鬼滅の毒使い   作:科学大好き人間

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しのぶさん視点です。正直最近ぎゆしのもイイな・・・って思い始めてます。なにせ夫婦漫才みたいで書いてて楽しいし。尚本作は設定的に下呂君としのぶさんのカップリングで確定してます。ぎゆしのファンもいるかと思いますが予めご了承下さい。


15話 片羽の蝶、上司と同僚に凸る

「無事退院できたようで何よりだよ、しのぶ。それで・・・私に聞きたいことがあるとの話だが一体何かな?」

 

 

『銃剣使い』に負わされた腹部の怪我も概ね完治し、私は病院をあとにしてすぐ現代のお館様に連絡を取った。

 

産屋敷昇哉(しょうや)様は多忙にも関わらず、わざわざ日中に時間を取ってくれた。そのご厚意に只々頭が上がらなかった。

 

産屋敷邸に戻るや否や、すぐさま事務員の方に案内され、私はお館様の書斎室に赴いた。

 

私はお館様に余り不必要なお時間を取らせる訳にはいかないと判断し、すぐさま本題を切り出した。

 

 

「早速ですが確認を。お館様は『真・銃使い』の殲滅任務の報告書はお読みになられましたか?」

 

「うん。義壱が簡潔にまとめてくれた。既に目は通してあるよ。まさか『銃剣使い』の黒幕が君の安否に利害関係がある人物だとは思わなかった。」

 

「話が早くて助かります。まさにそのことなんですが・・・」

 

 

私は、『銃剣使い』が私を殺そうとしなかった経緯について改めて報告し、お館様からの見解を求めた。

 

奴は黒幕から『胡蝶しのぶだけは絶対に手を出すな』と命令されていたらしい。

 

その理由はなぜか。なぜ奴らはそんな制約を抱えていたのか。奴らにその制約を守らせている人物は一体誰なのか。私は自身の考えを包み隠さずお館様に報告した。

 

 

「裏家業で権威を持ち、且つ私の安否を異常に気にする者など限られます。一瞬お館様が裏で通じているのではと勘繰ることもありましたが・・・」

 

「・・・それで?」

 

「そんなことは有り得ないと結論付けました。なので黒幕は別の人物です。」

 

「そう決めつけていいのかい? その根拠となる考えを聞かせてもらってもいいかな?」

 

「え・・・だって・・・それは・・・えっと・・・色々と理由はあるのですが・・・」

 

 

その瞬間、お館様が真っすぐな視線を私に向けてくるので私は僅かに言い淀む。しかしすぐさま確固たる意志でお館様に目線を返す。

 

 

「一番の理由は・・・お館様がそのようなことをする御方ではないと・・・私はそう信じ切っているからです。」

 

「しのぶ。できればもう少し感情論を抜きにした話をしてもらってもいいかな?」

 

「はい。そもそもお館様が黒幕なら、なぜ私にだけそのような恩寵を向けるのか理解しかねます。あの場には冨岡さんもいましたし、お館様はただ一人を特別扱いするような器の小さな御方では御座いませんので。」

 

「そうか。なら器の大きなところを見せないとだね。じゃあ早速、産屋敷総出で君の快気祝いでも開催して・・・」

 

「お戯れを。恥ずかしいので絶対に辞めてください。話を戻しますが、そもそも私の身を一層案じるなら、危険な任務先になど最初から派遣するはずがありません。(くだん)の任務もお館様は私を信頼しているからこそ任せてくれたはずです。」

 

「そうだね。私が君のことを・・・京寿郎や義壱、実篤(さねあつ)行暈(ぎょううん)をはじめとする他の子どもたちと同様に・・・頼もしく思っていることは間違いないね。本当に君たちの献身には助けられている。」

 

「身に余る御言葉です。それは兎も角として、私は件の黒幕に一人だけ心当たりがあります。その人物なのですが恐らく・・・」

 

 

色々話が逸れてしまったが、私は漸く自身の見解について伝える。それらの話を終始聞き届けたお館様は、顎を撫で静かにうなずいた。

 

 

「成る程・・・あり得るかもね。しかしそうなると厄介なことになってしまう。」

 

「・・・?」

 

 

私はお館様の発言に目線を上げる。お館様は悩ましそうに眉間を指で押さえていた。

 

 

「如何に産屋敷家と言えども、『あの人』と事を構えるのは余り好ましくない。勿論しのぶ、君にとっては猶更だ。」

 

「ですが・・・このまま黙って手をこまねいているのは得策とは言えないのではないでしょうか? ここは裏で交渉を・・・」

 

「しのぶ。君が思っている以上に裏の世界は複雑なんだよ。色々とね。」

 

 

私はそこで押し黙る。きっとお館様でなければ見通せない見解があるのだろう。私はそう自身を納得させる。

 

 

「まあ私の父・・・輝利哉の遺言もあるからね・・・警戒するに越したことはないだろう。とは言え『あの人』に直談判するような真似は控えるんだよ? 君達の身にどんな危害が加えられるか知れたものじゃない。ヒカルにもそう言っておいてくれ。」

 

「・・・分かりました。下呂さんにも伝えておきます。」

 

 

私は一度了承の意を伝えお辞儀をするが、そこで再び別の話を切り出した。

 

 

「ところでお館様・・・話は変わるのですが・・・この度ご相談には乗って頂けないでしょうか?」

 

「ん? 何かな?」

 

 

私は『銃剣使い』を前に手も足も出なかったことを思い出し、唇を噛む。それから息を整え、口を開いた。

 

 

「私が・・・今以上に力をつける為にはこれから先どうしたらいいのでしょうか?」

 

「しのぶ・・・君は充分に強い・・・現代では不必要なくらいにね。」

 

「でもっ・・・それでも・・・『銃剣使い』の前では私は余りに無力でした・・・冨岡さんが居なければ護衛対象の別府さんはどうなっていたことか・・・」

 

「う~ん・・・」

 

 

お館様は再び考え込む素振りをする。私は手を握りしめ、ただひたすらに回答を待った。すると・・・

 

 

「確か・・・始まりの呼吸の剣士は・・・額に痣を持ち・・・赫赫と発光した日輪刀を振るい・・・万物が透けて見える視界を有していたと文献に記されている・・・」

 

「・・・え?」

 

 

私はお館様の呟きを聞き、目を丸くした。更にその話は続いた。

 

 

「加えて・・・かつての上弦の壱は・・・その始まりの呼吸の剣士の実兄だったとか・・・奴もかつての柱の子達と戦う際に・・・『透き通る世界』が見えていたらしい。」

 

「え・・・『透き通る世界』?」

 

「君は聞いていなかったかな? 実は当時の上弦の壱と霞柱であった時透無一郎は・・・どうやら血縁関係だったらしくてね。彼も当時の戦いで突如『透き通る世界』が見えるようになったらしいんだ。」

 

「えっ!? あの時透君が!?」

 

「そうだよ。そして彼が『透き通る世界』を見れるようになったのは、始まりの呼吸の剣士の兄の血を引く子孫だったからなのか。それとも当時の生死を分ける死闘の経験の中で見出したものなのかは私にもわからない。

 けど彼が私の祖父、輝哉に言い残した口伝によると・・・透き通る世界が見えている間は、生き物の身体が透けて見えるようになるので、体内の動きで相手の行動が事前に分かる上に、加えて時間の流れがゆっくりに感じられるため、上弦の壱の攻撃にも対処することができるほどだった・・・とそう伝わっている。もし君が、その『透き通る世界』を見れるようになるのなら、件の『銃剣使い』とも互角以上に戦えるかもしれない。」

 

 

お館様が話した事実は驚愕に値する内容だった。時透君が上弦の壱の子孫だったことにも相当驚かされたが、それ以上に『透き通る世界』の話は驚きだった。私はたまらず興奮気味になる。

 

 

「そっ、それで! その『透き通る世界』はどうやったら見れるようになるのですか!? お館様っ!!」

 

 

私は期待してお館様の返答を待った。しかし、お館様は少々バツが悪そうに返すだけだった。

 

 

「ごめんよしのぶ。それは私にもわからないんだ。」

 

「ええっ!? そんなっ・・・でっでもっ!! 時透君はその世界が見えたんですよね!? であれば・・・お館様もその体得方法をご存じなのでは・・・!!」

 

「済まない。実は彼も上弦の壱との戦闘以外で『透き通る世界』が見えたことは一度も無いみたいなんだ。そもそも彼は鬼殺隊解散後、もともとの杣人の仕事に戻り刀は一度も握らなかったらしい。

 だからその『透き通る世界』の体得方法までは私の祖父も聞いていなかったようなんだ。だから力になれずごめんね。」

 

「そ・・・そうなのですか・・・」

 

 

私はお館様の前でありながら取り繕うこともなく肩を落とした。その落胆の様子を見たお館様がふとあることを思いついたか不意に口を開いた。

 

 

「あ、そう言えば・・・義壱が一度見たことがあるってつい先日言ってた気が・・・」

 

「えっ・・・えええっ!? と、冨岡さんがっ!?」

 

「うん。と言っても彼もどうやって見えるようになったかまではわからないようだったよ?

 何でも、以前下呂家の傍系である『蟲使い』にオオスズメバチの大群で襲われた時に、ひたすら死ぬ思いで凪ってたら一瞬見えた覚えがあるって・・・」

 

「なっ・・・だったら冨岡さんに聞きに行けばもしかしたら・・・!!」

 

「いや・・・それは無理じゃないかな? 一度しか見えたことないって彼も言ってたし・・・」

 

「いえっ! それだけでも聞ければ充分です! 私この後冨岡さんに聞きに行ってきます! 彼は今どこに居ますか!?」

 

「う~ん・・・昼間は中高一貫校で教師をしてるだろうからそこに行けば会えると思うだろうけど・・・」

 

「わかりました! 教えて下さりありがとうございます! 私、今すぐ行ってきます!」

 

「こらこら、待ちなさい。外部の人間が校舎内に入るには許可証が要るんだよ? 私の伝手で発効してあげるからまずはその手続きを・・・」

 

 

そうして私は勢いよくお辞儀して即書斎室を飛び出そうとして、お館様にすぐさま止められるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「胡蝶。俺に何の用だ? 俺は今教員の仕事で忙しんだ。聞きたいことがあるなら退勤した後にしてくれ。」

 

「大丈夫です冨岡さん。少しお話聞くだけですので・・・」

 

 

私は居ても立っても居られず、すぐに冨岡さんが務める中高一貫校に足を運んでいた。

 

一応周囲の人の目を鑑みて、スーツ姿で学校へ赴いていた。そうして上下青ジャージ姿の冨岡さんを捕まえ、今こうして来客室で時間を貰っているのである。

 

 

「『透き通る世界』か。胡蝶、そんな習得できるかもわからないような技能を追い求めて一体どうするつもりだ?」

 

「冨岡さんならわかるはずです。貴方だって『銃剣使い』にこっぴどくやられて力不足を痛感してるんじゃないんですか? 私だって同じ気持ちなんです。」

 

「俺はお前とは違う。」

 

「・・・・・・」

 

 

私は必死に感情を制御し貼り付けた笑顔で本音を隠した。そしてそのまま聞き返す。

 

 

「冨岡さん? 同僚が困ってるんですよ? 別に減るもんじゃないですし教えてくれてもいいじゃないですか? そもそも以前一度でも『透き通る世界』が見れたならそれ以降密かに習得に向けて鍛錬を積んでても可笑しくないはずですよね? ケチなこと言ってないで知っていることを洗いざらい話して下さいよ?」

 

「無駄だ。諦めろ。」

 

「・・・・・・」

 

 

どうしよう。あっちの冨岡さんと同じで言葉足らずが過ぎる。しかもこっちの冨岡さんとは接してる回数が少なすぎて言葉の意図まで読み切ることができない。

 

少しでも気を抜くと不死川さんみたいに青筋が沢山浮かんでしまいそうだ。私はひく付きながらも笑顔を続ける。

 

 

「ねえねえ冨岡さん。どうして無駄だなんて言うんですか? そんなのやってみないとわからないじゃないですか? 意地悪しないで教えてくださいよ?」

 

「無理だ。これにて失礼する。」

 

 

すると冨岡さんは来客室から出ようとする。しかし私はすぐさま冨岡さんの袖を握った。自然と握力が籠った。

 

 

「まだ話は終わってませんよ冨岡さん。勝手に失礼しないで下さい。」

 

 

私は若干ピキピキしながら作り笑いだけ浮かべて冨岡さんを引っ張る。突如両者の腕力勝負が勃発する。

 

 

「放せ胡蝶。もう話は終わったはずだ。」

 

「まだ何一つ終わってませんよ冨岡さん。いい加減知ってることを洗いざらい話して下さい。」

 

「無駄だから諦めろと言ったはずだが・・・」

 

「そんなのやってみないと分からないってさっきも言ったじゃないですか? 放して欲しかったらさわりだけでもいいので教えて下さいよ?」

 

「無理だと言っている。それ以上握りしめるな。袖が千切れる。おい、聞いているのか? いい加減にしろ胡蝶。」

 

「冨岡さんこそ私のお願い少しは聞いてくれても良くないですか? 私これでも凄く焦ってるんですよ? いい加減にして欲しいのは私の方です。」

 

 

私が握りしめる冨岡さんの袖が限界を迎えそうになったタイミングで、ふと彼は溜息をつく。

 

 

「だから・・・死にかけて偶々『透き通る世界』が見れただけの自分じゃ・・・教えられる技量はないとそう言っているんだ。だから俺に教えを乞うのは諦めろ、時間の無駄だ。俺じゃ無理なんだ。」

 

 

そこまで言われて漸く冨岡さんの真意が分かり、私は手の力を緩めた。淡い希望が潰えたような空しさを感じた。

 

 

「そうですか・・・なら仕方ありませんね・・・突然押し掛けてきてしまいすみません。」

 

「いや、胡蝶が必死なのは伝わって来た。事情も知ってるから気持ちも分かる。だが俺では力になれないんだ。済まない。」

 

「いえ・・・冨岡さんが謝る様なことでは・・・」

 

 

そうして冨岡さんが扉を開けて廊下に出ようとしたその時、突如彼の前に一人の少年が姿を現わした。

 

 

「冨岡先生! 丁度お話終わりましたよね? これ今日の分の反省文です! 提出するのでもう帰ってもいいですか?」

 

「竈門・・・凄いタイミングで来るな・・・間がいいのか悪いのか・・・」

 

 

そうして冨岡さんはその男子生徒から反省文らしきものを受け取る。そうして彼はお辞儀をしてはつらつと挨拶した。

 

 

「それじゃあ僕もう帰ります! 冨岡先生も無理しないで下さいね? 銃で撃たれた箇所もう全部治ってるっぽいですけどまた新しいキズとか出来てるんでお大事に!」

 

「頼むからもう危険登校してくれるなよ。不死川からお前絡みで通報が多いと散々文句言われてるんだ。わかったら竈門こそ気を付けて帰れ。」

 

「アハハ・・・でも僕眠るのが大好きだから・・・また寝坊してランニング登校しちゃうかも・・・その時はすみません! それじゃさよなら!」

 

 

そうして嵐のように去っていく少年にあっけに取られる私だったが、不意に我に返り冨岡さんに掴みかかる。

 

 

「冨岡さん! 色々ツッコミたいことあるんですけど!!」

 

「なんだ。忙しいから端的に話せ。」

 

「多すぎて無理ですよ! 今竈門君って言ってましたよね!? つまりあの子って炭治郎君の子孫の子か誰かですか!?

 それと冨岡さん裏の仕事のこと彼に話しましたか!? 彼銃で撃たれたこと知ってたみたいだし! そもそも護り手の仕事って原則一般の人には公開禁止ですよね!? 守秘義務というモノを貴方は知らないんですか!!」

 

「俺は話していない。」

 

「そうなんですね!? わかりました! それとしれっと不死川さんの名前出てきましたが一体どういうことですか!? 通報って何があったんですか!? 貴方生徒指導の先生なのに彼に危ないことさせたままで平気なんですか!?」

 

「待て。情報量が多すぎる。一旦一つに絞れ。それと落ち着け。」

 

 

私をどうどうと宥める冨岡さん。なんか私が悪いみたいでムカつく。いや、今はそれどころではない。さっきの竈門君とのやり取り、気になる点がいくつもあった。それらに関することを私は要点として冨岡さんに問い詰めた。

 

 

「気になったんですけど彼やけにタイミングよく現れましたよね? 丁度私たちの話が終わったタイミングで現れましたし。それにまるで冨岡さんのキズの様子を服の上からでも把握してるような様子でしたよ? 冨岡さんが彼に裏の仕事の話をしていないならそれって不自然ですよね?」

 

「・・・? 胡蝶は何が言いたいんだ?」

 

「兎に角! 私が優先的に聞きたいのは唯一つです!」

 

 

そこまで言い切り私は息を整え冨岡さんに詰め寄った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼、もしかして視界が透けて見えてるんじゃないですか? だから服の上からでも冨岡さんの怪我の様子がわかったんですよきっと。ひょっとしたら『透き通る世界』が見えてるのかも。なので後日彼に確認させてください!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 




本作における竈門家の縁壱とは炭彦君のことでした。折角の原作キャラなので出番増やしたいと思います。加えてしのぶさんが現代で『透き通る世界』覚えようと思ったら炭彦君に聞くのが一番かなって思い結果的にこうなりました。原作でも彼は無意識に呼吸使ってる描写ありますしね。ただ炭彦君って教え方についてはどうなんでしょうか。炭治郎みたいに爆裂に教え下手だとしのぶさんが苦労しそうですね・・・

次回7/4(土) 9:00更新予定です。宜しければ感想、高評価、お気に入り登録よろしくお願いします。
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