鬼滅の毒使い   作:科学大好き人間

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下呂君視点です。後半鬼殺隊で婚活してる例の子が登場します。


9話 毒使い、同じく婚活に励む恋柱と語らう

「・・・なあ、城崎。一つだけ確認させてくれ。」

 

「ん~? なあに下呂君。そんなに改まってさ。」

 

「確かにここ最近の俺は体調管理が行き届いてなかったのは事実だ。ここいらで休暇を取って温泉で疲れを癒すのも理由としては頷ける。だが・・・」

 

 

 

俺は現在、鬼殺隊の刀の生産を行う刀鍛冶の隠里に来ていた。そして森の奥にある温泉に湯治に来ていた。

 

しかし、俺は湯舟の端で目を閉じたまま硬直していた。なぜなら・・・

 

 

 

「なんでお前まで一緒に温泉入ってんの!!?? 仮に温泉に来るにしても別のタイミングで入れば良かっただろうが!!!!」

 

「別に問題ないじゃん。男同士だし。以前の婚活強化合宿で一緒に入ったから平気でしょ?」

 

「・・・むうぅ・・・」

 

「まあまあ、折角の温泉なんだし堪能しなよ、下呂君。」

 

「全然リラックスできねぇ・・・」

 

「アハッ! まあ冗談はさておき、ちょっと二人で話しておきたいことがあってさ。貸切の温泉に浸かりながらでいいから聞いてよ、下呂君。」

 

「む?」

 

 

俺は城崎の物言いに意識を切り替える。わざわざ人のいない場所を選んでの話となると、聞き流せるような軽い話じゃないと思われる。俺は目を閉じたまま耳にだけ意識を集中させる。

 

 

「下呂君はさ、もし元の時代に戻れなかったとしたら、その時はどうする?」

 

「・・・」

 

 

俺は閉口したまま微動だにしなかった。城崎の言いたいことはわかる。俺だって一度も考えなかった訳じゃないからだ。

 

『もし現代に帰れず、この時代に取り残されてしまったら。』

 

その可能性は捨てきれない。そもそもどういう手段、どういう目的で、誰が俺たちをこの時代に連れて来たのかも一切明らかになっていないからだ。

 

現状鬼の血鬼術によって、この時代に飛ばされたはずだと一縷の望みに縋って現在もその主犯を探しているが、一向に確かな手掛かりが見つかるわけでもない。

 

確かに『鳴女』と呼ばれる鬼がいて、他者を別空間に移動させることができる血鬼術を使うという事実までは突き止めることができた。しかし、本当にそいつが俺たちの時代転移の首謀者なのかは甚だ疑問である。

 

そもそも個人の思惑で起こされたことと断定していいことなのだろうか。偶発的な超常現象によって引き起こされた事故の可能性もある。

 

突飛な発想だが、時空の裂けめに誤って飛び込んでしまったかもしれないし、神隠しにあったのかもしれない。

 

非科学的と笑われるような考えだが、使い手の中には盃*1のように死者の霊を操った者もいる。一概には否定できない事象がこの世にはあるのだ。

 

俺は暫く考えを巡らせていたが、やがて目を開いて城崎の質問に答えることにした。

 

 

「何が何でも現代には帰る。俺はそう腹を決めている。だってそうだろ? お前にも俺にも帰らなきゃいけない明確な理由があるんだ。

 まずはできることをやる。必ず手がかりを見つけてみせる。城崎には不安がらせちまうかもしれねぇが、俺が巻き込んじまった以上、ちゃんと責任は取るつもりだ。約束する。」

 

 

俺はそう言い切った。それが嘘偽りのない俺自身の本音だったからだ。

 

すると目の前で、先に温泉からあがった城崎が、既にタオルを巻いた状態で俺の前にしゃがんだ状態で手を差し伸べていた。

 

 

「うん。下呂君ならそう言うだろうなって思ってたよ。ありがとね。少しばかり不安になってた私のこと励ましてくれて。

 私、下呂君にはちゃんと結婚して幸せになって欲しいと思ってるから。それだけは嘘偽りのない私の本音だよ?」

 

「城崎・・・ああ! これからもよろしく頼む。」

 

「もちろん! 但し・・・あくまでも婚活アドバイザーとして・・・ね。」

 

 

そう言って、俺は城崎の手を握る。固い握手を交わしたところで俺はふと気が付いた。

 

 

「城崎。足滑らせんなよ? 前の合宿の時、危うく怪我するところだったからな。」

 

「あ、そうだったね。気を付けないと。」

 

「・・・ちなみに胸にあったあの傷はひょっとして・・・」

 

「下呂君? あれは秘密って言ったよね? 詮索するなら怒るよ?」

 

「ぬっ・・・すまん。今のは忘れてくれ。」

 

 

そうして城崎は笑いながら先に温泉をあとにした。姿が見えなくなったことを確認してから、俺は湯舟をあがって同様にその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ! もしかして下呂さんと城崎さんかしらっ!? 初めまして!! 私甘露寺蜜璃って言います!! 炭治郎君からは既にお二人のことは聞いててっ!」

 

 

ふと旅館の廊下で桜餅のような色をした女性に声を掛けられた。浴衣姿で走ってこちらに近づいてくる際、乳房が零れそうなくらい揺れていたため、俺は反射的に背中を向けて視界にそれが収まらないようにした。

 

 

「あ、あれっ!? 私嫌われちゃったかしら!?」

 

「あ~・・・心配しなくていいよ、甘露寺さん。彼、女性経験殆ど無くて免疫ないんだ。なにせ今修行中の身だから。」

 

「しゅ、修行中!?」

 

「城崎。余計なことを言うな。誤解されるだろ・・・」

 

「ふ~ん? そんなこと言うならちゃんと甘露寺さんに向き直って挨拶しなよ? 女性に対してそんな態度取ってるようじゃ婚活初心者白帯以下だよ?」

 

「ぬう・・・相変わらず手厳しいな城崎お前・・・でも今のは流石にイレギュラー過ぎんだろ? もう少し情状酌量の余地ぐらいあっていいと思うんだが・・・」

 

 

女性が胸元を露出して走って近づいてきたら誰だってビビるはずだ。俺は小言を溢し、甘露寺と名乗った女性に振り返りつつ自身を落ち着かせる。

 

 

「俺は下呂ヒカルだ。初めまして。丁度今湯治でこの里に来てるんだ。アンタは?」

 

 

俺は気持ちを切り替えて比較的いつもの調子で語り掛ける。甘露寺にはもう少し胸元を隠して欲しかったが、ここでその話題に触れるのは野暮だろう。俺はなるべく気にしないようにして握手を求めて手を差し出す。

 

 

「あ、はいっ! 実は私、日輪刀の調整でこの里の来ているのっ! えっと・・・下呂さんは湯治で来たとおっしゃってたけど、どこかお怪我をされたのかしら!?」

 

「ん? あぁ、悪い。実はそうじゃないんだ。ここ最近体調が良くなかったから、城崎に半ば強引にここに連れてこられてな。まあ初めに提案してきたのは竈門だったんだが・・・」

 

「でも来て正解だったでしょ? 下呂君昼間に比べて顔色だいぶ良くなったし、温泉でだいぶ疲れ取れたんじゃない?」

 

「ああ、そうだな。城崎には礼を言うぜ。ありがとな。」

 

 

俺と城崎のやり取りを見て、甘露寺はどういう訳か顔を赤らめてもじもじし始める。

 

 

「ももももしかしてっ! お二人は恋人同士で来・・・」

 

「「違うぞ(よ)」」

 

「え? ええ!? でも二人はとても仲良さそうで・・・」

 

「私は下呂君の婚活アドバイザーだから、甘露寺さんが考えるような間柄じゃないよ?」

 

「こ、婚活あどばいざあ・・・?」

 

「ああ、えっと・・・婚活っていうのはね、結婚活動の略で、結婚相手を見つけるために色々行う活動のことだよ。私は下呂君の結婚相手を見つけるためにお仕事してるの。わかるかな?」

 

「ええ!? 結婚!? 下呂さんも添い遂げる方をお探しになっているの!?」

 

「ん? 下呂さんも?」

 

「城崎。胡蝶が言ってただろ。恋柱は婚活で鬼殺隊に入った隊士だって。甘露寺は十中八九恋柱だ。気配でわかる。」

 

「流石下呂君。見ただけでどれくらいの手練れかわかるんだね。」

 

「ああ、多分胡蝶よりは相当フィジカルあると思うぜ?」

 

「す、すごい下呂さん! 初見で私のことそんなにわかるなんてっ!」

 

「まあ、これでも裏家業の人間だからな。職業病みたいなもんだ。」

 

「そ、そうなのね・・・その、つかぬ事をお聞きしますが、下呂さんはどういった女の子が好みかしら・・・?」

 

「ぬ!? 待て甘露寺!? それはどういう・・・」

 

「甘露寺さんお目が高いね~。下呂君は奥手な男子だけど、腕も人柄も超優良物件だよ~? お試しでデートしてみる?」

 

「おい待て城崎!!! 俺らの事情は話しとくべきだろ!? 現代に帰る際どう責任取ればいいんだよ!!??」

 

「も~、ただの冗談だよ下呂君。そんな怒らなくてもいいじゃん?」

 

「マジでやめろそういう冗談は・・・」

 

 

俺は一呼吸整えて甘露寺に弁明する。俺たちが未来から来た人間であることを。こんなことなら胡蝶に頼んで鬼殺隊全体に周知してもらうべきだったと今更ながら後悔した。

 

 

「み、未来!? 凄い!! そんなことってあり得るの!?」

 

「まあ、俺達もどうしてそうなったかまではわからん。少なくとも俺たちは100年後の社会がどうなってるかを知っている。まあ信じるか信じないかは任せるが・・・」

 

「そうなのねっ! さっきから聞きなれない単語を使ってたのはそういうことだったのねっ!? 素敵っ!! 未来ではもっとハイカラでおしゃれな服が一杯あるのかしら!?」

 

「お、甘露寺さん気になる? よかったら私が持ってる洋服見せてあげようか?」

 

「いいの!? 私、見たいわっ! お願いできるかしらっ!?」

 

「いいよ~? 今は手持ち一着分しかないけど、早速見せてあげるね? 他にも色々聞きたいことがあったら答えるよ?」

 

「ありがとうっ! メイちゃん!!」

 

「ちょっと待て。今からか? それにメイちゃん・・・???」

 

 

俺はヒートアップする二人のテンションについて行けず、そのまま呆然としていた。加えて城崎の性別伝えてなかったなと今になって気が付いた。後日知ることになって大丈夫だろうか・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日は夜遅くまで、城崎の部屋から甘露寺の鈴の音のような声が絶えることがなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
盃:霊使い。殺人鬼の凶器や自殺者の遺品に取りついた霊の力を使う。凶器を他者に持たせて操ったり、遺品を敵に渡して弱体化させることもできる。ネトゲ廃人の自称使い手エンジョイ勢。




城崎が蜜璃ちゃんの婚活アドバイザーになったら秒で伊黒さんとマッチング成立する気がする・・・
その場合城崎は男装バージョンになりそうだけど・・・
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