鬼滅の毒使い   作:科学大好き人間

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しのぶさん視点です。竈門家の縁壱とは炭彦君のことを指します。本作では彼を縁壱と同等のポテンシャルを持つ人間(・・・人間?)として描写する予定です。加えて最後しのぶさんが驚愕するまさかの事実がカミングアウトされます。


16話 片羽の蝶、竈門家の縁壱に透き通る世界を教わる

「おい炭彦。お前つい先日に鶺鴒女学院の例の先輩と付き合い始めたって言ってたよな? なのに昨日の今日で別の女の人部屋に連れ込むって・・・しかもこの人まで年上だし。お前こんなに節操ない奴だったか?」

 

「あ! カナタおかえり! もう塾終わったの?」

 

「終わったけど・・・ハァ・・・質問に質問で返すなよな・・・」

 

 

私は冨岡さんの紹介で、ある日の夕方、現代の竈門家に訪れていた。

 

竈門家の親御さんに対し冨岡さんは、私のことを『産屋敷家の者だ』とだけ伝えてたらしく、訪問時は急遽様々な説明を要することになった。

 

何とか私の詳細な事情説明とその説得もあってか、どうにか親御さんには納得してもらい怪訝に思われながらも無事家に上がることができた。

 

 

「全く冨岡さんは・・・」

 

 

私は内心ため息を付く。学校の先生があんなに口下手で本当に務まるのだろうかと呆れていた。

 

正直文句も言ってやりたい位の心境ではあったが、今は気持ちを切り替えて炭彦君の子ども部屋にお邪魔していた。

 

 

「今日は時間作ってくれてありがとう。炭彦君。」

 

「大丈夫! 僕部活とか塾とか通ってないから! そこは気にしなくていいよ!」

 

「あらそうなの? じゃあ帰宅後日頃は何を?」

 

 

私は炭彦君に対し世間話を持ち掛ける。まずは彼と打ち解けなければ。

 

とは言え特段彼に緊張や警戒の様子はない。この感じならそう時を置かずに本題に入ったとしても大丈夫だろうか。

 

私は内心でそのような計算を済ませ、適当なタイミングを見繕って今日の要件である目的の話を切り出そうとする。しかし間が悪いのか、丁度炭彦君のお兄さんが帰宅したようで、彼が私たちの居る部屋に顔を出す事態となった。

 

炭彦君のお兄さんは、見知らぬ女性が部屋に上がり込んでいる光景を目の当たりにして、暫く訝しんでいる様子だった。

 

 

「で? 結局この人誰なの? 炭彦・・・お前まさか早速二股する気か?」

 

「ち、違うよ! 僕は後にも先にもカナメさん一筋って決めてるんだから! この人は別の人!」

 

「だったら誰だよ・・・まどろっこしいな・・・」

 

 

どうやら炭彦君はのんびり屋を通り越して察しの悪い子だったらしい。見かねた私は炭彦君を制止し、彼のお兄さんにすぐさまお辞儀した。

 

 

「初めまして。私、産屋敷家でお世話になっている胡蝶しのぶという者です。本日は炭彦君に聞きたいことがあってこうしてお邪魔している次第です。」

 

「え、ああ、はい、どうも。産屋敷家っていうと・・・あれですか? 警備会社の人ですか? それとも事務方の?」

 

「あ、えっと・・・前者の認識の方が近いかと・・・」

 

「? まあ、産屋敷家の人達には日頃お世話になっているので別に構わないですけどね。事情は分からないけど、こんな奴で良ければいくらでも話聞いてって下さい。俺は邪魔だと思うんで暫く席外します。」

 

「あ・・・ごめんなさい・・・本来なら自室でくつろぎたいですよね・・・なるべく早く家を出ますので・・・」

 

「いいですよ。俺リビングで適当にくつろいでるんで。炭彦、余計な話をせずに言われたことだけにちゃんと答えるんだぞ? お前は脱線するとすぐ話長くなるからな。」

 

「そ、そんなことないってば! 心外だよカナタ!」

 

 

炭彦君の抗議の声を無視して、お兄さんのカナタ君は部屋をそのまま出て行った。

 

なんだろう。あの子は余り炭治郎君やカナヲと似てない気がする。容姿はカナヲが男の子になったような見た目だけど。

 

一方で炭彦君は見るからに炭治郎君似だ。ちょっとノホホンとし過ぎだけど。見るからに末っ子と言うか、そんな面倒を見てあげないといけない雰囲気のある子だ。炭治郎君が長男じゃなかったらこうなってたのかも。

 

私がそんなことを思い浮かべていると、炭彦君は首を傾げる。私はふと我に返り、本題に移ることにした。

 

 

「ごめんなさい。あまり長くお邪魔してもいけないから、なるべく手短に済ませるわね。」

 

「僕はそういうの余り気にしないけど、しのぶさんは色々と忙しそうだもんね。うん、なんでも聞いてよ。僕で良ければどんなことでも答えるよ?」

 

 

彼はニコニコと人懐っこい笑顔を見せる。正直可愛らしいなってこの時思った。この子がカナヲのひ孫だと思うと一層無性に愛らしく感じる。しかしいつまでも呆けていてはいけないと思い、私はすぐに話に移った。

 

 

「では単刀直入に聞くわね。炭彦君。君は視界が透けて見えたことがある?」

 

「え? 視界が透ける?」

 

「はい。私は仕事の都合でその技能を習得したいと思っているんです。炭彦君はそのような現象に心当たりがありますか?」

 

「う~ん・・・確かにあることはあるけど・・・」

 

「っ!! ほ、ほんとですかそれはっ!!」

 

「わっ!!」

 

 

私が食い気味に顔を近づけると、彼はびっくりしてひっくり返ってしまった。私は慌てて姿勢を正す。

 

 

「あ、ごめんなさい。つい興奮してしまって・・・」

 

「ううん。大丈夫。でもなんでしのぶさんはそんなことが知りたいの?」

 

「え・・・えっと・・・それは・・・」

 

 

私は良い言い訳が思い浮かばず言い淀む。彼が曇りなき眼で私を見つめてくるので、私は慌てて取り繕う。

 

 

「それは・・・その・・・私こう見えて元医療従事者でして・・・えっと・・・元の仕事に復帰するために・・・患者の方の悪いところとか透けて見えると役立つかなと思って・・・それで・・・」

 

「へ~! 凄いね!! しのぶさんって以前はお医者さんだったの!? 僕とそう歳も変わらなさそうなのに! 大人じゃないのでそんなお仕事ができるなんて僕びっくりだよ!」

 

「あの・・・私こう見えてもう十八なんですが・・・」

 

「えっ! そうなのっ!? 背が低いから僕てっきり同い年くらいかと思ってた!」

 

「まあ・・・上背が低いことは認めますが・・・これでも私・・・もう婚約者もいますし・・・少しは大人の女性に見られててもいい気がするんですが・・・」

 

「えっ! そうなのっ!? てことは・・・もうすぐ旦那さんができて数年経たないうちにお母さんになるってこと!? お兄ちゃんと同じくらいの年齢なのに!?」

 

「・・・まあ・・・ゆくゆくは・・・その・・・そう在りたいと言いますか・・・はい・・・」

 

 

私は思わず視線を下げる。正直ちょっと気恥ずかしかった。そう遠くない未来のことを連想してしまって。

 

そうだ。改めて考えると私、下呂さんと結婚したらすぐ跡継ぎを求められるのよね。

 

今は下呂さんと添い寝ぐらいまでしかしていないけど、ゆくゆくはそういうことも沢山しなきゃいけないのよね。

 

まあ、私は別に、下呂さんとならそういうこと余り嫌じゃないって言うか、寧ろそういうことしてみたいって言うか、まあ内心そういうこと乗り気ではあるけど。

 

ふとそんな甘い妄想が脳内に浮かび上がるが、今は炭彦君が目の前にいるのだからいけないと思い、すぐさま私は咳ばらいをして話を強引に戻した。

 

 

「えっと・・・それでその・・・炭彦君の視界が透ける時ってどんなことを意識してるのかとか・・・そういうことを聞かせてもらってもいいかしら?」

 

「うん。いいよ。そんなことで良ければ教えてあげるよ。僕の視界が透ける時はね・・・」

 

 

それから非常に興味深いことが聞けたので、私は頭の中で内容をまとめる。

 

 

一つ。必要な感覚だけを残して不必要な感覚を閉じると頭の中が透明になってくる。

 

一つ。頭の中が透明になると視界も透き通ってくる。

 

一つ。集中が切れると元の視界に戻る。

 

一つ。初めて視界が透けたのは車道を横切る猫がトラックに轢かれそうになってそれを助けようとして死を実感した時。

 

一つ。初めて視界が透けた時、周囲の動きがゆっくりに感じられた。

 

 

以上が彼の言う『透き通る世界』のあらましだった。

 

 

「ありがとうございます。非常に有用な話が聞けました。因みに気になったのですが・・・」

 

 

私は彼の話を聞き、ふと気づいたことを口にした。

 

 

「炭彦君。なぜ君は常中が自然に出来ているの?」

 

「え? 常中?」

 

「ええ。全集中の呼吸を常時続けてるってこと。それを誰から教わったの?」

 

「え? 全集中の呼吸? 僕初めて聞いたよそんなこと。僕の呼吸の仕方って普通じゃないの?」

 

「え・・・初めて聞いた? そんなはずは・・・そもそも常中は血の滲むような鍛錬を通じて漸く会得できるものだから・・・普通身に着けるだけでも相当の・・・」

 

「えっと、多分僕、生まれてからずっと変わらない感じで自然に呼吸してると思うけど。人と比べたことなかったから今の今まで僕わからなかったよ。」

 

「う・・・生まれつき常中を・・・!?」

 

 

彼は不思議そうにこちらを見ている。私は彼の話を聞いて驚愕する。

 

いやいやいや、寧ろ理解できないのはこちらの方なんだけど。

 

え、何? この子生まれた時から常中してるの? そんなことある? いやあり得ないんだけど? え、待って、この子本当に人間? 人の振りした別の生き物とかじゃなくて?

 

 

「あの~・・・どうしたのしのぶさん? 僕何かおかしなこと言ったかなぁ。」

 

「・・・いえ・・・気にしないで・・・少し驚いてしまって・・・」

 

「?」

 

 

私は平静を装ったが、内心驚愕していた。どうやらこの子は生まれつき私たち柱と同等かそれ以上の呼吸の練度を身に着けているらしい。

 

にわかには信じがたいが、彼が嘘をついてるとも思えない。馬鹿げてるとしか思えないが事実なのだろう。

 

理由はどうであれ、彼は『透き通る世界』が見えており、加えてその為の意識の仕方も把握しているみたい。

 

なら後は私がそれを実践すればいい。もしうまくいかなくても彼に度々コツを聞きにくればいいのだから。そういう意味で彼と今回繋がれたのは非常に大きな収穫だった。

 

 

「ありがとう炭彦君。私も君と同じ『透き通る世界』が見れるよう頑張るわね? もしうまくいかなかったらまたお話聞きに来るけどそれでもいいかしら?」

 

「うん! いいよ! 僕で良ければいくらでも力になるよ! もしうまくいかなかったらいつでも・・・あっ! ごめん! 電話来ちゃった! ちょっと待って!」

 

 

すると彼は急遽ポケットの携帯を取り出して通話を始める。私は彼が通話をしている間、彼に教えてもらった『透き通る世界』のノウハウについて思い起こしメモをしていた。

 

 

「うん! わかった! 次の日曜日だね! 僕楽しみにしてるよ! それじゃあね!」

 

 

すると彼は通話を終えた。彼は堪えきれないのか満面の笑顔だった。

 

 

「あらあら、どうしたの? そんなに嬉しそうにして。」

 

 

彼の顔は緩み切っていた。余程良い知らせだったのだろう。

 

 

「えへへ~。つい先日告白して付き合えるようになったカナメさんと遊園地デートできることになったんだぁ。もう嬉しくって! 僕今から楽しみ過ぎて夜しか寝れなくなっちゃうかも!」

 

「そうなの。いいじゃない。因みにどんな子なの?」

 

「えっ! しのぶさんも気になる!? 仕方ないなぁ、じゃあ特別に見せてあげるね! これ以前二人でカフェに行った時の写真なんだけどね! じゃじゃーん! すっごく綺麗な人なんだ~。」

 

 

そうして彼は自慢げに自身の携帯の画面を見せてくる。

 

私はその様子が微笑ましくて、頬を綻ばせながら彼の携帯画面をのぞき込む。

 

しかしその瞬間、私は雷に打たれたかのような衝撃に見舞われ硬直し絶句した。

 

 

「どう? とっても綺麗な人でしょ! 歳は二個上の先輩なんだけどね! カナメさんって言うんだけど・・・ってあれ? どうしたのしのぶさん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は驚きを隠せなかった。

 

なぜならその画面に映っていたのは、私が十四の時に死に別れた最愛の姉、胡蝶カナエと瓜二つの少女だったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 




しのぶさんが驚愕するまさかの事実とは即ち、炭カナ(=炭彦&疑似カナエ)が現代で成立していたことです。重度のシスコンを患うしのぶさんを前にして、炭彦君は果たして無事初デートを完遂することができるのか。

次回7/11(土) 9:00更新予定です。もし宜しければ感想、高評価、お気に入り登録よろしくお願いします。
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