幻想オン・ザ・ロック【完結】   作:darnylee

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第十話 乱入からの乱闘

 

―――――――――――――

 

 

博麗の巫女なんか怖くねえ!

 

妖怪の賢者に中指立ててやる!

 

幻想郷をブッ壊せッ!!

 

オレたちは幻想デストロイヤー!

 

デストロイヤー!

 

デストロイヤー!

 

読経なんか下らねえ!

 

神も仏もどいつもこいつもクソばかり!!

 

修行なんかつまらねえ!!

 

オレたちの本当の自由はここにある!!

 

オレたちは最強デストロイヤー!

 

デストロイヤー!

 

デストロイヤー!

 

守矢神社をブッ潰せ!!

 

命蓮寺に火をかけろ!!

 

神霊廟を叩き出せ!!

 

デカい面した奴らに思い知らせてやれ!

 

だからオレたちは以下略

 

 

―――――――――――

 

 こ れ は ひ ど い 。

 

 とりあえず、響子ちゃんがクソほど不満を溜め込んでいるのは理解した。

 

 歌詞のひどさもさることながら、ミスティアのギターもめちゃくちゃだ。

 

 コードも音程もなにもなく、ただ闇雲にギターをかき鳴らしてるようにしか聞こえない。

 

 そもそもアンプに繋いでないのにどうやって音出してんだろう? 響子ちゃんの能力か?

 

 他にも色々言いたいことがあるが、とにかく死ぬほど魂が籠もった演奏なのは伝わってくる。

 

 音楽はテクニックやコードなどの知識も大事だが、最後に物を言うのはやっぱりハートだ。

 

 観客もその熱に浮かされてか、それともただ単にバカ騒ぎしたいだけか、歓声を上げて全力で楽しんでいる。

 

 俺もそれを見ていると、徐々に指先がムラムラしてくるような感覚を覚えた。

 

 くそ、楽しそうだな……俺も一緒に弾きてえ。

 

 だけどミスティアに邪魔すんなって言われたし……。あんま目立つと俺が人間ってバレるかも知れない。

 

 ここはリスクを鑑みて静観するのが正解だが……。

 

『しゃあ、次の曲行くぞオ"ラァァァッ!! 「妖怪ディストピア」ァ"ッ!!』

 

 響子ちゃんがデスボイスを響かせながら、二曲目に突入する。

 

 ぐ……クソ! もう我慢できん!

 

 次のイントロで俺も乱入するぞッ!!

 

 どうせ今の俺はただのモブ妖怪だ! いざとなれば姿くらまして逃げればいい!

 

 とにかく今俺はギターが弾きたいんだ! 後のことなど知ったことか!

 

 俺はそうと決めるや否や、ギターをアンプに繋いだあと、ボリュームとバスをマックスにしてステージに突入する。

 

 観客の何人かは俺の存在に気付いたようだが、響子ちゃんとミスティアは曲に夢中で後ろには気付いていない。

 

 そして俺は、二人の曲が一旦イントロに入った瞬間、後ろから無遠慮にギターをかき鳴らした。

 

「!?」

 

「ちょっ、あんた何をやって……!?」

 

 二人が驚いてるのも無視して、俺はギターソロで重低音を響かせまくる。

 

 この曲はそうじゃねえ、こうだ!!

 

 ミスティアに見せ付けるように、俺は中学高校生活を全て棒に振って培った全身全霊のギターを披露する。

 

 勉強も将来の進路も青春も全部捨てて毎日10時間近く練習して磨いた、俺のテクを舐めんじゃねえ!

 

 ロックなんて所詮エゴの押し付け合い、音を使った喧嘩だ!

 

 なら俺が、この音を使って幻想郷をぶん殴ってやるッ!!

 

「…………!!」

 

 二人も俺の意図に気付いたのか、互いに顔を見合わせて頷いたあと、俺のギターに合わせて曲が再開される。

 

「うおおおお!? なんだなんだ!?」

 

「何もんだあいつ!?」

 

「でもイカれてるぜあの野郎!」

 

「やっちまえー! ブッ潰せーー!」

 

 観客たちもボルテージが上がってきたのか、ステージの上に身を乗り出しながら絶叫する。

 

 ……っていうかあの最前列で人差し指と小指立てながら絶叫してるの、今泉影狼じゃね?

 

 落ち着いた大人のウェアウルフって聞いてたんだけど、なんだか意外な一面を見てしまった気分だ。

 

 他にもなんかちょくちょく知ってる顔混ざっている気がするが、今はとりあえずステージに集中しなければ失敗してしまう。

 

 なにせほとんど知らない曲をアドリブで演奏しているのだ。一応前半を聞いて大まかな構成は理解したとは言え、一度崩れてしまえば取り返しがつかない。

 

 ――だが、この緊張感がいい!

 

 生放送の一発撮りのような、自分のスキルと引き出しが最大限試されているこの感覚。一人で動画投稿してるのも悪くはなかったが、やはりライブは最高だ!

 

 俺が悦に入っていると、ミスティアのギターが離脱して、響子もシャウトを終える。

 

 最後は俺のギターがなんとなく上手くまとめたところで、無難に曲が終了した。

 

「「うおおおおおオオオッ!!」」

 

 これまでで最高の盛り上がりに、客席から怒号のような歓声が響き渡る。

 

 響子はこちらに屈託のない満面の笑みを向けたあと、観客に向かって言った。

 

『今日は皆に特別ゲストを紹介するよ! ステージに舞い降りた堕天使、覆面ギター妖怪K! これからガンガン盛り上げていくからよろしくね!』

 

「…………!」

 

 俺は無言でメロイックサインのハンドジェスチャーを返しながら、ギュィイーーン! とギターをかき鳴らしてアピールする。

 

 すると、観客から盛大な歓声が返ってくる。

 

 ……よかったー! 乱入成功して!

 

 ギター弾きたい欲求に耐えきれず突貫したはいいが、滑って会場を冷えさせたりしたら一生レベルのトラウマを抱えるところだった。

 

 覆面ギター妖怪とか、名前がちょっとダサいのは気になるが、観客の皆に受け入れられて安心した。

 

 しかしその時、

 

「いてっ!」

 

 俺は突如脇腹に痛みを覚えて、小さく声を上げる。

 

 見るとそこには、少しむくれた顔のミスティアが俺に肘打ちを入れていた。

 

「……あんた、やるわね。でも、このバンドのギターはあくまで私。あまり調子に乗らないでよ!」

 

 そう言ってミスティアはびしっ、と俺に指を突き付ける。可愛い。

 

 俺はそれに、ヒラヒラと軽く手を振って答える。

 

 何せ今の俺は覆面ギター妖怪Kだ。覆面を付けてる間はボロを出さないために、無口なクールキャラを貫いていこうと思う。

 

『おーっし! それじゃあテメーら、最後の曲いぐぞゴラァ"ァ"ァァッ!!』

 

 響子ちゃんが再びデスボイスを響かせた、その時――

 

 

「――お前らいい加減にしろ! 彗星『ブレイジングスター』!」

 

 

 そう遠くから声が響くと同時に、目が潰れるほどに眩い閃光がステージの近くを走り抜ける。

 

 そして次の瞬間、凄まじい衝撃波と共にステージが半壊して、側に居た観客もろとも屋根が吹き飛ばされる。

 

「ぐはぁっ!」

 

 それは俺も例外ではなく、爆風でステージの端まで一気に転がされたあと、壁にしこたま頭を打ち付ける。

 

「いっっ……!」

 

 目玉がとん出るくらい痛かったが、おかげで目が冴えてかえって冷静に状況が把握出来た。

 

 ステージは半壊。観客は今のをまともに食らったのか、大半が目を回して気絶している。

 

 先ほどとは打って変わって静まり返った草原の中で、唯一絶対の存在として君臨する魔法使い。

 

 ――霧雨魔理沙の姿が空にあった。

 

「ったく、今日は魔法の研究で半徹夜明けだってのに……無駄に疲れさせてくれるな雑魚妖怪どもめ」

 

 魔理沙は箒を翻して大きく旋回しながら、吐き捨てるように言う。

 

「ちょっと、いきなり酷いじゃない! あんたのせいでステージがグッチャグチャよ! どうしてくれんのよ、これ!」

 

 気絶を免れたミスティアが、ステージの惨状を見て怒りながら抗議する。

 

「あ〜? 文句を言いたいのはこっちの方だぜ。こちとらお前らの連日連夜の馬鹿騒ぎのせいで万年寝不足なんだ。今日は特に騒ぎの度合いが酷かったからな……いい加減私も我慢の限界だぜ」

 

 そう言う魔理沙も、少しばかり殺気立った口調で返す。

 

 そう言えば……思い出した!

 

 確か鳥獣伎楽のライブは、霧雨魔法店のすぐ近くで行われていたはずだ。

 

 連日深夜に行われるライブに魔理沙が迷惑して、響子の保護者である聖に苦情を言いに行くって描写が公式にあったはず。

 

 だがそこには、魔理沙がライブ中に乱入して、ステージをめちゃくちゃにするなんて描写はなかった。

 

 ……もしかして、世界線が変わってきてる?

 

「も〜、頭にきた! 人間ごときが調子に乗って! 私が本当の闇夜の恐怖を思い出させてあげるわ!」

 

「お前ら木っ端妖怪を全員叩きのめしたら、私もすっきりして朝まで気持ちよく眠れるだろうぜ。私の安眠のために落ちろ!」

 

「鳥目になりなさい! 鷹符『イルスタードダイブ』!」

 

「お前にゃこれで十分だ。魔符『スターダストレヴァリエ』」

 

 ヤバい、目の前で弾幕ごっこが始まった!

 

 さっきのブレイジングスターの威力を見るに、ただの人間が巻き込まれると下手したら死ぬやつだこれ!

 

「響子ちゃん、早く起きて!」

 

「うう……」

 

 俺は慌てて響子の頰を叩いて起こそうとするも、完全に伸びてしまっているのか、呻くだけでまったく起きる気配がない。

 

「くそっ!」

 

 俺はかくなる上は響子を担ぎ、ギターもアンプもキャリーに乗せて無理やりそこから退避する。

 

 ヤバい……しかも何気に視界が狭まってきてるぞ!

 

 これミスティアの能力だろ。俺も人間だから、歌を聴いただけで鳥目になってきてる!

 

 ほんの1メートル先も見えないような状況で、俺はほとんど感覚だけを頼りに命蓮寺に向かって歩き出した。

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