鬼滅の毒使い   作:科学大好き人間

7 / 53
下呂君視点です。遊郭編決着です。


7話 毒使い、妓夫と花魁の兄妹鬼と対決する

「いない。人を狩りに出かけているな。」

 

 

俺は宇随に雛鶴の居場所を知らせて、藤の花の家紋の家で毒物を仕込んだ黒コートに着替えると、竈門と共にそのまま京極屋へと戻った。既に陽が落ちかけている。

 

 

「っ!! 下呂さん!! ときと屋の方から甘い鬼の匂いがっ!!」

 

「マジか・・・急ぐぞ!!」

 

 

俺は注射器を自身の首筋に刺して毒物を注入し移動する。やがて先に走る竈門との距離もみるみる縮み、あっという間に追い抜く。

 

 

「先に行ってる!! 後からついてこい!!」

 

「は、はい!」

 

 

やがて俺はときと屋に辿り着き、二回の窓を蹴り破って突入する。突然の出来事に中にいる人物も思わず驚いたようだ。

 

 

「・・・お前か? 遊郭に棲む鬼って奴は・・・って!!??」

 

 

目の前では毒々しい派手な模様の帯がうねうねと宙で動いており、その中心には昼間に会った蕨姫花魁がいた。

 

ただ俺が面食らったのはその事実ではなく、そいつの格好だった。派手なニーハイのようなものと下駄を履いており、何よりも裸体を晒すような露出度の高い下着姿で俺の前に突っ立っていた。

 

 

「ちょっ!? お前なんて格好してやがる!! 服着ろ!!!」

 

「何よ? 強そうな気配がするから柱かと思ったのに違うのかしら? いい年して女の肌も見れないくらいウブなのね。笑っちゃうわ。」

 

「おまっ!? マジでふっ・・・ふざけんな・・・!」

 

 

こいつはまずい。いや、落ち着け。状況を整理しろ。まず、どういう訳か、奴の帯に昼間に会った鯉夏花魁が巻き取られている。なのに首から下の身体が存在しない。

 

出血もないし、周囲に血痕もない。こいつの血鬼術によるものか?

 

加えて、目の前の蕨姫花魁の目には『上弦』『陸』の文字。以前遭遇した『上弦の参』よりは格下だが、それでも雑魚鬼とは一線を画す十二鬼月の上から六番目か。

 

どの程度の強さかわからない以上、ここは時間を稼ぐべきか? それとも・・・

 

 

「ふぅん。片目の下に痣みたいなのはあるけど、なかなか整った顔してるじゃない? いいわね、貴方も食べてあげようかしら?」

 

 

そう言うと、蕨姫花魁は無数の帯の攻撃を俺に放ってくる。俺は一旦部屋を出てその攻撃から退避する。

 

すると窓から再び裸体同然の姿をその鬼が晒すので、俺は思わず顔を背けて全身冷や汗を流して固まる。

 

 

「ふふっ、可愛らしい反応するのね? そんなんで私相手に戦えるのかしら?」

 

 

切り替えろ。今は戦闘中だ。それに今の攻撃から判断して、やはり目の前の鬼は以前戦った『上弦の参』とは比べるまでもなく弱い。もう様子見もいらないだろう。

 

 

「まあいいわ。アンタ以外にも鬼狩りが来てそうだし、さっさと殺して他の奴らを・・・」

 

 

俺は鬼が話し終えるのを待つことなく、瞬く間に靴先に仕込んだナイフで頸と無数の帯を切断し、鯉夏花魁を回収して元の位置に戻った。

 

 

「・・・え?」

 

 

やがて鬼の頸は窓から落下し地面に転がった。

 

 

「やっぱり弱いな。俺の動きすら目で追えねぇのか。並みの使い手止まりだぜ、アンタ。」

 

 

暫くの間あっけに取られていたようだが、その静寂もすぐさま破られる。

 

 

「ちょっ・・・ハァアア!? 何よアンタ!! さっきまで私の姿見て動揺してた癖に!!」

 

「うるせぇ・・・しかしまさか色仕掛けをしてくる鬼がいたのは驚きだぜ。まあ、殺し屋の中にもそれを専門にしている輩はいるが・・・」

 

「ふざけんな! こんなあっさり上弦の陸である私が殺されてたまるか!! 見てなさい!! 今すぐアンタなんかズタズタに切り刻んでやるから!!!」

 

「え? いや、待て。お前ら鬼は頸を刎ねたら死ぬんだろ? 一応俺の靴先のナイフ、竈門たちの刀と同じ素材で作ってもらった代物なんだが・・・なんで生きてる!?」

 

「五月蠅い!! 死ね!! お前なんか死ね!! わぁあああああん!!!」

 

「っ!?」

 

 

あろうことかそいつは泣き出した。全く意味がわからん。まさか仲間でも呼んでるのか?

 

 

「下呂さん!! あれは何ですか!?」

 

「おお・・・竈門か。実はあの鬼の頸を刎ねたんだが、どうやら死なないみたいでな・・・一応確認だが、鬼は基本的に日輪刀で頸斬ったら死ぬんだよな?」

 

「は・・・はい。そのはずなんですが・・・」

 

 

俺と竈門は事態の異常性に警戒心を抱く。すると、

 

 

「頸斬られたぁああ!! 頸斬られちゃったぁああ!!! お兄ちゃああん!!!」

 

「うぅううん・・・」

 

「っ!!??」

 

 

突如として女鬼の身体の方からもう一体の鬼が生えて来た。俺は反射的に藤の花の毒針をそいつに打ち込もうと接敵する。だが、

 

 

 

「泣いたってしょうがねえからなああ。」

 

「おいおいマジか。」

 

 

新しく生えて来た男の鬼は建物の屋根の上に一瞬で移動したばかりか、地面に落ちてたはずの女の鬼の頭を持って、それを首無しの女の胴体にくっ付けて再生させていた。

 

 

「頸くらい自分でくっつけろよなああ。お前は本当に頭が足らねえなああ。」

 

 

今の動き。かなり速え。素の視力じゃ追えなかった。俺はさりげなく注射器を取り出し、首筋に新たな毒を注入する。

 

俺は少し距離を取って同じ建物の屋根に乗る。暫くの間、男の鬼は泣いてばかりいる女の鬼をなだめていたが、俺の視線に気が付いたのかこちらに向き直る。

 

 

「さっきの動き速かったなぁあ。いいなぁ、お前いいなあぁあ。顔もいいなぁあ。肌もいいなぁあ。片目の下に痣はあるが、それ以外は男前なんだなぁあ。

 肉付きもいいなあ。俺は太れねえんだよなぁあ。特に顔がいいなぁあ。女どもがほっとかねえだろうなあ。嘸かし持て囃されるんだろうなぁあ。」

 

「ぬ・・・少なくとも俺は女にモテたことはないぞ? ずっと家の事情で恋愛とか異性とかずっと避けて生きて来たからな。城崎なら別かもしれねぇが・・・」

 

「嘘つくなよなぁあ。そんな整った顔してるくせになぁあ。妬ましいなああ、妬ましいなあああ! 死んでくれねえかなぁああ! そりゃあもう苦しい死に方でなああ!

 生きたまま生皮剝がれたり腹を搔っ捌かれたりそれからなぁあ。」

 

「む・・・猛毒を飲まされたり蟲毒の壺の中に放り込まれて全身嚙まれたりしたことはあるが、流石に腹を捌かれるのは辛だな・・・」

 

「あぁ? お前本当に人間かぁあ?」

 

「お兄ちゃん!! そいつ私の身体見て恥ずかしがってた癖に急に豹変して襲い掛かってきたのよ!? 私一生懸命やってるのに、そいつ私のこといじめたの!! 私のこと馬鹿にしながらいじめたのよォ!!」

 

「おい待て。俺がいつそんな性犯罪者みたいなことをした。濡れ衣だぞ、それ。」

 

「そうだなあ、そうだなあ、そりゃあ許せねえなあ。俺の可愛い妹をいじめる奴らは皆殺しだぁあ。」

 

「おい、誤解したまま話進めるんじゃねぇ。俺はお前の妹の頸を刎ねただけだ。それ以上のことは断じてしてねぇ。」

 

「取り立てるぜぇ、俺はなあ。やられた分は必ず取り立てる。死ぬときグルグル巡らせろ。俺の名は妓夫太郎だからなあああ!!!」

 

「いやだから俺の話を・・・ってマジかお前!!??」

 

 

妹鬼からあることないこと散々言われてそれを訂正しようとした矢先、妓夫太郎と名乗る鬼が俺めがけて鎌をぶん投げて来た。俺はそれを足で蹴り払うが、うち一つが竈門の方に旋回して行くのに気が付いた。

 

俺はすぐさま炭治郎を庇い、鎌を蹴りつけて妓夫太郎に打ち返す。鬼は危なげなく旋回する鎌を素手でつかみ取り、自身の顔をガリガリとかきむしり始める。

 

 

「妬ましいなぁあ、お前本当にいい男じゃねぇかよ、なぁあ?」

 

「ああ?」

 

「後輩庇ってなぁあ。格好つけてなぁあ。いいなぁ。そいつにとってお前は命の恩人だよなぁあ。さぞや好かれて感謝されることだろうなぁあ。」

 

「まあ確かに。城崎のアドバイスに従って結婚相手を探すために6人は女性をこうして庇ってきた。確かに下心がないかと言われると回答に窮するが・・・」

 

 

妓夫太郎は俺の回答を聞いて固まる。

 

 

「お前嫁候補が6人もいるのかよ。ふざけるなよなぁあ!! なぁああ!! 許せねぇなぁあ!!」

 

「ちょっ!? ちょっと待て!! 別に嫁候補が6人もいるなんて一言も・・・ってうお!!??」

 

 

 

 

 

 

 

ー血鬼術 飛び血鎌ー

 

 

 

 

 

 

突如妓夫太郎から薄い刃のような血の斬撃が大量に俺たちに放たれる。俺は咄嗟に煙幕を焚き、竈門と帯にくるまれた鯉夏花魁を抱えてその場を立ち去る。

 

 

「一旦仕切り直しだ!! お前は先に鯉夏花魁を安全な場所に連れていけ!!」

 

「え!? でも・・・!!」

 

「安全が確保できたら戻ってこい!! 特に妹の方の鬼は俺にとって目に毒だ!! あいつは竈門に相手してもらう!!」

 

「わ、わかりました!!」

 

 

俺と竈門は別行動に出る。俺がすぐさま引き返すと、先ほど放たれた血の刃が遠隔操作されてるかの如く俺に迫ってきた。

 

 

俺は懐から浄王火を取り出し、血の鎌に薬液を噴射する。浴びた血鎌は一瞬で蒸発するものの、細かく分かれて俺に再度向かってくる。

 

 

「はっ!?」

 

 

俺は細かい血鎌の斬撃を多数浴びてしまう。それらを振り払いその場を離れようとするが、途端悪寒と吐き気に襲われる。

 

 

(これは・・・毒か!!)

 

 

俺はすぐさまそう判断し、注射器を一本取り出して自身に打ち込む。蝶屋敷で何度も調合した鬼の毒を分解する薬だ。これでどれだけ体が持つか・・・

 

 

 

「ひひっ! 俺の血鎌を受けたなぁあ? お前はまもなく死ぬなぁあ?」

 

「・・・」

 

 

気が付くと、俺に襲い掛かるでもなく近くで妓夫太郎が俺を見て笑っていた。妹の方はなぜか肩車してた。

 

 

「・・・えらく仲がいいんだな。お前ら。」

 

「あぁ!?」

 

「鬼になっても、妹への愛情はなくならなかったんだな。」

 

 

俺が妓夫太郎にそう言い放つと、奴は笑みを浮かべて答える。

 

 

「そりゃなぁ、自分の妹だからなぁあ。」

 

「俺にも・・・妹がいる・・・」

 

「あぁ? 命乞いかぁ? けど他人の妹なんて心底どうだっていいからなぁあ。お前が死んで人生のどん底に叩き落されようが知らねぇなぁあ?」

 

「別に命乞いじゃねぇよ。ただの時間稼ぎだ。おかげで間に合ったみたいだ。」

 

「あぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー音の呼吸 壱ノ型 轟ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如として周囲に爆音が鳴り響く。土煙が舞い、視界が悪い中、俺の背後に一人舞い降りる気配を感じる。

 

 

「遅ぇよ。宇随。」

 

「うっせぇわ! ちゃんと雛鶴だけじゃなく、城崎と他の遊女たちも全員避難させたぞ!! これで文句ねぇだろ!?」

 

「ああ、助かるぜ。」

 

 

やがて土煙が収まり、兄妹鬼が姿を現す。

 

 

 

「俺たちは・・・二人で一つだからなあ・・・!」

 

「よくも私が保存してた遊女共を!! 代わりにアンタらを喰ってやるわよ!!」

 

 

帯をドーム状にして身を守っていたらしい。宇随の爆薬による攻撃もほぼ無効だったようだ。加えて遠くから帯の切れ端が妹鬼に集まり、取り込んだのちに髪色が黒から白髪へと変わる。

 

 

「宇随は、妹の方の鬼を、瞬殺してくれ。俺は、兄貴の方の、足止めをする。そうすりゃ、勝てると思う。」

 

「おい、お前、息切れてるぞ? 大丈夫なのか!?」

 

「勝てないわよ! アンタは既にお兄ちゃんの毒を受けたからね!! すぐ動けなくなってお陀仏よ!!」

 

「柱が一人来たところで意味ねぇなぁあ? すぐに二対一になるからなぁあ? ひひひっ!」

 

「毒だと!?」

 

 

宇随がその言葉を聞いて一層俺の安否を気に掛ける。一方、勝利を確信しているのか、妓夫太郎たちは笑うばかりで一向にこちらを攻撃してこない。俺は玉のような汗をかきながら笑みを浮かべる。

 

 

「問題ねぇ。解毒薬は、すでに、調合済みだ。宇随。攻撃を喰らっても、問題ねぇぜ?」

 

「はぁあ!? 嘘つきなさいよ!! お兄ちゃんの毒がそう簡単に解毒できる訳ないでしょ!?」

 

「俺は毒使いだ。鬼由来とは言え、耐性はあるし、一度毒を喰らったから、成分も解析済みだ。戦闘中に、秒で調合するのは、俺達毒使いの、十八番だからな。」

 

「毒使いだぁあ? 聞いたことねぇなぁあ。日輪刀も持ってねぇし、お前は鬼狩りじゃねぇのかぁあ?」

 

「そうか。お前、妹がどうやって頸刎ねられたか、見てねぇのか。じゃあすぐに再現してやるよ。お前の頸でな!!」

 

 

俺は妓夫太郎に突進する。それに反応して妹の方が帯で波状攻撃を仕掛けてくるが・・・

 

 

 

 

 

 

ー音の呼吸 肆ノ型 響斬無間ー

 

 

 

 

 

 

宇随が瞬時に俺と鬼たちの間に入り、爆薬と刃物の斬撃でそれらを迎撃する。

 

俺は毒薬(トキシン)(にくづき)】×【(まいあし)】×【(みる)】の亢進効果をフルに活かして、爆風と斬撃の間を縫うように進み妓夫太郎に攻撃する振りをして妹の方を空中に蹴り上げる。

 

 

「俺の妹を蹴んじゃねぇよなぁあ!!」

 

 

妓夫太郎が激高して俺に斬りかかって来るので、俺は一瞬でその場を退避する。と同時に宇随が爆薬らしき丸薬を周囲に巻き、頭上の妹の帯を迎撃し妓夫太郎の動きを牽制する。

 

 

「ギャッ!!」

 

 

妹鬼は帯で爆薬を誘爆させてしまい、顔面を覆いながら顔を覆う。そして宇随は妓夫太郎を牽制しているうちに妹鬼の頸を切断した。かなりの早業だ。

 

さらに畳みかけるよう、宇随は鎖で繋がれた二節棍のような日輪刀の刃の端を指で摘まんだまま、妓夫太郎の頸に刃を一閃した。

 

一瞬で間合いが倍以上に伸びる一撃だったが、妓夫太郎が直前で攻撃を弾いたため、首筋の皮一枚が切り裂かれる程度で終わる。

 

 

「ちっ! こっちは仕留め損なったぜ!」

 

 

宇随の横で妹鬼が必死に頸を繋げようと頭を押さえていたが、俺は一瞬でその頭に注射器を刺し、頭部と胴体をそのまま遠くへ蹴り飛ばす。

 

 

「一度ならず二度までも!! ふざけんなよなぁあああ!!!」

 

「宇随!! 二人で畳みかけるぞ!!」

 

「わかってるっつうの!!」

 

 

俺の蹴り技で妓夫太郎の頸から鮮血が散る。妓夫太郎は驚愕し、頭を支え、後方へと下がる。

 

 

「お前・・・日輪刀を足に仕込んでるんだなぁあ? 次は喰らわねぇからなぁあ!」

 

「次はねぇぜ!!」

 

「っ!!??」

 

 

瞬時に宇随が接近し妓夫太郎の頸筋に刃を当てようとする。しかし妓夫太郎は身体を硬直させていた。俺が蹴りと同時に毒針を突き刺していたからだ。

 

間違いなく奴の頸は落ちるかに思えたが・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

ー血鬼術 円斬旋回 飛び血鎌ー

 

 

 

 

 

 

こいつ・・・一瞬で胡蝶からもらった毒を分解しやがった!! 上弦の参よりも毒の耐性があんのか!?

 

しかも腕の振りなしに血鎌を広範囲に!!?? こいつらなんでもありか!!??

 

俺は退避すれば助かるが、宇随はそうもいかない。俺はダメもとで追加の毒を打ち込んで攻撃を中断させようとするが・・・

 

 

 

 

 

 

 

ー音の呼吸 肆ノ型 響斬無間ー

 

 

 

 

 

 

宇随は再び爆薬と刃物の斬撃でそれらを迎撃した。それにより、宇随は命を拾ったかに見えたが・・・

 

 

「それはさっきも見た型だからなぁあ。」

 

「がふっ!!!」

 

 

瞬時に宇随へと迫った妓夫太郎が鎌を鳩尾へと突き立てる。

 

俺はそれよりも一拍遅れて妓夫太郎に毒を打ち込んだ形となり、蹴り飛ばして距離を取るほかなかった。

 

 

「宇随!! 解毒薬は打ったがその傷は・・・!!」

 

「ちぃ・・・大丈夫だ。呼吸で止血する。死にはしねぇよ。」

 

「そ、そうなのか!? 呼吸使いはすげぇな・・・」

 

「それより今はあいつから目を・・・」

 

 

 

 

 

 

ー血鬼術 飛び血鎌ー

 

 

 

 

 

 

再び妓夫太郎から血の刃が放たれる。俺はそれに反応し、浄王火を噴出して攻撃を掻い潜る。

 

 

「お前は足技とその厄介な小細工さえ気を付けてれば何も問題ねぇからなぁああ。」

 

「くっ・・・!!」

 

 

妓夫太郎に接敵しても奴の対の鎌に対して回避するしか術がない。どうしても足先のナイフだけじゃ手数に欠ける。

 

毒薬(トキシン)(ほこづくり)】を打てれば、こいつの腕を即座にへし折り別種の毒針を打ち、分解に手間取ってる間に頸を刎ねることもできるだろう。

 

しかし、既に三重(トリプル)キメてる状態で新たな毒を追加しちまえば、キャパ越え(オーバードーズ)で即死間違い無しだ。

 

鬼の探索で毒薬(トキシン)(にくづき)】を早々に使ったのがまずかったか。しかし、それが無ければ周囲を旋回する血鎌の遠隔攻撃を回避するなんてできるはずもねぇ。

 

宇随も負傷のせいで一対一でこいつと戦えるような状態じゃない。毒血解離を使う隙もねぇ。

 

せめてあと一手、こいつを抑える手段があれば・・・!!

 

 

 

 

 

 

 

ーヒノカミ神楽 火車ー

 

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

 

どこより現れたかもわからない影が、妓夫太郎の肩口を切り裂いてさらにその後方へと退避していく。

 

一瞬怯んだ妓夫太郎の顔面に俺は浄王火を一気に噴射して追加の毒を打ち込み、蹴りを入れて距離を取る。

 

 

「がぁああ!! 頭蓋が解けたぞ!? この液体何でできてんだぁああ!!! それに誰だ邪魔しやがったのはぁあああ!!??」

 

「下呂さん!! 例の解毒不可のあれを使ってください!! 俺が時間を稼ぎます!!!」

 

「竈門!! しかしお前一人じゃ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

ー音の呼吸 伍ノ型 鳴弦奏々ー

 

 

 

 

 

 

「はっはぁ!! 譜面が完成したぞ!! 竈門と俺で挟み込む!!! 奥の手があんなら任せたぞ、下呂!!!」

 

「っ!! ・・・すまない、一旦離脱する!!」

 

 

 

 

俺は宇随たちが時間を稼いでくれてる中、妓夫太郎から離れた場所へと退避し、両手の手袋を外す。そして、両腕を前に掲げ五指の先端を左右対称に合わせるような構えを取る。

 

 

「っ!! 悪巧みしても意味ねぇんだよなぁあああ!!!」

 

 

 

 

 

ー血鬼術 飛び血鎌ー

 

 

 

 

 

妓夫太郎が俺の動きに気が付き、血の刃を多数放ってくるが、宇随がそれを一つも漏れなく爆風で防ぐ。

 

 

「下呂!! 早くしろ!!!」

 

 

宇随が何とか踏ん張ってくれてるが、もう何度も斬撃を浴びている。このままだと毒の生成までギリギリ間に合わないか!?

 

 

「天元様!!」

 

 

すると、建物の屋根から雛鶴が、無数のクナイをばね仕掛けの道具から打ち放ったのが見えた。

 

 

 

 

 

ー血鬼術 跋弧跳梁ー

 

 

 

 

 

しかし斬撃の天蓋で妓夫太郎は一瞥することもなくクナイを全て弾き飛ばす。

 

 

「邪魔だなぁああ!! 先に始末してやろうかぁああ!!! 妹を操作すれば一瞬で殺せるからなぁああ!!!」

 

 

すると雛鶴の背後より無数の帯の攻撃が迫る。

 

 

「アハハハハッ!! アンタらの位置は全部筒抜けなのよ! お兄ちゃんが起きたからね!! アタシが一人残さず殺してやるわよ!!!」

 

「雛鶴!!!」

 

 

 

 

 

 

 

ー血鬼術 八重帯斬りー

 

 

 

 

 

 

 

逃げ場のない交差の一撃が雛鶴へと打ち下ろされる。宇随は妓夫太郎の相手で身動きが取れない。ここは俺が毒血解離を中断してでも助けにいかねぇと・・・!!

 

 

 

 

 

 

 

 

ーヒノカミ神楽 灼骨炎陽ー

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が毒の生成を中断しようと思った矢先、無数の帯は夜の闇を一閃する火の渦に切り払われ、散り散りになる。

 

 

「痛っ!?」

 

「下呂さん!! こっちは俺に任せてください!!」

 

「助かったぜ、竈門。おかげで溜めが終わった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

毒血解離 【光芒一滴】

 

 

 

 

 

 

 

 

「宇随!! 下がれ!!!」

 

 

俺の一声で宇随はその場を退避する。その結果、俺と妓夫太郎の間に一切の遮蔽物がなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー血鬼術 飛び血鎌ー

 

 

 

 

 

 

 

妓夫太郎は間髪入れず、俺へとありったけの血の刃を放つ。俺は鏡合わせにした両手の五指を開き、指先から血滴を散布する。

 

 

「馬鹿か!? 毒だろうが何だろうが、俺の血鎌を相殺できるわけ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

ボボボボボッ!!!!

 

 

 

 

 

 

「っ!!??」

 

 

俺の血滴が触れた血鎌は全て、空中で破裂するように散り散りになって爆ぜる。流石の妓夫太郎もその光景に面食らったようだ。

 

 

「幕引きだぜ、妓夫太郎。」

 

 

俺はそのまま突進するが、妓夫太郎は瞬時に迎撃に打って出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー血鬼術 跋弧跳梁ー

 

 

 

 

 

 

 

 

「返り討ちにしてやる!!! 切り刻んで死に晒せよなぁああ!!!!!」

 

 

一切の隙間のない斬撃が俺に対し振るわれる。本来であれば、突っ込んだ途端一瞬でミンチになってたのは俺の方だったかもしれない。だが・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は無音で空中に飛び、軽やかな身のこなしで優しく妓夫太郎の背に手を当ててそのまま飛び越し、背を向けたまま着地する。

 

 

「毒使いが、正面からやり合うわけねえだろ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『変性血統++(インクリメント)』は、使い手たちの奥の手、即ち血の力を発揮する心髄。

 

しかし遠大な歴史をその血に刻んだ五大名家のそれは、別格として異称される。

 

極めた先は・・・解毒不可。喰らえばおしまいの一撃確殺。それが--------毒使いの、心髄。

 

 

 

「がっ!!??」

 

 

 

その瞬間、全身より破裂するように血が四散し、そのまま崩れ落ちたのちに上弦の鬼は絶命した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 




マリッジトキシンの原作によると、毒血解離は耐性を突破して解毒不可の毒を打ち込む『奥の手』なので、本小説では上弦だろうが何だろうが効くものとして描写します。上弦を殺す毒の存在を知って無惨は何を考えるのでしょうか。それについては次回で描写します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。