鬼滅の毒使い   作:科学大好き人間

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しのぶさん視点です。ぎゆしのって言えるかわかりませんが、今後義壱としのぶさんの絡みは増える予定です。


13話 片羽の蝶、姉の形見に執着する

「冨岡さん。そこをどいて下さい。邪魔するなら力づくで押し通ります。」

 

「無駄だ胡蝶。お前の膂力じゃ俺には通じない。やめておけ。」

 

 

現在私は、産屋敷家直営のとある総合病院治療棟の一室にいた。

 

私は『真・銃使い』残党の殲滅任務を終え、『銃剣使い』より受けた怪我の検査を理由にこの施設に問答無用で連れ去られた。

 

検査結果としては、腹部強打による内臓損傷及び内出血。医者からは内臓破裂の一歩手前なので全治数ヶ月と言われたがそんなことはどうでもいい。

 

常中が使えればこの程度の痛手、ひと月もせず完治するはずだし、数日もすれば出歩けるぐらいまで回復するはず。

 

痛みも損傷も呼吸で抑えればどうってことない。だから入院の必要などないのだと私は医者に突っぱねたくらいだ。

 

結果、知らない間に鎮静剤を打たれ、気付けば病棟の一室でベットの上で横になっていた。

 

私はすぐさま飛び起きて部屋を出ようとしたのだが、部屋の片隅にはなぜか冨岡さんが待機しており、私の様子にすぐさま反応しこうして出口前を固められてしまったのである。

 

 

「胡蝶。怪我人は安静にしていろ。主治医からは最低一ヶ月は入院するよう言われているはずだ。」

 

「冨岡さん。自分の身体のことは自分が一番わかっています。この程度の怪我どうってことありません。なので今すぐそこをどいて下さい。」

 

「駄目だ。お館様には既に報告してある。加えてお前が姉の形見の捜索を目的に飛び出さないよう見張りを仰せつかっている。だから大人しく安静にしていろ。」

 

「昨夜小銃の弾丸を何発も受けていた人に言われたくありませんね。冨岡さんの方がよっぽど重症じゃないですか。」

 

「俺は重症じゃない。」

 

「は? 意味がわからないです。腹部を小突かれた私なんかより銃で撃たれた冨岡さんの方がよっぽど重症に決まってるじゃないですか。」 

 

「俺は胡蝶とは違う。」

 

「説明になっていません。そんな物言いでよく社会人務まりますね? 産屋敷の同僚の中でも何だか浮いてるみたいだし・・・そんなだから皆に嫌われるんですよ。」

 

「俺は嫌われていない。」

 

「やはりこっちの冨岡さんも自覚がないんですね。まあそれはいいでしょう。兎も角なんで冨岡さんは良くて私は駄目なんですか? ちゃんと説明して下さい。いい加減怒りますよ?」

 

「俺の場合『凪』で急所は全て外してある。それに弾丸も全て貫通してて既に治療済みだ。数日もすれば退院していいと主治医からも許可出ている。だから俺は胡蝶とは違う。」

 

「納得できません。私だって包帯も巻かれてますし治療済みのはずです。いいからそこをどいて下さい。」

 

「駄目だ。お館様からお前を見張るよう仰せつかっている。」

 

「ああっ、もうっ!!」

 

 

余りの堂々巡りに私は我慢の限界だった。隙を突いて冨岡さんの脇をすり抜けようと突進するが、私の身体は片手で抑えられてしまう。その際の衝撃で腹部に激痛が走り、私は思わず顔を歪めてその場にへたり込む。

 

 

「だから言っているだろう。怪我人は大人しく安静にしていろと。」

 

「うぅ・・・!」

 

 

私は立ち上がろうとするが、『銃剣使い』に強打された腹部の痛みで屈むばかりだった。冨岡さんはやれやれとかぶりを振り、私の手を握ってそのまま病床まで引き連れて行こうとする。

 

 

「自身の怪我の治療よりも姉の形見の方がそんなに大事か? 少なくともお前の姉が生きていたら、妹がそんなに苦しむ姿を見たくなかったはずだ。捜索の方は俺がお館様の伝手で専門業者にでも依頼する。だから大人しく寝ていろ。」

 

「それじゃあ間に合わないんです・・・!!」

 

 

私は冨岡さんに喰い掛かった。胸元に縋り付き脂汗を流しながら必死に訴える。

 

 

「冨岡さんは天気予報見なかったんですか!? 数日もしないうちにあの辺り一帯豪雨が降るんですよ!? そんなことになったら水に流されるか土砂に埋もれて見つけられなくなるに決まっていますっ!! せめて明日中には探しに行かないとっ!!」

 

「お、落ち着け。ならすぐにでも業者を手配するからそんなに焦らなくても・・・」

 

「そんなにすぐ腕利きの捜索業者なんて雇えるものなんですか!? とても信じられませんっ!! 現代だと鎹烏も貴重で捜索に駆り出す訳にもいかないって言ってましたし・・・だからせめて私が探しに行かないと・・・!!」

 

 

私が必死の嘆願で冨岡さんに縋り付いていると、唐突に部屋の外からノックの音がした。

 

 

「失礼する。」

 

 

そしてスライド式ドアを開けて入室してきたのは、下呂さんだった。

 

 

「げ、下呂さんっ!?」

 

「む。胡蝶どうした? そんな血相変えて。それにアンタは・・・」

 

 

私が冨岡さんに引っ付くようにつかみかかっている様子を見て、下呂さんは訝しむような視線を送って来る。冨岡さんもそれに気づき、慌てて私から離れ、襟を正す。

 

 

「紹介が遅れた。俺は冨岡義壱。昨夜胡蝶と合同任務に赴いた産屋敷家直属の『護り手』の一人だ。」

 

「そうだったか。胡蝶が世話になった。礼を言う。今朝入院したと連絡を受けて見舞いに来たんだ。その様子だと二人とも任務は大変だったみたいだな。怪我は平気か?」

 

「俺は問題ない。だが胡蝶は・・・」

 

「下呂さんっ!! お願いですっ!! どうか力を貸してくださいっ!!」

 

「うおっ!? ど、どうした胡蝶っ!?」

 

 

私はすぐさま下呂さんに駆け寄りそのまま掴みかかる。下呂さんは驚いた様子だった。

 

 

「私の・・・私の髪飾りが・・・死んだ姉さんから貰った髪飾りが紛失してしまって・・・どうしても今すぐ探しに行かなきゃいけないんですっ!! だから・・・うっ!!」

 

「胡蝶っ!?」

 

 

私は腹部の痛みに思わずそのまま床に倒れそうになったが、咄嗟に下呂さんが私を支えてくれた。

 

 

「ううっ・・・」

 

「おい胡蝶。お前怪我してんじゃねぇのか? ひとまず安静にしてなきゃダメだろ? 一旦ベッドまで運ぶぞ?」

 

 

そうして私は下呂さんに横抱きにされたまま、病床まで運ばれ、そのまま横になった。

 

 

「とりあえず切羽詰まってるってことはわかった。だからまずは事情を説明してくれねぇか?」

 

 

下呂さんはそう言い私の手を握ってくれる。少しでも私を安心させようとしてくれているのだろうか。私は横になったまま昨夜あったことを話す。

 

下呂さんは私の話を一通り聞き入れてくれた後、静かにうなずいた。すると彼は立ち上がり、ポケットから携帯を取り出した。

 

 

「俺の伝手でうってつけの奴がいる。まずはそいつの都合がつくか確認してくる。」

 

「えっ・・・そんな方がいるのですか?」

 

 

下呂さんは穏やかな笑みを見せて頷いた。それを見て冨岡さんが疑問の声を上げる。

 

 

「下呂と言ったか。そんなお誂え向きの奴が本当に存在するのか? 胡蝶が言うにはそう猶予がないみたいだぞ? あんな広域での紛失物を短時間で探し出せる人材がそう居るとは思えないが・・・」

 

「兎に角今は連絡だな。交渉して何とか依頼引き受けてくれるよう頼んでみるぜ。」

 

 

そして下呂さんは退出していった。私と冨岡さんは下呂さんがどんな人を引き連れてくるのか想像できず顔を見合わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つう訳で嵐山。急な依頼になっちまうが頼めるか?」

 

「おうよ!! なんつーたって他ならぬ下呂の頼みだからな!! 大船に乗ったつもりで任せとけ!!!」

 

 

夕刻に差し掛かる手前、突如下呂さんは豪快な口調で喋る快活な女性を連れて来た。

 

活気に満ちる豪胆な方かと思えば、一方で桃色の鮮やかな長髪に女性としての恵まれた体つき、加えて胸元や肩口が露出するようにシャツを羽織っており、太ももまでスリットの開いたロングスカートを履いた装いの人だった。

 

それらの装いはまさに大人の色香を感じさせるものだった。男性らしい言動と、女性らしい容姿。それら相反する二つの特徴を併せ持つ独特な雰囲気の方だった。

 

そしてなぜ下呂さんがこのような魅力的な女性と縁を持っているのかと一瞬疑問に思ったが、私は下呂さんが紹介の口上を述べる前に粗方察しがついていた。

 

 

「紹介するぜ胡蝶。こいつは嵐山。ハムスター使いの使い手で、今は探偵事務所を運営している調査、探索、索敵のエキスパートだ。それで・・・こっからが言いにくいんだが・・・」

 

「要するに下呂さんの『元婚活相手』ってことですよね?」

 

「む・・・むぅ・・・実はそうなんだ・・・やっぱり胡蝶は気にするか・・・」

 

 

私は少々複雑な心境だった。

 

今回下呂さんが頼ったのは元恋人候補だった女性の一人。今はそう言った関係ではないのだろうけど、かつては私のあずかり知らぬところで様々な交流を積み重ねていた女性であることには違いない。

 

城崎さんからは以前、『婚活では同時に複数の異性と関係を持つのは当たり前だよ』と説明されたので、今となってはある程度理解を示しているつもりだった。

 

でもやはり明治大正を生きて来た私としては、今だそう言った前提、こういった事情には慣れずにいた。

 

とは言えわざわざ多忙な中、それも私の依頼を引き受けるために駆け付けてくれた人なのだから、私の個人的な感情で彼女に失礼な態度を取る訳にはいかないとも思った。結果私は冷静な振りに努めた。

 

 

「胡蝶・・・気になるかもしれねぇが・・・それでも嵐山以上の探索のプロはいねぇんだ。お前の姉ちゃんの形見を是が非でも見つけようとするのなら、嵐山の協力は必要不可欠なんだ。だからここは・・・」

 

「別に・・・下呂さんが過去に何人の女性と関係を持っていたとしても私は気にしません。私だってもう立派な大人なんです。そんなことすら割り切れない程、私幼くありませんから。」

 

「そ、そうか・・・いや・・・本当にそうなのか・・・?」

 

 

私は何でもないかのように冷静に答えたつもりだった。だが、下呂さんからみたら今の私は不貞腐れた幼子のように見えたのかもしれない。感情がやや表に出ていただろうか。

 

でも確かに一切気にしてないかと言うと嘘になる。正直同性の私から見ても嵐山さんは魅力的な女性だった。

 

背も高く、体つきも女性らしく、その服装からも大人の色香が漂う。

 

逆にこんな女性に言い寄られて下呂さんは彼女と恋仲になろうとは考えなかったのだろうか。そう黙り込んだまま、私が胸の内で小さくない嫉妬心と劣等感を抱いていると、

 

 

「下呂が婚約したって初めて聞いた時は流石に滅茶苦茶驚いたな! でも今日こうして下呂の選んだ子に直に会えてよかったって思ってる!

 なんていうか、その、すっげぇ一途そうな良い子な感じがすっからな! お互いの絆の深さを感じるって言えばいいのかな? やっぱり獣使いの傍系だからさ、そう言った信頼関係とかには察しが良いんだアタシはよ!

 だから下呂。結婚してからもその・・・この子のことちゃんと大切にするんだぞ!!」

 

「む? お、おう。も、勿論だぜ・・・!」

 

 

下呂さんが私の反応を伺っていると、不意に嵐山さんからそのような言葉が投げかけられる。私はその言葉を聞いて顔を上げる。

 

そうして嵐山さんは豪快に笑った後、下呂さんの背中をバシッと叩いて、私には片手を差し出し握手を求めて来た。私はその様子に目を見開く。

 

 

「改めて、ハムスター使い、嵐山キミ恵だ。アンタの大切なモンは絶対アタシが探し出してやる! だから安心して待っててくれ!」

 

「っ! ・・・はいっ! よろしくお願いします・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はそんな真っすぐな彼女の在り方に感銘を受けた。この人なら大丈夫と、そう信じられる何かを感じた。だから私は姉さんの形見の探索を、下呂さんと嵐山さんに任せることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 




下呂君の元婚活相手の登場二人目は嵐山とさせていただきました。アニメ見ましたが嵐山も魅力的なヒロインですよね。多分原作だと城崎を除けば最も人気のあるヒロインキャラだと思います。人気投票三位ですし。そんな彼女の活躍を次回では描写できればと思ってます。加えて次回は原作大人気の例のド癖キャラを出す予定です。彼のド構文を可能な限り駆使できるよう頑張って書いて行こうと思います。

次回は6/20(ド)9:00更新予定です。もし宜しければ感想、高評価、お気に入り登録よろしくお願いします。
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