

「・・・毒は平気です。一時間もしないうちに勝手に分解する代物なので。でも・・・」

 

 

私はそこまで答えたのち、堪え切れなくなり嗚咽を漏らす。

 

 

「胡蝶、気にするな。任務失敗は誰もが経験することだ。生き残れたことを誇りに思え。お館様もきっと許してくれるはず・・・」

 

「ううっ・・・ごめんなさい・・・違うんです・・・勿論それも大変心苦しいのですが・・・」

 

 

私の返答に冨岡さんは困惑する。私の言わんとすることがわからないので当然と言える。なぜなら私は今酷く個人的な事情で取り乱していたからだ。

 

 

「あの髪飾りは・・・生前の姉さんが私に遺してくれたこの羽織と同じく形見の品だったんです・・・それを・・・あんな無造作に捨てられて・・・うっ・・・うっ・・・!!」

 

「こ、胡蝶・・・大丈夫だ。『真・銃使い』の残党を全員拘束したら、すぐに俺達で探しに行く。だからそんなに悲観的になるな。きっと見つかる。」

 

「そうだぜ!! このレオ様に任せとけ!! 例え火の中水の中、草の根分けてでも探し出してやる!! だからノープロブレムだっ!!」

 

「ううっ・・・本当に・・・探し出せるんでしょうか・・・あんな樹林の中に捨てられた唯一つの髪飾りを・・・もう私・・・任務失敗以上に・・・そっちの方が心配で・・・もう何も考えらません・・・うっ・・・うっ・・・」

 

 

そうして長い夜が明けた。冨岡さんが携帯で連絡を取ってくれたことで、産屋敷家の人達が大勢増援に来て、『真・銃使い』の残党の確保をしてくれた。

 

その後私が姉さんの形見の髪飾りを探しに行くと飛び出そうとしたのだが、腹部の損傷を検査してからだと他の人達に止められてしまい、結局捜索は後日となってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が現代に持ってきたモノの中で、あの髪飾りはこの蝶の羽織と同じくらい大切なモノだった。姉さんが亡くなってから常に肌身離さず身に着けていたのに・・・

 

そんな命よりも大切な形見の髪飾りが手元にない入院期間中は、私は片時たりとも気が気じゃなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 




ここに来てしのぶさんのトレードマーク、蝶の髪飾り紛失です。このような展開にしたのには理由があります。誓って弱ってるしのぶさんが見たいからとかそういう性癖系の理由ではございません(ホンマか?)。

さて、次回からは二話程しのぶさんの髪飾り捜索の話に移ります。勿論それだけではつまんないので、マリトキ人気投票で二位と三位を勝ち取ったキャラが登場する予定です。特に二位のキャラはマリトキ作品のギャグ要素を半分占めると言っても過言ではないドが付く程の癖強キャラなので楽しみにしてて下さい。因みにこいつを登場させるためにこのような話の展開に持っていきました。繰り返しますが弱ってるしのぶさんが見たいからとかそういう理由では断じてないです(ホンマか?)。

次回の更新は6/13 9:00を予定しています。もし宜しければ感想、高評価、お気に入り登録よろしくお願いします。
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